more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第28回 秋華賞

リバティアイランド、史上7頭目牝馬三冠を達成しました。つよかったー。

 

直線を待たずにスパートを開始した瞬間、熱かったですね。どうやらソレイユヴィータの外から進出を開始した時点で早くも左手前にスイッチしていた模様。鞍上の意を汲んでギアを上げた結果、コーナーと逆手前になってしまうあたりは父ドゥラメンテにそっくり。お父さんよりは行儀よかったですよね。

 

そして直線に向かうコース取りはデアリングタクトを彷彿とさせました。そうでした、スローから後続の早めのスパートを受けたという点は異なっていますが、先輩三冠馬も逆手前で4コーナーをパスしていきましたね。

 

ゴール直前にマスクトディーヴァが猛追してきましたが、セーフティリードと言うべきでしょう。脚色の違いはスパート開始→トップスピードにのった区間の差。好位を取って同じタイミングで仕掛けられなかったことが1、2着にある差でもあるわけです。

 

1.1倍に応える見事な三冠。どの馬より突出した能力でも、不確定要素満載の競馬ですべてのライバルを退けて「3つ」勝つことの稀少さ。素晴らしい才能と有機的なチームとマネジメント、そして傑出したジョッキーがそろってなお困難を極めるミッションでしょう。

その困難さと達成感はレースを終えて引き揚げてきた鞍上の「これは感動するなぁ!」というセリフにすべて込められていると感じました(はい、ばっちりもらいました)。ありがとう、お嬢さん。

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公式レースラップ

12.2-11.1-13.1-13.0-12.5-12.9-12.3-11.6-11.0-11.4

 

馬場コンディションは気持ち外寄りのバイアス

ひとつ前の大原S、外回りですがゴールドエクリプスが通った内ラチから4~5頭目のあたりが一番コンディションがよいように見えていました。

7頭立ての大外という状況もあったでしょうが、岩田望来は意識してこのコースを通した模様。マスクトディーヴァのシミュレーションのようにも見えましたね。

道中が少し流れるようなら、後方インで待機した伏兵が直線半ばに持ち出して差し込むようなイメージも沸いていました。いやー、馬場読みは合っていても逃げ馬とペース読みが合致しないと上手い予想にはならないですね。

 

リバティアイランドは外に出せるようにポジショニング

場内の勝利ジョッキーインタビューでは、3コーナー過ぎに進路を確保できたことで勝利を確信したとコメントしていました。川田の自身の表れとして受け取ったファンからは「おおおー」と感嘆の声が上がっていましたね。

 

ポジションやコース取りに心得があるファンは、川田が取るであろう、取るべきであろう進路が議論できていたものと思います。井崎さんもレース直前に話していました。

スタートしてからちょっとずつ外目に進路を取って、いつでも出していける馬群の外目のポジション。それは包まれない=スパートのタイミングを握れることを意味しますので。

実際、スタートからインに寄せずちょっとずつ外へ張る形。振り返りながら前にはいろうとするラヴェルを迎え入れてインから3列目のポジションがほぼ確定しました。「道をつくることが今日の最優先課題」と話していた通り、問題のないポジショニングだったでしょう。

スタート次第という面も含めて決めつけないで乗ったようですが、盤石という形で1コーナーを迎えられたと思っています。

 

道をつくることが最優先課題

3コーナーの判断も素晴らしかったですね。前半はずっと武豊ソレイユヴィータが外から蓋をする形だったのですが、少し下げてその外に回しました。

ジョッキーカメラでは3コーナーで少しユタカさんがインを閉めるように動いているのが確認できます。ラヴェルとソレイユヴィータがつくるポケット、ここに入らないよう川田はあらかじめ下げる判断にしたのでしょう。「3コーナーで道を作れる段階でもう負けることはないな」というコメントは、他の馬からのプレッシャーをすべてパスしたこの瞬間を指していると思っています。

 

川田が語る「競馬の本質」

netkeibaのコラムでは川田本人のレース回顧を読むことができます。全文は有料ですね。

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早めに踏んでいったあたり、本人はディープインパクトをイメージしていたんですね。ファンの皆さんに楽しんでもらえるように、というコメントと結びつくイメージだと思います。

スターホースがいて、その走りを多くの競馬ファンが心から楽しむ、それが競馬。今回の秋華賞を無事に走り終えて戻ってきたときのスタンドの雰囲気から、そう感じたんです。

感動の内訳について問われた川田からでてきた言葉。個人的には、トップを張る人間に持っていてほしい俯瞰がそこにあると感じました。

ユタカさん、ルメール、引退した福永や岡部さんも、トップジョッキーは競馬に対する考え方をその騎乗で示すことができますね。自身は最後にバトンを受け取っただけと謙遜していますが、リバティアイランドのレースぶりは川田将雅だからこそ、なのでしょう。

 

ひとつ思い当たったのは昨年末、リーディング確定直後のイベントで福永が川田に話した言葉でした。

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将雅がリーディング取って、もう楽しもうって吹っ切れて、楽しみだしたときにどんなジョッキーになるか見てみたい

凄いステージにいける可能性があるんじゃないか

上記のコラムでは事前に具体的なレースプランを練っていなかったことがわかります。予想紙も見ず、できるだけ先入観を排除して臨む姿勢が見て取れます。むしろこの先入観の排除が事前準備だったのでしょう。守破離という言葉にも通じるように思います。

福永が示唆したことはこの守破離の「離」に近いのではないかと思っていますが、今回の騎乗はおそらく「破」なのでしょうね。

ディープインパクトのようなレース」はいつもの戦略的な騎乗とは異なっていて、勝利だけではない価値を求めた瞬間でもあるように見えています。戦略性を踏まえつつ、もうひとつ高い、というよりもうひとつ大きい段階でレースを進めたなら、福永の期待に近づくようなレースぶりだったのかもしれません。

 

川田本人が話している通り「絶対に負けない競馬」をしたのが今回。楽しんで乗る、のはもっと先なのでしょう。ということはまだ川田の騎乗には先があるわけで、それはこちらがより楽しみになってきます。

 

次走ジャパンカップという大合唱

次はジャパンカップだよね、という異論を挟みにくいSNSを含めたメディアの空気感に若干の違和感を覚えつつも、まぁそりゃあ観たいですよね。

ドウデュース、イクイノックスとの対戦は実質的に芝中距離の世界最強を決める一戦になるでしょうしなってほしいと思います。エースインパクトが来てくれれば完璧でしたけれどね。

この投稿を書いている時点では出否は明らかではありませんが、楽しみに待ちたいと思います。…もう少し間隔をおいて香港カップという選択肢もあっていいと思いつつ。

 

マスクトディーヴァは後方から追い込んで2着

先に書いた通り、ゴール前の脚色はリバティに迫る勢いでした。4コーナーで踏み遅れなければというたらればは容易に思いつきますが、やはりスタートで後手、スローで位置が取れなかったことが遠因。惜しかったけど厳しかった、というのが率直な感想です。

 

しかし進路を確保してからトップスピードにのせるまでの加速力は非凡なものを感じました。ローズSはスピード馬場の恩恵を受けた面があると思っていますが、今回はさらにパワーアップしていたとみるべきでしょう。

母父ディープの影響ももちろんですが、あの追い込みは祖母ビハインドザマスク由来のように思えてしまいますね。短距離血統の爆発的な加速力が、代を経て日本の芝中距離での差し脚にプラスに作用する。ディープ×ストームキャットが典型ですし、祖母ブロードアピールワグネリアンも同じパターンですね。

 

マスクトディーヴァは父ルーラーシップの分、より末脚のスタミナが補強されているようなイメージ。…ルーラーシップにはいい馬場コンディションだと思っていたんですけどね、ドゥアイズを選ぶあたりに馬券のセンスがでてしまっています。

 

最後に

1強だった牝馬クラシックとは異なり、菊花賞は有力馬が複数という構図。皐月賞馬とダービー馬が菊花賞で出そろうのはエアシャカール×アグネスフライト以来ですから、夏を越してクラシックを戦う難しさや菊花賞という条件へのハードルなど、いろいろな議論が喚起されそうです。だからこそ三冠馬の傑出ぶりと三冠の価値は保たれていてほしいんですけどね。

外枠が厳しいのはある程度強い傾向として踏まえつつ、自身の成長も含めてサトノグランツが目に付くところです。タスティエーラは皐月賞2着のレースぶりが評価できる分見限れないなと。ソールオリエンスは後方一気で突き抜けるペースになるかがカギかな。

パクスオトマニカよりリビアングラスが逃げるイメージなのですが、坂井瑠星が引っ張るならスロー過ぎることはないのかなと。そのペースにアジャストできるならファントムシーフにも可能性があるように思っているところです。当日の馬場傾向を踏まえて考えをまとめたいですね。