more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第84回 菊花賞

ドゥレッツァ、5連勝で一気の戴冠となりました。もうルメールが凄すぎですね。

 

スタート直後、外枠からきれいに先行するファントムシーフに感嘆していたところ、その外から上がっていく馬が。まさかドゥレッツァがハナまであるとは思いませんでした。パクスオトマニカ田辺も並んできたあたりで横を見ていますよね。最初の3コーナーをだいぶ過ぎたあたりですから、マジで?くらいの感覚だっただろうと推察します。

 

ルメールは「フライングスタート」と表現していましたが、ゲートだけでいえばファントムシーフの方がよかったように見えます。おそらくですが、前進気勢とそこから来るドゥレッツァ自身が出したいスピード、これが逃げのポジションを取るくらいの勢いだった、ということなのかなと。ゲートが速かったのではなく、ドゥレッツァの初速の勢いがフライングスタートと呼べるくらい凄かった、ということだと解釈しているところです。

いずれにしても3ハロン目で11.1。スタートから3ハロン目まで加速というレースラップは近々の菊花賞ではあまり出現していないパターンのようです。近しいのは2016年の13.0-11.3-11.0。ただこの時、勝ち馬サトノダイヤモンドは8番手あたりにいますからね。勝ち馬が自ら作っているレースラップとしてはかなりきつい部類にはいるでしょう。

 

先頭に立ったことで物見したとはいえ、その後2周目の向こう正面にかけて3番手まで抑えることに成功しています。パトロールビデオを観るとパクスオトマニカは向こう正面でかなり外目を通っていて、少し離れたコース取りをしたリビアングラスも含めて、すぐ近くで他馬と競る形にならず息をいれられたこともドゥレッツァにはプラスだっただろうと思います。

しかしそれでもこの出し入れ、この加減速はなかなかできるものではないでしょう。ドゥレッツァの大きな武器だと思いますし、この武器を卓上の計算ではなく実現してしまうルメールがただただ凄い。狙い方とタイミングの取り方はレイデオロのダービーと似ているように感じました。

 

レースラップは1000mを3分割しての「急→緩→急」。これは菊花賞のセオリーに沿うもの。常識外のスタートダッシュでしたがレース全体を通しては定石を押さえたペース配分と言えそうです。

馬券的には外れでしたが、すごいものを見せてもらいましたね。

 

公式レースラップ

12.7-11.7-11.1-12.3-12.6-12.9-13.1-13.0-12.8-12.3-12.1-11.6-11.7-11.4-11.8

 

馬場は若干インがタフ寄り

当日の準メイン、三年坂Sは外枠から外々を回ったソーダズリングが32.8で差し切り。序盤にペースが緩んでいた分、上がりのスピードがかなり求められましたね。多少のパワーを要するとは思いつつ、加速力に勝る馬に向いた馬場とみていました。

インから3頭目くらいまでの芝が若干痛んでいて、真ん中より外目は馬場がよいわけですが、外を回し過ぎてしまうと切れているけど届かないという現象が起きそうだと考えていましたね。…はい、ソールオリエンスはその対象馬になりそうだなと。

 

4コーナーでインにいるために

馬場コンディションに内外の差が少ない場合、外枠は相対的に不利になりやすくなります。できればインコースを走りたいわけですが、外枠スタートからインに寄せたい場合「プッシュして前にいくか」「逆に大きく控えるか」という極端な選択を迫られてしまうわけです。どちらもできない場合は馬群の外々を回らされ続ける距離ロスの地獄が待っていますね。

大外枠のドゥレッツァにはその2択が迫られていて、自分は1択しか残っていないと思っていました。そしてそれがそのまま敗因になる、と。中団より後方で控えて4コーナーで外を回り、インを立ち回った馬と同じ末脚を繰り出して負けてしまう、外枠スポイルというイメージでした。

 

…前に行くとはねぇ。パドックではよく見えていましたが、前にポジショニングする心身ができていたとは。恐れ入りました。

 

ドゥレッツァとドゥラメンテ

自身が出走することがなかった菊花賞で産駒が2勝目。それもタイトルホルダーは阪神3000mですから。ドゥラメンテは実に様々な特徴の仔を出してきますね。

 

改めてドゥラメンテの追悼記事で書き起こした堀師の言葉を思い出しました。存命中のスタリオンパレードでのコメント、リンク先の記事の最下部に記載しています。

keibascore.hatenablog.com

 

ドゥレッツァはその父より距離の融通もポジションの融通も利くイメージ。…父はミルコの乗り方にイメージが引っ張られている面もあるかな。ルメールは2000や2400でもG1で通じる旨のコメントを出していますが、次走はどこになるでしょうね。

おそらくは2択、香港か有馬記念。同クラブ同厩のスルーセブンシーズとは使い分けしてきそうですので、そうすると有馬記念かな。コースは合うような気がしますね。

 

尾関厩舎のクラシック制覇

過去も含めた管理馬一覧を見ていましたが、G1戦線ですと近々はグローリーヴェイズが目立つ以外は…というところ。毎年重賞戦線に管理馬を送り出している、という状況にはありませんでした。スルーセブンシーズはそういう意味でも新鮮な印象がありましたね。そうそう、以前はレッドファルクスの印象が強かったです。

凱旋門賞4着と菊花賞。ここ2カ月ほどで厩舎の印象はガラッと変わったのではないでしょうか。ここから預かる管理馬の質が変わってくるなら楽しみですね。

 

ダービー馬タスティエーラは地力を示しての2着

五分のスタートから最初のコーナーで1列外にだしたところ、前方にファントムシーフを迎える形になりました。長距離戦で武豊に先導をしてもらういいポジション。そこそこの前進気勢でしたが序盤は上手く運んでいる印象でした。

いわゆる車間距離を少し大きく取って直後を追走していましたが、1周目のスタンド前でそこをショウナンバシッドに割られてひとつポジションを下げてしまいました。これがその後の展開に響いたように見えています。

ペースが遅くなる中盤でポジションが下がってしまっていますからね。向こう正面で再びファントムシーフの直後を取りましたが、2周目の3コーナーからはソールオリエンスに外から被せられる展開。

 

直線は地力で2着へ押し上げた格好になりました。皐月賞の粘り込みよろしく、もう少しポジションをキープできていたらと思わされます。でも相応にマークされる立場ではあったでしょうしね。これでクラシック3冠は2→1→2着と、三冠馬を除くときわめて安定した強さを示している形。近年にないダービー馬の姿かもしれません。

 

次走についてはどうやら暮れの香港に登録がないようなので、順調にいけば弥生賞勝ちで皐月賞2着と覚えのよい中山のグランプリなのでしょう。…ジョッキーはどうするんでしょうね。

 

ソールオリエンスは追い込み切れず3着

「急→緩→急」が一番向かない有力馬という理解でした。ほぼその通りになったという印象です。仮に内枠を引いたとしても難しかったのではないかと思っています。

4コーナー手前から吹かしていってタスティエーラに蓋をしに行っているわけですが、これはそのディスアドバンテージをよくわかっている武史の対抗策だったように見えますね。

 

以前の馬になぞらえるならハーツクライに似た負け方。どちらも完成前でポジションを取りに行く力が十分でなかった点が共通していると思います。

それでも3着まで差し込んでくるのですから、フィジカルで言えば(完成したらですが)世代No.1なのかもしれません。距離は確かに長いのでしょうが春の淀では能力でこなしてしまうかもしれないという期待も持っています。このあとも順調にいってほしいですね。

 

ファントムシーフは直線ガス欠で9着

直線入口でサヴォーナに前をカットされた瞬間は、あとで池添を体育館の裏まで呼び出す必要があると思っていましたが、そもそも余力が十分残っていなかった模様。鞍上の言う通り、距離の長さがはっきり出た形と理解しています。

 

おそらくあの伸びやかなフォームに加減速を求めないほうがいいように思っていまして、急なギアチェンジの少なめな条件で重賞をもうひとつ獲れるのではないかというイメージに切り替わっています。相手関係もありますよね。

 

秋に馬体が変わってこなかった印象がありまして、やはり春先は完成度の差で他馬に先んじていたところがある模様。これらを含めてファントムシーフなのでしょう。個人的に期待値が高かった分、ひとまわり高い見積もりで予想に臨んでいたなと。それはそれで楽しい過ごし方でしたね。

 

サトノグランツはペースが合わずに10着

本命でした。が、こちらの方が「急→緩→急」のペースに露骨にアジャストできませんでした。スタートから川田の拳が少し動いていますが、レースのペースに見合った追走になっていなかった様子ですものね。

 

イン差しを期待していた方のツイート(ポストですね)はどうして外に出したんだという批判の内容が多かった印象がありますが、川田は外に出したというよりファントムシーフ→タスティエーラの縦のラインを意識したのではないかと思っています。

それより内は勝負どころでスタミナがなくなって下がってくる可能性のある人気薄の馬群ですから。その直後に構えてしまっては不利を被る可能性がありますよね。

 

ただ、そもそもの追走力に欠けていました。その理由が何なのかは今後の戦歴等々でわかってくるものと思います。父サトノダイヤモンド込みで本命視したのは思い入れに寄せすぎたかな。父とは似ていないのをわかったうえで、だったんですけどね。

 

最後に

えー、もう天皇賞前日の夜。すでにアルテミスSも現地観戦済でチェルヴィニアに逆らってすみませんでしたという反省モードも終わっているところです。スティールブルーは今後楽しみという収穫は得られましたね。

 

ドウデュースvsイクイノックス。先にダービー馬を書くあたり、本命が決まっていることがバレそうですが、はい、バレてますね。1週前追い切りの映像を観た時点で、これはドウデュース本命が一番楽しいという結論に至っております。

 

当週になってのスターズオンアース回避は職場のデスクで打ちのめされていたわけですが(漫画の表現でいう縦線がリアルにはいっていたと思います、観たかった)、それでもいまいまの古馬牡馬の骨っぽいところは勢揃いの様相ですね。

 

少頭数ですとポジションを取る力はそれなりに必要と理解していまして、どうしてもプログノーシスは後手を踏むだろうなと。川田もそれがわかっていて臨むのでしょうが、わかっていてもリカバリーできない差が生まれるような気がしています。

そのプログノーシスがひとつ内ですからね、外枠を引いたジャックドールはひとつ先行しやすくなったとはいえそうです。

枠の並びでいうなら、前への意識が強い横山武史に乗り替わったジャスティンパレスがひとつ内ですから、イクイノックスがそれを交わすには五分以上のスタートを切る必要に迫られるのではないかと。対するドウデュースは自身がスタートさえ決めればディスアドバンテージはない並びでしょう。

 

逃げはおそらくはノースブリッジかジャックドールか。大方の予想通り、スローはないと思われます。どこかで緩むかなとは思っていますが、そのあたりは前日の準メイン紅葉Sのラップタイムがヒントになると思っています。
12.4-10.8-11.2-11.3-11.6-11.5-11.4-11.7

逃げたルメール騎乗のラスールはこのラップを刻んでコンマ2秒差の3着。スピードの持続が比較的容易な速い馬場コンディションであることが伝わりますね。前に行って加減速少なくペースをキープしたほうが残しやすいでしょう。…やっぱり後方一気はつらいだろうなー。

 

マイラー的なパワフルな加速が、中距離的な末脚の持続を制するイメージ。馬場も味方につけてドウデュースにアドバンテージありと思っていますが、どうなるでしょう。

 

最後に、が長過ぎますね。楽しみ過ぎるせいということで。大一番、全力でまいりましょう。