more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第81回 皐月賞

エフフォーリア、インから後続を突き放しました。1冠目、というべきでしょうか。

残り600mを過ぎて、ワールドリバイバルとタイトルホルダーがつかず離れずの間を取っている時間、横山武史は慌てずにいったん手綱の動きを止めていつでもアクセルを噴かせる状態をキープしていました。いったんタイトルホルダーの真後ろに入れた後、進路がないので待つしかなかったとも言えますが、ワールドリバイバルがバテるかタイトルホルダーがインかアウトに寄せるか、その瞬間を狙いすましていたと言えそうです。本人は迷ったと話していますね。

こじ開けるようにタイトルホルダーのインを選択し、アクセルを噴かせて直線へ。稍重の渋ったインコースであっという間に差を広げました。アンライバルドしかり、ドゥラメンテしかり、コントレイルしかり、歴代の皐月賞馬はハロンタイムに表れないハッとする末脚を披露してくれます。

ちょうどアドマイヤハダルとヨーホーレイクが通ったコース、ダノンザキッドが通りたかったコース、ここを勝ち馬が通ると思っていたのですが、その当てが外れました。インに閉じ込められて伸びあぐねるイメージをもっていたことは、エフフォーリアには失礼でしたね。荒れ馬場のエピファネイアをまた買い損ねてしまいました。

公式レースラップ

12.1-11.7-12.5-11.9-12.1-11.4-11.9-12.1-12.3-12.6

今年の弥生賞も。ラップの抑揚の比較のために。

12.7-11.6-12.4-13.0-12.9-12.6-12.3-11.6-11.0-11.9

土曜深夜の雨、不良から稍重まで回復する馬場

深夜の雨は相当な音を立ててしばらく降り続いていました。東京と千葉の差はあるにしてもどこまで乾くかわからない雨量ではありました。当日は不良スタートですが、いまいまの暗渠管はさすがです。8Rには稍重まで回復。おそらく、掘り返されたインの方が乾きが早かったのでしょう。掘れてはいてもグリップが効く程度のコンディションであったものと思われます。

ラップタイムから察する風向き

前後半は60.3-60.3。これだけですと特徴がまるで語れませんね。1000-1200のラップが11.4、ちょうど豪快に引っ掛かったレッドベルオーブがアサマノイタズラを引っ掛け、タイトルホルダーをひっぱり出しながら先頭を窺った地点になります。

それに対してエフフォーリアがグッと抜け出したラスト2ハロンは12.3-12.6。掛かっていますね。特徴的なのは、インから順にアドマイヤハダル、ヨーホーレイク、グラティアス、ディープモンスター。アウトコースを選択してラストまで伸びてきた上位入線の人馬は、隊列そのままにゴールを迎えているんですよね。イン寄りの馬が一枚上手という考え方は十分可能ですが、溜めても切れにくい要因があったのではないかなと。

おそらくですが、向こう正面は追い風、直線は向かい風、それぞれそれなりに強い風が吹いていたと想像しています。向こう正面はレッドベルオーブの動きもあり、よりラップタイムを押し上げやすい要因が生まれていました。対して上がりがかかった、というのはその影響も大きいと思われます。

直前にならないと風は読めないですよね。どのデータを参照すればよいかも微妙ですし。でも勝敗に関わる強いファクターではあったと思っています。

乾いていったインを通るアドバンテージ

4コーナー手前の隊列、前から順にタイトルホルダー、エフフォーリア、アドマイヤハダル、ステラヴェローチェ。1~4着がインから2頭目を直列で追走しています。多分に結果論ですが、ここが勝つために必要なコース取りだったのでしょう。

 

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2021年皐月賞、3~4コーナーのインで1列に並ぶ1、2、3、4着馬

ルメールは、9Rでインを突いて少し伸びあぐねた4着でした(奇しくも鹿戸厩舎のシャドウセッション)。それを踏まえたのでしょう、4コーナーまではイン、直線に向く直前の遠心力で外目の馬場のいいコースを取りにいく戦略だったようです。

ただ、直線で外に出してスパートを開始したタイミングで、すでにエフフォーリアはリードを広げ、ステラヴェローチェと横並びになる状況。結果、ステラヴェローチェには先着されていますから、外に出す馬場差の恩恵はあまり大きくはなかったようです。ステラヴェローチェ馬場こなし過ぎ、という感もありますけどね。

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2021年皐月賞、直線に向いて。エフフォーリア、ステラヴェローチェに対して外を回ったアドマイヤハダルの対照的なポジショニング

横山武史の落ち着いたリード

スタートから1コーナーまで、ひとつ外枠のダノンザキッド川田将雅にがっつり蓋をされていました。横山武史は折り込み済だったでしょうが、プッシュしてスピードを乗せる判断をしている時点で1コーナーまでに外へ展開する余地はなかったといっていいでしょう。予想の段階ではひとつ下げるかもと思っていましたが、エフフォーリアの特徴と、鞍上の気質と経験と、なにより横山武史 vs 川田将雅ですからね。きっと1コーナーまでのきっつい雁行が見られるだろうと思っていました。

ポイントは2コーナーから向こう正面にかけて。レッドベルオーブがかかり、アサマノイタズラとダノンザキッドが煽られ、タイトルホルダーがインに閉じ込められないように張り出していた、想定の難しい動きの多い区間。ここでエフフォーリアはひとつ下げて「かわしている」んですよね。名前を挙げた各馬はそのまま向こう正面の11.4になだれ込んでいきますから、ここでギアを上げずに負荷をかわせたのは鞍上のファインプレーと思います。

ラップの上がりそうな場面で控え、ラップが落ち着きそうな場面で攻めてポジションを取りに行く。外から見れば分析はできますし、数字でおおよその閾値を読み取ることもできますが、プレイヤーはその瞬間を自分で見極めてアクションに移すことが求められますからね。これまでの経験、フィードバックが上手くパフォーマンスに反映できている証でしょう。

22歳の戴冠

よく考えなくても昨年の関東リーディングが関東馬でクラシック制覇ですから、この字面だけみればふつうに納得するところですが、22歳のG1制覇はとても珍しい事象になっているのが昨今のトレンドですよね。

20代でG1タイトルをもっているのは松若と横山武史、Jpn1まで広げて坂井瑠星、以上ですね。自分が競馬を始めた96年頃と比較すると、相当上がつかえているのが端的にわかります。

いずれはやってくる世代交代。その変化の瞬間はいちファンとしてしっかり見届けていきたい…とここまで書いて、土日の単勝馬券がオジュウチョウサンとダノンザキッドだったことに気が付きました。自分もアップデートせねば。

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2021年皐月賞ゴール直後、横山武史のガッツポーズ

2冠の可能性

世代を見渡すと速いペースで中距離重賞を引っ張る先行馬がいない模様。皐月賞もその傾向が表れていました。馬場差もありますが前半の2、3ハロン目が弥生賞より遅いのはちょっと象徴的ですね。

ダービーウィークの馬場バイアスにもよりますが、ワグネリアンの年のようなバイアスなら、今回の1、2番人気はまた先行ポジションを取りに行くでしょう。好位を取ってスロー寄りなら、エフフォーリア2冠のイメージはしやすいですね。

なお、皐月賞が終わってからこちら、サトノレイナスがダービー参戦を表明しました。桜花賞2着からの牝馬参戦はウオッカを容易に連想させますね。当時はエクイターフ+エアレーションという馬場ではありませんでしたから、同じような直線一気でどこまで食い込めるか。桜花賞のゆったりスタートからするとちょっと心配ではあります。ルメールはそれも折り込んで乗ってくるでしょうけどね。

ダノンザキッドは不完全燃焼の15着

追い切りも返し馬もよい印象でしたが、やはりテンションが高め。昂るタイプと理解していますが、レッドベルオーブが掛かった際に真っ向から受け止めてしまう格好になりました。

さらにアサマノイタズラとの再三の接触。嶋田が左右の挙動を制御できていない場面もあり、外への進路を確保しようと川田が張っている場面もあり。結果として定期的に接触しながら勝負所まで進んでしまったという格好。netkeibaで川田のコーナー(有料コンテンツ)ができていますが、そこでもちらっと触れています。そうですね、言い訳と取らずにフラットに敗因分析できる世の中がよいんですけどね。

news.netkeiba.com

エフフォーリアと枠が逆だったら、だいぶ違っていたかもしれませんね。今回はワイルドアゲインだなぁというテンションと、合わないであろう馬場コンディションとコーナー半径と、そしてが再三の接触が重なっての大敗と理解をしております。

ダービーは、わかりませんね。これでレースに対してネガティブなイメージをもってしまっていないか、気になります。ちょうどウオッカの年のダービー、フサイチホウオーのテンションがゲート直前に崩壊した様を目の前で観ていますので。再びの先行策が奏功するイメージもあり、ダノンプレミアムのような惜敗のイメージもあり、ペースにアジャストできないイメージもあり。

ただ、馬体のスケール感ではメンバー1と思ってパドックを見ていました。父ジャスタウェイの成長曲線を加味しなければいけないと思いつつ、その評価は忘れないようにしておくつもりです。

レース前の見立て

馬場

  • 土曜深夜の雨で不良→稍重まで回復
  • 3、4コーナーから直線、インから3、4頭目までは掘れて反力を受けにくいコンディション
  • 回復の程度は早めだが、それでも外差しでメインを迎えるだろう(という9レース直後の見立て)

先行馬と序盤のペース

  • ダノンとエフフォーリアは好位を取りに行く、それが壁になって外からの先行はけん制される→ハイペースはない

隊列やレース展開

  • 横山武史は川田の壁で馬場のわるいインに閉じ込められる
  • ダノンザキッドは直線インから4、5頭目のコースを通るためのポジショニングを狙う
  • アドマイヤハダル、ヨーホーレイク、ディープモンスターは待機策から直線外へ
  • アドマイヤハダルは最内枠がアダになる可能性、ルメールは9Rで直線インを試した→外差しするには内枠過ぎる
  • 後ろ過ぎ、外過ぎは嵌らない印象、いったん下げる形になるヴィクティファルスにはマイナス
  • ラーゴム、ステラヴェローチェは馬場は合うがベストポジションで運べない可能性

各馬の評価の上げ下げ

  • エフフォーリア、ダノンザキッドとも成長途上
  • ダノンザキッドはテンションがギリギリ、馬体のスケール感はメンバー1、返し馬はよかった
  • タイトルホルダーは完成度高め、アドマイヤハダルもよい仕上がり

勝敗に強く影響するであろうファクター

  • 馬場の巧拙、直線でインから4、5頭目を取れるかどうか

最後に

天皇賞春当日の府中なら当選する確率は高いかも、と思って抽選に参加していたのですが、やはりというべきか、緊急事態宣言で無観客開催に。残念ですがリスクヘッジが優先と理解しています。

とはいえどうやら首都圏の人出はあまり抑制が効いていない模様。人間の慣れが科学の整合を上回っている情勢ですね。緩み、と表現するよりストレスに対する素直な反応と表現するべきなのかもしれません。こうした不整合が一定の淘汰を生むのが歴史なのか、というのは達観が過ぎますねきっと。ここまで考えて、個人レベルで注意できることは引き続き、と思っております。

競馬というエンターテインメント然り、ストレスを逸らすデザイン、理論がわからなくても行動が整合する仕掛けが社会的に求められているように受け取っているところですが、そうしたアイデアを出してたくさんの人をポジティブに巻き込んでいくのはなかなか難しいですけどね。

ウマ娘が上手く嵌っているなぁと思っています。3月のゲームリリースからこちら、すごい勢いですよね。競馬の楽しみ方のリデザインという観点でとても興味深く、TLの反応などをウオッチしております。まとまった言葉にしておきたいと思いつつ、きっとGWあたりになりますね。

書くペースを落としている分、頭の中はいろいろな言葉がぐるぐるしていまして。アウトプットすることで保たれる健全さもあるなぁと。まずはフローラS、前走で折り合いの経験に専念したクールキャットの巻き返しに期待しております。