more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第68回 有馬記念

ドウデュース、秋3戦目で決めてくれました。さすが武豊、ですね。

 

後方待機から3コーナーで進出、一気に捲り上げて4コーナーではイン2番手のスターズオンアースに追いつきました。明らかに他馬と異なる加速力、すごかったですねぇ。有馬記念はこうして外を捲り上げて直線入口で先行馬に襲い掛かるのが勝ちパターンという認識です。

スターズオンアースも逃げたタイトルホルダーも地力がある分、直線でスパッと交わす形にはなりませんでしたが、右手前のままスターズオンアースと並走し、アタマ、クビと抜け出しながらタイトルホルダーを捉えてのゴールイン。

逃げ馬と2番手の馬を差し切れたのはドウデュースだけですので、力の違いを見せたといっていいのでしょう。

 

あのピッチ走法と前進気勢ですので、3歳春の時点でドウデュースの武器は圧倒的な加速力、一気にトップスピードに引き上げていく力にあると理解していました。もちろんその後のスピードの持続力も兼ね備えているわけですが、トップスピードの持続力なら先日引退した世界最強馬に分があるのでしょう。

昨年のダービーは完成度とレースの質にストロングポイントがよりフィットしたという点でドウデュースに軍配が上がった、という理解の仕方ですね。

 

中山の3、4コーナーを一気に進出できる加速力を信じての本命。序盤のポジショニングを捨てて3、4コーナーをストレスフリーにぶん回す戦略を実行した武豊も含めて、この人馬に賭けてよかった。気持ちよく年が越せそうです。

 

公式レースラップ

7.0-11.3-11.9-12.0-12.0-12.2-12.5-11.9-12.2-12.0-12.0-11.7-12.2

 

スピードは出るが3、4コーナーのインが掘れる馬場コンディション

あまり言及しているメディアはありませんでしたが、特に4コーナーのインから4頭目くらいまでがかなり掘れる状態になっていました。土日の芝レース、上級条件だとわかりやすいと思いますが、後方にバンバン芝の塊が飛んでいるのがレース映像で確認できます。

ちょうど加速しながら回ってくる区間ですので、各馬が強くグリップし一番路面にテンションがかかる場所。開催4週目ですものね。スピードは維持できるもののその維持にパワーを要する分、ラストの粘りに影響するのではという仮説をもって予想に臨みました。

 

映像で観察した限り、ラチ沿いぴったりはその影響が少なめ、あとは外を回すのがこの掘れる馬場を回避できるコース取りだったでしょう。

有馬記念では2、3、5着はインから、4着は馬群の外から。上位入線馬はこの掘れるエリアをしっかり回避するコース取りだった認識。

そして勝ったドウデュースは捲った区間だけ掘れるインを回避して直線入口でインに切れ込むという、華麗にリスク回避したコース取りになっていたという認識です。…たぶんユタカさんはここまで計算していたんじゃないかなと。贔屓の引き倒しと言われればそうですね笑

 

スタートダッシュの巧拙が勝敗に影響

中山2500mで外枠不利というのは、全馬が五分のスタートダッシュを決めている前提では非常に有効な認識と思いますが、スタートが決められない馬にとっては枠を問わず不利に働くと言えそうです。

 

タイトルホルダーはもちろんスタートダッシュを決めてくるタイプですし、スターズオンアースは前走のビュイックがいい影響を残したことであのポジションを取り切れたと思います。またハーパーも秋2走の先行経験が効いたスタートダッシュに見えました。

一方、ジャスティンパレスはダッシュを求めない前走そのまま、二の脚がつかずにポジションを下げた模様。ソールオリエンスもこれまでと変わらずダッシュの効かない状態。この2頭は序盤で有効なポジションを取れなかった認識です。

 

もちろん馬の能力差は加味しなければいけませんが、2、3着は逃げと2番手。序盤のポジション取り=スタートダッシュの巧拙が着順に大きく影響したと思っています。

 

ドウデュースだけはちょっと違う認識。前任の戸崎がかかり気味になることを武豊に申し送っていたようです。それを踏まえての待機策という側面もあったと思われます。勝ち馬だけはこれまでの経緯からスタートダッシュの巧拙とは違うところで戦略を組み立てていた認識に至っています。

 

タイトルホルダーの単騎逃げ

アイアンバローズは逃げ争いに加われないと思っていました。前走ステイヤーズS、コーナー通過順は1-1-1-1ですが、スタートしてからファーストコーナーまではアフリカンゴールドにハナを取られての2番手。それもかなりゆったりと自分のペースで加速した結果、という見え方でした。このスタートダッシュでタイトルホルダーのスピードについていけるかというと。。。

というわけで、単騎逃げは予想しつつもスタートからスタンド前までにどのくらいスタミナをロスするかがポイントだと推察していました。キーホースはスターズオンアースでしたね。

 

一方で、全盛期の出来にはないことをパドック映像で見て取っていました。マイナス評価ではあるのですが、どちらかというと春の天皇賞競走中止からこちら、よく心身を立て直してきたという賛辞のほうが自分の評価としては強かったです。

枠順抽選会、横山和生は枠順よりタイトルホルダーのリズムで運ぶことをコメントの中心においていました。菊花賞然り、宝塚記念然り、自分のペースで運んだ時に無類の強さを発揮してきた馬ですからね。ラストランの勝負の仕方は相手云々ではなかっただろうと思われます。

 

スターズオンアースが2番手でじっとしたことで、タイトルホルダーのマイペースは叶いました。恵まれたというよりは自ら引き寄せたマイペース、タイトルホルダーらしかったと評するほうが賢明でしょう。鞍上のコメントを借りて「かっこよかった」が一番似合いますね。

 

結果は3着でしたが、全盛期だったら勝っていただろう、という余韻を残すことにはなりました。これは種牡馬入りにあたって前向きな評価を得やすいように感じています。陣営の仕上げも和生の乗り方も、チャンピオンの矜持を守ったと言えるでしょう。見事なラストランでした。

 

スターズオンアースはルメールが決め打ちでスタートダッシュ

当日の3、4コーナーの掘れる馬場をみて、後ろからになるかもなと勘繰り始めていたのですが、恐るべきはクリストフですね。最短の手数で大外からインコースを取ってしまいました。これができるジョッキーが稀有であることを認識しておかなければいけません。日本を熟知したルメールならでは、というべきでしょう。

 

フルゲートの8枠が連対したのは史上初とのこと。今後語られるデータができてしまいましたが、いわゆる「外れ値」、例外的な存在として取り扱うのが適当なように思っています。

 

一方、3コーナーの少し手前で右手前にスイッチ、そのタイミングで内ラチに激突していました。リアルタイムでは3コーナー過ぎにタイトルホルダーとの差が広がって見えていまして、溜めた?と思って見ていたのですが、衝突の結果スピードが落ちたというのが実情でしたね。

直線右にもたれて十分追えなかったとはルメールのコメント。3歳時にも聞いた気がしていますが、苦しくなったところででる癖なのかもしれません。

 

とはいえ、レース全体を通したパフォーマンスは素晴らしかったですし、年間を通しての成績とパフォーマンスの安定感もまたお見事。今年0勝というのが不思議でなりません。…最優秀古馬牝馬は、G1をひとつ獲っている分ソングラインかな。

個人的には鞍上ルメールドバイシーマクラシックに行っていただきたいと切望中です。

 

本命はドウデュース

ゲートが開いてすぐにディープボンドに前方をカットされていますが、どうやら鞍上が狙って後方に下げた面も含んでいる模様。始めから序盤のポジショニングより走りのリズム優先だったことは先に触れた通りです。

1周目のスタンド前を待たずにスムーズに馬群の外へ誘導。外に馬を置かない状況をつくりつつ、3コーナーまでヒートオンビートに連れて行ってもらうポジションに収まりました。

序盤の下りとスタンド前では少しかかり気味になっていましたがその後は折り合いがつき、あとは3コーナーのカーブに合わせて1頭分外に出して前方の視界をクリアに。出し入れの少ないシンプルな運び方になりました。

 

…いちおうテキストにしましたが、このあたりの進め方はジョッキーカメラが雄弁です。順位とスピードメーターがついてよりゲーム画面感が増したことも気分があがる材料ですが、何よりこれまでで最高の見ごたえと思います。

www.youtube.com

 

「よし!…差せる!…差せる!…差せる!よし!よーし!!」直線を向いてからゴールまでの自分の掛け声はだいたいこんな感じ。ええ、府中のスタンドで両腕を突き上げて吠えていたのは自分ですすみません笑

いやー、やっぱり思い入れはドウデュースなんですよね。イクイノックスもダノンベルーガも好きな馬ではあるんですが。どうして魅力を覚えるのかはもう何ともいえず。ただ、周辺のエピソードよりは走りのフォルムを気に入ることが重要ではあって。そこに強い法則性があればいいんですけど、もうそれもバラバラなんですよね。

でもこの馬の強い走りが観てみたい、という気持ちは本命を決める際のひと押しになることが多いという自己分析。それで決めた本命で当たれば気持ちいいですものね。

 

令和のダンシングブレーヴ

ドウデュースの走りを血統構成から、望田潤さんはダンシングブレーヴになぞらえて解説していました。

blog.goo.ne.jp

なるほどと受け止めつつ、種牡馬入りして迎えた繁殖にキングヘイローの血があったらさらに化け物がでるのかしらなどと妄想を膨らませております。ライバル・イクイノックスの母父はキングヘイローですしね。

 

忘れ物を取りに行く

来年のドウデュース、忘れ物を取りに行くという響きのいい表現が陣営からありましたが、惨敗したロンシャンのことなのか出走取消になったメイダンのことなのか。

 

当日夜のグリーンチャンネルの番組で音声だけ出演した友道師が奮っていましたね。「ユタカジョッキーと話していたのですが、来年はアレを目指して頑張ろうと」。アレとは海外のことですよねという司会小堺くんの問いかけに「アレです」と切り返すやり取り笑

たぶんお酒の席だろうなーと思いつつ、まだ決める段階ではないですものね。翌日には飼い葉桶から顔を出さないというキーファーズのレポートもあり、27日に放牧にでたという報道もあり。まずは順調にレースの疲れを取ってほしいというところです。

 

ダービー馬の有馬記念、府中2400mと中山2500m

ダービー馬が有馬記念を制したのはオルフェーヴル以来。三冠馬を除くとトウカイテイオーまで遡る必要がありそうです(自分調べ)。

もともとはかなり適性の異なるコースという認識ですが、昨年のイクイノックスはダービー2着かつジャパンカップ勝ち馬、一昨年のエフフォーリアはダービー2着、そのダービーの勝ち馬シャフリヤールは今年僅差の5着。さらに今年の2着スターズオンアースはオークス馬。

…能力が傑出しているという一言で済ますこともできそうですが、近年だいぶ連動してきているように見えますよね。

 

中山の路盤改修かつエクイターフという条件が整ったのが2014年暮れという認識。排水性が向上し、府中と中山の馬場コンディションが近づいたのかなと推察をしております。ウマ娘のアニメがちょうど終わったところですが、キタサンブラックサトノダイヤモンドはともにその路盤改修後の有馬記念勝ち馬ですし、どちらも良馬場の府中G1でも実績があります。

 

依然として直線の短さや小回りのコーナリングに対する適性の違いはパフォーマンスに影響すると思っていますが、表題にした2つのコース条件は以前ほどのギャップはなくなってきているように感じているところです。

 

スルーセブンシーズは仕上がりのよさがアダとなっての12着

かかってしまいましたね。追い切りはめちゃめちゃよかったです。返し馬のダイナミックなフットワークも勝ち切るだけの充実ぶりを示していたと思っています。正直、▲という評価で単勝をもっていました。

しかし、仕上がりのよさはテンションの高さも招いてしまったようです。1周目のスタンド前まで前に馬が置けずに引っ張り続ける池添の姿が確認できます。これで勝機がなくなってしまいましたね。

 

個人的にはドウデュースが取った位置で進めてくるイメージでしたが、インに入れようとすると内の馬に張られてしまっていたあたりは、人気を背負う側だったことも影響していたかな。

レース後は骨折が判明、そのまま引退の判断となりました。あれだけの実力を示しても中山牝馬Sが唯一の重賞タイトルとは。結果を残すことの難しさを感じさせます。

クラブの規定で来春までの現役生活がちょっとだけ早く終わった格好ですが、もう一戦どこかで観たかったですね。おつかれさまでした。

 

3歳クラシックホースは着順を上げられず

ソールオリエンスは川田が動画で回顧していた通り(サントリーがスポンサードしている福永との対談ですね)、スタートからダッシュしきれずに前にはいられてポジションを下げる形。最内枠のデメリットをまっすぐ受けてしまいました。

一方のタスティエーラは先に議論したスタートダッシュの巧拙が地味に影響していたように見えています。菊花賞は2ハロン目がそこまで速くなく、それを5、6番手で追走する形になっていました。この有馬ではかなりムーアがプッシュしても先行ポジションを取ることはできず。

その後はヒートオンビートが外から蓋をする位置関係に。これが4コーナーまで続いてしまいました。ジャスティンパレス横山武史に挟まれる形になりましたが、それまでの後手がわるい意味で効いてしまったように見えています(もちろん武史の所作がダメではありますが)。

 

春のクラシックをワンツーした両馬ですが、特にソールオリエンスはまだまだこれからという馬体に見えていました。馬体の完成をみたときには先行策がとれるようになっているのではと来年に期待しています。

 

最後に

すでにホープフルSが終わり、東京大賞典当日となっています。やっぱり大きなレースの余韻はじっくり味わいたいんですけどね。

ようやく仕事納めになりましたので存分に競馬に時間を使うことができます。というわけにはいかず、プライベートでのもろもろが重なっており、じっくりこの1年の競馬を振り返る時間がとれるかはちょっと微妙かな。

でも、日付変わって今日にはGallop年鑑も出ることですし、ここ1、2週間で引退となった馬も多いですし、振り返る時間は確保したいと思っています。

 

その前に大井ですね。ちょっとさむそうですがG1に合わせて現地入りして競馬納めにする予定です。