G1前に記事を書くのはずいぶん久しぶりという気がしています。
すでに枠順は発表されていますね。こちらを論じるとなかなか骨が折れるわけで、仮説に仮説を重ねていく思考経路を全部言葉にするのは、ね。文字起こしするスマホアプリに向かってしゃべってもいいのですけど、おそらく読み返さないでしょうしね。
週末時点で、ジャパンカップウィークを通じて自分のアンテナに引っかかったことをつらつら書いておこうと思います。
枠順の妙
いちおう気になったところは触れておきますね。ドウデュースは3番枠。内枠が好走するジャパンカップですが、それはある程度ポジションをとれる馬の好走確率でしょう。
おそらく馬群の中で折り合いをつける戦略は取らないのではないか、ただ追い込み一手が届くジャパンカップはほぼ観たことがないぞ、いやでも歴代G1で最速の上がりがそれを凌駕する瞬間は見たい…。みたいな逡巡は直前まで続きそうではあります。
スターズオンアースも川田もピンク帽が続いているのは、相乗効果のようで面白いですね。一時期のユタカさんやルメールのようです。馬自身は昨年もピンク帽から3着でした。今年のほうが頭数が少ない分、与しやすいようにも思っています。
前走ドバイの惨敗は右にもたれる癖がはっきり出た形でしたから、急遽乗り替わりのフランキーでは対処に限界があったかもしれません。左回りの外枠、自身の外に馬がいないのは今回どう出るか、ですね。
ゴリアットが最内枠、オーギュストロダンはシンエンペラーのひとつ外で8番枠、ファンタスティックムーンはスターズオンアースのひとつ内で13番枠。外国馬3頭はそれぞれ微妙な枠を迎えたと思っています。いずれも枠順より馬場へのフィットが議論の的ではありますね。
追い切り映像をまだ観ていないので、そのあたりの判断はこれからなのですが、馬場へのフィットと枠順のよしあしはセットで捉えたいなと。そういう意味では3頭ともまだはっきりいえない、という状況です。うーん、ピッチ寄りの走法がフィットすればゴリアットかな、くらいですね。
ドゥレッツァに控えてよい理由があまり見当たらず、じわっとハナに立つ展開は想像できますが、ビュイックの逃げかぁ。あまりイメージがないんですよね。
向こうのG1だとガイヤースで逃げ切りがありますが、あれば少頭数と個体の能力差で成立した逃げのように思っていまして。積極的に逃げを選択するイメージがあまりなく、府中の馬場で積極的に展開をつくるかといわれるとちょっと微妙。。。
ただ後半を極端な上がり勝負にするイメージもないので、ドゥレッツァが展開のキーになるなら3、4コーナーからペースアップは少し厳しいものになるようにも推測できます。
馬場へのフィットと交換留学生
やーしゅんとの動画で境和樹さんがつかっていた表現ですね。シンエンペラーとオーギュストロダンを指して「交換留学生」と解説していまして。確かに。
ご本人は「生みの親 or 育ての親」という表現で血統が優位にでるのか、トレーニングと戦歴が適性を塗り替えるような影響を及ぼすのか、で悩んでいました。どうやら血統優位のスタンスのように聞こえましたが、迷ってましたね。
個人的にはある種牡馬の代表産駒は、産駒の平均像からは離れた「例外」的な特徴を示すことが往々にしてあると思っていまして。キタサンブラックって決してブラック態度産駒の平均値を体現しているわけではないように。
個人的にはそれが今回の馬場アジャストについても計算できない可能性を感じさせておりまして、だからこそ楽しみでもあるという無責任かつ優雅なスタンスを取っております。生業として解説している側はプロとして事前に一定の見解を示す必要と向かい合っているのでしょう。難解なテーマですね。
現時点で、自分がみている府中の馬場への適性は、シンエンペラー>オーギュストロダン。日本ダービー3着のあの切れを引き出すのはオーギュストロダンには厳しいイメージを持っています。
何より、馬場適性以前にオーギュストロダンはレースへの集中が切れるときがある認識なのでね。大敗と快勝を繰り返しているのは本馬のある種の賢さに由来するのではと思っています。という意味で買いづらさがあります。父ディープはその種のずるさをもたずにいつも前向きに走ってましたからね、フォルムは似ていてもちょっと異なるイメージをもっています。
ゴリアットの鶏跛(けいは)
こちらは若原さんの記事。鶏跛についての解説です。わかりやすい。
ギャロップになると特徴的な脚の引き上げ方が見られなくなることについて「馬の後駆の骨格筋は随意筋だが、高速走行時には走行中の力学的制約が大きくなって”意思”の介在できる余地が狭まる」との説明。すばやい収縮と力の放出の繰り返しはあの特徴を見えにくくさせる、ということのようですね。
鶏跛の例えとしてトウカイテイオーやドゥラメンテが挙げられていることもわかりやすいですね。個人的にはトウカイテイオーのパドック映像がわかりやすいと思っています。テイオーウォーク、独特ですものね。
ゴリアットのオーナー、丁寧に語る
界隈ではプロレスやろうぜでだいぶ認知が進んでいるジョン・スチュワートさんですが、追い切り前の共同インタビューに以下のインタビュー記事の内容を重ねると、オーナーとしてのスタンスがだいぶ伝わるようになると思います。
「日本の人々は、チャンピオンホースがその実力を最大限に発揮する姿を望んでいます。勝者が決まった時に、それが“最高の中の最高”であることを確信できる」。まさに、ご慧眼という他ないですね。自分はまさにそれを醍醐味の一つとしていますので。
先に表現した「例外」的な高い競走能力こそ観てみたい、端的にいうなら凄いものがみたいわけですね。そのために平均的な価値も存分に知っておく必要があると思っています。美味しいものもそうでもないものも選り好みせずによく食べておくと、本当に美味しいもので心が動く瞬間がより際立つ、という例え方で合ってるかな。
一方で日本の馬主資格取得の難易度とその閉鎖性にも触れていまして、ご本人のなかではトップオブトップを決める競い合いを推奨していくこととそのための障壁を取り払いたいという点で、コインの表と裏の議論なのでしょう。こんな表現をされてますからね。
「優れた馬がいるなら、他の場所に連れて行き、真剣に試してみたい。彼らがどれだけの力を持っているのかを証明し、世界の舞台でどの位置にいるのかを見極めたいんです」
一定の秩序をもった組織が「外部」を取り込む際は慎重さなり段階を求めるべきと思っています。エントロピーではないですが、上手く煮詰めてきた価値が安易に外部を迎え入れることでバラバラになってしまう可能性は大いにあり得ると思っています。
要はバランスという、物の分かった年寄りのような見解になりますが。閉鎖的過ぎても、開放的過ぎても、次の時代へ適合していくのは難しくなるように推測しています。少なくとも特権的なサロンをキープする発想は日本競馬の発展を妨げるアナクロニズムという認識でおります。
ゴリアットTシャツがなかなかヤバかったり、競馬場内でグッズ販売しようとして怒られたなど(ホントかしら)、Xでは賑々しくエピソードが飛び交っております。なんとなくフサイチのオーナーさんと同じカテゴリーで捉えつつありますが、こうしたオーナーの存在も大事ですね。
単にプロレスを心得ているだけではない、などと受け取りなおしていたら「ただ、世界最高の芝のレースはヨーロッパにあると思いますし、それは皆さんもわかっていることだと思います」というコメント。やっぱりプロレスなのかしら笑
高いレベルに昇華している管理技術が世界でも特殊なスポーツターフを生み出していて、その特殊性がジョン・スチュワートに「欧州>日本」の認識を持たせているのかもしれません。…そんなことはないよ、と言いたいですね。
ロンジンワールドベストレースに選出されたという前提
昨年2023年のジャパンカップは世界一の評価を受けることになりました。イクイノックスのパフォーマンスが大きいわけですが、4着までの平均レーティングで各レースは評価されますから、日本馬トップクラスが軒並み高い評価を受けていたことがわかります。
歴史的にみれば欧州馬、欧州のレースを偏重するレーティング評価が続いてきた経緯もあります(いまでもそうですよね)。欧州のレースに参加し、比較されていく中でそのプレゼンスを高めてきた、これまでの挑戦の積み重ねが「日本」の評価を底上げし、第一位選出という形で結実したものと思っています。
どの主要国よりも軽快なスピードを要求される馬場でのスピードの持続力勝負。その点でジャパンカップは現時点で世界トップというべきなのだろうと思っています。引き続き、高いレベルでのレースを披露することでそれを証明し続けることが寛容なのでしょうね。
とりあえずエイダン・オブライエンが来日して合同インタビューを受けているのが、まぁ驚きです。美浦の尾関厩舎も訪問したようですね。ディープの血脈というきっかけがありつつも、日本競馬への関心の高まりを象徴する出来事と思っています。
…なんか競馬ファンの自画自賛的なコメントが過ぎるはどうかと思い始めましたのでこのへんにしておきましょうか。。。何というか、ずっとファンを続けてきて「ここまで来たのかー」という誇らしさがありましてね。関係者でもないいちファンの目線で恐縮なんですけどね。
最後に
枠順を見てパッと思ったのは、ドウデュースは下げやすいかなというのと、チェルヴィニアに向くかもなぁという2点。
正直、ドウデュースの能力が1着に結び付くスイートスポットは前走から変わらず、いや、前走よりも狭いと思っています。これを成し遂げるから武豊は凄いわけですし、ここに賭けるからテンションが爆上がりするわけですけどね。
オークス、秋華賞と見てきてのチェルヴィニアの評価は高め。外の2頭(ドゥレッツァ、カラテ)がスムーズにスタートダッシュを決めると、1コーナーまでの自由度が高くなるのではと思っています。少しポジションを求めるシンエンペラーの直後、みたいな並びが浮かんでいますね。
ただ、いったん下げたドウデュース武豊が、3コーナーあたりからチェルヴィニアの直後を取って誘導を受けて、直線スムーズに馬場の外へ展開する願望込みのイメージももっていまして。
…具体化の足りない推論が止まらないので追い切り映像観ようかな笑。週末はずっと晴れのようなので極端な馬場変化はなさそうですが、各ジョッキーの思惑の変化も含めて、土日の流れを堪能したいと思います。