more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第55回 スプリンターズS

ピクシーナイト、3歳でのスプリントG1戴冠となりました。

逃げ争いが早くにまとまり、内枠からの好スタートで3番手のイン。無理のない加速でこのポジションを取れた時点でほぼ勝負ありましたね。

逃げ争いをするであろう8番ビアンフェと大外16番モズスーパーフレア。そして折り合いといいますか、レースへの参加に難のあるメイケイエールが6番。その間に挟まれた外枠の有力馬は序盤の立ち回りにひとつ難しさがでると思っていました。反対に、メイケイより内枠の馬にはプレッシャー少なく序盤を立ち回れるのでは、と考えていました。

まして馬場はイン有利。金曜に台風の影響からまとまった降雨がありましたし、土曜の夜にもひと雨ありましたが、さすがの路盤ですね、土日どちらも午後には良に回復。土曜メイン秋風Sもインの3番手を取ったレッドフラヴィアが押し切っていました。インで立ち回るには内枠にアドバンテージがありますよね。

ビアンフェとモズスーパーフレアは昨年共倒れになるハナ争いをしていますので、今回はお互い工夫してきたようです。外枠も相まってモズは思い切ったスタートダッシュ。一気にハナを奪ってから2ハロン目ではもう手綱を抑えていました。ビアンフェはこれを見て無理をせず2番手へ。隊列が早く決まったことで序盤のペースは落ち着きました。

さらにクリノガウディーがスタートから少し外に張ったことで、同等のスタートだった外枠の馬はひとつ余計に外をまわる形に。スタート直後のパトロールビデオが象徴的ですね。個人的には想像以上でしたが、内枠の馬が無理せずに序盤を進められたことがよくわかります。

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2021年スプリンターズS、スタート直後の横の隊列。外枠各馬の立ち回りの難しさ、内枠各馬のスムーズさが見て取れる



内枠を引いたピクシーナイトにはこれらの恩恵があったことは間違いないでしょう。でもロスを最少に抑えたレシステンシアに2馬身差を付けたのは実力の証明と思います。勝つべくして勝った、という理解でよいのでしょうね。

公式レースラップ

11.7-10.6-11.0-11.1-11.3-11.4

比較のために昨年のラップも。ビアンフェとモズスーパーフレアの窺い合いが、2ハロン目に対照的に表れています。正反対ともいえる結果になりましたね。

11.9-10.1-10.8-11.5-11.9-12.1

グラスワンダースクリーンヒーロー→モーリス→ピクシーナイト

ちゃんと記録を確認したわけではないですが、netkeibaさんのツイート通り、日本調教馬で4代G1を勝ったのは史上初ではないでしょうか。いやー、グラスワンダー贔屓でしたからね。97年の朝日杯は現地観戦していましたし。グラスワンダーの血が再び中山を制した、と言葉を置き換えると感慨深いものがありますね。20年以上経っているのか、こちらも年齢を重ねましたね。

母父キングヘイロー福永祐一スプリンターズS初制覇

そんな感慨は微塵もみせていませんでしたし、おそらくファンの側が感じるだけで十分なのでしょうが、キングヘイローの血でG1を勝ったこともまた感慨深いものがあります。キングヘイローも2歳の東スポ杯で生観戦しているんですよね。スタンドが右なのに左手でガッツポーズをしている福永の初重賞制覇。個人的にはフサイチコンコルドの引退式当日というのが記憶を鮮明にしております。

福永はスプリンターズS初制覇。高松宮記念は複数回勝っている分ちょっと意外な記録という印象です。…調べました。高松宮記念勝利はサニングデールビッグアーサー、ミスターメロディの3回。スプリンターズS、これまではエーシンヴァーゴウの2着が最先着。キングヘイローでは3着していますね。はい、ビッグアーサーの件は忘れていませんよ。今回でプラマイゼロですかね。

気になった馬の短評

シヴァージ

終始ピクシーナイトの直後。結果的に勝ち馬の通った後をそのまま抜けての3着となりました。馬場と枠に逆らわずしっかり活かしたという格好。前週の神戸新聞杯ステラヴェローチェしかり、吉田隼人の堅実なリードの賜物と思います。

さすがにアタマを狙うには相当なアドバンテージが積み重なる必要があると見ていましたので(今日のレースですでにかなりのアドバンテージが得られていましたからね)、3連複の3頭目に指名できたことで過不足ない見立てだったと思っています。

レシステンシア

後躯も締まっていい仕上がりでした。やはり外枠発走の分、ベストなコースを選びきれなかったと見ています。パトロールビデオではあまりインに寄せようとしていないルメールの所作がわかります。ひとつ外のダノンスマッシュへのけん制があったかもですが、直線で逃げ馬を交わすこと、インで控える馬を4コーナーから直線で閉じ込められる可能性があること、このあたりを狙っていたかもしれません。そうすると内ラチまで寄せる判断にはならないでしょう。

結果として1頭、自分よりインで立ち回れる有力馬がいたことはやむを得ないというべきかもしれません。春秋スプリントG1でともに2着。力は示している分、評価され切れない面はちょっともったいないですね。

アウィルアウェイ

このラップでは差せませんね。直線追いにくいシーンもありましたし、馬場は向いていましたが今年はノーチャンスの流れだったと思っています。

追い込み馬の上がり、タイセイビジョンは33.2、エイティーンガールは33.4、そしてアウィルアウェイは33.6。勝ったピクシーナイトは33.4で上がっていますから、絶望的な位置から勝ち馬とほぼ同じ上がりで外から伸びていたことになります。

ダノンスマッシュ

年齢とピークという懸念はありましたが、どちらかというと展開、枠順、馬場にスポイルされたと思っています。案の定というべきでしょう、相当よいスタートを切っていましたが、レシステンシア、クリノガウディーが壁になって馬場のよいインコースへ入り込むチャンスはありませんでした。

そのディスアドバンテージを上回るだけの抜けた存在ではもともとなかった、というこれまでの評価も相まって、今回は印を下げていました。川田にとっては厳しい条件下で1番人気を引き受けることになったと思っています。

メイケイエール

馬体の仕上がりはよかったと思いますが、気持ちの問題は変わっていませんでした。スタートからコントロールしようとする鞍上の手綱に首をブンブン振って抵抗、大きく外に寄れてタイセイビジョンとエイティーンガールに不利を与えてしまっていました。外に逃げるしかないよなと思っていましたので、事故にならず外までもっていけたのはむしろよかったのかもしれません。少なくとも池添が避けなければ背後からロードアクアに乗りかかっていたでしょう。

ハミ受け不良で平地調教注意という判断。再審査ですと以降の出走に条件がつきますが、そういう問題ではないですね。阪神ジュベナイルフィリーズのように外枠発走、馬群から離した追走でもできないとまた危険な走りを繰り返してしまうのではないかなと。誰かを責める話ではなく、どう改善したらよいのか、暗中模索が続きそうです。

最後に

どうやらピクシーナイトは次走香港のようですね。直線の右鞭で左に流れていたように、来年の完成が楽しみな存在。無理のない判断をお願いしたいです。

さて、凱旋門賞まであと少し。平松さんのツイートでは「結構降ったのに思ったほど悪くない」という武豊のコメントが紹介されています。馬場状態はどう推移するでしょうね。予想も含めて楽しみたいと思っています。