プログノーシス、強い勝ち方でした。本格化というより十分でない出来であのパフォーマンスかと驚いているばかりです。
ウインズで観ていたのですが、1コーナーでヒシイグアスのインにはいり、インからスルスルとポジションを上げて、3コーナーも外を回らず直線入口に向けて外へ展開した、こんな形で中継映像を確認していました。
終わった直後はゴールドシップの皐月賞、あのワープを思い出したんですけどね。その後のフリカエリでは符合する部分と異なる部分と、そしてそれを上回るような部分とを感じた次第です。強かった。ゴール直後はちょっと言葉がでませんでした。
公式レースラップはこちら
12.3-10.9-12.3-12.6-12.3-12.2-12.5-12.0-12.0-12.4
当日15時を過ぎてから発表が「晴」にかわる天候。やや重まで回復していましたが、当日朝の発表通り、特に3、4コーナーのインが荒れたコンディションだったようです。朝の雨量がそれなりにあったみたいですね。
そのあたりはジャックドール武豊が1コーナーでインに寄せなかったことからも窺えました。4コーナーを好位の外から進出する、そこから逆算しての動きだったと理解しています。
川田は鞍下の特性から1コーナーまではゆっくりと。前走は同じ洋芝の香港ですから、渋ったことを加味してもある程度こなせる目算もあったでしょう。
13-11-5-2。コーナー通過順は極端なそれに見えていますが、本人のレース後コメントからは馬場とコースとレースのペースと相手関係と鞍下のリズム、そのすべてを包括した戦略をちゃんと立ててちゃんと実践できていることがわかります。以下、コメントの一部を引用しますね。
走りのバランスが取れてからは、この馬が無理しない程度にポジションアップする形になったので、それは許してあげてというところでした
リバティアイランドの桜花賞でもそうですが、鞍下のリズムを尊重しつつポジショニングやペースの許容範囲を見極めながらレースを進めているように受け取れますね。
これを卓上の計算ではなく、馬の上に乗った状態で高い正確性をもって判断しアクションできるところが現在の川田将雅の卓越したところだと理解しています。
netkeibaのコラムでは川田自身が分析を加えていました。有料記事ですが、プログノーシスの走りに限らないレースに向けたジョッキーの視点がよく表現されていると思います、こちらは必見でしょう。
以前からプログノーシスについて、走りのバランスをとるまでに時間を要するという趣旨のコメントはみていたのですが、改めてその意味についても解説しています。…有料記事でなければ言葉数を増やしてバンバン書いてしまうところなんですけどね。
走りのなかでトップスピードに至るためにフォームを整える、プログノーシスはこれに時間を要するというのが自分なりの解釈です。
川田本人は「ポジショニング」という表現をつかっているのですが、コラム内での陸上競技での例えも踏まえると、ベストな姿勢(前傾や反っているなど)、腕や足の振りといった各要素がベストなポジショニングであることを大事に考えていて、プログノーシスは馬体の未成熟さに気性もあいまってその準備に時間がかかっていたという。…もう引用を越えていますかね。
その走りのリズムを整えながら、1コーナーでインを選択したのはかなり意識してのものだったようです。リアルタイムの観戦ではヒシイグアスに若干押し込まれた?と見えていたのですが、意図的にインの選択があったんですね。
パトロールビデオでみると、かなりの人馬がインを避けて走る意識が強かったようです。先のジャックドールもそうですが、1コーナー手前でスタートからほぼ真っすぐ走った6番ダノンベルーガが左右から挟まれて下がったことからも窺えます。
川田はそれをみながら1、2コーナーの荒れ具合なら通って大丈夫と判断したようですね。同じ判断をした横山和生トップナイフが2着ですから、距離ロスとスタミナロスという視点では妥当な範疇の判断だったのでしょう。このあたりはゴールドシップっぽいですね。
ただ、直線の独走はいいコンディションのコース取りができたことだけが理由ではないでしょう。8着までの上位入線馬のうち1コーナーを一桁順位で回ったのは最内をついたトップナイフを除くとジャックドールのみ。
4コーナーまでポジションをキープできたのもウインマリリンとヤマニンサルバムだけで、あとの先行勢は4コーナーで後続のポジションアップに飲み込まれる形で脱落しています。
これは馬場コンディションに対して厳しいラップが続いたことを示しているでしょう。ガス欠をおこさずフィニッシュまでちゃんと格好がついたのは3着ソーヴァリアントまでではないでしょうか。
mahmoudさんの分析、プログノーシスのテンはゆっくりですが、中よし終いよしであることがわかります。こちらも参考になりますね。
札幌記念のバックストレッチでプログノーシスとトップナイフが動いていったところを解説してみる。ジャックドールと完歩ピッチの推移を比較するとわかりやすいだろう。まずは1~2コーナー中間辺りとなる前半600mまでの推移。徐々にペースダウンしているジャックドールに対し、プログノーシスの緩め方の… pic.twitter.com/LnrO8KShvj
— Mahmoud (@mahmoud1933) 2023年8月21日
個人的にかな、これではっきりしたのはプログノーシスの差しは軽快な加速力だけが売りではないということ。息の長い末脚、いわばスタミナ差しで33秒台前半を計時できるタイプだと受け取りました。馬場が渋っても差せるのはパワーとスタミナの証でしょう。
母父Observatoryはミスプロ系ですが、英チャンピオンSやエクリプスSを勝ったトワイスオーヴァーの父ですし、母父はDarshaanからつながるMark of Esteem。ニューマーケットの直線競馬を制した2000ギニーホースですから、末脚のスタミナと言われても納得するところですね。
母系の構成は異なるわけですが、同じディープインパクト産駒でもオーギュストロダンに近いイメージをもった次第です。日本で活躍するディープ産駒はアメリカや南米の筋肉質で俊敏なタイプが多い印象がありますので、それとは違うタイプだなと改めて。
さて、これで秋の天皇賞に向かうことになりました。すでにドウデュース、スターズオンアース、ジャックドールなどが参戦を予定。どうやらイクイノックスも参戦するようですので、このメンバーが揃った状況でどう立ち回れるのかはかなり興味深いです。
…そもそも鞍上は継続するのか?という問題もありそうですね。イクイノックスが出るならスターズオンアースの鞍上は空きますし。。。
エアグルーヴ以降、札幌記念から天皇賞秋というローテーションが王道と意識されてきましたが、今年もそれに適う馬が出てきました。楽しみが増えてよかった。府中の馬場が荒れたら…、などと考えるのも楽しみのうちですよね。