コントレイル、父仔で無敗の2冠成りました。
「遊んでいた」という表現が印象的ですね。確かに直線半ばで仕掛けてから外へ寄れていく姿、右鞭で補正しながら外へ外へ。普通は鞭と反対側に向かうんですけどね。そして耳。先頭に立つや否や、集中を欠いた様子でくるくると動き始めました。福永が見せムチで促してもあまり改善されず、そのままゴールイン。皐月賞でも同じ点についてコメントしていますから、ある種の幼さは残っているのでしょう。
それでもラスト1ハロンで差を広げての3馬身差。圧倒的でした。
公式レースラップ
12.6-11.3-12.9-12.6-12.3-11.8-12.2-12.3-11.8-11.3-11.3-11.7
マイラプソディ横山、匠の捲り
コルテジア松山が先行策を主張しながらウインカーネリアン田辺を前に迎え入れての1コーナー。11.3-12.9と急減速して見た目でもわかる平均よりスロー、道中も落ち着いた流れが予感されました。おそらくここまでの流れ、横山は当然のように予期していたでしょうね。でないとダービーの1コーナーで後方の外に布陣する意味はないでしょう。
レース中盤に目立つ11.8のラップ。ぜひ、パトロールビデオを見てください。スクリーンショットを取りましたが、動きで観ると本当に鮮やか。向こう正面を目いっぱい使って、マイラプソディの大きなストライドが炸裂しています。
マイラプソディはそのままハナに。押し込まれるようにインに寄ったウインカーネリアンは一つ下がり、コントレイルはそれを回避するようにひとつ外へ持ち出して3コーナーを迎えます。横山がくる、と福永は予め構えていたようですね。麒麟がくる、みたいに書いてしまったことはちょっとだけ後悔しつつw …こういうつまらないアレが駄々洩れするのが年齢みたいですね。
現役競走馬のウィークポイントにあたりますので取材記事で出てくることはないと思いますし、その分あくまで推測になりますが、マイラプソディは共同通信杯の敗戦が心身ともに堪えてしまったように見えています。大きなストライドで未完成の馬体ですから、あの日の府中の荒馬場はスピードに乗らず苦しかったでしょう。全力で走り切っても追いつかない経験はおそらく初めて。皐月賞は勝負どころからギアが上がっていかないようにも見えますので、苦しい思いを回避する方向に気持ちが向いていたかもしれません。
中間からメンコとチークピーシーズを装着するなど、陣営の工夫もあったようです。レースを自分で見渡して止めてしまわないよう、鞍上の挙動に集中するようにという工夫に見えました。パドックでは馬体も戻ってきた印象がありましたね。いやーでも、京都2歳で感じたスケール感にはまだまだ及ばないという判断で評価を下げました。横山、ここまでもってきましたね。すごいです。
コントレイルは理想的な1コーナーのポジショニング
皐月賞はインの馬場状態のせいでしょう、スタートから進んでいかなかったようです。対して、コース替わりの府中の良馬場ですからね。上手くスタートを決めてからは好位を取れるスタートダッシュ。本人も「のせていった」のコメント通り、コルテジアと並走する形になりました。このあたりはワグネリアンで出していった経験が活きているのでしょうね。
コルテジアを前にやってのイン3番手で1コーナーへ。外からディープボンドが斜め前にはいりましたが、理想的なポジションを確保しました。皐月賞馬にこれをやられては、ね。
直線は周囲を待って追い出す余裕
気を抜く癖を気遣って、直線半ばまで追い出しを待つ福永。手綱を手繰りながらではありますが、ダービーの直線半ばですよ、それも加速ラップの只中で馬なりのまま後続を待つというのは、もう何という判断でしょう。
4コーナーからのロングスパート勝負は、11.8-11.3-11.3-11.7。11.3の連続ラップ、そこで加速してきた他馬を大外からサリオスが飲み込み切ったわけですが、その前にこの連続ラップを前で受け切ったのが勝ち馬。
それでいてラスト1ハロンは遊びながらですからね。終始上手くいった展開というのは間違いなさそうですが、ラストはそうした展開のアドバンテージが関係ないというパフォーマンスを示してくれたと思っています。
おそらく、サトノインプレッサの位置からでも差し切っていたのはないでしょうか。アクシデントさえなければ勝てる、という確信は伊達ではないと受け止めております。
いろいろ書き過ぎたので別投稿に
その他いろいろ書いていたのですが、さすがに長くなり過ぎたので別投稿に分けようと思います。主に以下の点について。
- 福永の自信と経験
- チーム・コントレイルへのコミット
- ノースヒルズのチームプレイという議論について
秋は父仔3冠が目標に
府中の1コーナーを引き返してくる姿を見ながら、凱旋門賞というアドバルーンが上がらないといいなぁ、と思っていました。もう少し余韻に浸るほうが幸せなのでしょうが、これくらい先回りな着想をするのがファンの諸症状にひとつでもありますね。
コロナウイルスの影響が未知数だし…と脳内で詮無い分析をしていたところ、当日のうちにオーナーから菊花賞を目指すことが発表されました。未完成な2冠馬ですからね、ぜひ来年の完成期には目指してほしいなと思っています。
コントレイル vs デアリングタクト vs アーモンドアイ
…字面がパワフルだなと思いながら書いてみましたが、実現しますかね。
実現するならジャパンカップでしょう。でもいまのパワフルなアーモンドアイにすでにタイトルを獲っているレースを走らせる意味がどれくらいあるか、という問題も。デアリングタクトとコントレイルが共に3冠を達成してのジャパンカップなら、相当ワクワクしますね。ジェンティルドンナとオルフェーヴルの一騎打ちが重なります。
海外遠征の見通しが立ちにくい状況下ですので、国内専念の結果、集結する可能性はあるのかもしれません。実現可能性があるというだけでも贅沢なイメージをいただいていますね。
外枠と特性のギャップを乗り越えて、サリオス2着
1コーナーまでにガロアクリークの位置をニュートラルに取れれば、勝負はもっと違う形になっていたかもしれません。ただそこに川田がポジションを取っていました。ここが川田への信頼感だなぁというのが個人的な感想ですが、レーンは少し引いてガロアクリークの後ろで1コーナーを迎えます。
無理をしてポジションを取りにいかなかったあたり、レーンの賢明な判断のようにも、陣営がダービーの先を見据えているようにも見えますね。
530kgに届こうとする筋肉質な馬体。異形のハーツクライと思っていましたが、望田潤さんしかり亀谷さんしかり、母系のデインヒルのパワーで走っているという見解で納得するところがあります。3歳春のハーツクライの未完成っぷりとデインヒルのパワー。府中の軽快な瞬発力勝負には不向きな取り合わせに加えて、外目の枠が当たってしまいました。
内枠だったら。わかりませんね。もっと出していったかもしれません。でも外枠からできる限りのポジションを取って、大外に振られながら2着まで押し上げてきたのは、さすがG1馬と思うばかりです。
サリオスに留まらず、コントレイルの血統構成も味わい深い解説が加えられています。望田潤さんの回顧記事はここで。
秋はおそらく菊花賞ではないでしょう。どんなローテーションを取ってくるかが楽しみです。順調に有馬記念に出てきたら、皐月賞本命にしたリズムでもう一度狙いたいですね。
ヴェルトライゼンデが巻き返して3着
皐月賞の敗因は馬場とコース取りにあったと見ていましたので、巻き返しの可能性は想定していました。しかし、想像以上に伸びてきましたね。
ポジションは終始コントレイルのひとつ外。4コーナー手前で外から被せていくも行き脚がつかなかったのか、手綱が動く場面が。そのまま外へ出して長くいい脚を使いました。気になるのはずっと左手前だったこと。坂路の最終追い切りでは鞍上の合図で右→左のスイッチをしっかりこなしていたのですが、この場面はどうしたのかなと。
陣営は距離に目途が立ったとみているのでしょう、菊花賞を目標にする旨コメントを出しています。ドリームジャーニーの菊花賞はなかなか不器用になるのもやむを得ない、という内容でしたが、ヴェルトライゼンデならまた違ったパフォーマンスになるでしょうね。
サトノインプレッサはインで溜めての4着
直線ワーケアの後ろから進路を探り、ディープボンドが作ったインの余白に飛び込んで4着まで押し上げてきました。やっぱりCコース替わり、最内はともかくインは悪くないんですよね。それにしてもよく差し込んできました。
ダービー初騎乗の坂井瑠星。後方待機策はこの馬にとっても妥当。1枠1番からインベタで直線までじっとするのも妥当。直線の進路取りは本人の思惑か、ワーケアの挙動に対して早く判断し過ぎたか、いったんワーケアの外を狙わなければ3着はあったかもしれないですね。でも一発を狙ってのパフォーマンスは素晴らしかったです。
個人的に今後の成長と完成がイメージしにくい馬なのですが(わるい意味でなく、まだ特徴が掴めてないということですね)、この馬場と展開で上位に差し込んできていますので、やっぱり府中、マイルあたりがよいのかな。改修にはいってしまうのが残念ですが、京都のマイルでも面白いかもですね。見事な善戦でした。
コルテジアの積極策
レース前、TLに松山に触れるツイートが流れてきて、ああ似た着眼になるひとはいるのだなぁと思っていました。
レイデオロのダービー、皐月賞馬アルアインで何もできなかった記憶はどういう形であれきっと残っているはずで。きさらぎ賞勝ちながら人気薄、速い上がりで勝負するには分が悪いお手馬、この条件下でどうリードするのが可能性を高めるのか。いまの松山には賭けたいと思わせるだけの実績を見て取っています。成績もそうですが、近々のレース中に見せてきた判断の数々、そこを指しての実績、ですね。
着順は奮いませんでしたが、力は出し切っての結果と思います。買い目に含めていて損にはなったのですが、買ってよかったと思わせるナイストライでした。
ワーケアは展開向かずの8着
11.3-11.3-11.7のレースの上がりを、コントレイルの後ろから差すのはさすがに厳しいですね。ルメールもまた一発狙いの挙動に終始したと思っています。その結果3着かなというこちらの狙いがありましたが、思った以上に奮いませんでした。
内枠、そしてルメールが手放さなかったあたりが人気の要因と思いますが、馬体の完成はまだ先なのかな。ホープフルSでは本命でしたが、そこから大きく成長したかと言われると。。。
今回の敗戦だけでなく、これまでのパフォーマンスから、嵌る条件、スイートスポットが案外狭いのかもしれません。神戸新聞杯になんとなくいいイメージを覚えますが、コントレイル、サリオスが出てきたら、ねぇ。
最後に
人間慣れるものだなと変に感心しながらの週末でした。ダービーの無観客開催が発表された4/23時点の無念さはそれなりに薄らいでおりまして、さてコントレイルに逆らえるものか?というゲームの主旨に没頭できていましたね。
現地で観戦しなかったダービーは何年ぶりでしょう。
と感傷的なセリフを思い浮かべて、本当に何年振りか記憶を手繰ってみました。
…2000年、アグネスフライトの記憶が怪しいんですよね。実家に行けば馬券があるはずなのですが、いまは感染予防で自粛をしておりまして。間違いなく、翌2001年ジャングルポケットからは現地観戦し続けております。タニノギムレットあたりまでは大学を出てプーという時代ですのでお金がなかったなぁ、などと懐かしい感覚も蘇ってきました。
この3、4月の時点では感染拡大の時期でしたから開催そのものが疑わしかったわけで。日々の仕事をやりくりしつつ、世界の情勢を見聞きしつつ、適切な感染予防方法を理解しながら生活のもろもろを短期間で切り替えていくのはなかなかにストレスフルだったのでしょう。いまもって只中にいますから俯瞰も難しい気がしています。
テレビでファンファーレを聞きながら、無観客のスタンドを眺めながら、ああちゃんと走ってくれるんだという安堵感が湧き上がってきていました。ダービーを観戦できなかったというよりは、あの無観客のダービーを健康な状態で目撃できた、と記憶するのがきっとよいのでしょうね。
関係者の努力に感謝しつつ。来年はぜひ、元気に現地で。