more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第67回 大阪杯

ジャックドール、武豊の見事なリードでG1戴冠成りました。

 

ノースザワールドの接近を交わしながら先頭で1コーナーへ。スタートからあまり無理をせずに先手を取れていましたから、この時点でかなり武豊の逃げが決まる予感がしておりました。

けん制の効いたラップ。淡々としているように見えながら、4コーナーでは先行馬から順番に手が動いてしまうペース配分がそこにありましたね。細かい解説は多方面でされていますので割愛気味でよいかなと思っています。

向こう正面で捲られない11.4からそれを持続するラップを作り出すあたりが武豊の技術と胆力、と表現すれば個人的には十分ですね。

 

自分が思い出したのは2016年のジャパンカップキタサンブラックで1番枠から交わされないスピードをキープしながら1コーナーへ進入しました。ライアン・ムーアリアルスティールが外枠からかなりダッシュしてこの流れをけん制していましたが、キタサンブラックのマイペースを崩すことはできず。4コーナーを待たずに後続の手綱が動き出すあたりは今回とよく似ています。

個人的には日本近代競馬の結晶はこのジャパンカップだと思っていまして。武豊のペース配分は分析はできても再現は難しいのでしょうね。

 

ジャックドール完封の流れに1頭だけ抵抗したのがスターズオンアース。馬格からパワーから柔らかみから、パドックでは群を抜いていました。コース適性の差といえばそうなのですが、スタートで寄れたポタジェを交わすひと手間。秋華賞同様、後手を踏む展開になってしまったのはアクシデントに近い状況と思います。ルメールもよく我慢して差し込んできましたね。

 

逃げの武豊と差しのルメール。終わってみれば名手2人の技術と判断を尽くしたいいレースを観ることになりました。馬連1番人気でも堪能できましたね。

 

公式レースラップ

12.4-10.9-12.2-12.0-11.4-11.7-11.5-11.4-11.4-12.5

昨年のラップはこちら。比較するとこちらの方が厳しい展開だったことが伺えます。

12.3-10.3-12.0-12.2-12.0-12.1-11.7-11.5-11.8-12.5

 

ジャックドールのスタートダッシュ

昨年の大阪杯の投稿で、ジャックドールの敗因についてこんなことを書いていました。

ジャックドールが粘り切れなかったのは複合要因と思います。少し馬場が緩かったことがスタートからの加速に鈍さにつながったのかもしれませが、金鯱賞の前半3ハロンは12.5-11.0-12.2。昨年のそれと比較しても、今年の2ハロン目はかなり突っ込んだラップに見えています。

 

昨年はスタートしてすぐにウインマリリンが直後に張り付く展開。軽快にスピードをのせられる馬場コンディションでもなく、その中で先手を取り切るのはなかなか負荷が大きかったでしょう。同型馬が少ない今年の方がまだ与しやすかったという背景はあると思っています。

マリアエレーナ、ノースブリッジの内枠2頭がそこまで主張しなかったのもジャックドールマイペースの伏線になりました。特にマリアエレーナはもう1列前で道中を進められたら、もっと上位争いに肉薄していたかもしれません。トレーナーの強気のコメントが聞こえていましたが、あながち見当違いではなかったように映っています。

 

藤岡佑介で勝った白富士S。馬場差がありますのでざっくり比較になりますが、同タイムで制したこのレースは今回の競馬と近しい意図があったように見えますね。以下ラップです。

12.8-11.3-11.8-11.8-11.7-11.8-11.5-10.9-11.4-12.4

 

スターズオンアースは復帰戦で惜しい2着

勝ってほしかったですね。あと一歩でした。先に書いた通り、アクシデントに近いスタートがあり、道中は動きにくいポジショニングがあり、さらに差し馬がスポイルされやすいコースレイアウト。初の牡馬との対決もありました。1コーナー手前でキラーアビリティの厳しい寄せに顔をあげるシーンも。

これらの条件を乗り越えて、直線1頭だけ差し脚を伸ばしたのは卓越した能力の証。それだけにあとちょっと、運が向いてほしかったです。

 

3、4コーナーでストライドを活かしたいとコメントしていたルメールも、その3、4コーナーで我慢を強いられる形。ヴェルトライゼンデの外に展開してストライドロスを抑えるスパートを選択しなかったあたりは、ルメールならではの落ち着いた判断ですね。サトノダイヤモンドで捨て身の大まくりをしていた判断とは異なる信頼が鞍下にあったのでしょう。

 

次走はヴィクトリアマイルとの報道。レース後に「2400mの馬」と評したジョッキーのコメントとは大きく外れる選択になりそうです。距離よりも長い直線とスピード馬場が優先ということなのでしょう。ソダシ、メイケイエール、ソングライン、スタニングローズ、ナムラクレア、ナミュール…。ものすごいメンバーが揃ってしまうことになりそうですね。

 

ダノンザキッドは加減速の少ないラップに乗っての3着

キレも粘りも、勝ち切るまではもうひとつというキャラで認識しているダノンザキッド(お気に入りです)。今回はないだろうと思っていましたが、横山和生が見事にこの流れにのせてきました。ジャックドールにあと少しのところまで来れましたね。信じていれば複勝は取れたかもしれませんが、いやーさすがに今回はチョイスできなかったなぁ。

改めて、勝ち切るにはスイートスポットの狭い馬だと認識。できれば鞍上継続がよいのですが、次走クイーンエリザベス2世SはV.ホーとのこと。現地ジョッキーが吉と出てほしいですね。

 

マテンロウレオは「負けただけ」の4着

もう横山典弘のコメントにすべてが集約されています。曰く「負けただけ。最高の競馬だった」。

武豊の直後。スタートから狙って取りに行ったのでしょう。内枠ノースブリッジの前にはいりながらジャックドールを眼前に迎え入れての1コーナー進入、もう狙い通りだったのではないでしょうか。道中のペースにはもちろん気を配るでしょうが、あとは直線進路を確保するだけ。この2000mをリードするには最高の形になりました。

…スターズオンアースから馬連は押さえていたんですよね。狙いはよかったのかもしれません。少なくとも4コーナーでは「やばい、上手くいっている」とワクワクしていましたから。ベテランファンの楽しみ方、きっと複雑骨折してみえることでしょう。楽しかったですね。

 

その他、気になった馬

ヴェルトライゼンデは真っ向勝負の4コーナーに見えました。1コーナーでポタジェ、ヒシイグアスに挟まれる格好になり、大きく顔を上げるロス。差し馬には厳しい1コーナーになりますね。どうやら両前脚の浅屈腱炎を発症してしまったようです。しっかりケアにあたってほしいですね。

 

ジェラルディーナは1番枠がアダになった模様。宝塚記念は外枠から外差しバイアスの馬場を伸びてきましたから、今回とはだいぶ異なる条件でG1を勝った格好。内枠も差しもスポイル要因という認識です。次走はダノンザキッドと再戦、C.デムーロに手が戻るのはプラス材料かもしれません。

 

ヒシイグアスはパドックの歩様に違和感を覚えました。ぎこちないカラダの運び、どこがどう悪いとは素人にはわかりにくいところですが、後躯の踏み込みがある割に肩の動きにスムーズさを欠くといいますか。敗因はそれだけではないのでしょうが、当日の馬体重は-18、1週前追い切りまではきっちり動いていただけにちょっと疑問符がつく仕上げだったように見えていました。

 

最後に

当日は所用の流れでウインズ浅草へ。…ここのところ首都圏のウインズを順にたどっているような感じ、意図してないのですけどね。ずいぶん前に一度来たような、でも全く記憶にないので初めてということでよいのでしょう。

思ったよりきれいで整然としていましたね。ひとが少ないのはもうウインズ全体の傾向なのかもしれませんが、落ち着いて観戦することができました。

周辺のお店はそれこそ昭和の香りが。ハイボールともつ煮は選びませんでしたが、パッと見つけたたこ焼きは美味しかったですね。インバウンド向けにきれいになっているお店も多く、また行ってみたいと思っています。

 

武豊はこれでJRAのG1を80勝。凄い記録ですね。意外と逃げ切りが少ない、という記事を目にしましたが、G1に限るとそうなるのでしょう。サイレンススズカ宝塚記念エアグルーヴに乗り替わっていますし、エイシンヒカリトウケイヘイローなど印象的な逃げ馬とのコンビもJRAのG1ではないですものね。

その他の5Gのお歴々が勝てばG1最年長記録更新になるのでしょう。レベルの高い争いであれば大歓迎ですので(実際すごいですしね)、まだまだ楽しませてほしいですね。