more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第44回 帝王賞

テーオーケインズ、見事な抜け出しでした。

逃げるカジノフォンテンをびっしりマークするダノンファラオ。ペースが緩むところがあまりなかった帝王賞になりました。ダノンファラオがもう少し切れるタイプだったら、川田も別の戦略になったかもしれませんが、こうした肉を切らせる戦略を取るしかなかったのでしょう。

クリンチャーは不運の大外枠、オメガパフュームは前半置かれ気味で後手後手にまわる展開、チュウワウィザードはレース後に剥離骨折が判明する状況。速めの馬場とは言え、オーヴェルニュが力強くフィニッシュするには少し重い馬場コンディションだったでしょう。こうして振り返ると有力各馬はウィークポイントを露呈していたように思います。もちろん、事前に予想できるものばかりではないですが。

テーオーケインズは好馬体。パドックではトゥインクルのライトアップで馬体が輝いて見えていました。好枠、近走のパフォーマンス。連闘で無理使い気味だった昨年の東京大賞典から比べても、今回は順調にコマを進めてきた印象。このあたりはライバルとのコントラストを感じますね。

松山は慌てませんでした。他の有力馬がレースの要所要所でバチバチやっているところ、好位のインで淡々と運んでいるようでした。4コーナー手前の並び、インからカジノフォンテン、ダノンファラオ、オーヴェルニュ、クリンチャー。有力馬が扇のように広がってコーナリングし、遠心力にスタミナを削ぎ取られていく中、その扇の要の位置でテーオーケインズが力を溜めていました。

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2021年帝王賞、4コーナーで最善のポジションをキープするテーオーケインズ(後ろの青帽)

扇を広げる際、要の位置は一番動きが少ないですからね。まるで松山が有力馬を振り回しているようにも見えます。ペースとポジショニングへのアジャスト。この位置を取り切った人馬の勝利でした。

公式レースラップ

12.1-11.6-12.1-12.5-12.5-12.3-12.3-12.9-12.0-12.4

昨年の東京大賞典、テーオーケインズは6着、通過順は5-6-6-6でした。
12.3-12.1-13.4-13.7-13.4-12.7-12.6-12.7-11.6-12.4

1コーナーまでの松山の所作

4番枠から、テーオーケインズ、カジノフォンテン、ダノンファラオ。張田からするとスタートから先手を取り切るまで、一瞬も気を抜けない並びになりました。ましてダノンファラオ川田は川崎記念で1度逃げ切りを許していますからね。厳しいマークが容易に想像できました。

果たしてその通りになったわけですが、スタートから先手先手で立ち回っているのは松山でした。初速で少しリードを取り、いったん先頭に立ちながら蓋をせずにカジノフォンテンが自分を交わせるように待っているシチュエーション。キャプチャではわかりにくいと思いますが、松山がわずかに左に首を傾げて、カジノフォンテンを迎え入れる様子が見て取れます。

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2021年帝王賞、スタート後のポジション争いで外の2頭を呼び込むように待つテーオーケインズ松山(キャプチャでは先頭の馬)

…カジノフォンテンを確認する、という表現のほうが客観的でよいかもしれませんが、自分には「いくしかないんだろう」と張田を呼び込んでいるように見えたんですよね。

松山はおそらくカジノとダノンが雁行して交わしてくると読んでいたはずです。2頭が交わしてくれた後はインをキープして5番手でファーストコーナーへ。有力馬のほとんどがプッシュしている場面で力んだ追走にはなっていませんでした。きっと戦前のイメージに近いレース運びだったのだろうと推察しています。

直線入り口でインへ、あとは力強い末脚

直線はごくスムーズにインに進路を確保しました。キャッチーな瞬間ですね。有力馬は早めにアクセルを踏んでいる分、4コーナーをタイトに回ることはないだろうと。松山は扇の要をキープしながらアイドリングしているように見えましたから。

直線は右鞭に一度過剰な反応は見せつつも、一度も手前を変えずに伸び切りました。一番余力を残せる位置を取り切ったことの証明でもあったかな。

すべてが噛み合った分(ジョッキーがしっかり噛み合わせた分)、鮮やかな勝ち方になりましたが、では大外枠にはいって同じ結果に導けたかというと…。ダート中距離の中心的な存在になるかはこれから、と思っています。楽しみですね。

ノンコノユメはイン追走にこだわっての2着

先行集団の厳しい濁流に3、4コーナーで外から捲っていくオメガパフューム、マルシュロレーヌ、ミューチャリー。これらとは完全にひとつ外したポジションでノンコノユメはじっとしていました。11番枠から1コーナーまでに内ラチ沿いを取ってからはまるっと1周、直線に向くまでインベタに徹していました。

惜しいのは直線で進路を確保するまで、だいぶ時間を要してしまったこと。結果的にクリンチャーの外まで持ち出すことになりましたからね。でもこれはやむを得ないよなぁ。仮にインを突いてテーオーケインズの通ったラインをなぞったとしてもワンチャンはなかったように思っています。

パドックでよく見えたんですよね。9歳のG1チャレンジという点には目をつむって、コース実績と仕上がりと差し競馬で連対があるのではという色気で買い目に含めておりました。はい、テーオーケインズ本命で馬連的中という快挙。いやーびっくりしました。

クリンチャーは大外が響いての3着

個人的には大外枠より枠の並びでロスが多くなってしまった印象があります。ひとつ内にマルシュロレーヌ、というより森泰斗がいなければ、もう少しやりやすかったかもしれません。

最初のゴール板付近までジリジリとした雁行。その間にインの先行馬が前々にポジションを取ってしまいました。マルシュロレーヌのパスした後はオーヴェルニュが内側に。なかなかインコースに寄せられないまま1コーナーを迎えることになりました。好位はほしいけど、加速したうえで外を回るのは相当なスタミナのロスになりますからね。

負荷をかけずにギリギリを攻めたのはルメールだからこそ。それでも終始馬群の外々を回し続けることになってしまいました。

近走の成績を考えたら6番人気ではないですよね。大外枠の難しさがしっかりオッズに反映されているなと感じておりました。

最後に

当日は退勤後に大学の授業がありまして、発走時刻は授業中という厳しい?条件下でした。教室に入るのを待ちながらスマホパドック映像をチェック。テーオーケインズの黄金色の馬体は大学構内で確認しておりました。…ダメな学生ですねw

毎週水曜の夜が授業なのはわかっていましたから、今年の大井の重賞はリアルタイムで観れないなと。割り切るつもりでいたんですけどね。馬券の仕込みはできるなと思い立ってよかった。授業料を稼いだ格好になりました。

ジャパンダートダービーの一週前に期末テストと残っていたオンデマンドの受講も終わりまして、いまいまは結果待ちの状況です。おかげさまでおそらく単位はとれるのではないかなと。頭の使い方に変化が欲しかったことが入学の動機でして、この年齢でアカデミックな勉強に取り組めたのはいい経験になりました。

のちのち、この帝王賞は大学の授業の風景と合わせて思い出すことになるんでしょうね。印象少なく何となく流れていくよりはよいのかなと思っています。