more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

エクイターフの後遺症についての仮説・補記

歴史的なレコードを計時したジャパンカップからこちら、高速馬場と競走馬の故障に関する議論が再燃しているようで。

研究結果も出ている話ではあるのですが、SNS脊髄反射だとしたら、ある意味では多数の方に起こりやすいイメージの連関ではあるのでしょう。速い(=硬い)馬場では脚を痛める、というイメージですね。

前回の投稿に補記する意味も含めて、少し書いておこうと思います。

高速馬場≠故障しやすい

競馬ブック、今年の10/28号(天皇賞ウィークですね、スワーヴリチャードが表紙)で「馬場と競走馬の怪我の関係」と題した記事があります。馬場に関する本も出されている小島友美さんの取材記事ですね。

競走成績と故障のデータから、様々な条件下で故障率がどのように上がるか、調査した結果が紹介されています。速いタイム、馬場の硬度、ボコボコの程度(これは開催前半と後半で比較、平坦性と表現されています)などの要因が調査対象になっていました。

結果、調査範囲では馬場と故障に因果関係は見当たらず。関係がなかった、というよりは、統計的な有意差がでなかったというべきでしょう。コジトモさんの紹介記事はこちら。

ameblo.jp

ひとつ気になったのは、分析対象となるデータがエクイターフ導入前後にまたがっていること。研究結果を発表した菊地賢一さんは主要4場のタイムが年々速くなっているという傾向もつかんでいるようですので、事故率に変化がないものか、引き続きの研究結果を待ちたいと思っています。

ひとつ前の投稿はこの結果を踏まえて

エクイターフの後遺症、という表現がひょっとしたら扇情的だったかしら、と反省してもいるのですが、この「高速馬場≠故障しやすい」を踏まえて、故障との関連がないとしても、筋肉へのダメージや疲労の程度とは関連するのでないか、と考えたのが前回の投稿でした。

keibascore.hatenablog.com

スピードが上がるほど、接地した瞬間の衝撃はどこかで吸収→推進力へ変換していくことになるわけで、このあたりはどのようにデータ化して分析が可能なのか、引き続き様々な研究結果を待ちたいなーと書いた次第です。

書いた直後に破格のワールドレコードですからね。このブログのアクセス数が不用意に上がっていまして、ひょっとして誤解をまき散らしている?などと心配になったものですから、この補記に至りました。ええ小心者ですねw

もも裏に疲労

もも裏、ちゃんと表現するならハムストリングスですね。競走馬のトモの筋肉が使われる瞬間は、後方に伸びた脚を引き戻すときと、接地したあとに垂直になるまで支えながら引っ張り戻すとき、と学習しています(誤解があったらごめんなさい)。

馬場からの反力を受けて強い負荷がかかるのは人間でいうともも裏かしら、という、これも仮説というか、理科の実験前の予測みたいなものですね。

ひょっとしたら、未勝利馬とG1出走馬では疲労箇所について違いがあるかもしれません。カラダの使い方の違いと、筋肉量の違いと、疲労の程度とエクイターフの硬度。こうした関連性を問う研究は見たことがないかな。

こうした仮説をもちながら、引き続き情報収集していこうかなと思っております。

ジャパンカップは誇るべき結果

馬場コンディションも、馬の仕上げも、ジョッキーの技術も、血統も。芝中距離で世界最高のパフォーマンスを目撃した瞬間です。日本で培った「競馬」という価値の結晶でしょうから、結構素直に誇るべきものと思っています。アーモンドアイ、掛け値なしですごかったですものね。

…一方である種の怖さも覚えてはいますが、それは故障うんぬんとはまた別の話ですので、改めてレース回顧する投稿で書こうと思っています。

タータントラックとの比較は有意義かも

陸上競技場で採用されている全天候型トラックの素材。タータンやウレタン、近年はそれらの混合になっているようですが、競技者の怪我を防ぎつつ記録が出せるような開発が進められてきたようです。以下は最近自分が参照した記事です。

style.nikkei.com

athlete.evolu.co.jp

以前の考察も紹介

ずいぶん前に自分が考えていたエクイターフの特徴や影響についての投稿。不明瞭な箇所もありますので、その後のレポートや研究などを参照いただきたいのですが、いろいろ考えておりました。個人的にはやっぱりトーセンジョーダン天皇賞がエポックメイキングといいますか、あーこれで高速化と脚元保護の両立に進むのだなという、その象徴のように認識しているレースなんですよね。最初の考察はその直後でしたので。

keibadecade.blog98.fc2.com

keibadecade.blog98.fc2.com

ファン目線では競馬の楽しみ方が気になる

もうジャパンカップに誰も来なくなるんじゃないか、このあと日本競馬はガラパゴス化してしまうのか。などなど心配は尽きないのでしょうが、そもそも馬場コンディションは工業製品のように統一規格を整えられるものではないですしね。世界標準に適合することが国際化でもなく、唯一の価値でもないと思っていまして。

異なるトラックコンディションを橋渡しするために、こちらから出向いていくことも必要なのでしょう。トップホースの海外遠征の意義はこの点で変わりつつあると思っています。日本一→世界一、という単純な一本道ではないでしょうね。

やばいぞ日本の馬場、という誤解を多く孕んだマイナスのメッセージが蔓延することを懸念はしつつ。日本の風土と日本人の気質と文化と十分な資本が生んだトラックコンディションを信頼していく方が賢明なのでは、と思っているところです。