アドマイヤズーム、緩急あるスローの展開を機動力で制しました。
鞍上は乗り難しい面に言及していましたが、そう見せないあたりがにくいですね。いつもの川田将雅の攻め方が見られたと思っていますし、馬がそれにきっちり応えてのG1戴冠と見えています。
逃げの選択をしたダイシンラー横山典弘を追いかけるようなスタートダッシュから一転してブレーキング、その直後のポジションをとる戦略。内側にいるダイシンラーは被せられないようにダッシュすることになりますよね。その分が2ハロン目10.8に表れていると思います。
逃げ馬としてはここでスタートダッシュを利かせるわけですから、その後ではペースを緩めたくなるでしょう。そのタイミングでいっしょに息を入れる。序盤から中盤のペースダウンまで、横山典弘の存在と技術を上手く利用しながら、アドマイヤズームに向いた流れを作り出したように見えています。
いったんスローに落とすあたりは、アルテヴェローチェ他、かかりやすい馬へのけん制にもなったでしょう。マイルでかかり気味の馬であれば、短い時間のなかでペースアップとペースダウンを行う困難さに直面します。スローペースでもスタミナを浪費するパターンですよね。
4コーナー過ぎからは馬場のよい外へ展開して、あとは前走よりパワーが増したであろうラストスパートの切れ味を存分に発揮しました。
逃げたダイシンラーが4着、出遅れながら3コーナーで3番手まで盛り返したミュージアムマイルが2着ですから、基本は前残り。ただ、ここで前をキープする強さが勝ち馬にはあったと思っています。
…ステルヴィオのマイルチャンピオンシップに近いような気がしてきました。パッとした思い付きですので、あとで映像観てみますね。
公式レースラップ
12.4-10.8-12.2-12.6-12.4-11.8-10.9-11.0
同じ条件のデイリー杯2歳Sのラップも。馬場発表の差はありますが、朝日杯の中盤はこれより緩んでいたんですね。
12.4-11.3-12.3-12.6-12.0-11.5-11.2-11.4
コース替わりで若干インが使える馬場コンディション
と書きましたが、3、4コーナーと直線入口のインコースはだいぶ砂埃が舞う状態。今週からDコース替わりでしたが、川田もクリスチャンも直線入口では大きく外に持ち出していましたので、軽快にスピードに乗るには直線は外だったのでしょう。
8Rの1勝クラス、外回り2200mはなかなか見ごたえがありました。4コーナーをロスなく回って馬場のよい外目にだしたルメールのクルミナーレがクビ差の勝利。4コーナーでルメールに外から被せられてイン突きを選択したクリスチャンのスカイサーベイは、インから前の馬をパスして直線半ばで外へ。ここで過怠金をもらう進路取りになったわけですが、再びクルミナーレに馬体を合わせる形になりました。
そのクリスチャンのイン→アウトの動きをみながら、アウト→インで他馬の間をぬってきたのが川田将雅エボルヴィング。この三者三様のコースの読み合い、取り合いはなかなか面白かったです。ゴール後のルメールの表情もよかったですね。
というわけで全くインが使えなくはないが、一番切れるのは外目で、やっぱり大外一気の馬場にはなっていないというのが馬場の見立てになりました。
結果、一番いいコースを勝ち馬が押さえましたからね。見事なものです。
近藤利一オーナーへの感謝のコメント
川田のインタビューからは亡くなられた前オーナーの名前が。乗っていた記憶はあったのですが、感謝の言葉がこんなに明確にでてくるとは思っていませんでした。改めて調べてみて、それはそうだと納得。
2007~2008年で川田の重賞騎乗数がグッと増えているのですが、特に橋田厩舎のアドマイヤに川田将雅。そうでした、アドマイヤフジ、アドマイヤメイン、アドマイヤコマンド。重賞も勝っていましたね。
売り込み中の自分を上位のジョッキーに押し上げてくれたオーナーのひとり。そう考えればあのコメントも納得です。
一方の友道師もアドマイヤジュピタが初G1。どうやらその際に着ていたスーツ、オーナーにプレゼントされたもののようですが、サイズを直して今年の春から来ているとのこと。ジャスティンミラノもドウデュースもそのいいゲン担ぎの最中にいたようですね。
個人的には武豊との絶縁騒動に強いイメージがあって、なかなか難しいキャラクターという認識でいるのですが、こうした関係者の感謝には何かを勘繰る必要はないのでしょう。いまもって不協和音の中に関係者があるようなら厩舎経営も名馬の誕生もないでしょうからね。その意味ではオーナーシップを引き継がれた奥様も程よい距離感でいらっしゃるのかもしれません。
アルテヴェローチェは折り合いを欠いて5着
パドックから気持ちが少し入り過ぎている状態が確認できました。ここで考え方を補正し切れないあたりが今回の自分の反省点ですね。
1番人気が入れ込み気味。それを他のジョッキーは見ているわけですから、当然そこを利用しようと思うわけです。パトロールビデオを観ると、序盤に外からトータルクラリティに寄られたところで過敏に反応、行きたがる素振りが強くなります。
北村友一はわかっていたでしょう。もう一列インに寄せてアルテヴェローチェの前に入れるのですが、入らない、入らない、なかなか入らない。他馬の押圧に反応してしまったアルテヴェローチェは前方がクリアですから行きたがる、行きたがる、まぁ行きたがる。
そしてブレーキを踏みながらトータルクラリティがアルテヴェローチェの前に。ここに減速も加わりますから、アルテヴェローチェは頭をあげてさらに折り合いを欠く。…北村友一、お見事でした。これが技量というものでしょう。
折り合いをつけるために手綱を引くことで他馬に前にはいられ、より手綱を引くことになる悪循環。3コーナー手前では1列外で下げてきたパンジャタワーにも前にはいられ、スローの前残りなのにポジションを下げざるを得ない形になってしまいました。
スローペース、インかつ前で運んだ馬で決着していますので、展開にスポイルされたという表現がふさわしいでしょう。それでも絶望的な位置から5着まで押し上げたのは、無理やり外を回さずに直線のコース取りを勝ち馬のほぼ後ろに拘った鞍上の判断の賜物と思います。
きっと来年、あっさり巻き返すような場面があるものと思います。ただ、NHKマイルカップ路線かな。どうやらアドマイヤズームも同路線ですので、もう少し競馬が上手にならないといけないですね。
ミュージアムマイルはクリスチャンのヘッドワークで2着
出遅れた時点で後方に控えていたら、アルテヴェローチェよりひどい展開スポイルに嵌っていたと推察されます。やはりインに切り返してから勝ち馬の後ろまでもっていく、あの序盤のリカバリーがハイライトですね。
リオンディーズに似ている印象ですが、このあと大きく成長が見込める馬体かというとちょっと疑問符がつくような、うーん。
ハッピートレイルズ牝系の牡馬は秀才が多い印象で、超大物がでるイメージがちょっとね。アルレッキーノも現時点では軽快さが目立つ印象ですし。多分に欲をいう話になっていますが、ミュージアムマイルのすごく魅せるフットワーク、このまま来春にもうひとつ大きく見せる馬体になってくればと思っています。
その他気になった馬
クラスペディア、ドラゴンブースト、コスモストーム、このあたりの2桁人気馬は比較的先行していたことで着順を押し上げたものとみています(それぞれ6、7、8着)。
一方、展開スポイルとなったのはニタモノドウシ、パンジャタワー、トータルクラリティ、タイセイカレントあたり。いずれも次走あっさり巻き返しはあるように感じています。
ニタモノドウシはライアン人気だったと思われますが、歩幅といいますか可動域が少し狭めという点が気になりました。ディーマジェスティに似ていると言えばそうですが、フィットする条件が限られそうな印象。洋芝の札幌でレコードを出したのが納得、という筋力とストライドのバランスに見えています。
パンジャタワーは阪神マイルだったほうが上位進出しやすかったかもですね。前走はタワーオブロンドンならこの稍重ちょうどいいだろう、という読みで単勝を獲っていまして。同じリズムで今回は評価を下げました。来春のアーリントンカップ、じゃなかった、改名してチャーチルダウンズカップで稍重だったら強く推奨するリズムですね。ホントにタワーオブロンドン笑
タイセイカレントは大外枠、かかりやすい気性、坂井瑠星という組み合わせがどうでるかという視点で観ていましたが、それ以前に展開スポイルでの大敗になってしまいました。どこに向かっても、今回より条件が好転する可能性が高いと思いますので、次走で改めてと思っています。
最後に
さぁ、有馬記念ウィークでございます。オーラスと書こうと思っていやいやホープフルSがあるじゃないかと取り直す、まだ切り替わっていないベテランファンがおりますよ。…やっぱり有馬で締めたいんですよね、気持ち的に。
ホウオウビスケッツ、メイショウタバルが除外対象になっており、はて逃げ馬は?というメンバー構成。この感じは天皇賞秋やジャパンカップと似ている気がしております。…ということは三度あの常軌を逸した末脚が炸裂するのかしら、そしてそのまま引退式を迎えるのかしら。
シャフリヤールやダノンデサイルあたり、逃げてしまった方が結果につながりやすいようにも思えてきました。有馬記念でダービー馬の勝つための戦略が逃げというのも不思議なものです。
むしろ3世代のダービー馬が顔をそろえる有馬記念こそ珍しいですね。…ざっと調べたのですが、ひょっとしたらグレード制導入後初かもしれません。あくまで自分調べなので取り扱いにはお気をつけて。
3世代ダービー馬の共演、ジャパンカップならありましたね。ウオッカ、メイショウサムソン、ディープスカイが揃って、勝ったのはスクリーンヒーローという。なつかしい。
競馬ラボの馬体FOCUSは毎週参考にしていまして、まずこちらのフォトパドックで馬体の仕上がりに先入観をもつことにしているのですが(先入観ですのであとでじゃんじゃん崩すつもりで観ています)、よく見えたのはドウデュース、シャフリヤール、ダノンデサイル、ブローザホーンあたりかな。おおダービー馬が3頭入っている。
内枠を引いた差し馬が直線インを…、みたいなシーンはアーバンシックでもシュトルーヴェでもレガレイラでもイメージ可能と思っています。
ただ、やはり逃げ馬が…。おそらく先行馬の中でカギを握るであろうスターズオンアースのフォトパドックがまた微妙ですしね。まだ上があったはず、という印象です。ちょっと立ち姿に以前のパワーを感じないんですよね、後ろ脚も揃っていましたし。右にもたれる癖をだしながらの昨年2着が再現できるかというと、うーん何とも。
そのあたり、これから考えていきましょう。枠順抽選会も仕事がなければリアタイ視聴で一喜一憂したいんですけどね。最終追い切りも陣営のコメントも馬場読みもまだこれから。1週間楽しみ尽くしたいと思っています。