more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第84回 皐月賞

ジャスティンミラノが様々な未経験を一気に克服しました。

 

メイショウタバル浜中の逃げは1000m通過が57.5。内枠スタートから逃げる想定ではありましたが、ちょっと前がかり過ぎではという速いペースをつくっていました。

デビューから2戦2勝のいずれもスローペースからの上がり勝負を制してきたジャスティンミラノ。前走は共同通信杯を完勝していましたが、序盤からのハイペースで追走力が試されたときに同じ末脚を発揮できるのか、ここが疑われた面はあったでしょう。序盤でポジションをとれるのかという疑問も浮かんで不思議ない条件でもありました。

 

…あっさりでしたね。12.2-10.5-11.5という前半3ハロンを引っかからずに外の5番手、ジャンタルマンタルをマークするポジショニングができていました。G1の舞台で初めてのトライを難なく成功させるとか、もう天賦の才というべきでしょうね。

 

付け加えるなら、前2戦とも東京のワンターン(デビュー戦の2000mはちょっとだけ2コーナーがありますが、まぁほぼターンしていないということで)。今回は初の中山コース、初の右回り、そして初のツーターン。東京では33.4と32.6で上がれる高速馬場しか経験していませんから、初の荒れ馬場でもあったでしょう。3、4コーナーの手ごたえの悪さはそのあたりに起因すると、今振り返れば整理がつきます。

3コーナーの入口で戸崎が思いっきり肩ムチをいれているんですよね。推測するに、調教、レースを問わず、コーナリングの最中にぐんと加速して他馬を交わしていく経験をしてなかったことで馬が戸惑ったのではないかと。ジャスティンミラノからすると「え、コーナーでそんなに加速するの?」みたいな。初物尽くしならではの反応だったのではないかと思っているところです。そう考えるとちょっとかわいいですね。

 

リアルタイムの観戦では、あーペースが厳しかったか…、と残念な気持ち満載で観ておりましたよ。あの手ごたえから直線で伸び続けられるとは思いにくいですものね。

序盤のポジション争いでシンエンペラーを前にださず、メイショウタバルが作り出したハイペースを先行し、ジャンタルマンタルの勝負にいった早仕掛けを捉え、考え得る最短コースを通ってロスなく詰め寄ったコスモキュランダを抑えての勝利。クビ差という着差以上に強さを示した一戦だったと思います。世代トップを示したと言い換えてもよいと思っていますよ。

 

初の中山の坂を乗り越えて最後までスピードをキープできたあたりに、1週前追い切りの抜群さがつながるんですよね。戸崎のいう「康太の後押し」はこの鍛錬を指していると受け取っています。未完の素材を開花させる、そのために皆さんいい仕事してくれました。

これに賭けて勝ったわけですので、もううれしいやらさびしいやら興奮するやら感謝するやら、レース直後はテンションぐちゃぐちゃになっておりました。はい、ダービーもその先も楽しみです。

 

公式レースラップ

12.2-10.5-11.5-11.7-11.6-11.8-12.0-12.1-11.7-12.0

同日10Rのドゥラメンテカップ、セイウンプラチナのラップを参考までに。
7.1-11.9-11.9-11.7-12.2-12.8-12.5-12.5-12.1-11.7-11.6-11.5-11.9

 

掘れるながらも速い馬場コンディション

中山の芝、特に3、4コーナーでのキックバックが目立つ印象がありましたが、2カ月開催の最終週ですから1コーナー付近の掘れ方もなかなかと見えていました。掘れてしまうということは、スピードを出したり持続するのに馬自身のグリップする力が問われるということ。同じ11.5でも消耗しやすい&惰性がつきにくい状態といえるでしょう。

 

その馬場コンディションも踏まえてのセイウンプラチナの逃げ切りはもう芸術的に見えますね。ユタカさんは4ハロンの末脚で後続を完封していました。父ミッキーアイル、母父エリシオですからマイペースの逃げが似合うのもありますね。

 

メイショウタバルの逃げは紙一重

ハイペース演出と最下位入線ですから、明日なき暴走と揶揄されても仕方ない面はありそうですが、内枠にはいった時点でかなり難しい判断に迫られるだろうと思っていました。

ただでさえ引っかかりやすい性格。前々走つばき賞では同じ鞍上浜中でじんわり先頭に立っていました。その後捲られて3コーナーではいったん3番手に。2頭に捲られたので進路をカットされないよう少しポジションを主張したらグッと力んでしまっていました。

その気性で内枠スタートから2つ外枠のシリウスコルトにスタートダッシュで劣る展開。マイペースで進めるためのポジションを求めるために、無理をしてポジションを取らなければいけないという難しい判断を迫られました。

 

そこに浜中のモチベーションも加わっていたことでしょう。同期で仲のよかった藤岡康太のことがありますから期するものがあって不思議ないわけで。その思いと、鞍下の引っかかりやすい性格と、内枠スタートと。アクセルを踏みすぎてはいけない要素とアクセルを踏まなければいけない要素が交錯する状況だったと推察しています。

特殊と言える状況下でのハイペース演出。馬のテンションには問題が残ったと思いますが、今回は紙一重のなかで発生した例外的なパフォーマンスと捉えるのが程よいのではと思っています。これを繰り返すとしたら馬が暴走を覚えてしまった場合だけでしょうね。昨年のタッチウッドを思い出しました。

 

フレンチデピュティの肌にゴールドシップ。スタミナを存分に使える重馬場での激走。毎日杯はそう狙うべきでした。ダービーが重馬場になるようなら。ジャスティンミラノとはかなり異なるタイプですので一考に値するかもですね。

 

ジャンタルマンタルは勝負にいっての3着

絶好のスタートから伸び伸び走らせて初速を出しつつ、シリウスコルトよりひとつ早く手綱を収めてリラックスを促す。川田の序盤は完璧な運びに見えています。

道中の折り合いもよく、だからこそあのひとつ早く踏んでいく勝負のかけ方になったのでしょう。共同通信杯ではジャスティンミラノの後ろから運んで、同じ32.6で上がって差を詰められずの2着。これにリベンジするとしたら、セーフティリードで粘りこむという別の作戦を志向するのはとても妥当と思います。

 

共同通信杯のレースラップ、ラスト3ハロンは11.4-10.9-10.8。ジャスティンミラノのスピードの持続力に唯一抵抗できたわけですから、この力をどこで活かすか、そりゃあリーディングジョッキーは対策を練ってくるでしょう。

 

田原成貴は「あくまで個人の感想」「ひとによって異なる」「ポリシーの差」といった前置きをしつつ、川田の仕掛けがちょっとだけ早かったという表現をしています。YouTube東スポチャンネルですね。ただ説明を聞くと、仕掛けどころをちょっと遅らせていればという話と、一気に追い出さずもう少しソフトに加速を促していればという話が混在しているように受け取れました。

どちらかというと自分は、後者のソフトな追い出しがあればもっと接戦だったかもと感じています。でもこのあたりは何とも言えないですね。ジャンタルに反応を促すにはあのアクションの強さが必要だったかもしれないですし。川田将雅だったからあの反応とあの加速と失速のカーブだったというべきかな。それで納得させるだけのジョッキーだと思いますしね。

 

次走はNHKマイルカップ、とても妥当な選択になりました。アスコリピチェーノ(回復次第でルメール?)やボンドガールとの対決はかなり楽しみです。近年になくレーティングもレースレベルもあがりそうですね。

 

レガレイラは後方から上がり最速で6着

76年ぶりの牝馬皐月賞制覇、果たすことはできませんでした。スタートでの出負けは若干というもの。ただしひとつ外は先行策をとるであろうホウオウプロサンゲですので、体勢を整えながらホウオウに被されている間に、次々と外枠の馬が前方の進路にはいってきました。

 

3コーナーまではウォーターリヒトに外の進路を切られる展開。1番人気はやはりマークされますよね。どこから進出するのか、その進路をつくれないまま勝負どころを迎えてしまいました。

3、4コーナー中間ではアーバンシックの加速に合わせてアクセルを踏んだところ、アーバンシックが少し加速を控えたため今度は手綱を引かなければいけなくなる場面が。アーバンシック横山武史は、すぐ外にいるサンライズアースに被せられないよう外に張る動きを作った結果の加速だったのですが、それにつられて加速する格好になってしまいました。

北村宏司がダメというよりは、前任ルメールの進路取りと先読みする力が一枚上手と考えるべきでしょう。また、ホープフルSは4コーナーでもっと馬群がばらける展開。さらに4コーナー出口でルメールも一度前が詰まっていますから、単なるジョッキーの比較だけではないと理解をしています。

 

馬場コンディションも大きかったでしょう。1:57.1のレコードと2:00.2のレースタイムでは求められる追走力が異なります。その点が未知という意味では勝ち馬も同様でしたが、スタートに不安を抱える中で信頼感はそこまで上げられないと感じていました。

 

レース後トレーナーが調教が間違っていたとコメントしていましたが、具体的にはどこを指しているのかがはっきりせず。このあたりご本人が発したコメントをそのまま受け取って流すだけでは…、と各マスコミの取材力を嘆きつつ、自分なりの推測です。

追い切り後のインタビューで木村師は、レガレイラを指して「孤独に強い」「マイペース」「1人でいられる」「人間との距離が若干遠い」「その辺はいいところでもわるいところでもある」といったコメントを残しています。またホープフルSのゲートで不可抗力な事態があったことも示唆しているのですが、これははっきりとした表現になっておらず。

このあたりから、スタートが存分に出なかったこと=人馬のコンタクトがじゅうぶんでなかったことを大きな敗因と捉え、その原因はふだんの調教にあると判断して調教が間違っていたというコメントに至ったという推察は成り立ちそうです。単に敗戦の責任を被ったというわけではないように感じます。

ただ、それが直接的な唯一の敗因かと言われると…。ジョッキーの運び方やレース展開も敗因を構成する要素ですので、調教だけがすべてではないでしょう。スタートがでたからといってジャスティンミラノの直後につけられるタイプでもないでしょうしね。

 

現時点ではオークスとダービーの両にらみのようですが、レースで注文がつくことは事実。1コーナーまでのポジショニングが強く求められるダービーですから、参戦にあたっては少し雲行きが怪しくなってきていても不思議はないように思っています。

 

うーん、こういう目標が定まり切らない姿勢もまた、陣営が一丸となっていない様と映るんですよね。今回予想では軽視したわけなのですが、直前まで鞍上北村宏司と確定できなかった点にかなり首をかしげた次第でして。主戦はケガ、そして北村は1週前追い切りに乗っているにもかかわらず、ジョッキーが判明したのが出走馬確定の段階という。かなり稀な遅いタイミングですよね。これですとオーナーシップと現場に乖離があったと邪推してしまうわけです。事実のほどはわかりませんのであくまで邪推ですが、ひとの取り巻き方が馬の素質の開花を妨げないようお願いしたいところです。

 

最後に

もうすでに開催も変わり青葉賞も終わっていまして、シュガークンの素質がダービーに間に合うこととなったのは喜ばしいなと思いながら、この稿をまとめています。個人的にはウインマクシマムがダービーに届かなかった残念さも同時に覚えてしまったわけなのですけどね。

 

この土曜は朝いちで府中まで。競馬博物館で開催し始めた歴代年度代表馬の展示を観てきました。まる1日観戦ですと家のこともろもろができなくなってしまいますので午前中で切り上げたのですが、フリーパスの日ということもあり博物館も盛況でした。

 

展示は1Fのスペースではすべての馬が収まらず、2001年以降は2Fへ続くという展示量。やはり歴史は積みあがっていますよね。

観ていて気が付いたのはウオッカ以降ずっと、父が日本で走った(日本で生産、登録されて競走生活を送った)馬が年度代表馬になっていること。

いわゆる御三家(サンデーサイレンスブライアンズタイムトニービン)の輸入種牡馬隆盛の時代を経て、その孫の世代からは日本産の父系で年度代表馬が占められていく様は何とも象徴的でした。母系は様々ですけどね。

生産も育成も、トレーニングや飼養管理も、ジョッキーの質や興行のノウハウに至るまで、日本競馬のクオリティはずっと高まってきたんだなぁと改めて。いい時代にファンを続けてきたものです。

 

天皇賞春はまだまだ未検討。いまのところテーオーロイヤル、ドゥレッツァ、ワープスピード、サリエラ、サヴォーナあたりでまとめようと思っていますが、最内枠とはいえサリエラが3200mを勝ち切れるのかなどなど、もう少し解像度を上げて考えないといけませんね。明日は気温がグッと上がるようなので、それも考慮したいと思っています。