阪神で代替開催となった2020年の中京記念は、最低人気のメイケイダイハードの差し切り勝ち。パドックで集中を欠いた様子からトレーナーは最下位も覚悟していたようですので、そりゃこちらもびっくりしますよね。
もう少しリラックスした前半だったらミッキーブリランテの早め捲りが嵌る展開だったかもしれません。4コーナーを捲る判断は、馬場を考慮しつつも溜め切れなかったことの裏返しと思っています。福永は判断ミスとコメントしていますが、ひとつの勝負の仕方と見えました。
公式レースラップ
12.3-10.5-11.2-11.8-11.7-11.3-11.4-12.5
参考までに、6月開幕週、ストークSのラップです。
12.6-11.0-11.9-11.7-11.6-11.1-11.0-12.3
梅雨と連続開催が重なっての悪馬場
前週7/4、5は、土曜の降雨の影響が残る中での開催。CBC賞があった日曜も稍重までしか回復しませんでした。逃げ切ったラブカンプーは33.5-35.2のなかなかな後傾ラップ。これで差せませんからね。
打って変わって中京記念は全員がインを開けたい意図をもって4コーナーを回っていました。各ジョッキーとも前週にラブカンプー、アンヴァルが通ったイン2、3は伸びないというジャッジがあったようです。
2番人気のソーグリッタリングは理想のコースよりひとつインに押し込まれたように見えています。以下のスクリーンショットでは、土埃が生じているギリギリのラインを通ったことが窺えます。
それを踏まえて「これだけ伸びなかったのは特殊な馬場が影響したのだろう」という川田のコメント。コメントを見た瞬間は、特殊さ?と思っていましたが、タイムを見て少し察しがつきました。
開幕週の良馬場より走破タイムが速い
先に挙げたストークSと比較すると、走破タイムが0.5秒速いんですよね。もちろんクラスが異なるので端的な比較は禁物なのですが。
京都改修に伴って今年の阪神は7週連続開催。ここに梅雨の長雨が重なって相当に掘れている状態なのはレース映像のキックバックでよくわかるのですが、わかる分走破タイムの速さとのギャップに少し違和感を覚えました。
…単純に外の馬場がよかった、のかもしれませんけどね。後方待機から末脚に賭けたブラックムーンやロードクエスト、ともに鞍上が思ったほど伸びなかった旨のコメントを出しています。巧拙はあったのでしょうが、単純に外側がよいとは言い切れないかなと。
含水率だけでは馬場の速さは判断できない模様
降雨の影響は、JRAが発表している馬場の含水率に表れているのではと、以下のページを覗いてみました。
なお、測定方法など基礎知識と銘打ったページは以下ですね。
ページの内容から、内ラチから1m離れて芝の下の路盤砂の含水率を測っていることがわかります。金土日、ゴール前と4コーナーの2地点で計測していますが、レース中のラップに近しい4コーナーのラップを取り上げて比較してみましょう。
- 中京記念当日:8.6%
- 6月の阪神開催(4週分)の平均:11.275%
- 2020年阪神牝馬S当日:9.1%
- 2019年天皇賞秋当日:16.8%
阪神の6月、3週目(6/20、21)は木金と降雨がありましたので、天候のばらつきを含んだ数値になりますね。阪神牝馬Sは良馬場、勝ち馬はサウンドキアラ。そして2019年天皇賞秋は、はい、アーモンドアイが1:56.2で走破した天皇賞です。
…どうやら路盤の含水率だけで端的な相関関係(水分が少ないほど馬場が速い)は見出しにくいようですね。川田が感じ取った「特殊な馬場」はこのあたりにありそうです。
芝馬場が速い時計を担保する要因についての仮説
馬場の速さを担保している要因は、馬場構造からして2段階に分けて理解すべきなのかもしれません。以下のどちらかの状態にある場合は、グリップが効きやすい=速い馬場と考えてみました。
- エクイターフがしっかり根付いている
- 路盤砂が乾いている
現状、エクイターフはエアレーション+シャッタリングによってクッション性を確保する運用ですので、繰り返し使うなり降雨で湿った状態で競走が行われるなどで馬場が(想定を超えて)一定以上壊れた場合に路盤砂の出番になると思われます。
この仮説ですと、中京記念当日はエクイターフが壊れて掘れてしまっても路盤砂がスピードを支えたと言うことになります。例示したアーモンドアイの天皇賞秋の場合は、エクイターフがしっかりグリップ力を担保していたため、路盤砂の含水率が多めでも影響はしなかったと考えられます。
でもなー、計測地点が内ラチから1mなんですよね。ここは伸びないと判断されて逃げたトロワゼトワルしか通っていない箇所ですので。逃げてバテたのか、馬場がスタミナを大きく削ったのか、何とも判断しがたいところです。できれば内ラチから5mくらいの箇所も計測してもらえると助かります。
でもエントシャイデン、インに切れ込みながら3着まで押し上げているんですよね。…個体の巧拙が優位なのかな。
エクイターフが壊れて路盤砂の含水率が多めの場合、スピードが減殺される馬場になるという仮説
上記の仮説からすると、エクイターフと路盤砂のどちらもグリップ力を担保できなかった場合に、いわゆる「時計のかかる馬場」が出現することになります。
…思い当たったのが、どしゃ降りの不良馬場だったキタサンブラックの天皇賞秋。エクイターフも壊れ路盤砂も含水率が高くゆるゆるの馬場コンディションだったと推定できそうです。あの日の含水率が知りたいですねー。
クッション値の発表に期待
これらの仮説は、秋から発表されるクッション値のデータが蓄積されることで分析可能になるかもしれません。
クッション性についての説明、引用しておきます。
クッション性とは競走馬が走行時に芝馬場に着地した衝撃を受け止める際の反発具合のこと
含水率とこのクッション値をクロスすることでどんな傾向が見えるのか。多分にマニアックですけどね、楽しみです。
最後に
開催替わりで、明日から新潟と札幌。小倉開催は8月半ばまでなし、というのはちゃんと意識していないと脳内が切り替わりにくいですね。3場開催でない分、バタバタとしなくて済むかもしれません。
そうそう、WIN5がキャリーオーバーですので、馬場読みが2場に絞れるのは助かりますね。何とかしたいものです。