more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第61回 宝塚記念

クロノジェネシス、圧勝でした。

1コーナーを争った先行馬は4コーナーで飲み込まれ、後方待機から4コーナーでエンジンをかけた差し馬は直線で置き去りにされました。1コーナーでブラストワンピースに前のポジションを取られたときは狙われたなと思っていましたが、文句なしの勝利でしたね。

レース直前の降雨で緩みを増した馬場は、レース史上最大の6馬身差という派手な演出に至りました。秋華賞馬には追い風だったと思います、が、きっと雨の恩恵がなくても着順に変わりはなかったでしょう。直前までは本命だったのになぁ。

公式レースラップ

12.3-10.9-11.4-12.7-12.7-12.4-12.4-12.4-11.9-12.1-12.3

昨年、リスグラシューのレースラップも。良発表、キセキは逃げて2着でしたね。
12.6-11.4-11.5-12.4-12.1-11.9-12.0-11.6-11.5-11.4-12.4

相当突っ込んだ序盤のラップ

トーセンスーリヤがサートゥルナーリアの前方を塞ぎながら先頭へ。ワグネリアン、ラッキーライラック、ダンビュライトらが並びかけるようにポジションをけん制。1コーナーでアドバンテージを取っておきたい人馬は、かなりのスタミナを消費しながら加速していたようす。2、3ハロン目のラップは、蹴り上げられる芝の塊からも相当にパワーを要して作り出された数値と見えます。

1コーナー通過順が一桁で、掲示板にのったのはクロノジェネシスのみ。上位入線の馬は、その通過順から序盤のハイラップを避けた待機策であることがわかります。

北村友一はシンプルな戦略

外枠スタートから内の並びとペースを見つつ、先行馬のひとつ後ろをジワジワ狙う1コーナーまでの所作は、セーフティな運びに見えました。無理をしたであろうブラストワンピースの直後に収まってからは折り合いに専念する1、2コーナーになりました。

向こう正面にはいって、ブラストワンピースの後ろを捨ててひとつ外へ。拳は上がり気味でしたが、おそらく引っ掛かりを抑えるのではなくノメらないように上体を起こすサポートと見えています。

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第61回宝塚記念_向こう正面

終始馬群の外々、これで直線ぶっちぎりましたからね。鞍下の能力を見積もることができているが故のシンプルな戦略。継続騎乗でなければ、とは思いませんが、継続騎乗だからこそ、ではあるでしょう。馬の強さが光るリードというのは好感を覚えますね。

秋のローテーションは未定

海外含め未定とのオーナーサイドのコメントがありますが、外務省が6/5に更新している渡航に関する危険情報レベル、フランス、イギリス、アメリカ、オーストラリア等々の競馬主要国は引き続きレベル3の「渡航中止勧告」。その上はレベル4の退避勧告しかありませんから、この状況下で海外遠征はあまり現実的ではないように思われます。

www.anzen.mofa.go.jp

この特殊な馬場をこなしたことで凱旋門賞をイメージした方もいらっしゃるようですね。確かに観てみたいとは思いますが、おそらく近しい馬場コンディションではないと思いますし、なによりエネイブルといい勝負になるかというと。。。年齢が理由になるなら、この週末のエクリプスSでその兆候が見られるのだろうと思っています。

国内なら有馬記念で観てみたいかな。昨年のリスグラシューがある分期待値が上がりがちではありますけどね。

バゴの再評価

TLではバゴの素晴らしさについての言葉が並んでいました。レース映像を探してみたのですが、自身が制した2004年の凱旋門賞以外のレースはなかなか見当たりませんね。解像度が十分な映像となるとなおさら。戦歴はJBIS-Searchでもジャパンカップのみですので、こちらで。クロノジェネシス同様、大崩れのない戦歴です。

www.horseracingnation.com

ストライドが伸び切らずその分ピッチ寄りのフォーム、というのは娘にも受け継がれているように思います。柔らか過ぎないという意味で「1/8サンデー」という言葉に思い至りましたが、これはもはや、まぁまぁあちこちで1/8ですものね。

ジャパンカップの映像が一番鮮明に確認できたわけですが、よりによってアルカセットハーツクライでレコード決着した馬場。もう少し適性に寄ったコンディションでの映像が観られるとよいのですけどね。

サートゥルナーリアは馬場とのアンマッチ

パドック映像、ぎっちりパンプアップした馬体とトモの繋ぎの柔らかさに、いやだなーアンマッチだろうなーと思っていました。これまで緩い馬場の経験はなかったでしょう。神戸新聞杯は直前で降雨がありましたが、当時の上がりは究極の32.8。今回よりはるかに時計のでやすいコンディションであっただろうと思われます。

返し馬で外ラチを通っていたのですが、多少こなせるのでは、と思ってしまったんですよね。正直、直前の降雨ですからどのくらい影響がでるか図り損ねていたのもあります。ただ、思った以上に未知の可能性に賭けてしまったなぁと。

乗り越えてほしいという願望が強く出てしまっての本命視。個人的には、乗り越えられなかったかーという感想に尽きるというところです。ホント、直前までクロノジェネシスだったんですよ。

サートゥルナーリアだけにフォーカスしている記事ではないのですが、完歩ピッチの計算から道悪適性を指標化するところまで、mahmoudさんのアプローチがとても興味深かったのでご紹介。

note.com

レッドジェニアルに蓋をされる負のスパイラル

単に馬場とのアンマッチだったというわけではなく、アンマッチであるが故にアドバンテージを取るだけのポジショニングができず、位置取りが後手後手に回るという負のスパイラルに陥ってしまったとみています。

最初のホームストレッチでレッドジェニアルに外を取られてから、4コーナー手前までずっと、この蓋が効いてしまいました。馬場が緩いインから出すチャンスが全くありませんでしたね。

苦手な馬場とポジション悪化、これが相互に作用して、望まない待機策になったと思われます。ラスト1ハロンはガス欠状態だったでしょう。ルメールが馬場と距離を敗因に挙げていましたが、納得するところです。

ロードカナロアが強く出たパンプアップと最適距離

今年のアーモンドアイもそうですが、あのパンプアップはよりロードカナロアが強く出ているのでしょう。それはつまり、距離適性が短めにシフトすることを意味するのだろうと、パドックを見ながら考えてはいました。今回は馬場が分かりやすい敗因として見えていますが、いまのサートゥルナーリアに最適な距離はもう少し短いのかもしれません。

以下は望田潤さんの回顧記事から、レース直後に同じことを思っていました。

「今のサートゥルが安田でアーモンドやグランアレグリアとやったら、どんな弾け方するんやろうなあ…」

blog.goo.ne.jp

ホープフルSを勝ち、クラシックを志向したことでマイル戦線に進路を向ける機会も機運もなかったわけですが、実はマイルで面白いのかもしれません。…追走スピードが速すぎてマイルが不向きという可能性はあり得ますけどね。

古い例えですし馬体はもちろん異なりますが、バブルガムフェローを思い出しました。タイキブリザードとの厩舎内ので使い分けから天皇賞ジャパンカップという中距離路線を取っていましたが、安田記念で観たかった1頭です。

キセキは控えて捲って2着

勝ちに等しい内容でした。先ほど貼った画像の通り、向こう正面では馬群から離しての追走。他馬と競ってしまう可能性を少しでも減らして、リズムを一定に保つ狙いがあったと思われます。そもそもスタートから逃げない戦略。馬場コンディションでスピードが減殺されたことが折り合いに奏功したかな。

mahmoudさんの記事ではかなり一定のリズムでレースを進めたことが解説されています。強いグリップを要する馬場ですから、さらにパワーを要する加減速を極力抑えた走りはエネルギー効率のよい走りと言えます。これができるから武豊は怖いですね。

一定の速いペースで走り続けられるという特徴を、川田は逃げて活かしました。武豊の採用した戦略、根底は同じですが、レースの見栄えはだいぶ異なりますね。どちらも鞍下の特徴を最大限引き出そうとした結果であると思っています。実際に実行できるところがトップジョッキーたる所以でしょう。

だからこそ、ここで結果を残したかったですね。府中のオーバースピード馬場も阪神の緩馬場も高いレベルでこなして、G1での2着は計4回。どこかでもうひとつ、獲れるかな。

なお、レース途中でかかってしまったのは、2018年日経賞と2019年阪神大賞典。どちらも休み明け緒戦なんですよね。秋のスタート、どうなるでしょうね。

ラッキーライラック、ブラストワンピースは展開と馬場が味方せず

ラッキーライラック、おそらく先行策は馬場を計算したものでしょう。切れる脚が使えない馬場コンディションの分、前々で運ぶイメージで臨んだと思われます。ただ、1コーナーまでのポジション争いでひとつ引く形に。さすがに突っ込み過ぎているという切り替えがあったか、自分から手綱を引いていました。

3コーナーですでに手が動いていましたので、4コーナーかけてクロノジェネシスと雁行できたのは地力を示した瞬間と言えるかもしれません。

一方のブラストワンピース、こちらは外々を回りすぎることを警戒したか、前走で先行できず後手を踏んだことのリベンジか、1コーナーまでにだいぶ深追いしていました。敗因と言ってもよさそうです。強気な戦略を取るイメージが強い鞍上ですが、これは強気というより強引が過ぎた印象があります。じゃあ、これ以外によい手があったかというと、確かに難しいですね。

馬体の完成にしたがって、レース適性のスイートスポット化が進んでしまっているようにも。もうひとつ狙えるG1って、どんな条件だろう。。。光明というべきなのは、しっかり先行ポジションが取れるだけ、スタートからダッシュできたという点でしょうか。

最後に

なかなか書き進めることができずに週末になってしまいました。レース直後の驚嘆そのままに書ければよいのですが、やっぱり落ち着いた自分なりの分析を残しておきたいなと思って平日まで持ち越すと駄目ですね。集中して書く時間がなかなか。。。

ただ、書こうと思って消したこともありまして。馬場とからめて世界に通用するしないという議論。長々と書いた文章があったのですが今回は採用しませんでした。「国際化」という言葉に関する面倒な議論をした際に、概ね書き散らしていたのを思い出しまして、くどいなぁなどとひとり反省をしておりました。

まだ議論を締めていないことも思い出しましたので、夏休みにとりかかるかな。ウィズコロナの時代の国際化、と書いた当時からだいぶ世界情勢が変わってきましたからね。香港との距離はどうなっていくのかも心配です。

一番最後に書いた記事のリンクを貼っておきますね。

keibascore.hatenablog.com

 

まずは週末のサンダウン競馬場、ディアドラの雄姿を応援したいと思います。日本史上とても稀有な戦歴を残す牝馬になっていますね。