more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第47回 エリザベス女王杯

ジェラルディーナ、一気に戴冠。母仔でG1制覇となりました。

 

上位入線馬の馬番が示す通り(順に18、13、15、14、11)、当日の雨は内側の馬場をかなり掘り返していました。インから3列目より外を道中通れたかどうか、これが明暗を大きく分けたように思っています。

トロールビデオで向こう正面の隊列を見るとわかりますね、上位馬は馬場のよい外目を追走できていますから、距離ロスより馬場に脚を取られるスタミナロスが大きいレースになったという認識です。

勝ったジェラルディーナは中団後方を追走。おそらくぬかるんだ馬場をほとんど通らずに済んだように見えています。4コーナーを大回りするロスもわざわざ背負っての仕掛け。そのまま突き抜けましたから、実力もさることながら通ったコースも最適だったということなのでしょう。

 

何度となく自分が嵌ってきた阪神2200mの8枠買い損ね。今回もばっちりやらかしてしまいました。2~5着は相手にすべて含めていて本命の取り違えだけという。それが最も致命的な読み違えなのですけどね。馬場コンディションを観察するためにテレビ観戦ではなく府中まで繰り出したんですけどね。

前走オールカマーはイン有利の馬場バイアスを味方につけての勝利。そして当日のパドックの入れ込み。評価を下げたい要素が揃っていたんですよね。甘く見過ぎてしました。馬体はよく見えていましたが、ね、終わってからでは詮無いこと。父と母の特徴を両方のぞかせるフォーム、鮮やかな勝利でした。

 

公式レースラップ

12.6-10.9-11.8-12.6-12.4-12.3-12.2-11.8-11.9-12.3-12.2

昨年は良馬場ですが、残り800m、残り600mは今年のほうが速いラップなんですよね。

12.2-10.7-11.2-12.5-12.4-12.3-12.1-12.2-12.2-11.8-12.5

 

ともかく当日の雨が悩ましい

当日の朝9時の時点ではまだ降り出した程度でしたが、日中の雨が馬場状態をどんどん悪化させていきました。エクイターフ以後でも降雨の中でレースが進むとどうしても傷みが残ったままメインレースを迎えることになりますね。。。

エリザベス女王杯のひとつ前の芝レースが2歳戦というのも個人的には馬場読みを難しくさせていました。重馬場をこなすための基礎体力が違う認識ですので。それでも、インから3列目より外は大丈夫、外差しは利くものの外を回し過ぎると距離ロスが響くというイメージをまとめていました。

3、4コーナーで外を回さない&馬場をこなせる有力馬というピントの絞り方でデアリングタクトに重きを置いたんですよね。いやぁ難しかったです。

 

ジェラルディーナは外々を大回りして差し切る

クリスチャンはファーストコーナーまで無理をせず、後方外目のポジションに落ち着きました。強く制御するところはあまり見られず、負荷の少ない走らせ方ができていたようですね。大外を回ってしまう馬を割り引くイメージでしたら、あそこから突き抜けられると「読み違え」と反省するばかりです。

アンカツさんのツイートにあった「先入観を持たずに一流が感性で乗ったほうがいい」という表現がレース後TLでフィーチャーされていました。一般のファンには漠とした表現ではありますよね。

自分なりに。馬場読み、ペース判断、相手関係、ポジショニングなどなどのヘッドワークがあったうえで、それに捉われずにその瞬間の馬の気持ちなりリズムを尊重する、あるいはそのうえで戦略を柔軟に修正する、といった意味合いかなぁと推察しているところです。…言葉にするのは難しいですね。経験からくるその瞬間の判断を尊重する、という言い方でもよいのかな。

パドックでの暴れ方からするとレース前の消耗が…と思ってしまったわけですが、ジェラルディーナなりの切り替えがあるのでしょうか。このあたりも一流の感性に委ねたほうがよいポイントなのかもしれません。

 

グラスワンダーの血脈

ジェラルディーナの父モーリスには阪神でのG1勝ちがありませんが、古馬になってからの阪神G1は宝塚記念しかないですからね。連勝で安田記念を制するあたりから一貫してマイル戦を選択、ラスト3戦で2000mへ距離を延ばすという戦歴。その2000mへのチャレンジは札幌記念からですので、阪神は走る機会がなかったというべきでしょうか。

グラスワンダー宝塚記念が鮮やかだったのを思い出したのはウインマリリンが2着同着となってから。ウインマリリンはスクリーンヒーロー産駒、どちらもグラスワンダーに遡る血脈です。こんな切り口で馬券が当たるのかと、謎の反省に至っておりました。

本命にしたデアリングタクトの奥にはスペシャルウィークの名前があり、これもまた偶然にしては出来過ぎですよね。

…はい、母ジェンティルドンナ桜花賞勝ちがある、で良いようにも思っていますよ。

 

ワールドワイドなバックグラウンド

日本のマイルチャンピオンとなり香港Cを制してオーストラリアでG1馬を輩出している父モーリスと、日本のトリプルティアラを獲りジャパンカップドバイシーマクラシックを制している母ジェンティルドンナ。この娘にイタリアリーディングと凱旋門賞を獲っているC・デムーロが乗って、遠征してきたアイルランドオークス馬を重馬場で負かしてG1制覇。

だいぶ恣意的な言葉の並べかたですが、こうみると日本競馬の取り巻く環境はとてもワールドワイドだと感じます。様々な条件でトップホースの資質を試す機会が増えている、とも言えるのでしょう。

先ほど、来年2023年からジャパンカップ有馬記念の1着本賞金を5億円にする発表が。皐月賞菊花賞、3冠ボーナスも増額とのこと。国際競争力という観点のようですが、ソフトの充実と購買金額の増加、これに合わせて賞金規模の増大という読み解き方が可能で、これらがおおむね比例関係にあるというのはおそらくいい循環の最中にいるのでしょうね。ワールドワイドな活躍の一環としての日本競馬、という循環でトップホースの活躍を見守ることが引き続きできそうで喜ばしい限りです。

 

ジェラルディーナ、このあとは有馬記念のようですが、来春にドバイや香港が選択肢にはいってもおかしくはないでしょう。情報を追いかけるのは大変ですけどね、いい時代になりました。

 

デアリングタクトは内枠の不利と力みが重なり6着

当日の雨と内枠の相性の悪さを恨みながら、それでも買うべきなのか?というにらめっこを直前まで続けていました。その切り口自体、応援というバイアスがかかっていたのでしょう。直線でもがくデアリングタクトをみながら、見積もり以上にインの馬場は厳しいコンディションだったのだなと思い知りました。

1コーナー手前でナミュールに張られたことでインから2列目に落ち着きました。このコースを通らざるを得なかったことも敗因のひとつと思います。ただ、1コーナーから3コーナーまで結構力んで走っているんですよね。それを松山が制御しきれていないようにも見えました。レース前半にスタミナロスにあたる要因が多過ぎた、このあたりが敗因なのではないかと考えています。

思えば父エピファネイアも、引っかかりながらそれをホールドし切ったスミヨンを背に重のジャパンカップをぶち抜いていました。充実したフィジカルと強めの前進気勢。しっかり受け継いでいるのかもしれません。

 

つい先ほど、ジャパンカップの鞍上が松山からマーカンドにスイッチすることが発表されました。馬の制御なり動かし方に変化を求めるなら、ある意味妥当な、…それでも冒険の要素が強いかな、陣営の何とかしたい思いが伝わってくる乗り替わりです。

 

幹細胞手術で屈腱を再生し復帰したカネヒキリを思い出しました。角居師が当時、馬体を緩めることにも仕上げることにも患部悪化のリスクが伴うため、いけるところまでレースを使っていくという趣旨のコメントをしていた記憶があります。

トップアスリートの繋靭帯に幹細胞を移植した後のコンディショニングやピーキングなんて前例がないでしょうからね。同じ幹細胞手術で繋靭帯炎を治療している3冠牝馬とその陣営はいつ再発してしまうのかというリスクの中でもがいている最中、と理解しています。

 

最後に

またもや1週間経過してしまいました。落ち着いてレース回顧に向かう時間、上記のデアリングタクトのような状況に対して言葉を探す時間、これがまとまってとれないものです。誰のせいでもないから悩ましい。カネヒキリの頃の気持ちを思い出しながらですと、またデアリングタクトの見え方も変わってきますからね。

マイルチャンピオンシップの枠順もでております。しかし、今週末も阪神は雨。。。土曜の夜から日曜にかけて降雨の予報、マイルチャンピオンシップもまた、ゆるゆるのインコースを通る馬と外差し馬のコントラストが残酷なまでに鮮明になってしまうのでしょうか。

ダノンザキッドを応援したい気持ちは相変わらずなのですが、この内枠はおそらく厳しい。。。枠の並びと先週の馬場のイメージからはソウルラッシュという直観。

マテンロウオリオン、ジャスティンカフェあたりももっと外枠ならと思って眺めているところです。ダノンスコーピオンはパンプアップと荒馬場の兼ね合いがどれくらいか、人気どころでは好枠という印象です。

 

そうそう、ジャパンカップ1週前追い切りの鞍上でTLがざわついているのは面白かったですね。シャフリヤールに福永、ダノンベルーガにムーア、ヴェラアズールに松山、で合ってるかな。いずれもレースでの鞍上と異なっているんですよね。

ジョッキーを選択した経緯は異なっているのでしょうが、各陣営ともこのレベルで「手の内をさらす」と思っていない点は共通しているように見えています。おそらく、乗り手の技術についてレベルアップとある種の標準化がすすんでいるのだろうなと推察していますが、実際はどうなんでしょうね。そうした取材記事などみてみたいものです。