more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

クイック・フィードバック

ワールドカップも準決勝まで進みましたね。

 

サッカーは素人目線をキープしたままなのですが、とある試合で気になる光景がありました。負傷者の手当てで時間が止まっている間、ベンチスタッフがタブレットをもって選手に話しかけており、どうやらポジションや作戦を確認している様子。すでに当たり前なのかもしれないなと思いつつ調べてみると、ありました。

 

試合中に2台のタブレット

FIFA公認で「1台はスタンドから試合を観察するチームのアナリスト向けに、もう1台はベンチにいるコーチングスタッフ向け」に使用が認められているんですね。

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つまり、ピッチの外からアナリストが相手チームの戦術を分析し、ベンチとすばやく対策をチャットして、選手交替等のタイミングでピッチに新たな作戦を伝えることができる、というもの。分析さえ外さなければ、ほぼリアルタイムでベストプラクティスを選手にフィードバックできるわけですね。ほー。

 

審判にはインカムとVAR

いくつかの試合では、下されたジャッジの確認にVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー、ビデオ判定ですね)が大きく作用する場面がありました。インカムと合わせて、かなりクイックリーなフィードバックが審判には適用されています。

ブラジルのネイマールがやり玉にあがっていましたが、こうしたフィードバックの技術とルールは、わざとファウルを受けたように見せるシミュレーションがすぐに明るみにでちゃいますね。審判の死角をつくような、ファウルを取りに行く技術は今後は形骸化していくように思いました。


そういえば検量室でみんな見上げてる

競馬でもレース後すぐに映像を観ていますよね。引き上げてきたジョッキーが後検量を終えた後、関係者と頭上のモニターを眺める様子はもうおなじみ。いま感じたことをすぐにその後のトレーニングやケアに活かす姿勢と捉えれば、とても前向きな取り組みと思います。

 

トラックコンディションのフィードバックも大事

当日、馬場を歩くジョッキーも増えたでしょうか、トラックコンディションのフィードバックもかなり意識されるようになってきました。ファンも心得ていますよね、雨が降った日の1レースごとに内外の伸びるラインが変化する例のアレ。なかなか難しいものですが、荒れたコースに踏み入れた瞬間勝機が消えてしまいますから、やっぱり繊細に見極める必要がでてきます。


福永祐一というプレイヤーの特性

宝塚記念の前日が本放送だった武豊TV、ダービー回顧は勝利ジョッキーをゲストに迎えてのものでした。やはり、福永祐一のフリカエリはお見事ですね。ワグネリアンをどう導いたか、そのポイントがつまびらかなストーリーになって聞こえてきました。勝負師ですので正直語らなくても構わない、というとバカ正直みたいに聞こえるかw、でもこの分析力の高さと正直さが福永祐一というプレイヤーの最大の特性、なのだろうと改めて。

自分が乗ったレース映像の確認や、当日のトラックコンディションを歩いて確認する姿勢。テクノロジーと自分の感性をブレンドして、戦略を立て実行し、またフリカエリする。こうした地道なフィードバックにプレイヤーとしての活路、生き残り方をを見出したのだろうと思っているところです。


「関西の秘密兵器」というフレーズは当時のスピード感の賜物

昔はこうしたテクノロジー活用は難しかったはずですからね。関西の秘密兵器と呼ばれたのはフサイチコンコルドでおおむね最後、と思っていますが、中継映像が東西の区別なく観れるようになったのがこの時期、という符合はありそうです。関東の関係者にとって、関西の秘密兵器はダービーまで観ることができないからこその異名だったという認識ですね。


フィードバックの素早さはサッカーに限らず

バレーボールでもリアルタイムでデータ化→解析→対策をコートに伝えている様子はずいぶん前にスポーツニュースで目にしたことがあります。一方、ちょうどウインブルドン真っ盛りですが、テニスのチャレンジシステムはビデオ判定を選手側からリクエストできるのが特徴ですね。

こうやって挙げてきたスポーツはすべて映像を録画する技術がない時代に誕生していますから、テクノロジーありきの素早いフィードバックは、競技の戦略性に大きく影響しても不思議はないのでしょう。

録画映像のすばやい提供、デジタルなリアルタイム解析はプレイヤーへのフィードバックのスピードをどんどん求める方向にシフトしているように面ます。きっと不可逆な流れなのでしょうね。競技スポーツの進化と呼ぶべきか、関係者やプレイヤーの追従とその成果を成長と呼ぶべきか、個人的にはちょっと疑問に思っていますが。


楽しみ方のポイント

プレイヤーもジャッジもファンも、同じタイミング、同じスピードでレースのフィードバックができることは基本要件になっていくでしょうし、特に関係者の目の肥え方はぐっと速くなるのでしょう。というより、現在進行形でしょうね。

プレイの素晴らしさが一瞬で解析される経験が積みあがると、そしてその分析の精度が上がっていくと、目の肥えたファンにはプレイの満足度が徐々に下がってしまう可能性がありそうなんですよね。そのプレイはすでにあのレースで出てきたパターン、みたいな。プレイの質も分析の質も上がっていくのに満足度が下がるというなら、何というかもったいないというか。

ジョッキーにミスがなく高い技術を駆使しピーキングされた馬同士が全力をぶつけ合う、という瞬間だけが面白いとは限らないと心得るのもひとつの方法なのかな、などと他のスポーツと比べながら改めて思った次第です。そのスポーツのもつ価値の頂点が揺らがない、という前提は込みですけどね。

絶えざるフィードバックで精度が上がることと、楽しみ方が増えることは、すこし軸のずれた円が重なっているようなものかもしれません。

置いていかれるライトユーザー、みたいな状況は避けたい状況ですしね。


最後に

武田文吾さんの言葉「体は馬の背、頭はスタンド」を思い出しました。客観的な視点が重要、その基本は昔から変わっていないようです。というより、先のような技術が伴わない時代に言語化できていたことに注目すべきでしょう。

そういえばレース中にターフビジョンを確認するのは武豊が始まりのような。違ったかな。ひとつ抜きんでるためのフィードバック、いちはやく取り入れていたのならさすがですね。