more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第73回 朝日杯フューチュリティS

ドウデュース、操縦性のよさがストロングポイントになりました。

4コーナーの大回り、直線に向いて一番外までの誘導。かなりの距離ロスですがおそらくためらいはなかったのでしょう。ワンテンポ遅らせてのゴーサインに応える鞍下の操縦性もお見事。登坂のあたりでは確信をもって観ていましたが、ゴールの瞬間には両腕で大きなガッツポーズがでてしまいました。テレビの前の自分の話ですよ。

ユタカさんのガッツポーズも「どうですか皆さん、武豊が悲願の朝日杯を勝ちましたよ」という、このあとの周囲の喧騒まで予見するような笑顔が浮かんでおります。ゴール線よりちょっと手前のはずですけどねぇ。

https://news-pctr.c.yimg.jp/uUzvQ3lML_bkIqyakc1vFhNrRI0RUQxg5aFkrX0xDg2oKB41GiLMNbZXW_Lt2ziFOOBYQAgSER7caf0-XiqKa5Zh7EZqOZAMb6o15oC4xhO0SvxwtqV2rpxauOEgcBhM1wJVBsrssF-1wqGetTyj4T0gCOsd3A0MYhoF-2M_og6pk8j0Bs9RCNLsT6X8JkXAtqwcutGsVEatBKXuZE0eNw==

レース運びが緻密で鮮やかなせいでしょうか、武豊といっしょにG1を勝つのは気持ちがいいなと改めて。本命でよかった。こちらも快勝でした。

公式レースラップ

12.6-10.6-11.1-11.9-12.1-11.9-11.2-12.1

阪神の馬場傾向は変わらず、外差しバイアス

クリスチャン・デムーロは先週のナミュールの反省があったのでしょうね。土日で勝ち星をグッと増やしていましたが、芝レースは4コーナーまでコースロスを抑えつつ、直線入口で大きく外へ展開し馬場の真ん中で末脚を伸ばすというパターン。直線でインコースを捨てる判断、徹底していましたね。

朝日杯のセリフォスも前目につけつつ、直線で外へ進路を取れるようにポジショニングすることが容易に想像できました。

ドウデュースは最少の動きで理想のポジショニング

この馬場バイアスで9番枠は好枠だったのでしょう。スタートからインへ寄せず、真っ直ぐ進んでいく姿がパトロールビデオで確認できます。狙っていたのは中団馬群の外、インから3列目(密集すれば4列目)、だったと思われます。そのポジションですと直線外への展開が容易でしょうからね。

セリフォスとダノンスコーピオンは序盤のプッシュが祟って道中かかり気味の追走に。一方のドウデュース、スタートから促していましたが力むことなく中団を追走することができました。この差は大きかったでしょう。

前走アイビーS、その前半3ハロンは 13.0-11.0-11.9 と今回より遅めですが、あくまでどちらもレースラップですのでね、ドウデュース自身は似たリズムで走っていたように理解しているところです。むしろ前走の方が抑えるのに苦労しているように見えていますので、今回の方がペースがフィットしていたかもしれません。

距離短縮で朝日杯という条件にマイナス評価をする記事も目にしていましたが、前走と近しい序盤のリズムを踏めたことが最後まで力を出し切れた要因ではないかと思っています。

武豊の経験値

名手の判断、結果としてスムーズに進めているように見せているなと感じております。

残り800付近で2度ほど左後ろを振り返っていました。外から被せられる可能性を見積もっていたのでしょう、そこにいたのは前走騎乗していたドーブネ。その後一度も振り返ることなく外へ外へ持ち出していますので、ある意味では冷酷に、この時点で捲られるリスクはないと判断していたはずです。

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2021年朝日杯フューチュリティS、残り800m付近で外を確認するドウデュース武豊

 

今度は前。セリフォスが外へ張り出して、ふらついているオタルエバーが斜め前という4コーナー。直線に向いてすぐ、オタルエバーの外へ出しました。

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2021年朝日杯フューチュリティS、4コーナーでセリフォスとオタルエバーを視野にいれるドウデュース武豊

ここから先は憶測なのですが、セリフォスとオタルエバーが直線に向いてさらに外へ寄せてくる(よれてくる)ことを武豊は折り込んでいたのではないかなと。実際直線に向いてすぐには追い出さず、外へ振られたオタルエバーを交わした後にスパートを開始しています。

全力疾走しているところを横から邪魔されるのは大きなロスでしょう。場合によると脚元に負担を強いることになるかもしれません。それを回避するだけならオタルエバーの背後でひと呼吸置けば十分だったはずですが、そうするとギアを上げていくタイミングとコース選択に難がでたのではないかと推察できます。セーフティだけど勝負にはひとつ後手になったはずです。

武豊の4コーナーは、そのすべてを測りにかけて「オタルエバーの外に展開しつつ、2頭が外に張り出してくるのを待ち、ワンテンポ置いてアクセルを踏む」を一瞬で判断していたのではないかと見て取っています。判断の的確さとスピード、失礼ながら年齢を考えるとすごい状況判断ですね。

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2021年朝日杯フューチュリティS、直線に向いてオタルエバーと接触する寸前のドウデュース武豊(まだアクセル全開にしていません)

ドウデュースに引っ掛かる心配や体幹が心もとないなど、あまり注文がつかないという点も大きかったでしょう。操作性に懸念がないことで、武豊のヘッドワークが最大限活かせるコンビになったと思っています。

直線入口の判断のあたり、レース直後はあーユタカさんわかっていたんだろうなぁくらいに思っていたのですが、金色のマスクマンさんが詳述してくれていました。この描写力はさすが。自分もこうして整理して言葉にする際の助けになりました。

note.com

武豊、朝日杯初制覇と客観視

冒頭に書いたように、おそらくご本人には悲願というほどではないのでしょう。勝利ジョッキーインタビューの文字起こしをすると冒頭は「ついに…。」となるわけですが、万感の思いがこもったテンテンテンではなく、「みなさんの武豊が朝日杯初制覇ですものねついにですよね」というインタビュアーに呼応した含み笑い込みのもの。

この、いま置かれている状況に対する瞬時のフィードバック力が武豊の最大の特徴ですし、これがあるからいまでも日本の競馬の看板なんですよね。

さぁ、残るG1はホープフルSのみ。アスクワイルドモアでどうでしょうか。…そういうお前はすごい楽しみにしてるじゃん、というツッコミが聞こえてきそうですが。ええ、ファンの側は素直に記録を期待してよいと思っていますよ、そんなところまでいちファンが客観視しなくても、ね。

気になった馬

セリフォス

直線好位から外へ出すための先行策と見ていました。少し出負け気味だったことで前をはいられないことも意識して大きくプッシュしたのでしょう。結果として道中かかり気味の追走になってしまいました。クリスチャンの狙ったコースは選択できたのでしょうが、その代償が1/2馬身差になったと思っています。

ダノンスコーピオ

前走同様、スタート後に出していったことでガッツリかかってガッツリ抑える流れ。前走は抑えて進めた結果、いったんキラーアビリティに交わされる展開になっていました。好位を取るにはリスクがある中、乗り替わりの松山はナイストライだったと思っています。道中引っ張ったことで4コーナーから直線のコース取りは後手に回りましたが、乗り替わりの鞍上は責められないでしょう。

プルパレイ

ブリンカーをつけて他馬を気にする面にフォローは効いていたと思います。でも、やっぱり先行策かぁという感想。セリフォス、ダノンスコーピオンは何とか収めたところ、プルパレイは前につけてしまった、というのはこちらの見立てと異なる戦略があったせいでしょうね。前走はレース途中から逃げ、かつ馬場の悪いコース取りという展開でしたから、今回は控えて差しにまわるイメージでした。

直線で馬場の悪いインを突く流れを自ら招いていたように見えますし、次につなげることを意識した内容でもなかったような。。。

ルナシー

スタートの大出遅れ。前走のあのかかり方ですから、どうしても補正に1戦を要すると思っていました。道中は後方インで溜めて、直線もイン突き。馬場のバイアスを乗り越えて差し切れるほど抜けた存在ではなかったでしょう。そこからすれば善戦の4着だったと思っています。問題は次走以降の鞍上でしょうか。

ジオグリフ

個人的に、このメンバーでは抜けた存在だと見立てています。レース後も変わっていないですね。1、2、3着が平均80~90点を取ってくる秀才タイプとしたら、こちらは大舞台で100点をだせる素質を感じています。

でもやはりデビュー前からもっている喉なりが影を落とす結果になったのでしょう。パフォーマンスに影響がでる、と確実に言い切れるなら出走回避して春に向けて治療にあたっていたはず。陣営は札幌2歳からこちら、なかなか難しい判断を迫られていたのではないかと推察します。

ルメールを巡ってコマンドラインとの使い分けという視点もゼロではないでしょうが、レース適性よりできるだけ呼吸器に負荷が少ない選択をしたのなら、距離短縮は妥当な範囲の判断ではないかと受け止めています。

ただ、その状況下の馬ではもっているポテンシャルに対して十分な調教量が積み切れないでしょうし、さらに出遅れ気味になるスタート、そして外枠。ルメールにとっては待機策から直線だけ伸ばしてどこまでやれるか、という負荷のかけ方しか選択肢がないのでは、と思っていました。外差し馬場とはいえ後方から届くのは至難の業でしょう。よくて3着という見立て、残念ながら合っていたのかなと思っているところです。むしろ直線の接触がありながらよく勝ち馬と同タイムで上がってきたなと。

置かれている状況からは格好がついたというべきかもしれません。不安が解消されればカラダはもうひとつ膨らんでくるでしょう、それを楽しみに待ちたいと思います。未完成で終わってほしくないですね。

最後に

有馬記念当日の指定席を取ることは叶わず、この土曜は怒りのパークウインズ府中参戦でした。とはいえ、クリスマスの未明から奥さまが胃腸の調子を崩し、出来る世話をしながら様子をみつつのお出かけ。府中のスタンド到着は中山大障害の返し馬後になりました。

短時間の滞在でしたが、よかったですね。オジュウチョウサンが記録ずくめのゴールに飛び込んだ瞬間はメモリアルスタンドが拍手に包まれていました。なかなかあの雰囲気を作り出せる馬はいないですものね。どうやらオーナーが来年も現役続行とコメントしたようで(ホントですか)、いろいろな意味でチャレンジの続く競走生活になっていますね。

これまで追いかけ続けていたグレナディアガーズを阪神カップで本命にしないという不徳を恥じつつ(適性バッチリなのにね)、有馬記念について考え始めるところです。

中山の芝馬場、土曜の雨は極端なバイアスを生み出してはいない様子。有馬記念と同距離のグレイトフルSは番手追走のヴェローチェオロが快勝。個人的には菊花賞本命にした分、少し取り返した格好でよかった。インを進めるメリットはまだまだ健在のようです。

最終のクリスマスカップは、離れた3番手追走のウインシャーロットをその直後に控えていたソウルラッシュがゴール手前で差し切る展開。どちらも4コーナーまではラチ沿い追走でした。それにしてもソウルラッシュ、いい馬ですね。

父馬でみると、スクリーンヒーローの粘り込みをルーラーシップが差し切り、3、4着に差し届かなかったディープインパクトという血統構成。4コーナーでは結構なキックバックで芝が掘れていますし、レースラップで11秒台前半が見当たりませんから、軽快さで差したり粘り込んだりするのは難しいコンディションと言えそうです。

まだ意識して立ち写真も追い切り映像もちゃんと観ていないのですが、エフフォーリアもクロノジェネシスもベストな条件ではないと思っていまして。特にエフフォーリアはここ2戦、時計のでやすい府中で走っていますし、皐月賞のイン突きはインから乾いていった馬場にフィットしてのもの。

いまの掘れる馬場をあの大きなストライドで蹴り続けながら、パンサラッサの前傾な逃げにタイトルホルダーとキセキが締めてくるであろう深追い気味のラップを受け止めることができるか。ちょっと疑っているところです。

各馬の仕上がり、当日の馬場コンディションの推移を見守りながら、本命を決めたいと思っています。もちろん奥さまのコンディションは心配しつつ(これから買い物です)、グランプリ、堪能したいですね。