先日、グリーンチャンネルの『栄光の名馬』でコントレイルが取り上げられていました。録画しておいたのを先ほど拝見。ラストラン後の福永のインタビューを見ながら、少し思いついた言葉を書いておきます。
「3000m走れる馬ではないんですよ」。感極まった表情で絞り出した言葉。東スポ杯で示した圧倒的な加速力からして、ギアチェンジの速さと軽快なスピードが武器と理解はしていました。ディープインパクト×アンブライドルズソングですし、母系の奥にストームキャットですから欧州寄りのスタミナを内包していないという特徴が、このコメントにつながるように思っています。
ディープインパクト、オルフェーブルとも折り合いという課題と戦いながらの距離克服。コントレイルの場合は両前球節の不安という問題とも戦っていたわけですけどね。
中山2000m、東京2400m、京都3000m。三冠の舞台設定は一貫して変わりませんが、スピード化していった血統や整備されたトラックコンディション、ジョッキーのスタイルや調教技術、飼養管理や医療、メンタルコントロールまで取り巻く環境はどんどん変化しています。
中山の2か月開催の最終週、馬場が荒れやすい環境下で3コーナーからペースアップしタイトな4コーナーと直線の登坂を克服する必要がある皐月賞。1コーナーまでが短い中で前目のポジションを取りにいかなければならない、速い馬場で先行バイアスの強いダービー。改修後の傾向がどうなるかわかりませんが、スタミナを温存できる折り合いと4コーナーで下りながら加速する器用さが必要な菊花賞。…こうして特徴を上げていくとバラバラですね。
個体の適性に応じて最適なレースを選んでいく分化が基本となる中で、トップクラスには適性を超えた総合力を問う価値は、日本競馬の特徴と言っていいように思います。歴代の三冠馬はそれぞれにウィークポイントを抱えながらそれを乗り越えて偉業を成し遂げてきました。
…そう考えると目立ったウィークポイントなく三冠を圧倒したナリタブライアンはすごいですね。ナリタブライアンが苦しんだのは古馬になってからですから。
コントレイルのような軽いタイプがクラシックを獲るにあたって、府中と中山の芝がエクイターフに変わったことは大きな後押しになっていたかもしれません。軽快なグリップでスピードをキープできる馬場は一完歩で失うスタミナを減じていく傾向にあると思われます。
…それでもコントレイルの菊花賞はエクイターフではない改修前の京都。皐月賞はそれにしても馬場が荒れていましたし。やっぱり総合力が求められるでよいでしょうかね。
パート1国で三冠の価値が保持されているのは日本とアメリカくらいのようです。菊花賞の距離短縮論などどこかで本格化しても不思議ないように思っていますが、この総合力を求める高難易度な価値は変わらずにいてほしいところです。
でなければ、コントレイルにとって「克服」する目標がそもそもなかったわけですし、それを乗り越えた「達成」を喜ぶこともできなかったわけですからね。