more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第41回 フェブラリーS

なんとペプチドナイルが押し切ってしまいました。

 

前半3ハロン通過の33.9がターフビジョンに表示された際は、スタンドのどよめきはなかなかのものでした。逃げのドンフランキーが外枠、1400mベスト&周囲に同型馬が見当たりませんでしたから、ある程度マイペースで逃げられるのかなと思っていました。自分は1400mのつもりで逃げてプラス200mはどこまで粘れるか、という想定でした。

レース後池添がXでポストしていたように、それぞれの思惑からマークされるのも当然という心構えがあったようです。結果、単騎逃げにはなりませんでした。

 

レース前から汗だくのウィルソンテソーロ、ドンフランキーのひとつ内枠=スタート直後に押圧される苦しさ(馬体の大きさが違いましたからね)をそのままに逃げ馬の直後へ追走、最内枠のイグナイターも西村淳也がセオリー通り包まれないように強気の先行策。軽快に見える急流、という表現がしっくりきています。

 

隊列的にはこの直後かもうひとつ後ろの外、いわゆる好位の外で追走できる馬を本命にしようと考えていました。逃げ切りも追い込みも決まらない、タフ寄りという馬場読みも加味しての勝ちポジ予想。昨年のレモンポップと似たコースを勝ち馬が通ってくるというイメージでした。

自分の本命ドゥラエレーデは確かにその位置にいましたが、まさかそのドゥラエレーデと道中併走していたペプチドナイルが抜け出してくるとは。

 

前々走のベテルギウスSは外枠から1コーナーまでに好位の内を取って、4コーナーは先行馬の壁を見ながら虎視眈々、直線に向いて前の馬を捌いての器用な抜け出しでした。…ここからフェブラリーSを勝ち切るイメージまでは、うーん、遠かったですね。

 

藤岡佑介はケイアイノーテックのNHKマイルカップ以来のG1勝利。レース後の所作も話し方もかなり力の抜けた印象。よいメンタルで臨んでいたのでしょうね。重圧を背負ってそれを跳ね返すという雄々しさよりは、ロジカルに組み立てながら必要なポジションをとっていくという戦略家のイメージ。年齢と経験がこの組み立てを支えていたのでしょう。

「想定以上に楽に好位がとれた」。馬の充実ぶりを示す一言はその鞍上から。ラスト1ハロン12.9は少し脚があがっていることを示しているんですけどね、押し切れたこともまた馬の充実ぶりありきでしょう。人馬ともお見事でした。

 

公式レースラップ

12.0-10.8-11.1-11.7-12.3-12.5-12.4-12.9

比較の意味で昨年のレモンポップのレースラップも。
12.3-10.9-11.4-12.0-12.5-12.1-12.0-12.4

 

ドンフランキーがあまりプッシュせず馬なりでいった割に速いラップが計時されていますので、ひょっとすると風の影響も大きかったかもしれません(向こう正面で追い風、という可能性ですね)。

 

1、2着に備わっていたペース追走力

3、4コーナー通過順と着順がペースの厳しさを物語っていました。

3~7着の3、4コーナーの通過順はほぼ2桁(タガノビューティーとミックファイアが4コーナー9番手タイですが、実質2桁ということで)。一方で3、4コーナーを1桁で通過した=先行策を取った馬は軒並み着順を下げることに。

 

惨敗した馬の着順を落とした理由が様々ではあると思っているのですが、前傾ラップで待機勢が直線だけで着順を押し上げたというこのレースのアウトラインを捉える意味では程よいかなと目を付けてみました。

ポイントは1、2着の通過順でしょう。ガイアフォースは8-8、そしてペプチドナイルは4-4。いずれもこの前傾ラップを追走しつつ、直線で崩れていないんですよね。

週中から週末にかけて雨がなかった認識、乾燥していた馬場状態というのも追走にタフさを要求していたでしょう。今回の勝負の決め手は速いペースを追走する力にあったと理解しているところです。

 

ドゥラエレーデは鞍上の判断と中距離適性とがアンマッチ

トロールビデオで一目瞭然なのですが、スタートしてしばらくでドゥラエレーデを外に振るんですよね。ひとつ外枠には1番人気のオメガギネス。現地観戦で横から観ていても「ああやったな」とわかる程度にルメールは手綱を引いていました。

 

昨年のチャンピオンズカップでも内枠スタートから1コーナーまで外へ振って、クラウンプライドやグロリアムンディの可能性を消したのが記憶に新しく。そのまま3着になっていましたからね、本人にとってはある種の成功体験だった可能性があります。

スピードにのりはじめてすぐ、ムルザバエフが右をちらっとみているんですよね。パトロールビデオで再生速度を1/2にするとはっきり確認ができました(Racing Viewerは優秀ですね)。オメガギネスを1馬身以上交わしているならまだセーフティといえるでしょうが、ルメールが引かなければ大きなアクシデントになっていたかもしれません。

 

スタートから前に出て外枠の馬をけん制しつつ自分のポジションを確保する、という表現自体はまっとうに聞こえますが、ちょっとやり過ぎの印象でした。

そしてそのスタートダッシュの結果、馬の気持ちが入り過ぎたようにも見えています。ドンフランキーが先頭に立ってからしばらく引っかかったような形になってしまいました。中距離馬の追走にしてはスピードも力みも過剰だったでしょう。

 

…あの位置にいる馬、という見立ては合ってたんですけどね。ただ、スタートからスムーズにスタミナロスなく進められたとしてもペプチドナイルに肉薄できたかは何とも。マイルのペースが合わない可能性は高いようにも感じました。残念。

 

ペプチドナイルは諸要素がぴったり噛み合った印象

前傾ラップを4番手追走、そのまま直線に向いて目いっぱい粘りこむ。レース直後もそうですが、改めて振り返っても、もともと持っている力とペース、馬場、枠順などがぴたっと噛み合ったという印象があります。

フェブラリーSは勝ちましたが、前走東海Sのようにスローペースで前が捉え切れないような競馬になったらやっぱり似たような負け方になりそうなイメージ。フェブラリーSだから嵌ったというわけでもなく府中の1600mが得意というわけでもなく「今回のフェブラリーSの条件だから」勝ち切ったように思っているところです。1つ勝つだけでもすごいんですけどね。

次走はかしわ記念とのこと。G1馬としてローテーションの難しさに直面するのか、それを凌駕して幅のある適性を示すのか。次走がひとつの試金石になるように思っています。

 

気になった馬

初ダートのガイアフォースは見事に懸念を払しょくしました。芝スタートという点もよかったでしょう(ゲートですべる心配がないですものね)。戦略もパフォーマンスも文句なしと見ました。選択肢が増えたという主旨のコメントがありましたので、今後のローテーションが気になりますね。

オメガギネスは初めて詰まったローテーションになったことが敗因のひとつとして挙げられていましたが、重賞未勝利の1番人気、厳しいマークにあったことが響いた印象です。先ほどのドゥラエレーデの件でひとつポジションが下がってからは悪循環にはいってしまったかな。直線でも進路をカットされていました。

イグナイターは控えたかったですね。それにしては最内枠はどうしても包まれるリスクがありますから。あの位置で競馬したのは妥当な範囲と思っています。それが敗因でもあるでしょう。

ウィルソンテソーロは入れ込みがきつすぎました。2000mで逃げた経験が厳しかったのか、府中の観客の多さが気になったのか。あの状況下では控える経験にしたかった、というのが個人的な感想ですが、G1でかつ乗り替わり、そしてひとつ外に馬格の違う逃げ馬ドンフランキー。出していかざるを得ないシチュエーションだったのも敗因と思っています。

あとはドンフランキー。パドックでウィルソンテソーロとのサイズ差が凄かったですね、遠近感が若干おかしくなりそうでした。レースではもう少しマイペースでいければ違ったかな。仕上がりもよくパフォーマンスも見事でした。もちろん距離短縮で見直したいです。

 

フェブラリーSの立ち位置について

ウシュバテソーロとレモンポップ。2頭のダートチャンピオンはサウジカップからドバイへ転戦の予定。フェブラリーSの立ち位置が一部で話題になっていましたね。

実際、直後のレースレーティングではギリギリ112を超えたというところ。有力馬の参戦がなさすぎると格付けの問題が浮上する可能性はあります。

 

現地観戦後、悪友と二人で反省会をしていたのですが、まぁいろいろ無責任なアイデアについて語り合いました。2100mがいいのでは、昔の府中は1200mが取れたよね、いっそ2月でなくてもよいのでは、などなど。

賞金を考えるとどうしてもトップホースの遠征は避けられないでしょうし、日本競馬のプレゼンス向上という観点でも国内回帰が強すぎるのは別の問題がでてしまいます。

川崎記念が4月に移ったことで交流G1は、フェブラリーS川崎記念帝王賞というかなりゆったりした間隔になっていますから、これをすべてトップコンディションで使うというのも難しそうですよね。

 

NHKマイルカップヴィクトリアマイル安田記念もそうですが、スプリンターも中距離馬も参戦できる舞台としてマイルG1が機能してきた認識ですが、より多様性を考えたときにフェブラリーSがいまのままの価値、距離設定やスケジュールでよいのかは一考に値すると思っています。

 

個人的な願望ですが、フェブラリーSを名前を変えて春の開催に移動して、2100mのG1にリメイクしてほしいなと。そうすると川崎記念→(フェブラリーS)→帝王賞という春の中距離ダート3冠が成立するなーなどと妄想しております。

 

最後に

サウジカップ中継を観ながらこちらをまとめておりました。取り掛かりが遅いのはやむを得ない時期ですね。花粉症は昨年より軽い印象ですが鼻より喉がつらいときがあり、週後半の雨は助かっております。

いやーウシュバテソーロが差されるとは思いませんでしたね。そうした取りまとめはしっかり眠ってからにしましょうか。メイダンの大きなイベントが始まる前にはまとめておきたいと思います。