遅ればせながら。騎手大賞での初リーディングとなりました、とうとう獲りましたね。おめでとうございます。
netkeibaのコラム
以前からnetkeibaではしっかり踏み込んだ自身の解説コラムを読むことができていましたが、リーディング直後に公開されたコラムもまた、なかなかぶっちゃけた内容でした。10月以降は騎手大賞をあえて意識したことで苦しい時間を過ごしたようです。有料ですがご紹介まで。
過去のリーディングとの比較
JRAのサイトでは2001年のデータから確認ができましたので、勝利数、総賞金、勝率の比較ができるようにまとめてみました。
年度 | 騎手名 | 勝利数 | 騎乗数 | 勝率 | 総賞金 |
---|---|---|---|---|---|
2022 | 川田将雅 | 143 | 552 | 0.259 | 3,157,091,000 |
2021 | C.ルメール | 199 | 802 | 0.248 | 4,427,684,000 |
2020 | C.ルメール | 204 | 781 | 0.261 | 4,539,130,000 |
2019 | C.ルメール | 164 | 650 | 0.252 | 3,547,238,000 |
2018 | C.ルメール | 215 | 772 | 0.278 | 4,660,235,000 |
2017 | C.ルメール | 199 | 809 | 0.246 | 4,146,220,000 |
2016 | 戸崎圭太 | 187 | 969 | 0.193 | 3,380,395,000 |
2015 | 戸崎圭太 | 130 | 940 | 0.138 | 2,724,352,000 |
2014 | 戸崎圭太 | 146 | 972 | 0.150 | 2,659,341,000 |
2013 | 福永祐一 | 131 | 844 | 0.155 | 2,619,274,000 |
2012 | 浜中俊 | 131 | 887 | 0.148 | 2,161,111,000 |
2011 | 福永祐一 | 133 | 824 | 0.161 | 2,688,955,000 |
2010 | 横山典弘 | 120 | 594 | 0.202 | 2,330,707,000 |
2009 | 内田博幸 | 146 | 975 | 0.150 | 2,682,703,000 |
2008 | 武豊 | 143 | 653 | 0.219 | 2,437,260,000 |
2007 | 武豊 | 156 | 713 | 0.219 | 3,250,201,000 |
2006 | 武豊 | 178 | 790 | 0.225 | 4,336,891,000 |
2005 | 武豊 | 212 | 855 | 0.248 | 4,414,042,000 |
2004 | 武豊 | 211 | 912 | 0.231 | 3,952,270,000 |
2003 | 武豊 | 204 | 866 | 0.236 | 3,859,000,000 |
2002 | 武豊 | 133 | 457 | 0.291 | 2,742,686,000 |
2001 | 蛯名正義 | 133 | 905 | 0.147 | 2,924,362,000 |
やはりノーザンファームのファーストドライバーが明快だった頃のルメールはかなり異常な数値になっていますね。
騎乗数も並べてみましたが、こうしてみると川田は騎乗数を絞った中で高い勝率を求めたことが窺えます。騎乗数が少なく、最も近い数値を探すと2002年に行き当たりそうですが、あの頃のユタカさんに近いとは。
海外遠征で騎乗数が伸びない、骨盤骨折でで一時期戦線離脱、という条件下でもタニノギムレットやゴールドアリュール、ファインモーションに乗って大レースを制していた、あの圧倒的な存在感だった頃ですからね。こちらも異常な数値とみると、それに比肩する川田の優秀さが見て取れます。
厩舎ごとの騎乗数といった川田自身の数字の内訳や、1番人気の回数、年間100勝のジョッキーが何人いたかを年度ごとで比較するなど、よりその特徴が浮かび上がる切り口もありそうです(そこまでは調査の時間をかけられず。。。)。
2桁通過順がとても少ない
netkeibaのデータベースでは年間の騎乗成績が確認しやすい形で絞り込むことができました。2022年、1着だったレースをすべて表示すると、イメージ通りと言いますか、コーナー通過順で2桁がとても少ないことがわかります。
どのコーナーかを問わず、10番手以降のコーナー通過が発生しての勝利は143勝のうち13勝。うち2勝はフィニステール(イメージつきますでしょうか)、ダノンスコーピオンのアーリントンカップやプログノーシスが含まれていますが、やはり少ない印象です。日経新春杯のヨーホーレイクでも9-9-9-9。惜しい!と謎の快哉を叫んでしまいました。
比較の意味で2002年のユタカさんもカウントしてみましたが、133勝のうち23勝でした。デュランダルやブロードアピール、何よりダービーのタニノギムレットが該当していますので、当時を知る方はこちらのほうが差し追い込みの印象が強いかもしれません。
もちろん差し追い込みが少ないことを非難したい意図ではなく、この序盤からポジションを取りに行く傾向は、最近の馬場コンディションをよく捉えてレースを組み立てている結果であるのでしょう。
本人の気質ともマッチしているのでしょうね。…あ、この気質はこちらが勝手に感じているところかもしれません。序盤でも終盤でも勝負と決めた際は「前」、という気質ですね。
…引き合いに出したので。ユタカさんのこわいところは相手ジョッキーの心理の裏をつくところでしょう。サンデーサイレンス産駒の差し脚がそこに加わると、がんじがらめのスローペースを生み出し極端な待機策が嵌る展開を呼び込む、といった勝ち方につながっていたと理解しています(このあたりは本人原作の漫画「ダービージョッキー」でもよく描写されていますので興味のある方は)。
川田の勝負はこの対極にあるように見えますね。最もいいポジションも取りに行く、真っ向勝負。その分惜敗、惨敗も多い印象があります。ダノンベルーガのジャパンカップなどは川田らしい負け方と感じますね。だからこそ狙いから外せたのですけど。
かく言うユタカさんも、マーベラスサンデーで臨んだ天皇賞春(勝ち馬はマヤノトップガン)、スペシャルウィークで臨んだ有馬記念(勝ち馬はグラスワンダー)のように真っ向勝負の時もありますけどね。
騎乗の幅について
ポジションを取りに行くだけでない川田の騎乗は、ダノンタッチダウンで2着だった朝日杯で確認できます。成長途上で初速に劣る鞍下の走り、それに合わせた合理的な選択として後方インからの差し競馬を選択していました。よく直線向いてから進路を確保できたと思いますけどね。
ただ、ユタカさんのような心理の裏を狙うものではないのも確かでしょう。このあたりにひとくせでてくると、今回はどちらで来るだろう?と警戒感をもって見られるジョッキーになるように思いますが、これはすぐにどうこうというものではないのでしょう。
サントリーの企画で有馬記念後に福永と忘年会をやっていた映像があがっています。
ふたりで訥々と、ときにわちゃわちゃと歓談している映像ですが、その中で福永の「もう楽しもうってふっきれて楽しみだした時にどんなジョッキーになるのか見てみたい」「凄いステージにいける可能性があるのでは」というコメントがあり、このあたりが今後の川田の騎乗の幅について上手く言い当てているのではないかと思っています。
…パッと見ると福永が先輩風を吹かせているだけのようにも見えますけどね、中身はすごく濃い話だと理解していますよ。
川田本人も自覚する面があって「こんなことをやってみたいけどいまはそれを許してもらえないだろう」と語っていますが、福永が言わんとしているところはおそらく、その関係者の納得感と本人の騎乗した感覚とのギャップではないんじゃないかなと。
誰よりも武豊を仰ぎ見てきた福永の目線から、川田が心理的にレースを支配できる存在になるには、という語りをしているように見えています。
川田がさらにどう変わっていくのか、外野からはとても楽しみになる有意義な内容でございました。
最後に
1月の中山・中京開催が終わってしまいまして、もう明日から東京が始まるという(雪の影響が心配されます)。
遅々として筆が進まない状況のなか、川田の成績がさらに加速しています。勝率が.341、連対率が.705!、複勝率が.773!。…ものすごい結果ですね。3回乗ったら2回以上は連対してくるって。。。
年間通してこの数字ではないでしょう、ルメールも春には上向いてくるでしょうし。それでも各レースでのミッションを適切に捉えてひとつひとつ果たしていく姿はとても頼もしく映ります。
あとはベストパートナーとの出会いでしょう。武豊とディープインパクト、ルメールとアーモンドアイのような、後々の語り草になる名馬とのコンビを楽しみにしています。もう出会ってもいい頃ですよね。