珍しい記事を見つけました。
www.jairs.jp
ジャパン・スタッドブック・インターナショナルのサイトでは以前から海外の競馬記事をピックアップし翻訳して投稿しているのですが、上記はその中にあったひとつですね。
有料ですが、以下が元の記事です。
「イクイノックスが数ある選択肢の中で英国遠征を選ぶ可能性はあるか」というタイトルでは内容がちょっとピンとこなかったのですが、読んでみて納得。要約するとこうでしょうか。
- イクイノックスは強い、世界最強ではないか
- バーイードのウィリアム・ハガス師もロジャー・ヴェリアン師もベタ褒め
- ドバイシーマクラシックのあと、イクイノックスの進路が気になる
- イクイノックス陣営から英国のミドルディスタンスG1の話はでてこない
- "英国遠征を検討するつもりはあるか"と聞く価値すらないのでは
- 天気や馬場のせいで選ばれないの?
- アスコットの重や不良はサウジやドバイのフラットさとは異なる
- でもロンシャンには日本から遠征している
- 「キングジョージ」は賞金も「レガシー(遺産)」も十分に提供できるレースではないのだろう
- 世界最高峰の競走馬が英国をパスすることを英国競馬界は羨望のまなざしで傍観するしかない、くやしー
…最後の「くやしー」はかなり意訳ですが、でもこうした記事がしたためられるくらい、日本の競走馬のプレゼンスは上がっているんですね。
この記事のテイスト、まだ海外競馬の情報が十分でなかった頃の、日本のレースが世界のサーキットの中に組み込まれていないというコンプレックス強めの記事が1990年代までの日本の論調に近いものを感じます。
ジャパンカップが始まった頃のほんとうのビッグネームは日本に来ない、という感覚は1990年代に入って少しずつ変わってきた印象をもっています。90年代後半にはシーキングザパール、タイキシャトル、エルコンドルパサーが、日本のG1ホースの海外遠征という選択肢が常態化するきっかけをつくって…。
そう考えると、シングスピール、ピルサドスキー、モンジューと、90年代後半のジャパンカップは贅沢なトライを目の当たりにしていたんですね。
もちろん、上記記事の投稿者の意図は単なるコンプレックスの吐露ではないのでしょう。もっとまっとうな批判、英国競馬の近い未来に対する警鐘。問題提起のために「羨望」という態度を表明したのかもしれません。
ビッグマネーが動くところに最高峰の競走馬があり続けるのは歴史の証左ですので、英国競馬のプレゼンスとスポンサーシップがどういうアップデートを必要とするのか。
日本馬の価値向上や中東のビッグレースがステータスを高めていくと、フラットな馬場でのスピードレースとそれに見合った血統により高い付加価値が見いだされる。そうすると英国のタフな馬場をこなす血統は相対的にプレゼンスを下げる。
昨年、羅針盤であったエリザベス女王を失った英国競馬ですから、より懸念を覚える条件が増えつつあることを行間から感じています。
でも競馬発祥の国であるイギリスから日本の競走馬をうらやむ記事が発信されるとは、率直に驚きました。自分は1996年から競馬を楽しんでいますが、ひょっとしたら日本競馬の成熟期を競馬ファンとして目撃し続けてきたことになるのかもしれませんね。贅沢な趣味をもったものです。
個人的には、そのイクイノックスも日本ダービーで負けている点を強調したいですね。日本ダービー馬ドウデュースの世界デビューが待ち遠しくなりました。