タイトルホルダー、スピードの持続力で圧倒しました。
パンサラッサが煽り気味のスタートだったとはいえ、タイトルホルダーがしっかりダッシュして先手を取り切ってしまうとは。パンサラッサの二の脚を待つ余裕がありましたね。並びかけてきたところでピッチをあげて併走する戦略。交わし切ってハナに立ちたいパンサラッサにとっては最悪の牽制、横山和生は苦もなくやってのけた印象です。
パンサラッサを上手く利用して高いレベルの追走力勝負、スタミナ勝負に持ち込んだ、というのがレコード決着したこのレースの大きな特徴でしょう。それを2番手追走から4角を待たずに自ら捕まえに行って押し切ったわけですから。強いの一言です。
公式レースラップ
12.5-10.4-11.0-12.1-11.6-12.1-11.9-11.8-11.9-12.0-12.4
アーネストリーのレコードが比較にはよいでしょうか。
12.3-10.5-10.8-12.7-12.4-12.1-12.1-12.0-11.5-11.7-12.0
馬場は少しパワーを要する良馬場、という見立て
前日土曜は降雨のなかの開催でしたが、明けて日曜は良馬場。当日の芝レースで上がり33秒台だったのはアルナシームとサンストックトンの2頭。外回り1800の条件戦で中盤が緩んだ結果と考えると、スピードの持続には少しパワーを要するコンディションと観察しておりました。向こう正面も結構掘れていましたし。
ただ今年は前週マーメイドSからの開催2週目。これまではエプソムカップの週から4週目という使い込んだ馬場コンディションでしたので、この変則的な開催日程が比較的スピードを担保できる馬場を担保したものと思っています。
タイトルホルダーのスピードの持続力
ラップタイムを見ると、タイトルホルダーは道中の急な加減速を少なくし、自身のスピードをキープしながら11.0といった急加速するラップタイムの出現を封じた、という言い方もできそうです。あれだけ前々でスピードを持続されたら後続は厳しいでしょう。
府中の軽快な良馬場だったらまた違う適性が求められるのでしょうが、宝塚記念はこの時期の阪神ですからね。この馬場とパンサラッサという存在を最大限活かしたのがタイトルホルダーということになりますね。
レース後、凱旋門賞出走を宣言
戦前から匂わせる発言が聞こえていましたが、行きますね。鞍上もそのまま、横山和生とのこと。生産者の岡田さんは中距離G1を勝って種牡馬としての評価を上げたい、という希望が叶った格好。あとは好きにしていいという気の利いたコメントも目にしていましたので、あぁ陣営は準備をしているなと推察しておりました。
タイトルホルダーとドウデュース。今年の凱旋門賞は対照的な2頭が出走することになりました。まずはどちらも無事に歩みを進めてほしいですね。
エヴァーグリーン・ハイペリオン
望田潤さんの回顧ブログ、「エヴァーグリーン・ハイペリオン」で記事を書くのは通算6回目とのことです。
「こんなにHyperion的な体質で、こんなにHyperion的な脚質で、こんなにHyperion的な成長曲線のチャンピオンも近ごろ珍しい」。望田さんのタイトルホルダー評。3度のG1制覇、そのすべてが阪神コースという顕著なバイアス、このコメントからその特徴に思いが至りました。
京都の代替開催時期だからこその成績と言えるかもしれませんが、その巡りあわせも含めてチャンピオンと受け取っております。…多様なチャンピオンを生む番組を企図するなら、春の天皇賞は今後も阪神開催、それでも面白いかもしれませんね。
なにより、これで早逝したドゥラメンテの血がより確かに残っていくはず。その点ではうれしい結果になりました。キングカメハメハもエアグルーヴも色褪せず続いていきますね。
本命ヒシイグアスは完璧なリードで2着
トレーナーは右トモの状態はまだ本物ではない、といったいつもの浮つかないコメント、とはいえ見事な仕上がりと受け取っていました。
きっとオーソリティが出走していたら、ヒシイグアスは最内に潜り込むことはなかったでしょう。ただ、思った以上のスタートから思った以上に前目のポジションで1コーナーを迎えられたのはレーンの判断の賜物と思っています。リスグラシューで大外枠から先行した、あのポジショニングが成功体験になっているように感じました。
リスグラシューの有馬記念よろしく、4コーナーまでインをキープ。直線入口で一瞬狭くなりかけましたが、しっかり間を割って末脚を伸ばしました。厳しいペースを深追いするであろう先行馬の直後というポジションへの期待、ダミアン・レーンの素晴らしいリードを観ることができました。
しかし、あれで勝てないかぁ。昨年の香港も本命だったんですよね。いやー、出し切っての結果なので悔いはないのですが、何とかG1タイトルを取ってほしかった。
デアリングタクトは底力で3着
ヴィクトリアマイルはコンディションいまいちの最内を進まざるを得ず、ラストは少し末脚が鈍っての6着。ここからどれくらい状態が上がってくるか、でしたが、やはりいい頃の体幹には少し及ばない印象がありました。それでもあのパフォーマンスで三冠を獲っていますからね。厳しいペースを深追いするであろう先行馬の直後というポジションへの期待と2kgのセックスアロウワンスを加味して、▲的ながんばれ馬券を合わせて買っておりました。
1コーナーまでに隊列の外へ展開。3コーナーからは外へ進路を確保したかったであろうエフフォーリアと丁々発止。そのままコースを譲らずに直線を迎えていました。これだけでも結構消耗する流れでしたけどね。
ラストまで頑張りました。レース直後、3着争いのスロー映像でどうやらディープボンドを差し切ったと視認できた瞬間、阪神も東京も湧いておりました。タイトルホルダーに圧倒されていた分、感嘆の声が大きくなった印象がありましたね。自分も複勝がかかっていましたので、もれなく湧いておりましたよ。
エフフォーリアはフィジカルとペースが敗因と分析
ラストは脚を伸ばしていましたが、勝ち負けに加わることはできず、6着。天皇賞秋、有馬記念と中盤が緩んでからの上がり勝負を制している特徴からすると、この宝塚記念はだいぶペース配分の異なるレースになってしまいました。
切れ味抜群のエフフォーリアには、じわじわとスタミナを奪い取るペースは「適性が異なっている」という表現が妥当なのだろうと理解しているところです。
一方で、以前から右トモの具合に慎重なコメントが続いていた認識で、有馬記念よりこちら、なかなかこの不安が払しょくされていないのだろうとも推察しています。やーしゅんさんの馬体診断などこの点に触れていますね。
また、コーナー通過順は9-8-8-10。3、4コーナーでデアリングタクトに押し込められたことで4コーナーまでにポジションを上げることができませんでした。こうした諸要素が重なっての敗戦と見ています。
エピファネイア産駒の早熟説、といった端的なワードも目にしましたが、アリストテレスとエフフォーリアだけで判断しているのかしら。ディープインパクトも初年度の頃は牝馬しか走らない、マイラーばかり、といったコメントが散見されていたのを思い出しました。こうしたネガティブかつ部分的な見解は有力な種牡馬にはついて回るのかもしれません。エフフォーリアの復調や今後の逸材が評価を変えてくれると期待しています。
最後に
当日は府中で観戦しておりました。阪神のパドックは映像になることと湿度の高さを想定してメモリアルスタンドの指定席(冷房が効きますからね)を押さえたのですが、これが大正解でした。暑さがヤバすぎです。翌月曜には早くも梅雨明けになりましたし。今年の夏の暑さは要注意ですね。