イクイノックス、完勝でした。
4コーナー、カッコよかったですね。懸命に手綱を押す1列インのエフフォーリア、大外を捲ってきたボルドグフーシュ、これらを背負って手ごたえ抜群の馬なり。
ちょうど馬場の色が変わるコース、ギリギリ芝のよいところなのでしょう、きっちりそのラインをなぞりながら直線に向くまで慌てないルメール。いやー、カッコよかったですね。本命にしてよかった。
スタートから少し下げて先行馬群を見る形、1周目のスタンド前ではエフフォーリアの後ろを取ることができていました。中団の外、馬場コンディションと相まって理想的なポジションに収まっていたでしょう。
ルメールは9番枠についてポジティブなコメントを出していましたが、おおよそこのレース運びがイメージできていたのでしょうね。1周目のスタンド前でラストドラフトとバチっとやっていましたが、ポジションを主張し切ったあたりは人馬の強さの表れと思っています。
2コーナーから向こう正面でかかる素振りを見せていましたが、ここのルメールの畳み方はとてもお見事でした。あれだけ行きたがると鞍上の重心が後ろに倒れてしまうのですが、ひざを使ってロスが少ない挙動、いわゆる「いなす」形をつくっていました。
グリーンチャンネルの当日夜の番組での佐藤哲三氏の解説では、ルメールが左右に軽く馬を振って力を逃がすアクションを取っていたとのこと。確かに~、と思いながらパトロールビデオを確認しました。
直線は余裕でしたねぇ。残り400からのレースラップは11.4。決してボルドグフーシュも止まっているわけではないのに、このラップタイムの中を突き放していきました。
ゴール後に福永が握手を求めたそうですが、ゴールを過ぎて引っかかるイクイノックスの制御でルメールは手を差しだせなかったそうです(サントリーがスポンサードした福永と川田の対談で語られていました)。これもイクイノックスの能力が抜けていたことを示すエピソードでしょう。
この決着にあえてたらればを挙げるなら、タイトルホルダーが凱旋門賞を目指していなければ、だと感じていました。…うーん、やはり現実的ではないんでしょうね。
それぞれの求めるローテーションがあったからこそこのマッチアップと勝敗のコントラストになったわけで。やはりイクイノックス完勝というべきなのでしょう。
公式レースラップ
7.0-11.3-11.7-12.1-12.5-13.1-12.7-12.4-11.8-11.9-12.2-11.4-12.3
昨年のラップはこちら。逃げたのはパンサラッサ、タイトルホルダーは2番手でした。
6.9-11.3-11.6-11.5-11.9-12.5-12.6-12.2-12.4-12.4-12.2-12.0-12.5
パワーを要する外差し寄りの馬場コンディション
土日ともに良馬場でしたが、上がりのかかる芝コンディションでした。日曜9Rのグッドラックハンデキャップ、有馬記念と同じ2500mですが、2:34.7の決着はともかく勝ったアケルナルスターは4コーナー11番手から上がり36.0という末脚。
残り1000で逃げ馬がバテて先行勢が早めにスパートする変則的な流れがあったにしても、上がりはかかっていました。
どうやら木曜の雨の影響が残っていたようですが、このあたりは府中のエクイターフとは異なっているように映ります。府中だと金曜にまとまった雨が降っても翌日晴れればお昼前には良馬場まで回復して、上がりタイムも速めにシフトしていきやすいですからね。
こうした傾向を見て取って、インコースを通る先行馬には不利、また足捌きの軽いタイプも厳しいという推察を得るに至りました。
ジャスティンパレスを穴的に押す向きがありましたが、この観点で評価を下げました。きっとタイトルホルダーの直後か斜め後ろ、というマーカンドなポジショニングも込みですね。
内枠にはいったイズジョーノキセキも、枠順が出た瞬間はできるだけ皆さん買わないで(笑)と祈っていましたが、内枠のアドバンテージはあまり強調しにくいという判断に落ち着きました。
動きに軽快さが増していたディープボンドも無印と判断、勝負にいく川田の気質とは馬場も含めて合わないという判断になりましたしね。
スタートから行きっぷりが怪しかったタイトルホルダー
当日はパークウインズ府中で観戦していまして、パドックも中継映像で確認していました。タイトルホルダーが映った瞬間の印象は「肩の出がいまいち」。
ただでさえピッチ走法のステイヤーなのによりピッチが縮こまるのか…。海外遠征帰りの心身の疲労は、なかなか厄介なのかもしれません。あの不良馬場でしたしね。
個人的にはその懸念が図らずも的中、というスタートになりました。昨年とラップタイムを比較すると最初の300mまではコンマ1秒しか違いがないわけですが、大外枠だった昨年のほうが手ごたえよく先行していました。
横山和生が手綱を意図的に大きく動かして手ごたえの悪さを演出…などという昭和の競馬的な発想も一瞬よぎりましたが、やはり端的にダッシュがつきにくかったのでしょう。
昨年のラップは馬体が本格化する前。それよりも少し緩んだラップで逃げているわけですから、ラップの緩急がつきやすいペースを演出した格好になっています。
強さを示した天皇賞春にしても宝塚記念にしても、直線の切れ味ではなく早め早めに踏んでいって後続のスタミナをなし崩すというスタイル。宝塚はパンサラッサの緩まないラップを追走する形でもありました。
直線に11秒台前半のラップが登場している時点で、レース全体のラップ構成がタイトルホルダーの必勝パターンではなかったことを示唆していると言えそうです。
評価は下げたものの、直線もっと粘っているイメージだったんですけどね。ぜひ心身を立て直して来年の競馬に臨んでほしいと思っています。レースが嫌になっていないといいですね。
イクイノックスの背腰について
当日夜のグリーンチャンネルでのレース回顧番組、ゲスト解説に松田国英元調教師がいらしていました。イクイノックスの木村師と電話がつながり、「いい仕事しましたね」「話せてよかった」といった和やかな雰囲気のなか、マツクニさんがイクイノックスの背腰について触れていました。
曰く「ああした胴の長い馬はいったん背腰にダメージを受けてしまうと戻すのが大変、大きなダメージにならないように厩舎関係者が気を配ったのだろうな」と。それに対して木村師は「背中の筋肉、尾っぽの筋肉がのってくるのに時間がかかる、今回は最終追い切りが終わった後くらいからしっかりしてきた、ギリギリすべり込んだ」と返していました。
やり取りを聞いた瞬間に浮かんだのはクロフネ。もちろんそれに限らずですが、マツクニ陣営はきっと苦労されていたんだろうなと身勝手な推察が始まっておりました。背腰の柔軟さが落ちたところに速い追い切りをかけた場合、脚元にかかる負担は増すでしょうからね。
…クロフネの屈腱炎発症は年末だったなと、ジャパンカップダートの疲れをとりながらドバイに向けてトレーニングを立ち上げた頃だったのかなと。その難しさを体験した師同士のやりとりなのだと、なかなか感慨深く受け取っておりました。
父キタサンブラックの馬体の完成も遅かったですしね。大柄な馬体をどう完成まで持っていくか。東スポ杯から皐月賞という異例のローテーションはひとつの結実を迎えたと言っていいのでしょう。
ドゥラメンテ VS キタサンブラック
菊花賞ではドゥラドーレスとガイアフォース、阪神ジュベナイルフィリーズではリバティアイランドとラヴェル、そして有馬記念ではタイトルホルダーとイクイノックス。
同期で三冠を分け合った2頭が今度は送り出した産駒で再びG1を競い合う。ある意味ブラッドスポーツの醍醐味を体現しているわけですが、どうもこの図式では盛り上がっていませんよね。
ドゥラメンテの追悼記事のなかでも同様の取り上げ方をしていたのですが、やっぱり直接対決で盛り上がった経緯がないことが響いているのかなと。あと少しの期間しか楽しめない構図ですので、ぜひと思っています。
個人的にはかなり盛り上がっていましたよ。どちらの代表産駒(現時点ではね)を有馬記念の本命にするのか。いやー楽しかったですね。
昨年の追悼記事は以下の通りです。
イクイノックス、来年の目標
賞金の増額を加味して、日本の中距離で行うレースに挑む意義はジャパンカップを除くとあまりなくなっているかもしれません。レース間隔からするとサウジカップデーではなくドバイミーティングかな、と推察できますし、馬場の悪化しやすい大阪杯は目標と掲げるのに微妙な気がしています。4月末に香港がありますね、そちらも候補にはいるのかな。
ルメールはパリロンシャンの良馬場なら、と話していました。イクイノックスの軽快なフットワークを活かすにはあの時期のパリロンシャンではないだろうと思っています。どうしても天候の運に左右されてしまいますので。
こうして並べていくと、どこに目標を定めるのか、イクイノックスの特徴とマッチする選択肢は多いようで限られているのかなと感じます。それならば春先を比較的ゆっくり立ち上げられる豪州遠征、あるいは京都に戻る天皇賞春でもいいかもしれませんね。
ボルドグフーシュは大まくりでの2着
内枠にはいった時点で中団に構えるスタートが可能なのかが気になっていました。鞍上福永のインタビューが多かったのはラスト有馬記念という事情からでしょう、そのニュアンスを汲み取る限り、鞍下のスタートに自信は持っていないように見えていました。
もちろん五分にでてインの中団をキープできるならその後の運び方は大きく変わってくるでしょう。少なくとも4コーナーで大外をぶん回す距離ロスを避ける戦略が現実的になってきます。でも、本人は後方待機になることのほうを現実的に捉えていたのではないかなと。
ファーストコーナーで後ろから2番目。意図的に促していかなかったアカイイトが最後方ですから、ポジションがほしかった馬の中では最後方というスタートダッシュになりました。
戦前の評価通り、まだトモに十分な筋力がつききっていない状態なのでしょう。加速に時間を要する、それはやはり展開上のデメリットとなってしまいました。
残り800からの捲りは鮮烈でしたが、アカイイトが外から被せてきたのを嫌って仕掛けた、少し本意でないタイミングでの進出開始だったと受け取っています。どちらかというとこれはいい意味でベテランの機転、もしアカイイトを待っていたらジェラルディーナと着順は逆転していたかもしれません。
血統が血統ですからね、あの捲りは祖父グラスワンダーを思い起こさせました。どちらかというと、体調を戻しながらレースを迎えてメジロブライトの追撃を封じた98年の有馬記念のほうが近しいイメージ。背格好もフォームも全然面影ないんですけどね。あの強烈さは受け継いでいるように思いました。
福永がレース後にコメントしていたように今後の活躍が楽しみな1頭。どう完成してくるんでしょうね。菊花賞本命時の手ごたえは忘れずに来年に持ち越しておくつもりです。
ジェラルディーナは致命的な出遅れから3着
テンションの高さと好走が連動しているタイプなのでしょう。レース間隔も相まってソフト目に仕上げたことが、ゲートの俊敏さを奪ってしまう結果になったようです。
直線はインに突っ込んでいきました。秋華賞のスターズオンアース、朝日杯のダノンタッチダウンに並んで、名手の腕と胆力が成したインからの豪脚。3頭に共通するのは鞍上の観察力と着実な馬群の捌き、そして徐々にアウトコースにスライドして進路を確保する巧みさでしょう。お見事という他ありませんでした。おかげで3連単が取れましたよ。
重賞を惜敗しながら徐々に力をつけていき、噛み合ったのがオールカマーという道程だったようです。あのイン突きはできないとしても、馬群中団から外目にだして勝ち負けに加わってくる可能性は十分あると予想して、がんばれ馬券を買っていました。予想した展開とは大幅に異なっていますが、こちらも当たりですね。
個人的には来春は香港を目指してほしいと思っています。シャティンでロマンティックウォリアーとの激突なら観てみたいですねー。
エフフォーリアは光明を見出した5着
やはりあの積極的な返し馬が印象的でした。1週前のテレビ中継で「牛」と評された馬体、正直返し馬までは無印でやむを得ないと考えていました。
ここはあくまで復帰戦と考えていたなら、横山武史はあの気合をつけた返し馬にはしなかったでしょう。そして、あの返し馬が必要だという時点で前進気勢にあふれた3歳時のエフフォーリアではないのだな、ということも伝わってきました。
ただ、この返し馬の勢いからすればワンチャンあるかも、と思わせてくれましたね。慌ただしくはなりましたが、締め切り直前に買い目の見直しをするに足る動きでした。
現状のなかでベストを尽くす。それがレースでもあの積極策につながったように受け取っています。積極策を生み出すためのあの返し馬だったのでしょう。
レース振りは絶好調時のそれとは比較しがたい内容だったと思いますが、好材料をもって来年に向かうことができるのではないでしょうか。
最後に
いやー、ホープフルSも東京大賞典も終わってしまいました。週明けから仕事に忙殺されつつ、仕事納めがホープフルS当日。
ちょうど川田将雅の初リーディング、それも騎手大賞ですからね、個人的にはとてもめでたく。自宅で祝杯を挙げた結果、疲れと相まってまったくレース回顧ができないままどっぷり寝てしまいました。。。東京大賞典が外れた言い訳にも使えますね。
このブログの投稿のたびに構えとして持っているのは、あとで読み返すときに「あぁこうだったな」とイメージをくゆらせることができる言葉を選んで残しておきたいというこだわり。これがちゃんと時間を確保して向かい合わないと、という思いにさせてしまうんですよね。で、投稿のタイミングが遅れるという。
本人以外にはよくわからない感覚ですので、読み手の皆さまには何ともいえない話でしょうけれども。でもあのイクイノックスの4コーナー馬なりを高揚して見届けた感覚は何とか自分なりの言葉にしておきたくなってしまうんですよね。もうしょうがない。
というわけで大晦日にかけて少しずつレース回顧なりをまとめていこうと思っています。大掃除もやらなきゃですね。