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1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

イクイノックス、ジャパンカップが世界一の評価に ~LONGINES World's Best Racehorse Rankings 2023

ようやく1/23にグリーンチャンネルで放送した今年最初の「ALL IN LINE」を観ることができました。速報はXのTLでみていたんですけどね、ゆっくり解説を確認いたしました。

イクイノックスは135、エルコンドルパサーを超えて日本競馬史上最高の評価を獲得し、かつ2023年を通じて世界最高の評価を得た馬となりました。すごいですね。

 

JRAの発表はこちら。

www.jra.go.jp

ロンジンワールドベストレースホースランキング(LWBRR)、JRAのサイトでは2023年の年間ランキングはPDFで公開されています。

www.jra.go.jp

こちらはIFHA(国際競馬統括機関連盟)サイトでの発表。PDFではなく一覧をコピペできますね。

https://www.ifhaonline.org/resources/WTRRankings/LWBRR.asp?batch=116

 

有馬記念の結果を受けてジャパンカップが上方修正

135の最高レーティングを獲得するまでの経緯は先の「ALL IN LINE」で確認することができました。概要まとめてみます。

 

1. ジャパンカップの暫定値
イクイノックス133、リバティアイランド120、スターズオンアース118

2. 12月に香港で行われたハンデキャッパーの会議(国際ハンデキャッパー会議のことと思います)でジャパンカップの数値が協議
イクイノックス134、リバティアイランド120、スターズオンアース118

3. 有馬記念の評価を受けてジャパンカップ上位馬が上方修正
イクイノックス134、リバティアイランド121、スターズオンアース119


12月の香港の会議では日本からイクイノックスに134を提案、満場一致で134に決定したとのこと。エルコンドルパサーと同等の評価をしてよいのではないかというのが日本の提案でしたので、それが全会一致とは当時を知るファンからするとかなり胸熱な展開でした。

同時にリバティアイランドはジェンティルドンナ勝利時の122より一つ下の121で提案、こちらはオークスと同等の120で据え置きという結論になったようです。

 

ポイントはそのあとの有馬記念の評価ですね。ジャパンカップの3、4、5着で決まったことでジャパンカップの評価が低かったのでは?という提案が日本以外の(イギリス、香港とのこと)ハンデキャッパーからなされたとのこと。

 

有馬記念のドウデュースは124、スターズオンアースは119、タイトルホルダーは121。

ジャパンカップの1~3着はこの有馬記念の評価を受けて上方修正となり、イクイノックスは135で決したようです。

 

これまで12月の香港の会議で決まったレーティングを見直すことはあまりなかったそうで、それもまたイクイノックスを語り継ぐうえでのエピソードになるのでしょうね。

何よりドウデュースがライバルの評価をアシストするという、こちらもすてきな流れになりました。個人的には有馬記念のドウデュースにすっかりやられているところですので、各国のハンデキャッパーに1杯おごりたいところです。

 

イクイノックスはライバルの評価も引き上げる

3月のドバイシーマクラシックの129、これが年間を通じた世界のトップホースの指標になったと感じていましたが、先月発売の優駿2月号にもその点を表現した一節を見つけました。軍土門さんの文章から引用します。

そしてこのあと世界の競馬は、まるでそのイクイノックスへの高い評価の裏付けを取ろうとでもしているかのように動いていくことになる

この感覚は自分も同様で、シーマクラシックで負かした馬が活躍するほどイクイノックスの評価が高まっている感触をもっていました。特に海外主要サイトのコラムのトーンで色濃かった印象ですね。

 

そして秋、イクイノックス自身がレーティングを引き上げることで、その後の各馬の活躍が再評価されることになりました。象徴的なのはドバイシーマクラシック。1、2、3着のレーティングは年末に上方修正されていました。曰く、イクイノックス129→131、ウエストオーバー120→121、ザグレイ116→117。

…何でしょう、ライバルとともに成長していくヒーローみたいでこそばゆい感じがしますね。

 

距離区分Iの天皇賞秋でも127→128へ上方修正、アーモンドアイの124(セックスアロウワンスで実質128)と同等の評価、また今年のモスターダフを下回らないという評価に落ち着いたとのこと。IFHAのサイトではわかりやすく併記されていますが、イクイノックスは「E」でも「I」でも世界トップになったわけですね。

 

日本馬全般の評価も上昇

LWBRRではレーティング115以上の馬を対象としていますが、その内訳もまたすばらしい結果でした。

 

2023年に全世界でレーティング115以上を獲得した馬は総計288頭、2022年からプラスマイナスゼロとのことでした(2022年も288頭)。

そのうち日本馬は48→56頭と8頭増加。国別の内訳では最上位のアメリカで57頭、イギリス52頭、オーストラリア44頭でしたので、あと1頭で日本は世界一だったわけです。アメリカもイギリスも前年比では減少していますし、前年比で大幅にプラスにしているのは日本のみでした。

 

端的にいうと、イクイノックスだけじゃない、ということなんですよね。日本馬の層の厚さがより顕著な数値で表れる結果となりました。

 

「層」で評価されるに至った要因

これはひとえに国際グレードをもつ諸外国のレースへ、日本馬が積極的に参加し続けたことが大きいと思います。共通の物差しで測ることができる場へ自ら赴き続けたこと。1年2年ではない長期的かつ継続的なチャレンジと成果が、日本馬強し、という評価を得るに至ったものと理解しています。

 

特に「欧」と「米」から遠征がある中東でのビッグレース、これまではドバイミーティング、近年はサウジカップディが存在感を増しています。これらのレースで日欧米の馬が直接対戦をする機会が増えました。それは異なる地域の馬の能力を測りやすくなった、比較しやすくなったということでしょう。

こうした物差しとなり得る舞台で実績を残すことは、重層的に日本馬の評価を上昇させる要因になったでしょうね。

 

アメリカのチャンピオン・シガーの誘致から始まったドバイのビッグレースが、いまは日本馬の評価向上と日本初の世界チャンピオンを送り出すのに一役買っているというのはとても不思議な展開に思えます。

しかしすごいなぁ、エルコンドルパサーの遠征はこういった日本馬の「層」がなかった時代のチャレンジでしたからね。まさに隔世の感があります。これらをずっとリアルタイムで追いかけ続けられたのは得難い体験ですねー。いい時期にファンを続けられたものです。

 

最後に

こうした日本の競馬の活躍はまた新しい段階へのきっかけになるように思っています。具体的には日本血統のプレミア化と国際的な売買の促進、ではないかと。というよりそうした動きにつながらないと日本競馬の経済的な循環が国内に閉じたままになる(=広がらない)でしょうから。

 

国内のセリがより海外にプロモートされて、お客さまを呼べるセリになること。ロードカナロアオルフェーヴルは健在ですし、そこにコントレイルやイクイノックスが加わりますよね。ソフトは整っているのでしょう、あとは適切なプロモーションとファシリテーション、でしょうか。

いまいま経済的に活況なのはサウジアラビア、ドバイ、カタールなどの中東、オーストラリアあたり。日本馬の購買がこうした国との間で活発化すると日本競馬の見え方はまた変わってくるように思います。

 

日本のトップホースが海外遠征をすると日本の競馬が空洞化する、という議論をよく目にしますが、昔からその種の着眼には疑問をもってみていました。結果を残すことはこうした往来が促進されると思っていたんですよね。…とはいえ、いざ本当に結果を残すとやっぱり驚きを覚えてしまいます。

 

イクイノックスのこの評価は後年、歴史的なターニングポイントと理解されるかもしれません。それもこれも、引き続き日本馬の実績が国際的に測られやすくまた「層」であることだと思います。

 

すでに2024年も、カタールのエミーズトロフィーやサウジカップディ、ドバイミーティングへの参戦が次々と報じられています。イクイノックスに評価を引っ張られた馬たちも含まれていますし、楽しみは増しますね。