more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第43回 ジャパンカップ

イクイノックス、見事に有終の美を飾りました。

 

直線入口付近で現地観戦していましたが、早々にルメールが追撃態勢にはいっているのがわかりました。同じパンサラッサの逃げだった昨年の天皇賞秋では、もっと直線で形をつくってからの追い出しでしたので、その違いを確認しながら見守っていました。

 

今回のほうが400m距離が長くパンサラッサには不向き。それがありつつも早めの追撃を開始したのは、イクイノックスの成長分と、より100%のパフォーマンスをみせたい意思と、前を捉えそこなわないようにというセーフティな意識と、このあたりが綯い交ぜになっているような気がしています。

 

スタートから1コーナーまでの攻防。出していってタイトルホルダーの直後、リバティアイランドより前という選択に、ルメールの、レースを背負う覚悟が透けて見えました。

ベストポジションだったといえるのは勝利という結果があってこそ、人馬がそのプレッシャーをはねのけるパフォーマンスを見せたからであって、リバティアイランドが直後でマークしているのを平然と突き放す所作は、本当にどうかしていますいい意味で。

 

ルメールが背負うからこそ、直後でマークするリバティアイランドと川田に可能性が見いだせると思っていました。スターズオンアースの外からのプレッシャーと戦っているなと思って観ていましたが、4コーナー付近では「それどころではない(イクイノックスを追撃しなければ負ける)」という状況になっていたようです。

 

レース後スタンド前に戻ってきての涙、現地では少し不思議に思いつつもプレッシャーからの解放かなと見て取っていました。それもゼロではないのでしょうが、その後のインタビューの表情などから、日本で通年免許を取得し長く生活をし信頼を積み重ねて、世界最強と評価される馬で最高のパフォーマンスができた、というジョッキー人生の達成感も加味されての感涙だったのかなと推察しているところです。

 

アーモンドアイ然り、コントレイル然り、近年のジャパンカップはチャンピオンのひとつのピリオドを見る場面が多いように感じますね。頂点としてのジャパンカップの価値がより高まっていることの証左といえるのかもしれません。

レース後の引退発表から遡ると、確定こそしていないものの、陣営は「これが実質ラスト」と心に秘めながら臨んでいたように思います。その思いに応える最高のパフォーマンスを見せて、2023年の世界最強馬は現役に幕引きとなりました。

 

公式レースラップ

12.7-11.3-11.5-11.0-11.1-11.5-12.0-12.1-12.1-12.4-12.4-11.7

 

比較の意味で昨年の天皇賞秋のラップも。

12.6-10.9-11.2-11.3-11.4-11.6-11.8-11.6-12.4-12.7

 

イクイノックスとパンサラッサのそれぞれの上がり、こちらも順に並べておきましょう。

23年ジャパンカップ:33.5、38.7
22年天皇賞秋:32.7、36.8

 

日曜はほんの気持ち前日より時計がかかる馬場コンディションに

土曜のメイン、キャピタルSはドーブネの逃げ切り。1番人気、ビュイックプレサージュリフトが前目のポジションから追撃していましたが、上がりは同じ33.2。11.2-10.9-11.1で逃げ切れてしまう速い馬場でした。

 

日曜もコンディションはよいままでしたが、ジャパンカップ直前のウェルカムS、ロードデルレイは終始6、7番手、馬群の外目から33.5の差し脚で勝利。イン寄りの馬場を通った先行馬は粘り切れていませんでした。もちろん厳密な比較ではないわけですが、前かつ内という極端なコンディションではなくなっていたようです。

 

パンサラッサ、有終の逃げ

やっぱり速かったですね。向こう正面にはいってすぐに手前をかえているのですが、鞍上吉田豊いわく、ここでまた加速してしまったとのこと。4ハロン目に11.0の加速ラップがあるのはこれを裏付ける数字でしょう。

始めの3ハロンを過ぎてからの次の3ハロン(600m-1200m)をパンサラッサは33.6で通過したことになります。…イクイノックスの上がりが33.5ですよ。これだけでもパンサラッサが前半かなりのペースを刻んでいたことがわかります。いい意味でどうかしています(この表現は2度目)。

 

前半突っ込んだペースで後続との距離をとって逃げると、後続馬群はその逃げ馬を追いかけ始めるタイミングをはかることが難しくなります。早めに追いかけてしまうと追いかけた側がバテてしまう可能性がありますからね。

パンサラッサの逃げはレース後半の自身の粘り込みを織り込んだ、極端な前傾ラップを作り出して後続を幻惑するという特徴。そうですね、「逃げて差す」サイレンススズカのそれとはキャラがちょっと違いますね。

 

そうすると、前傾ラップをつくる分、距離が長くなると粘りこむ区間が相応に長くなってしまいます。距離延長が嫌われていた理由はここでしょうし、矢作師がダートか距離延長かで悩ましい2択を抱えたのも(すんなりジャパンカップではなかったのも)このあたりを捉えたうえでのことだと理解しています。

 

でも4コーナーの画は見ごたえありますよね。ラップタイムで測れる分、ファン側もジョッキーもおおよその計算はつけられるわけですが、それでもヤバいかも…!と一瞬不安にはさせてくれます。

昨年の中山記念ドバイターフの連勝後は、とても野心的なレース選択を続けてきたという認識。さらに右前の繋靭帯炎からの復帰でしたからね。このジャパンカップをラストランにすることは戦前から決めていたとのこと。稀有な役者がいなくなってしまいますね。楽しませてくれました。おつかれさまでした。

 

タイトルホルダーの深追いはなし

戦前、展開のキーになるのは2番手になるであろうタイトルホルダーだと思っていました。

早めのロングスパートで後続のスタミナを削っていくスタイルで天皇賞春と宝塚記念を圧倒したわけですので、コンディションが相当上がってきた場合、かなり積極的な追走になるかもと警戒していたわけです。

 

当日のパドック、現場は混雑していましたから現地のモニターで確認したわけですが、昨春のあの威圧感たっぷりの仕上がりには至っていないと映りました。次走有馬記念が予定されていること、ダービー以来の府中コースであること、このあたりを踏まえて、今回ペースを深追いすることはないだろうという読みにまとまりました。

そこが唯一タイトルホルダー勝利の可能性だと思っていましたので、これで評価を下げました(3着の可能性は増したと思って3頭目で買う決心になりましたね。)

 

個別ラップが出ていませんので正確な数値はわかりませんが、おおむね60秒で1000mを通過していることが映像からは見て取れます。2018年、アーモンドアイの世界レコードの際、逃げたキセキの1000m通過は59.9。前半のリズムは近しいようですね。

 

イクイノックス、スピードもスタミナも

600mを33.5で走破した場合、時速64.5kmにちょっと足りないくらいのスピードと単純計算できます(おおよその目安として、33.7で時速64km、32.7で時速65kmを超えてきます)。単純計算とはいえちょっとこわいですので、以下のページを頼って計算してみました。

k3su.xyz

 

先の世界レコードのアーモンドアイ、自身の上がりは34.1。イクイノックスはそれより気持ち時計がかかるであろう馬場コンディションで33.5で上がってきました。

アーモンドアイは3歳時のしなやかさとセックスアローワンス(53kg)を利してのレコードだったと理解しています。対するイクイノックス、走破タイムで及ばなかったにせよ、トップスピードの持続力は十二分に示してくれたのではないでしょうか。レース全体でのスピードの持続という点では前走の天皇賞秋のほうがその力を示しているでしょう。

 

netkeibaの川田のコラム、ジャパンカップ回顧が前後編に分けてアップされています。

news.netkeiba.com

どちらも有料記事ですので読みたくなるような引用にしようかな笑。イクイノックスが「日本競馬史上、最強の馬」であると語っている件の一部です。

簡単にポジションを取り、とてもリズムよく折り合い、誰よりもトップスピードが高く、さらにそれを誰よりも維持できる

昔から「テンよし中より終いよし」という言葉がありますが、数値分析があまり普及していない時代においても理想とするイメージは通底するものがあるのでしょうね。

アーモンドアイを引き合いに分析をすすめましたが、特にここ2戦はもう歴代の名馬と比較するレベルといってよいのでしょう。一見したらわかるくらい凄いレースでしたから、その印象を信じればよかっただけかもしれませんね。

 

私見「日本近代競馬の結晶」

この言葉はディープインパクト菊花賞、三冠達成の瞬間にカンテレの実況(馬場アナ)で語られたもの。ディープインパクトにむけた言葉なんですよね。

 

でも自分は、こと象徴的なレースにこの言葉をあてはめるのであれば、2016年キタサンブラックジャパンカップが最もふさわしいと思ってきました。

馬のパフォーマンスはもちろん、ひとの戦略面も含めて、「日本近代競馬の結晶」はこのレースだと確信してきたのですが、その息子がその確信を崩してくれましたね。なにか今年のジャパンカップの方が日本の競馬の特性をよく表しているように思い始めています。

どちらも川田の表現が当てはまるであろうというのも味わい深く思います。もう1つに絞らずに語っていこうかな笑

 

リバティアイランドは全力をだしての2着敗戦

理想的なスタートから1コーナーまでにイクイノックスの後ろを取るミッション、川田が見事に完遂いたしました。ディープボンドとの取り合いから接触する場面もありましたが、勝負の機微という表現でよいように思っています。

…機微というほど隠れたものはないかな。東京2400の1コーナーまではどうしても勝負所になりますね、といったほうがしっくりきそうです。

 

先の記述の通りいろいろ背負うであろうイクイノックス、対して秋華賞から上積みが見込め疲労も少ないであろうリバティアイランド。セックスアローワンスの質問に鞍上は規則ですから的そっけないコメントで返していましたが、それもまた大きい要因でした。

これらの状況とポテンシャルを信じての本命でした。まぁきれいに打ち返されてしまいましたね。

 

決してリバティを過大評価したとも思えず、もうこれはイクイノックスを褒めるしか言葉が見当たらなかった。リバティ自身もびっくりしていたかもしれません。全力で追いかけても追いつけない馬にはじめて出会ったのでしょうから。

 

詳細な分析は、以下、金色のマスクマン(仮)のジャパンカップ回顧に頼ろうと思います。2強のせめぎあいや他馬の動向など、分析の大半が同意するところばかりでした。たまに読んでいる分いろいろ取り込んでレースを観ている面も出てきているかもですね。とても有意義な分析だと思いますので是非。

note.com

 

スターズオンアースはビュイックの戦略で3着

ウェルカムSでサスツルギに乗り、後方待機から前を捕まえきれなかったビュイック。前日のプレサージュリフトと合わせて、これで前々につける判断になるのではと期待感があがっていました。

外枠をひいたスターズオンアースでしたが、決して先行できない並びではありませんでした。あとは鞍上がどこまで前々のポジションをもとめるか。そこに賭けようと思い、2強の次に評価をしていました。

 

いやーいってくれましたねーさすがビュイック。外枠から先行してそのままリバティの横へぴったりつけ、外からプレッシャーをかけ続けていました。そのあたりも上記の回顧記事が詳しいです。

 

天皇賞をざ石で回避してからという不安点はありましたが、軽度だったのでしょう、むしろこの1カ月でフレッシュにひとまわり仕上げる調整ができたように見えていました。

勝利には手が届きませんでしたが、改めてその能力を示してくれました。大阪杯ヴィクトリアマイルと本命にし続けた(まぁ多分に期待感が先行していた面は否めませんが)、その見立ての答え合わせができたように思っています。

 

次走は有馬記念で確定、鞍上がルメールになるとのこと。さすがに枠順次第でしょうね。でも桜花賞の差し脚を考えると展開ひとつで?という気もしています。

 

ドウデュースは力を出しての4着

天皇賞でかかってしまったことから、思い切った後方待機策にする?とも読んでいましたが、折り合いを重視しつつもポジションをもとめるというスタートから1コーナーの動きになりました。

結果、リバティの後ろですからね。このあたりは枠順がものをいった場面だと思います。

勝った馬の上がりが33.5ですから、これを差し切るのは相当困難なチャレンジでした。自身の力は十分示せたのではないかと思っています。

 

それよりはやはりあのパンプアップしたカラダ。マイラーという言葉が飛び交うようになっていますが、なんといいますか朝日杯勝ち馬に向けてマイラーとはとても妥当な表現に思えておりまして。血統もマイル向きであることを示していますしね。

ただ、今回折り合いを取り返したことで、次走有馬記念が面白くなってきたように思います。あとは主戦ジョッキーが戻ってくるのか。楽しみに待ちたいと思います。

 

最後に

週中にイクイノックス引退の報。やっぱりそうかという思いが真っ先に浮かびましたが、やはり残念ではありますね。ラストランを現地観戦できたことを自慢話にしましょうか。

イクイノックスだけで一本投稿したいと思っているところですが、早くて年末年始になりそうですね。時間をみつけて脳内にふよふよ漂っているイメージを読める言葉にまとめたいと思っているところです。

 

さて、もうチャンピオンズカップ当日。レモンポップが8枠にはいって豪快に仰け反っているところ。中京ダート1800は、ね。直線外にだしたとしても3、4コーナーでインをキープしていないと厳しいですし、そのためには1、2コーナーでインを取れていないと厳しいですし、そのためには内枠…という理屈が色濃く出るコースと理解しています。

ぱっと見、メイクアリープ、ジオグリフ、テーオーケインズ、クラウンプライドが気になっていますが、分析はこれから。セラフィックコールが人気をしていますが、あのエンジンのかかりの遅さとミルコの組み合わせはコースやペースとアンマッチでは、と思っているところです。

ムルザバエフがドゥラエレーデをスタートからどこまでプッシュするか、あたりが展開のキーになるような気がしています。いずれにしても当日の砂の重さをみながら組み立てたいですね。