more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第62回 宝塚記念

クロノジェネシス、鮮やかなグランプリ3連覇となりました。

1コーナーまでにインの3番手を取った時点でほぼ勝負ありましたね。後からパトロールビデオをみると、キセキが寄せてきた1コーナー直前で少し外へ出して、後々でインに押し込まれないような予備的な動き。結果、4コーナーまでキセキ、カレンブーケドールは常にクロノジェネシスよりひとつ外のコース取り。前にはいられて1列下がることもありませんでした。

このインの3番手をキープする力が加わったグランプリホースですから、鬼に金棒という表現が極めて妥当でしょう(久しぶりに使いましたね、鬼に金棒)。

後半ロングスパート勝負という、鳴尾記念同様の流れに持ち込んだユニコーンライオンをあっさりと突き放しての勝利。どうやらこれで凱旋門賞のようですね。

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2021年宝塚記念、逃げ粘るユニコーンライオンとレイパパレを交わすクロノジェネシス

公式レースラップ

12.3-11.2-11.6-12.4-12.5-12.4-12.3-11.5-11.5-11.5-11.7

比較対象として、ユニコーンライオンの鳴尾記念を。
13.1-11.9-13.0-12.6-12.3-12.2-11.5-11.1-11.1-11.9

台風の影響は軽微、小雨はあっても良馬場で

週半ばはやきもきしました。太平洋側から台風が接近、ちょうど日曜に影響がでるのではという予報でした。土曜の夜中に降雨はありましたし、当日午後も小雨がありましたから、多少掘り返せる馬場コンディションではあった模様です。

9Rの舞子特別はスマートクラージュの逃げ切り。自身は35.0、掲示板に載った2~5着は34秒半ばから後半の上がりを計時していました。1400m戦の前後半33.8-35.0ですから、そこまでスピードを減殺する馬場ではなかったでしょう。

スマートクラージュの鞍上はルメール。そしてこのレースに坂井瑠星は騎乗馬なし。きっと観ていたでしょうね。

気持ちをコントロールしたい川田将雅、それを織り込む坂井瑠星

川田将雅と坂井瑠星、この2人で意味のないスローペースも破綻したハイペースもないと想像していました。2頭の先行争いがどうなるかは予想の焦点のひとつでしたね。

当初はどちらもハナがあり得るという漠然としたイメージでしたが、これを紐解くヒントになったのは「教えて!福永先生」でした。カンテレさん、面白い試みです。

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この説明を聞くと、逃げ馬を事前に特定するにも相応の背景を理解しておく必要があるなぁと。例えばレイパパレの方が初速が速いだろう、という決め打ちも、それはそれで面白い予想ではあるわけですが、ちゃんと難しい悩ましいと受け取る必要もありますね。

ポイントは前走逃げた馬の次走。特にレイパパレは、前走大阪杯での、気持ちが落ち着くまで抑え過ぎずに流すような逃げとなって、前半1000m59.8。あの馬場ですからかなり突っ込んだラップになっていました。

同じリズムでは1ハロン延びる条件、まして1コーナーまでの距離が圧倒的に長くなりますから、川田はより折り合い重視にせざるを得ないだろう、という読みはひとつ成り立ちます。

コーナリングでの自然な減速を利用するにしても、1コーナーまでかなり走らなくてはいけませんしね。それまでのスタートダッシュとポジション取りと折り合いと。川田はあらかじめ、難しい課題にチャレンジすることになっていました。

仮に前進気勢に任せてハナを切った場合、レース後半でユニコーンライオン、あるいはキセキのロングスパートを受けることになっていたでしょう。鳴尾記念のラップが示している通り、残り800からの厳しいシフトアップユニコーンライオンの特長ですのでね。鞍上は変わらず坂井瑠星ですから、その特長を活かす乗り方を試みるものと推測できます。

川田も工夫しているんですよね。いったんインから少し離して、2番手で折り合わせようという試み。でも、それも前走の経験を受けてやらなければならないことだったという認識です。

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2021年宝塚記念、1コーナーまでの直線半ばで逃げたユニコーンライオンと距離を取って折り合いを重視する2番手レイパパレ

一方の坂井瑠星、そのライバルの状況をしっかり自身のアドバンテージとすることができていました。先手を取ることの意味はわかっていたのでしょう。大一番でそれができることが素晴らしかった。前走鳴尾記念、スタートからのプッシュの程度を体感できていること、今回の積極策に繋がっていますね。

受けに回らざるを得ない川田将雅と、ペースと仕掛け所を握り切った攻めの坂井瑠星。好対照な攻防がレースを通して展開されていたと思っています。

ルメールのシンプルなリード

1週前の追い切り、併せ馬が成立せずにルメールの単走追いという形になっていました。プランが崩れたことを懸念する向きもありましたが、リズム重視でしたよね。自分は心配なさそうだなと思ってみていました。

最終追い切りも含めて前進気勢がしっかり感じられましたので、1コーナーまでに先行策を取るにもちょうどよさそうとも思っていました。ホントにその通り3番手に持ってくるからクリストフ恐るべし、ですね。

4コーナー。積極策のユニコーンライオン、外を回らざるを得ないモズベッロと蓋をされたくないカレンブーケドール、そして手ごたえ十分で未知の距離に挑むレイパパレとそれを押っ付けながら追走するキセキ。…その全部を見渡せるインのポジションにクロノジェネシスが収まっていました。予想通りと言いますか、想像以上と言いますか、このシンプルなリードのレベルの高さが素晴らしいなと。

有馬記念の力でねじ伏せるロングスパートとはまた違った強さを見せてくれました。ルメールの慌てない加速の促し方も合っていそうですね。

グラスワンダー以来のグランプリ3連覇

史上2頭しかいないんですね。グラスワンダーは有馬→宝塚→有馬、でしたから、宝塚→有馬→宝塚では史上初。春秋グランプリは質的に似ているとはいいますが、まず1年半強さをキープする必要がありますから、それだけでも凄いことだなと。

スペシャルウィークに迫られた2回目の有馬記念、夏負けが尾を引いたグラスワンダーは満身創痍という印象が強かったですから。当時はだいぶやきもきしていましたねー。それを思うとドバイ帰りで好調をキープしてきたクロノジェネシスは立派です。

グラスワンダー、クロノジェネシスともに父、母父は非サンデーサイレンス。いまは非ディープインパクトというべきでしょうか。ディープ産駒唯一の宝塚記念勝ち馬は、府中で重賞未勝利、良馬場でも重賞未勝利のマリアライトですからね。クロノジェネシスには母系にサンデーがいますが、血統面でも宝塚記念というレースの特長をよく表しているように思います。

※6/28注 微妙な表現をしていましたが認識不足でした。スピードシンボリが3連覇していますので史上3頭目ですね。訂正いたします。にしても凄い記録です。

上位人気で気づいたこと

レイパパレはよく粘りました。プラス体重はそのまま好調の証であったでしょう。昨秋から比べればずいぶんとパンプアップしてきました。このあとの動向が気になりますが、距離短縮はしないほうがよいのではないかなと。改めて、京都の内回り2000がぴったりというイメージが。そうなんでよね、出られなかった秋華賞なんですよね。このあとのローテーションが気になっているところです。札幌記念

キセキは見事な馬体の仕上がりでしたが、勝負どころから少し気持ちが入り切っていないような。。。他馬を追い抜く、というモチベーションに欠けているのかな。昨秋のジャパンカップで前半オーバーペース→後半バテバテ、という競馬をしたことが尾を引いているのかもしれません。

アリストテレスは評価を下げました。良馬場で切れ味勝負でも、掘れる馬場で末脚を維持するパワーも、瞬間的にスピードをあげるシフトアップ力も、他馬に強く秀でている面がないあたり、古馬G1で勝ち切るには足りないだろうと。今年は掘れる馬場でのロングスパート、勝ったAJCCでものめっていましたからね。

ミスマンマミーアとカデナは自身の乗り方に徹する

終わってみれば前残りですから、待機策の2頭にとっては厳しい展開ではありました。どちらもこれまでの競馬のリズムを崩さずに、直線も外を回して6、7着。もうひとつ何かしてくるかと思っていましたが、少し残念に思っているところです。

勝ちパターンに嵌るまで、展開待ちの重賞挑戦が続くのかな。特にミスマンマミーアはもう少し前半のポジションを求めてもいいように思いますが、何かウィークポイントがあるのかもしれませんね。

最後に

前日にキャンセル待ちの間隙を突いて東京競馬場の指定席をゲット。とはいえ当日は宝塚記念に絞っていましたので、早めに馬券だけ買いに行ってG1は自宅観戦という、贅沢に指定席を使用してしまいました。

馬場開放があればずっといたんですけどね。今年はなかったようです。密を避ければアリなのではと思っていたのでちょっと残念でした。

場内の飲食店もシャッターが降りているところが多く、やはり厳しいですね。土日だけ、まして顧客の母数があらかじめ制限されている中での開店ですから、人員確保含めて二の足を踏むお店があっても不思議ないなと。最低限、指定席が取れたときは場内で何か食べようと思っていまして、今日は福三さんの焼きそばでした。パックにみっちり入っていましたね、しっかりいただきました。

入場緩和があるとしても少しずつなのでしょうね。オリンピックの無観客がなかなか物議を醸していますが、競馬はずっと続いていきますからね。慎重な判断を積み重ねていってほしいなと思っています。あ、でも競馬博物館の再開は早くしてほしいかな。