more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第83回 皐月賞

ソールオリエンス、重馬場の厳しいラップを豪快に追い込みました。

 

出負け気味にスタートで置かれたのを見て、このまま圏外かなと思っておりました。4コーナー手前で膨れる所作をターフビジョンで確認したときも同様。前走同様の未成熟な手前替えがでたかと察しておりました。

内枠、重馬場、中山2000での差し競馬、そして未完成のフィジカル。不安材料は揃っていましたからね。

 

…諸条件、全部飲み込んで大外からぶっ飛んできました。1コーナーまでに馬群の外へ持ち出した横山武史のヘッドワークの見事さと、腹をくくって末脚にかける胆力が際立った瞬間でもあります。

最近でいうとジェラルディーナのエリザベス女王杯にレース展開が重なっていますが、あんな後方から届いた皐月賞、記憶にないですものね。

 

抜けた馬がいないと評されていた事前のトーンは一変、ダービーに向けて1強ムードという印象があります。一戦で評価を変えるあたり、後々も名馬と評されるなる素養を感じているところ。戦前はソールオリエンスとファントムシーフが頭ひとつ出ている認識だったのですが、さすがにぐらついております。ファントムシーフ推しなのでね。

 

指定席がとれたのは幸運でした。武史が意図的に最後に行った返し馬のダイナミックさは忘れないでしょう。現地観戦できたことは後々自慢話にできそうな予感がしています。

 

公式レースラップ

12.3-10.9-11.9-11.6-11.8-12.4-12.5-12.7-12.5-12.0

 

前日の雨、当日の雨

前日土曜日は終日雨模様、そして日曜は降ったり止んだりという不安定な空模様でした。午後を通して1コーナー方面の空に黒い雲がかかった状態。

8Rは「晴」ですが9Rは「雨」、そして10Rは「晴」。極端ですよね。この短時間で一気にスタンドに傘の花がひらいて一気に閉じていく様は指定席からよく確認できました。メイン前にまとまって降ってしまいましたからね、重馬場はやむを得ないと覚悟して予想に臨んだ次第です。

ちなみに最終12Rも豪雨と雷鳴の中で行われ、レース後すぐに雨が上がるという。人馬ともやりづらかったでしょう。G1当日の天気雨は予想にはかなり厄介なファクターですね。

 

ラニットの逃げ、タッチウッドの折り合い

予想された通り、前走スプリングS同様のスタートダッシュでグラニットがハナにたちました。ただ、前走は最内枠からいかざるを得ないという立場、かつ内枠に同型馬がおらず、1コーナーまでが短いコースレイアウト。結果的にマイペースにもちこみやすい条件が揃ったものと評価していました。

今回は全部逆(外目の枠、同型馬の存在、1コーナーまでが長い)ですからね。厳しい展開が待っているだろうと予測していました。

 

一方のタッチウッドはやはり制御が効きませんでしたね。スタートしてからそのグラニットが視界前方でダッシュ、外からはメタルスピードが被せてくる状況。案の定、馬はやる気になってしまいました。

武豊はリズム重視で控えるレースプランだったのでしょう、スタート直後は相当位置取りが後ろでした。ポジションを取りに行く意思はないという所作に見えています。

個人的には「やはり」なのですが、共同通信杯の経験がかなりマイナスの影響を及ぼした結果なのでしょう。押してハナに立った前走の経験とあの強めの前進気勢が組み合わされば「行きたがる」という予測は容易に成り立ちます。

折り合いを壊してしまうレースを経験するとそれを取り戻すためのレースがひとつ余計に必要になる、という認識を持っています。エピファネイア弥生賞から皐月賞、ダービーが典型でしょうね。

クラシックのローテーションでその「ひとつ」はかなりのマイナス材料になるはずです。若干乱暴な議論とは思いつつ、短期免許の騎手に任せると…、という論調もあながち間違いではないように思うところです。経験の積み重ねが必要な有力馬に一戦必勝みたいな乗り方は、ね。

 

前半のラップが厳しくなってしまったのは、2ハロン目を追いかけた先行勢のプレッシャーと、2コーナーを過ぎてタッチウッドがグラニットに追いついてしまったことが重なった結果と思っています。

前者は10.9というラップ、後者は11.9-11.6というペースが落ち着く箇所での再加速に現れていますね。

ラニットもタッチウッドも、望んでいたラップではなかったと思われます。重馬場の58.5、先行各馬の想定以上に突っ込んだ前半になったものと理解しています。

 

ソールオリエンスは若さを覗かせるコーナリングと粗削りな末脚を披露

トロールビデオを観ると、スタートから一貫して馬場の外側へ鞍下を誘導する横山武史の意思が伝わります。スタートして数完歩で待機策に切り替えたのでしょう、あとは横のポジショニングをできるだけベターにすることを優先していたようです。

外からトップナイフが被せてきたあたりはなかなか味わい深い光景ですが、おおむね通りたいコースまで外に持ち出せたのではないでしょうか。

 

向こう正面でタスティエーラ、メタルスピード、ファントムシーフ、6着だったシャザーン、ソールオリエンスが一直線に並んでいる構図は馬場の傾向を象徴的に物語っているでしょう(それを考えるとこの時最内で馬場を搔いているショウナンバシットの5着は評価すべきなのかもですね)。

上位入線したジョッキーは然るべきコース取りをしていました。武史はこのコースをあらかじめ意識していたはずで、それだけでも信頼に足る存在といえますね。

 

残り400の少し手前、4コーナーのコーナリング最中にまたも手前替えが発動してしまいました。ソールオリエンス自身が直線的に加速したいのでは、といったツイートも目にしましたが、個人的には馬が未成熟ということなのだろうと思っています。

加速を促されてそれに応えようとした結果の手前替えであって、コーナリングの途中で手前を変えたら外向きの推進力が生まれる(ひと言でいうと膨れる)、ということをまだ皐月賞馬自身が理解し切れていないように見えるんですよね。

コーナリングの中で十分な加速を得られるだけのフィジカルもまだまだ成長の余地を残していて、そのフィジカルの追いつかなさを馬自身ががんばって補って加速しようとした結果、手前替えが生じて意図しない膨れ方に至っているように見えています。

膨れている最中のソールオリエンスの顔の角度と表情は必見ですので、ぜひパトロールビデオで。武史が手綱で補正している前提でもとぼけた感じでよいですよ。

 

翻せば、馬体のスケール感に対して心身ともこれからという状況でクラシックを獲ってしまった、その点に相当な奥深さを感じているところです。春のクラシックに間に合うキタサンブラックか。凄いですね。

 

3戦3勝は皐月賞最少キャリア。ダービーでフサイチコンコルドが成し遂げた最少キャリアと同じ。というより、これ以上の最少はほぼあり得ないでしょう。このまま歴史に残っていく記録になるのでしょうね。

 

そうそう、フリーライターの土屋真光さんのツイートがふるっていました。

「まだ隠されたギアがある」。ブラックタイド皐月賞を惨敗した直後のユタカさんのコメントだったと記憶しています。2004年の皐月賞ですから、およそ20年かけてその言葉の意味が紐解かれたわけですね。ベテランファンにはささる切り口、そして当時ブラックタイド本命だった自分にはばっちり響くツイートでした。

 

順調であれば、ダービー。いやーどうしよう。皐月賞がおわってもソールオリエンスとファントムシーフという2頭を上位にみる評価は大きく変わっていないのですが、枠と馬場で予想はずいぶん悩ましくなる予感がしています。賞金ボーダー的にグラニットもタッチウッドもいないダービーでしょうからね。

 

ファントムシーフはストロングポイントを活かし切れずの3着

2歩目がしっかりしていたことでほぼ五分のスタートダッシュ、そこからフリームファクシをインに閉じ込めつつの1コーナー。合わなかったであろう馬場コンディションなりにルメールのリードは素晴らしかったと思っています。

以下、ファントムシーフカメラではどうコース取りをしていたかがよくわかりますね。

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右後ろの落鉄はどのタイミングだったでしょうね。上記の映像では向こう正面でフリームファクシと接触しているようで、レース後半をまるまる蹄鉄なしで走ったという報道とおおよそ合致する箇所ではあります。

 

ファントムシーフの特徴はストライドを詰めた加速があまり得意でないところにあると見ていまして、加速に時間を要するのはこのためと思っています。スピードに乗ってからストライドが大きく伸びるなら完璧なんですけどね。

ストライドを大きく使う馬がしっかり馬場をグリップできないロスは他馬より大きいものと推察します。3コーナーで若干置かれ気味になったり4コーナーでスッとシャザーンに被せられたあたりに、落鉄とこのストライドの食い合わせの悪さが読み取れると思っています。

 

直線に向いて、外への進路をシャザーンに消されていた中で、右鞭を入れた瞬間にメタルスピードが前をカットする不運も。タスティエーラ→メタルスピードと順に外へ寄れたタイミングとファントムシーフへのGOサインがぴったり重なってしまいました。

いったんついたスピードを殺してからインに切り返して末脚を伸ばしたわけですが、落鉄×時間を要する加速×登坂ですから、ここからの巻き返しはなかなか難しかったでしょう。

…しかしメタルスピードはタッチウッドとファントムシーフにデバフ効果をもたらしていたわけですね。お見事というかなんというか。。。

 

共同通信杯との比較でいえば相当にアンマッチな条件でG1に臨んだといえそう。府中の良馬場なら条件好転でしょうし、多少渋っても大丈夫ですからね。ダービーでの巻き返しを期待しています。

気になるのは鞍上。この投稿を書き損ねている間に青葉賞をスキルヴィングが快勝。キャロットという点以外はイクイノックスの陣容ですからね、ルメールはこちらを選ぶのでは…、という気がしております。もしそうなら鞍上はユタカさん?ユーガ・カワダ?はっきりするまではちょっとやきもきさせられてしまいますね。

 

最後に

冒頭で記した通り、現地観戦でございました。振り返ってみたらやはり皐月賞は初の現地観戦。どうしても中山はパドックとスタンド前までの移動が府中に比べてスムーズではないですからね。府中のほうが足を運びやすいこともあり、優先順位があがっていませんでした。指定席が取れたのは大きいですね。

パドックは混雑回避から上の階から眺める形にしましたが、観察には十分なポジションを確保できました。返し馬の見やすさは指定席ならでは。不安定な天候でしたが指定席は屋内ですからね。いろいろな意味で快適に過ごすことができました。久しぶりにスタンドの地下でカレーも食べることができましたし。ちょっと味を占めているところです。

 

レース後は桜花賞に引き続きジョッキーカメラが話題になっていました。ソールオリエンスカメラはかなりリアルな内容になりましたね。早々にぬかるんだキックバックを受けて画面がぼんやり。そのまま公開したJRAの判断が光っております。武史の絶叫と合わせて堪能できました。

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そしてこの投稿のタイミング。いやー無理でした。4月は昨年度のフリカエリや課員の評価面談、今年度の施策などなど昼間のお仕事のタスクがたくさん押し寄せやすい時節でして、じっくり皐月賞回顧という時間の捻出が難しかったです。日付変わってもう天皇賞当日なのですよね。できるだけ気持ちの熱いうちに書きたいのですけどね。

 

新装した京都は少しだけ上がりを要する馬場コンディション。マイラーズカップでのシュネルマイスターの勝ち方を見る限りは、気持ちタフな末脚が必要になるイメージを持っています。

内枠スポイルとなったジャスティンスカイ川田のコメントからは、4コーナーのカーブ修正が思った以上に効果をもたらしているようですしね。以前のような直線入口でインがパカッと開くことはなくなりそうです。

 

しかし何より、いまいま京都は雨が降っている最中。。。朝には上がるようですがリニューアル京都の馬場がどれくらいの排水性を保持しているのか、これを見極めながらのG1予想になりそうです。

いまのところはタイトルホルダー優位と考えていますが、それこそ馬場状態と蹄のグリップがちょうどよい馬を見極めて予想に味付けしたいですね。府中で観戦する予定です。