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1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第71回 安田記念

ダノンキングリー、G1に手が届きました。

決してきっちり仕上がったという状態ではなかったと思います。昨秋の天皇賞しんがり負けからの巻き返し、なかなか想定しにくいところではあります。

スピードに乗りにくいインを避けられる外枠、グランアレグリアのひとつ外をきっちり締めた序盤の川田の判断、そしてトーラスジェミニに逃げずに中距離寄りの落ち着いた流れになったこと、もろもろがピンポイントでダノンキングリーに味方したと受け取っています。最もスポイルされなかった、という言い換えも可能でしょう。直線フルに末脚を伸ばせましたものね。

とはいえ、その向いた流れを活かし切るだけの地力がなければG1戴冠は無理でしょうから。大阪杯の逃げのあたりからどうなってしまうかと思っていましたが。ここでかー。後方一気した毎日王冠は伊達ではなかったですね。お見事でした。

公式レースラップ

12.3-11.0-11.6-11.5-11.4-11.2-11.0-11.7

比較のために。インディチャンプが勝った2年前の安田記念、アエロリットが引っ張り、アーモンドアイが32.4で差し届かなかったアレですね。

12.2-10.9-11.4-11.3-11.2-11.1-11.2-11.6

荒れ気味の馬場と遅めのペース

当日午前中に降雨。インから5~6頭目までは掘れる状態と見えていました。安田記念でいうとトーラスジェミニが通ったところがコンディションのギリギリよいところ。

8Rで逃げ切ったバルトリが通ったコースがもっと外でした。鞍上はルメール、グランアレグリアをどこに通すのか、概ねイメージをつくっていたのではないでしょうか。

逆に内枠スタートの馬、サリオスとギベオンは最内のコースを通らないためのポジショニングにトライしていたようです。…その意味でいうとトーラスジェミニが逃げずに外の2番手を取ったのも、直線外に展開しやすいポジションを求めた結果といえるように思っています。

けん制の効いた2列の馬群。欧州の芝G1ではこんな形をよく見ますね。馬場状態が異なることを差し引いても、アエロリットがラップを締めた2年前とはずいぶんギャップを感じさせます。

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2021年安田記念、向こう正面でけん制の効いた2列の隊列がまとまる

ポジション取りの機微

「金色のマスクマン(仮)」さんのレース回顧、というよりポジショニング回顧が秀逸でした。観察をもとにレースの特徴を整理する、という地道な分析にとても丹念に取り組んでいらっしゃいました。

note.com

自分が表現するとしたら2点かな。

ダノンキングリーについてですと、スタート直後にできたインのスペースにグッとハンドルを切って飛び込んだ川田の判断。グランアレグリアがインにいることは見えていたでしょうから、その外で蓋をする形がつくれます。1番人気相手ですから、当然にして効果的な策、きっちりやってくるジョッキーですね。

もうひとつはギベオン。こちらの動きも紹介した記事で詳述されていますが、おそらく西村は馬場のよいところを通る可能性を求めて、インから2列目を狙いにいったのでしょう。ダノンプレミアムの後ろを回してラウダシオンの直後、でしょうね。結果としてこのトライは上手くいかず、ひと足早くそこにいたインディチャンプに主張されて、ダノンプレミアムの後ろという最内の列に戻ることになります。

 

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2021年安田記念、ギベオン(黒帽)が外に張り出して、サリオス(奥の白帽)とグランアレグリア(奥の青帽)が順に引く瞬間

このギベオンの外への展開で斜め後ろにいたサリオス、グランアレグリアが玉突き的に手綱を引くことになりました。グランアレグリアにとっては結局ここで生じた1列後ろを挽回できずに終わったわけで、なかなか悔やまれるポジショニングであったわけです。

「中2週」という敗因分析の切り口

グランアレグリアにとっては初の中2週。影響は少なからずあったように思います。パドックのテンション、歩幅も大きくはなかったですしね。スタートから俊敏に動けていればポジションが後手に回ることもなかったかもしれません。ツメのトラブルで追い切り日程に若干の狂いも生じていました。

一般的な敗因の語り方、昭和の頃から変わっていない気がしていますが、諸条件をざっくり排除して端的に「〇〇=マイナス要因」と語りがちですよね。シンプルに語った方がたくさんの人に届きやすいのは、確かのそうなのでしょうけど。中2週=悪みたいな、レッテルに近い語りもあるように思っていまして、何ともだなぁと。

今回ですと、「ヴィクトリアマイルから安田記念という中2週」ともう少し具体的に捉えたいところです。安田記念の方がペースも厳しくなりやすく、ポジション争いも馬群の密集度も異なり、両方で1番人気になる牝馬には当然にしてマークが辛くなる、さらに連続開催の後半で馬場が悪化しやすい。こうした諸条件が重なった中での惜敗、と捉えるのが、現状では妥当ではないかと思っています。

ただ、中2週だと短期放牧で調整するには忙しいという問題はあるのかもしれないですね。これはグランアレグリアに限らない話ですので、JRDBのレポートなどに期待したいと思っています。

ヴィクトリアマイル16回の歴史の中で、安田記念との同一年制覇はウオッカのみ。…最終的にウオッカを持ち上げることになりましたね。とはいえ、アーモンドアイの32.4も、今年のグランアレグリアの32.9も、驚異的なリカバリーだと思っております。

展開を引き寄せたシュネルマイスター、インディチャンプ

シュネルマイスターは中団追走から脚を伸ばしました。NHKマイルカップの通り、マイルの締まったペースでは追走スピードに少し不安があるのが現状と思いますが、道中のラップが落ち着いたことで前走と近しいリズムで走れたように見えています。

まだ未完成の中での3着に価値を見いだすことはできますが、スプリント適性を求められるマイル戦はまだ経験していないですからね。これからの成長でどういうレースをこなせるようになるのか。秋以降の見極めが必要と思っています。…あれこれこなせる器用なタイプとは思っていない、という今のところの感想は書いておきますね。

一方のインディチャンプ、待って待って追い出しての4着。こちらも自身の流れに持ち込むことはできたと思っています。だからこそ、ローテーションを見ると、やっぱり前走1200G1はこうなってしまうのかなという邪推が強くなりますね。ガソリンを一気に使い切ってしまうリズム、少なくなくスプリント戦の影響があったように見えています。

いまのインディチャンプに合うコースとペースはどれでしょう。中山1200も阪神1600も微妙に違う気がしております。秋の目標をどこに据えるのか、楽しみ半分というところですね。

ケイデンスコールは末脚不発の10着

ポジショニングは絶好と思って観ていたんですけどね。直線にはいってあまりカラダが動いていないように感じました。細江さんのnetkeibaコラムでは「熱中症っぽかった」とのこと。そのコラムでは父ロードカナロアが暑さに弱かったこと、産駒も受け継いでいることが指摘されていまして、今後も少し頭に留めておく情報ではあるなと思っております。

それがなかったとしてもダノンキングリーといっしょに差し脚を伸ばせていたかというと。もう少しレース序盤から中盤が締まってくれた方が活きるタイプかなと見立てておりました。それを込みで本命にしたのですが、それはイコールで想定ペースが違っていたということですね。反省しきりです。仕上がりはかなり良かったと思っています。

サリオスは右トモが踏ん張れない?8着敗退

先の金色のマスクマン(仮)さんも指摘していますが、スタートで右トモが流れてしまっています。踏ん張りが効いていませんので、その分後手に。ここから勝負しなければならなかったわけですから、松山はなかなか厳しい条件下にありました。直線入り口で外に展開しましたが、手前替えにも少し時間を要した印象。これは最終追い切りでも不器用な面を見せていましたので、相応の結果がでてしまったといえるかもしれません。

大阪杯で直線最内を突いたのは、あのコース取りの中で右トモにできるだけ負担を残さないようにする松山の配慮だったかもしれません。立て直すには夏は少し短いかな。

最後に

すでにエプソムカップも終わっていますね。アルジャンナを切ってファルコニアからザダルとサトノフラッグに流す馬連は、鮮やかなタテ目。歯噛みする予想が続いております。

収集している情報が豊富ですしね、分析がある程度の精度に届いている実感はあるのですが、その分1つのファクターの違いで微妙に的中に届かない、指名した馬は合っているけどとか、1頭だけ足りないとか、こういう惜しい予想がこの上半期の傾向と自覚しています。

シンプルな買い目にしようかな、などと考え中ですが、こうした逡巡も楽しさのうちかなと。損はしたくないですけどね。

どのくらい関連するかは微妙ですが、新しい種牡馬と若手ジョッキーの傾向など、あまり予習している時間がなかったのは確か。この夏はそのあたりの調べものをする時間が欲しいですね。

ディープインパクト産駒がG1勝利を増やす一方で、トーセンラー産駒が父の産駒を抑えて重賞を獲っている時節ですからね。世代交代を追いかけるのもファンの醍醐味でしょう。