more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第64回 宝塚記念

イクイノックス、現役最強そして世界最強を示す追い込み勝ちでした。

 

スタートを五分に出てホッとしつつ、プレッシャーを受けて後方に下がった時はかなり意気消沈モードになり、4コーナーでグーンと上がってきたときは一気にテンションがあがり、直線入口で大外までもっていったときはマジか大丈夫かと心配し、後続をねじ伏せてゴールした時はすごい!と感嘆するばかり。…実に充実した2:11.2でしたね。

ふだん職場では一喜一憂しないようになどと話している上司なのにねぇ。いいんです、世界最強馬の走りを淡々と眺めるなんてもったいないですものね。

 

グランプリ週の週中にはロイヤルアスコット開催、欧州中距離路線の有力馬が集まったプリンスオブウェールズSではドバイシーマクラシック4着だったモスターダフが勝利。ブービー人気だったとは驚きでしたね。メイダンの4コーナーでイクイノックスの直後から果敢に挑んでいた姿は印象に残っています。

ドバイで負かした相手がその後活躍するほど、あのレーティング128の価値が増すというもの。モスターダフの結果を知ってからこちら、こっちも負けられないぞという謎の期待をかけておりました。

 

宝塚記念のレーティングは122と落ち着いた評価になりましたが、あの追い込みの凄さはレーティングには表れにくいでしょう。自分の型にもちこめる鞍上のハンドリングと合わせて見事なパフォーマンスでございました。

 

公式レースラップ

12.4-10.5-11.1-12.6-12.3-12.4-12.5-11.9-11.7-12.0-11.8

当日の7レースが同条件でした、比較の意味で。

12.4-11.2-11.1-11.8-11.7-11.8-12.4-12.4-12.3-12.7-12.9

 

当日はインが伸びる馬場、ですが

当日は難しい馬場状態でしたね。インから2、3頭分のコンディションがよく、というよりそこから馬場の中央付近までが非常に掘れる状態。先行馬のすぐ外から差すには馬場がスピードを減殺してしまう印象でした。

それよりさらに外の馬場コンディションはよい認識ですが、今度は距離ロスが大きすぎてインをキープする馬を上回るアドバンテージを得られない、という見立て。

 

午後のレースで岩田望来が連勝していましたが、おそらくこの馬場傾向を捉えていたように見えています。先にレースラップを挙げた7レースは新人・河原田のプリマヴィータが逃げ切り。こちらはそこまで読んだ作戦ではなかったようですが、差せない馬場と前傾ラップの相性がよかったようです。

G1前のTLでもイン有利のバイアスを見て取っている方がいらっしゃいましたね。自分も同様の傾向を感じ取りながら予想を組み立てていました。

 

坂井瑠星のラップメイクと追い込みが効いた背景

外枠からハナを叩いたのはユニコーンライオン。鞍下の特性を考えれば一択という戦法をきっちりやり切りました。

当日の馬場を考慮すると2ハロン目の10.5はかなり速いですね。その後の11.1-12.6の急ブレーキまでが坂井瑠星がつくった序盤といえるでしょう。2番手ドゥラエレーデは折り合いをつけるのに苦労はしていましたが、逃げ馬を強くけん制する動きは取っていませんでしたので。

そして残り4ハロンからのペースアップ。これができるから瑠星は信頼に足ると思っています。先行勢も中団から差す馬にも厳しいラップ推移になったでしょう。

 

インコースの先行馬は厳しいペースで壊滅、中団の差し馬は追走の厳しさと馬場状態に能力がスポイル。よって馬場のよい大外を通った有力馬が上位を占めることになりました。ジェラルディーナのエリザベス女王杯やソールオリエンスの皐月賞を思い浮かべられるならご慧眼というべきでしょう。

 

イクイノックスは前走から打って変わっての後方一気

道中のポジションが極端にかわっていますので「自在」というイメージになるのでしょうが、ルメールが序盤の走りのリズムを重視した結果なのだと思っています。

 

イクイノックスが大きく加速のリズムを変えたのではなく、他馬のスタートダッシュが遅すぎたのがドバイシーマクラシック、先行馬のスタートダッシュが速かったのが宝塚記念、と受け取っています。

もちろん2走とも全く一緒のリズムだとは思っていませんし、今回つまずき気味のスタートだったこともポジショニングには影響しているでしょう。ただし、スタミナを強く消費するスタートダッシュを求めていないという点では同じだと感じています。

 

前回と異なる点、今回はだいぶマークされたことでしょうね。ダノンザキッド北村はスタートからの少し外に寄せて結果イクイノックスの正面にはいりました。1番人気へのけん制になれば、というようなポジショニングを企図したものと受け取っています。

イクイノックスはそれを嫌うような首の動きをみせて、その後ひとつポジションを下げることになりました。外からプラダリア菱田が併せていたことで逃げ場は後ろにしかなかった、と言うべきでしょうか。

 

ルメールが凄いのはこうなっても仕方ないとすぐに切り替えられているところ。おそらく事前に後方待機になるパターンを想定はしているのでしょうが、一発勝負のG1、大金も名誉も評価もかかったなかでこの切り替えの早さ。ものすごい胆力ですね。

 

ジェラルディーナが3コーナーでポジションをあげていった際に、一瞬だけついていくアクションがみられました。あれはどういう意図だったのか。その後すぐに手綱の動きを収めて4コーナーでの仕掛けに続いていくのですが、あの流れるような連続した判断の正体は何だったのか聞いてみたいところです。

ジャスティンパレスが外に出てくる動きを警戒したようにも見えますし。もし一瞬だけユタカさんにつられた、なら彼もまた人間だなと思うところですね。

 

見事な追い込みではあったわけですが、追い切り映像とパドックの見た目から、絶好調ではないのだろうと見て取っていました。湿度が上がる時期ですしましてドバイ帰りの初戦。さらに美浦の坂路が改修工事&初の関西圏輸送ということもあり、栗東に滞在しての調整。ピーキングが難しいだろうことは容易に想像できます。

それでも勝つのがチャンピオン、という昔からの語り方もありますが、平成後半から令和のトップホースの仕上げはもっともっと紙一重でしょう。ルメールがレース後一瞬だけ涙をみせたとの報道もありますが、上記の展開やコンディションを踏まえると「確勝」という心持ちで臨んだレースではなかったのでしょうね。…それでも勝つのがチャンピオン、でやっぱりいいのかもしれません。

 

そうそう。4コーナーのコーナリング、まるでバイクレースのようにものすごく馬体を横に倒して横Gをこなすイクイノックスのフォームが確認できます。あの角度はディープインパクトのラストラン有馬記念を彷彿とさせました。チャンピオンの馬体が完成の域に達していることを窺わせる瞬間でしたね。かっこよかった。

 

秋はジャパンカップが目標

以前から報道ベースにのっていた認識ですが、改めて秋の目標はジャパンカップと明言があったようです。ブリーダーズカップといった海外遠征プランも候補にあがっていたようですが、国内専念ですね。チャンピオンがまだ獲っていない東京2400の勲章をもとめるなら立派なチャレンジでしょう。

 

いやー何度となく言葉にしていますが、ドウデュース vs イクイノックスの再戦。それがジャパンカップであれば最高です。

リバティアイランド、ソールオリエンスらも含めて、東京競馬場で世界の芝中距離チャンピオンを決めましょう。もう観たいです。

 

スルーセブンシーズは追い込みに徹しての2着

池添はスタートからしばらく手綱を押していますが、ゴール板付近からは一転して抑える姿。イクイノックス同様、こちらも柔軟に判断を切り返したように見えています。

1コーナー手前で一瞬加速を促しているのですが、これはイクイノックスへ外から被せていく意図があったのかなと邪推しています。結局ジェラルディーナに前にはいられてブレーキを踏むわけですが、そのジェラルディーナがイクイノックスの蓋になりましたからね。ユタカさんの蓋をするその精度を信じて自身はインをキープする、であるならいかにもユタカファンの池添らしい判断といえそうです。

この序盤の細かな出し入れがありながら、そして直線半ばの致命的な切り返しがあってなお、イクイノックスをクビ差まで追い詰めましたからね。大したものです。

 

直線、外にジャスティンパレス、前にジオグリフがいたことで進路がなくなったわけですが、これはもう結果論という他ないかなと。遠因としてはその前方にいたジェラルディーナが馬場のよいところを求めて外に張り出してきたことですが、その後のいずれの動きもフェアなそれですから。後方にいた馬に進路の選択肢が限られることは、このゲームの基本的なルールというべき事柄でしょう。

 

強いて言うならイクイノックスの外。直線に向くまで直後でコーナリングして、直線でチャンピオンの外から差してくる戦略。…でもこれは自身に何らかのアドバンテージがあるという見立てでないと取りにくい戦法でしょう。結果からみればブレーキを踏まずに外を回したら…とは思いますが、10番人気でかつテン乗りですしね。

 

福永調教師のインスタライブ、宝塚記念の回顧をしていまして録画を覗いてみましたが「結果論」「結果的に」というワードの登場回数の多さが目立ちました。そのなかにこの池添の進路選択も含まれていましたね。端的な表現をすると「しゃーない」となるのでしょう。はい、同感です。

 

今年の凱旋門賞へのエントリーは3頭、うちサリエラとドゥラエレーデは獲得賞金が十分ではないものと思われます。スルーセブンシーズは賞金を加算しつつレーティング117を確保。出走にあたりパート1国の馬が優先されるようですし、今年から20→24頭に出走頭数が増えましたので、希望すれば出走は叶いそうですね。いってほしいなと思わせる末脚と馬体の充実ぶりでした。

 

ジェラルディーナは早めの進出から4着

こちらもスタートから待機策を選択していました。ルメール、池添、武豊。ペースと馬場から妥当な戦略をとっていたジョッキーはやはり連戦錬磨でございました。

 

1コーナーでイクイノックスの外から蓋をするポジショニング。そこからするとポイントは3コーナーで早めに進出する判断ですね。鞍上は馬がハミを取ったことを受けて早めの判断にした旨のコメントを残しています、イクイノックスの蓋より気分よくという優先順だったことが窺えますね。

同時に「レース中の気持ちに波がある」とのコメントも。敗因分析というよりはジェラルディーナの特徴を描写したものと素直に受け取っています。ここから「3コーナーからの残り距離<ハミを取ったという意思」という優先順でスパートのタイミングを決めたものと推測は成り立ちますね。

そう考えるとジェラルディーナの踏ん張りはなかなか。乗り難しさを抱えている前提があるなら、しっかり頑張り切らせたことを評価すべきなのかもしれません。

 

その他気になった馬

ディープボンドは序盤のペースを追いかけながらラストまで踏ん張っての5着。自分のリズムで力を出し切っての善戦という印象です。なお、17頭立てのレースでしたから上位半分にあたる8着までのうち、1、2コーナー通過順が1桁の馬はディープボンドのみ。…このレースの特徴を端的に表しているかもしれませんね。

ジャスティンパレスは3着。3コーナーでジェラルディーナにパスされてからだいぶ追い通しになりましたが、交わされたイクイノックスにゴールまでじわじわ詰め寄る息の長い末脚。ちょっとヒシミラクルを思い出しました。距離が足りないということなのか…。

 

最後に

当日は府中で観戦。G1後は人生初の馬場開放に参加しました。朝の9:30くらいに整理券を受け取ったのですが、第2グループの券という。先着順に配布していますので第1グループの券をお持ちの皆さまはだいぶ朝早いんですね。。。

 

エクイターフを自分の足で踏みしめることができたのはとてもよかったです。外側の馬場はそれはもうフカフカ。かなり芝の密度があって土の感触があまり得られないくらいでした。一方で内ラチ沿いはところどころ芝がなくなり路面がむき出しに。固めで凸凹としていましたね。

以前から雨が上がってインから乾くという話は聞いていて、理屈としては理解できていたのですが、実際に芝を見て歩いて、改めて納得ができたところです。路面に直接陽があたるか、そしてどのくらい芝が保水するか、あの内外の馬場では雲泥の差でしょうね。百聞は一見に如かずとは言ったものです。

 

一部のラチを外してダートコースにも入れるようになっており、こちらも嬉々として歩いてまいりました。砂の感触を確かめつつ、力を入れる角度や力の強さを変えながら、砂をグリップして後方に蹴る動作を何度も繰り返していたのはわたしです。ええ、変態ですね。いい体験でした。

 

当日、G1前に購入したイクイノックスで記念撮影。Twitterにアップしていますがこちらでも。

2023/6府中の馬場開放とイクイノックスぬいぐるみ