more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

宝塚記念

ミッキーロケット、G1制覇成りました。

4コーナーで内外に並んだ、神戸新聞杯の1、2着馬。強引に捲り上げる外を見ていた分、アドバンテージを手にして内から抜け出すミッキーロケットが羨ましく思いました。坂路で抜群の追い切り、内枠スタート、1コーナー前後で先行争いからひとつ下げた鞍上の判断。すべてが噛み合っての勝利は、読み切れなかったなぁ。素晴らしいパフォーマンスでした。買い損ねましたね。


公式レースラップ

12.2-10.8-11.4-12.7-12.3-12.0-11.8-12.1-12.2-11.7-12.4


天気と馬場読みが難しい

G1前日の土曜日は降雨の中での開催。垂水Sをキョウヘイが勝つくらいですから、だいぶ渋ったなぁという印象でした。ただ、その垂水Sの上がりが11.9-10.9-12.5。残り400からの10.9はちょっと計時が怪しいきらいがありますが、多少忖度しても1ハロンなら速いラップが出せる馬場コンディション。このまま乾けば芝が剥がれている分内が有利かなーと思っていました。どうやらその傾向のようでしたね。


先行馬には厳しい展開

サイモンラムセスの単騎逃げを許すメンバー構成ではないと思っていましたがタツゴウゲキがその役割を担うとは思いませんでした。1ハロン過ぎたあたりで小牧が露骨に左を振り返っていましたからね。1000m通過後に間を詰めたことと合わせて、緩めておきたい場面を2度締めましたから、レース後半はじわじわと消耗戦の趣きになっていきました。

直後を取ったストロングタイタンとダンビュライトの1コーナーまでの丁々発止も面白く。どうやら川田が外へ、武豊が内へ、進路を取りたかったのでしょう。それぞれがウインカーを出した結果、鍔迫り合いのような形になってしまいました。

その外では、サイモンラムセス、タツゴウゲキに順に煽られて強く引っかかってしまうヴィブロスの姿。鞍上のコメント通り、落ち着くまでだいぶかかりましたね。

これらを横目に好スタートからひとつ下げたミッキーロケット和田。厳しいペースをストレスの少ない好位の内を手にすることができました。ノーブルマーズにもう少しダッシュ力があったらまた違った展開があったかもしれません。ここがG1を勝ち切るか否かの差、のように思っています。


サトノダイヤモンドのパフォーマンス

本命はサトノダイヤモンドでした。ええ、戦前から覚悟はしていました。最終追い切り後のインタビュー、池江師もルメールも歯切れが悪かった。池江師の人柄でもあるのでしょうが、インタビュアーの質問に食い気味で相槌をうつ姿。インタビューを受けなければという真摯さと、痛い腹を探られたくないというマインドが共存していると見て取っています。

おそらくは心身ともに途上であったのでしょう。カラダは概ね仕上がっていたと思っているのですが、気持ちがついてこなかったような。それこそ神戸新聞杯のような、ミッキーロケットが食らいついた分引き離す、あの前進気勢は見られなかったと思っています。

金鯱賞という使い出しの早さ、宝塚記念までの間延びしたレース間隔。凱旋門賞からこちら、フィジカルのコンディショニングが難しかった可能性は勘ぐれます。大阪杯のハンドリングミスはあるいは馬のプライドを少なくなく損なったかもしれません。マイナスに邪推するのは簡単ですね。

ルメールの戦略は馬群のストレス(=ストライドロス)を避ける意図が含まれていたように思います。メンタルを引き上げることも視野に、外から順に他馬を交わしていくという体験をダイヤモンドに与える演出込みだったでしょう。馬場だけ考えれば内、でしょうからね。

ただ、それが嵌るにはひとつふたつ流れが向く必要があったでしょう。先行馬の厳しいペースはプラスだったでしょうが、くしくも3コーナー過ぎから目の前のゼーヴィントがバテて下がる展開(レース後にゼーヴィントの左前浅屈腱炎が判明)。外に交わすしかないですものね。早仕掛けは、回避行動の延長にあったやむを得ない所作と理解しています。

結果的に4コーナーを大きく回る形。コーナーの出口までスマートレイアーの踏ん張りをパスできず、これも地味に堪えたでしょうね。ストライドと引き換えに相応の距離ロスと早仕掛けを余儀なくされてしまいました。直線に向いてようやくインコースが取れた時点でスタミナ切れ。難しいレースを善戦しましたが、結果に結び付けることはできませんでした。。。


サトノダイヤモンドの特徴について

阪神の内回りで2度の完敗。2歳500万下、阪神大賞典と内回りに実績はありますが、そういう比較ではないですよね。一線級のライバルと戦うには不得手なコースと理解すべきでしょう。

スワーヴリチャードを上回る上がりだった金鯱賞からして、トップスピードに乗せるまでには少し時間を要するストライド。これが俊敏な加速を求められる阪神内回りではディスアドバンテージになるのでしょう。

一方でトップスピードの持続力では天皇賞春でキタサンブラックの後塵を拝しています。フランスの2戦からは、真逆の馬場コンディションがより不得手であることが受け取れます。…まぁ、キタサンブラックは引退しましたし今後フランス遠征を敢行することはないでしょうから、そこまで悲観しなくてもよいかもしれませんね。

他馬を圧倒するストロングポイントでG1をもぎ取るというより、平均点の高さ、総合力で他馬を上回ってくるタイプなのでしょう。しいてアドバンテージを得やすい条件を上げるなら、コーナー半径の大きいコース、でしょうか。それも総合力が活かしやすいロケーションであるだけで、先行馬が極端なペースを作った場合に対応しきれるかは確信をもってイエスとは言い難いかなと。スイートスポットがせまいと理解しないといけないのでしょうね。

このあとは休養、秋のローテーションは未定。凱旋門賞前ののどの不安が尾を引いているのか、精神面にフォーカスすべきなのか、いずれにしてもこのタイミングでのまとまった休養はプラスにでるのでは、と邪推をしております。場合によるとそのまま引退という判断も、あるかもしれませんね。もう一度G1を取る姿を見たいと思いつつ、まずは心身を休めてほしいです。


17年ぶりの中央G1制覇

テイエムオペラオー天皇賞春連覇から17年なんですね。オペラオーの訃報に触れてからこちら、どちらかというとナリタトップロードラスカルスズカメイショウドトウジャングルポケットを本命にしてきたなぁ、などと当時のことを思い出しておりました。和田本人のツイートも見ていましたが、よくもわるくもオペラオーが大きな壁になっていたみたいですね。香港のチャンピオンがせまるラスト1ハロン、背中を押してくれていたでしょう、きっと。

そういえば、プリモディーネ桜花賞で福永がG1初制覇、その翌週がオペラオーで和田のG1初制覇だったんですよね。同期の活躍が連続する流れは、その当時と近しい符合と感じました。受け手が勝手につないでしまうストーリーかもしれませんが、それも楽しみ方のひとつと、上手いこと酒の肴にしたいと思います。よかったよかった。


前年覇者サトノクラウンは惨敗

パドックでの見栄えはよかったですね。トレーナーのコメント通り、フィジカルはしっかり立て直してきたと見ていました。馬券でも重視したのですが、レースでは終始気持ちが前がかりになっており。前年との大きな違いは道中で力の抜けた追走ができていたかどうか、だったでしょう。似たラップを追走しても、ハミをがっちり取ってしまっては直線の余力は期待しにくいですものね。

チャンスが巡ってきた石橋には好走するためのスイートスポットの狭さがアダになったでしょうか。枠も馬場もポジションもペースも敗因ではないでしょう。このクラスの馬の前進気勢とどう向かい合うのか。もちろん自分はジョッキー経験がありませんので具体的な技術解説などできようはずもないですが、このあたりに対応する力がでてくると、関東のリーディング争いに大きな変化が生まれるのでは、などと思った次第です。


香港年度代表馬の底力

抜け出したミッキーロケットに唯一迫ったのはワーザーでした。完全アウェイの中、強い競馬でしたねー。内枠を活かした1、3着を考えるとラスト1ハロンは底力の証明。代打騎乗という形になった鞍上ボウマンも終始インにこだわる騎乗。パフォーマプロミスを押しのけるような4コーナーは迫力たっぷりですね。

さすがに-27kgはびっくりしました。強い追い切りもありませんでしたし、この馬体重発表で馬券的に見限った方も多かった様子。自分は完全に調整目的とみえた前走と、これまでの息長い末脚、そしてパドックでの見栄えを許容範囲と評価して、相手にしっかり含めていました。…サトノダイヤモンドが本命ですから何ともですけどね。

陣営からはアイルビーバックのコメント。ぜひぜひ、お待ちしています。香港国際競走がありますからたぶん無理でしょうが、有馬記念で観られたら面白そうですね。雨季に開催されるG1というリサーチからこちら、ナイストライでした。


気になった人馬

予想を絞り込んでいく過程で、スピードの維持には少しパワーを要し、かつ内から乾いているであろう馬場コンディションから、キセキ、ストロングタイタン、ステファノス、ダンビュライトの評価を下げられたのはよかったと振り返っています。

特にキセキは最終追い切りの動きに?が。前走の日経賞ルメールが捲る判断にしたことで折り合いのお約束が壊れてしまった様子。それを取り戻すことが中間の調整の主眼に置かれていたとのこと。その状況でG1は厳しい、と判断しました。大外枠であることもプラス材料とは言い難く。地力で8着まで押し上げましたが、個人的には力をだせる状態にはなかったと見ています。

凱旋門賞回避は納得。サトノダイヤモンド同様、リセットにあたる休養になるのでしょう。昨年暮れの香港がひとつ多かったかな。英気を養ってほしいと思います。


最後に

レース直後に和田がうつむく姿。これに涙腺が崩壊した方もいらっしゃったでしょう。自分もグッときた瞬間でしたが、どうやらその時点で泣いていたわけではなく、娘さんからもらったブレスレットにキスをしていたようで。そのすぐ後に泣いてはいますから、細かいことではありますけどね。

この春は、ジョッキーのヘッドワークがあってこそのG1制覇が続いたように思っています。エポカドーロ、レインボーライン、ケイアイノーテック、ジュールポレールワグネリアン、そしてミッキーロケット。日本人ジョッキーが勝たせたというG1が続いたのは、ある意味で頼もしさの証明でもあるでしょう。

8月からオーストラリアのブレントン・アヴドゥラが短期免許で来日。モレイラは既報通り、通年免許を目指します。対立の構図を作るつもりではありませんが、日本人ジョッキーの研鑽がしっかり対抗できていることは、レースの面白さに寄与する大事なポイントと思います。野中悠太郎はアイルランド、坂井瑠星はオーストラリアで経験を積んでいますし、こうした動きも秋への期待をつないでくれますね。

いい2歳に出会って、クラシックに臨む和田が観れるならなお面白く。G1制覇がいいきっかけになることを期待しています。