エフフォーリア、世代を超えて現役最強を示しました。
合わせて、横山武史を讃えるべきでしょう。パンサラッサが作り出した前傾ラップ、これを中団外目でジリジリと追走する判断。ペースを深追いしないことと、クロノジェネシスをインへ閉じ込め続けるポジションのキープと。これまで培ってきた操縦性の良さをアドバンテージに、特に2周目の3、4コーナーは絶妙な運びだったと思っています。抜け出すタイミング、あれより早くても遅くても、あの盤石の直線にはならなかったでしょう。
直線に向いて左手前にスイッチするのは右回りの定石ですが、その後の登坂で再び右手前に。どうやら左トモの推進力の方がエフフォーリア自身には使いやすいみたいですね。やーしゅんさんがTwitterで解説を加えていますのでそちらも参考に。
しかし、そこから持続力比べでディープボンドを突き放すわけですから。強いのひと言です。
今年の成績の比較でいうと、皐月賞で菊花賞馬タイトルホルダーを、天皇賞(秋)でマイル女王グランアレグリアとジャパンカップ馬コントレイルを、そして有馬記念で宝塚記念馬クロノジェネシス、エリザベス女王杯勝ちアカイイト、天皇賞(春)で勝ち馬とコンマ1秒差の2着だったディープボンド(フォワ賞勝ちというべきですね)を破っています。
…現役最強でよいですよね。
公式レースラップ
6.9-11.3-11.6-11.5-11.9-12.5-12.6-12.2-12.4-12.4-12.2-12.0-12.5
比較のため昨年のレースラップも。今年のほうが走破タイムが3秒速いですし、ロングスパートしにくい締まったラップ構成になったようです。
6.8-11.8-12.2-12.5-12.5-12.8-12.9-12.8-11.8-12.3-12.1-11.9-12.6
前傾ラップでの比較という意味では、2019年リスグラシューも適当でしょうか。タイトルホルダーが1周目の4コーナーで引いた分、ここまでの前傾にはならなかった模様です。
6.9-11.1-11.4-11.4-11.5-12.2-12.3-12.1-11.7-12.3-13.4-12.2-12.0
フェアな馬場コンディション、前日より若干時計はでやすかった印象
内外の強いバイアスはみられず、土曜早朝の雨も日曜にはあまり影響しなかった模様です。ただし3、4コーナーは少し掘れやすくなっている印象。末脚の持続にはパワーを要する、という見立てでした。
ヨコよりタテ、という表現が端的でしょうか。インコースかアウトコースかより、逃げも後ろ過ぎも争覇圏外というイメージですね。
パンサラッサの逃げ、タイトルホルダーの仕掛け所
タイトルホルダーが馬鹿に強くない限り、パンサラッサを捕まえたタイトルホルダーが他の有力馬の目標になる、という展開の読みでした。注目されていないからこそ逃げは嵌りやすいわけで、今回はこの並びが大方の予想に織り込まれていました。2頭とも力を出し切るペースをつくったでしょう、個人的には想定より厳しい流れになったと思っています。
菱田の逃げは言うに及ばず、その織り込み済みの逃げをいつ捕まえるか、乗り替わりの横山和生にとっても打ち手の少ないレースだったかもしれません。
スタート後にパンサラッサに被せていく場面、残り600で少しけん制し、残り400で捉えに行くいわば「二段構え」の仕掛け。直線先頭で迎えていましたし、鞍上の十分な工夫は見て取れました。菊花賞のようにセーフティリードを取って直線に向ければベストだったでしょうが、さすがにそれには難しい流れでしたね。
横山武史の戦略
どちらかというとエフフォーリアがクロノジェネシスより前にいる可能性を考えていたのですが、横山武史は待機策を取りました。待機策というと少し語弊があるかな、前が引っ張ることを織り込んでクロノジェネシスの後ろを取りにいった、というべきなのでしょう。
7番クロノジェネシス、10番エフフォーリアの間にはユーキャンスマイルとステラヴェローチェ。前者の先行策はほぼないでしょうし、後者は乗り替わりで出遅れ率の高いミルコ。この枠の並びになったことで、スタート直後にクロノジェネシスに寄せていける可能性がリアリティをもったのではないかと推察しています。
前傾ラップで先行した馬が勝負所で加速できないor下がってくることを考慮すると、クロノジェネシスをインへ閉じ込めながら3、4コーナーで進出することが自身のアドバンテージになる、という思考に至ったのではないかなと。
実際、自身の直前がキセキであったことはさすがに事前に織り込み済みではなかったでしょうが、そのキセキのポジションを上手く利用しながら、ルメールをインへ閉じ込めることに成功していましたね。
向こう正面での攻防。ルメールは武史が外に被せてきたタイミングで外への進路を確保しようとエフフォーリアへけん制する動きを取っています。ショルダーチャージのような肉弾戦にはなっていませんが、ルメールが内から押圧し、武史が被せて対抗する場面。一連の挙動はパトロールビデオでは確認できると思います。ここで主張できる技術と度胸が武史には身についているんですね。
不注意騎乗と勝利ジョッキーインタビュー
有馬前日の土曜に、エフフォーリアの弟で不注意騎乗のペナルティ。十分反省した姿は有馬記念の勝利ジョッキーインタビューで確認できました。
あの対応が自身から判断したものであればまだよいのですが、周囲にあの謝罪を促す圧力があったなら、あまりいい印象はもてないですね。あくまで有馬記念の勝利に関するインタビューですから、せめて話題の優先順を変えるなど本人にちょっと工夫があったほうがよかったとは思っています。
でもあの場で期待されているのは、将来有望な23歳がグランプリを制した直後にどんな率直なコメントをだすのか、でしょう。そこに変な圧がかかってほしくはないなと。邪推ならよいのですけどね。
不注意騎乗に違いはなく1着を取り損なった失敗ではありますが、失敗はそれと認めつつ大きく許容して、次への期待をかけるコミュニティであってほしいですね。いちファンとして、ただただ断罪する文化にならないことを願っています。
キズナとエピファネイア
2013年のダービー1、2着。同期のライバルは産駒でも対決を続けております。この有馬記念はエピファネイアの勝利。ただし、リーディングサイアーの順位はどうやらキズナが上回ったようです。
そのダービーのパドックで2頭が抜けていると見て取った自分を思い出したところです。エピファネイア本命で、直線「福永!!」と絶叫していたのが懐かしい。いまでは3冠ジョッキーですし、あの頃とはパフォーマンスも存在感も異なっていますよね。
当時の記事を載せておきたいと思います。こうしてキャリアが長くなると「歴史の証人」という感覚が増して来るから困ったものです。
エフフォーリアの2022年は国内専念
爪のケアの問題もあり、馬体の完成は来秋と見立てていることもあり、早々に海外遠征の可能性を否定した格好です。ドバイターフや香港での雄姿も観たかった気持ちはありますが、エピファネイアのジャパンカップを考えると、無事に完成した馬体でのパフォーマンスを楽しみにしたいところ。
順調なら春は大阪杯、宝塚記念でしょうか。個人的には安田記念で見てみたいのですが、そうすると次のレース選択が難しくなりそう。春の府中開催に古馬中距離G1があるといいのでしょうね。
気になった馬
クロノジェネシス
エフフォーリアも天皇賞より少し出来が…、という鞍上のコメントがありましたが、クロノジェネシスの仕上がりはより一枚落ちる印象でした。フォトパドックの冬毛はその象徴として語られそうですが、予想の段階で過去のレースを見返して、トップスピード時のピッチやカラダの使い方から、個人的には今年の宝塚記念でピークアウトが始まっているという評価に落ち着いていました。
もちろん勝負にならないエントリーではなく、ピークアウトの中でも臨戦態勢を整えていた、ということなのだと思っています。
今年の宝塚記念でのシンプルなレース運びや負荷よりもリズム重視の追い切りも、肉体的な成長を促す時期にはないことを示しているという認識。年齢的にそりゃそうですものね。
昨年の宝塚記念の出来なら、もっと攻めた戦略で圧倒していたかもしれません。
そう捉えなおすと、今年の宝塚記念、有馬記念と代打騎乗したルメールは負荷の少ないドライビングを志向していたようにも受け取れます。道中の加減速を抑えた乗り方。ドバイシーマクラシックのような俊敏な一気の加速かつ馬体を併せた鍔迫り合いを求めてはいなかった印象。今回に関してはそこを武史に突かれたのだと思っています。
3、4コーナーで観念するようにエフフォーリアの抜け出しを待つ姿が何とも印象的。引退を控えてセーフティなドライビングでもあったでしょう。勝負に徹していたエフフォーリアとは対照的なレースに映っています。
とはいえ決して、これまでの戦歴やパフォーマンスに傷が付くものではないでしょう。当日引退式でしたが、素直にお疲れさまでしたと見届けました。
ディープボンド
先行策になると思っていましたが、道中はペルシアンナイトを見るポジション。クリスチャンに連れて行ってもらったという表現が程よいと思っています。4コーナーでインを突いたのはペルシアンナイトの挙動次第という柔軟な判断だったでしょう。武史があの乗り方でなかったら、押し切っていたかもしれません。
直線の粘りを見返しながら、フォワ賞を早め先頭で押し切るスタミナについて考え損ねていた自分を反省するばかりです。3連単を取り損ねてしまいましたね。。。
ステラヴェローチェ
力があることも、その力を発揮しやすい条件であることも理解していましたが、道中のポジションが後ろになってしまう可能性から、勝負には分が悪いのではと思っていました。果たしてその通り、勝ち馬の後ろから運ぶ展開に。あのペースでは捲りも打てないでしょうし、力は出し切るも惜敗という結果になりました。
ここで乗り替わる意味があったかな、というのが正直な感想。負けたからではなく、吉田隼人の経験値でもう一戦見てもよかったのではないかと思っているところです。
ウインキートス
スタートから思いっきり出していってしまいました。丹内の脳裏には先行策しかなかったのでしょうか。中山実績があるとはいえ、スタートから積極策で戦歴を重ねているわけではなく、昨年のグレイトフルSにしてもオールカマーにしても、道中は中団のインをキープする運びでしたからね。今回もディープボンド、ペルシアンナイトの直後で進めるくらい、鞍下の末脚を信じてみてもよかったのではと思っています。
最後に
有馬から中一日でホープフルS、それも仕事納めの日にですからレース予想も有馬記念の回顧もおぼつかないせわしなさを感じています。師走ってそういう意味ではないですよね。。。
有馬の余韻を味わえない開催日程。売上ありきなのはわかるのですがもう少しやりようがあるのでは、という繰り言はホープフルSがG1に昇格してからの繰り言になっていますね。1月前半の連休でホープフルSでもいいのではないか、などなど。
この投稿も、仕事納めの解放感とホープフルSのレビューと東京大賞典の仕込みとを並行しながらリビングで寝落ちして翌朝再開、カラダが痛い中ようやく書きあげようとしているところです。40半ば、健康管理的にはダメな流れですね。
このあとは東京大賞典、現地観戦の予定です。立見席が取れましたねー。バタバタと繰り出してまいりたいと思います。
いまのところオメガパフュームを外せないと思いつつ、ロードブレスの立ち回りに期待しているところです。