more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

ダービー・前編

ワグネリアンが、そして福永祐一がダービーを獲りました。

 

1コーナーまでにポジションを取りにいく福永が、このレースで見られるとは思っていませんでした。本人のスタイルもそうですが、肝心の馬がそこまで反応できないのではと見立てていまして。人馬とも、1コーナーまでの攻めたポジショニングが最大の勝因でしょう。

枠順が決まった際のトレーナーの「最悪」というコメントが象徴するように、8枠17番を引いたチームワグネリアンに切れるカードは限られていました。ワグネリアンで前受け。この難題に向けて鞍上を動かしたのは、どうやら周囲の期待に応えようとする力だったようです。大一番のスタートでかかるリスクを負って押し出していく姿は、これまでの福永祐一からは予想しにくいものでしたから。

より若い時分に、ある種の無謀さでリスクを乗り越えてしまうようなタイプではなかったでしょう。仮に理屈で説明ができたとしてもその瞬間に動けなければプレイヤーとして意味はついてこないはずですから。経験と技量が伴って、大一番で迷いなくカラダが動くまでには相応の時間を必要とする人物なのだと理解しているところ。機が熟す、とはこういうことなのかもしれません。

ワールドエースで臨んだクラシックは、前半これ以上はポジションを上げられないという、本人が引いてしまった限界線があったようにも見えていましたから。ええ、これは恨み言ですねw

キングヘイローワールドエースエピファネイアも本命にした自分が、そして皐月賞の本命がワグネリアンだった自分が、何故このダービーだけ単勝を手にしていないのか。いろいろ綯い交ぜな気持ちは、翌月曜にカクテル・ワグネリアンで飲み干してまいりました。まさか月曜に府中まで繰り出すとはね。40を過ぎた酔狂はほどほどに。

でも、あのウイニングランからこちら、リスクを取り切った同い年のダービージョッキーを素直に讃える気持ちが勝っておりますよ。ね。素晴らしいダービーでした。


公式レースラップ

12.7-11.0-12.3-12.4-12.4-12.3-12.2-12.0-11.7-11.2-11.2-12.2

参考までに、ワンアンドオンリーのダービーも。
12.5-10.6-11.8-12.2-12.5-12.1-12.7-13.6-12.2-11.6-11.1-11.7


前にいないと勝機のない条件

前日の葉山特別が典型でしょうか。前に位置した馬がマイペースに持ち込めばまず残すことができる馬場コンディション。トゥザクラウンの粘りこみはお見事でしたが、それを担保する速い馬場であったことを鞍上ボウマンはしっかり利用していたと見立てていました。

当日の青嵐賞はダービーより速い2:22.9。パドックに張り付いていたのでリアルタイムで観ていなかったのですが、パリンジェネシスで好位のインを取った川田、ダービーに向けてある程度のシミュレーションはできたのでしょう。差すにしても好位追走が最低条件。ムイトオブリガードはよく届きました。…ルメールとの同着は何やらマカヒキサトノダイヤモンドを想起させますけどね。


2014年との類似

前受けが勝利への条件とすると。近しいイメージはワンアンドオンリーのダービー。1、2着馬は1コーナーに向けてこれまでになくプッシュすることになりました。スローが必須という読み。改めて映像を観てみましたが、「あぎゃー」と大きく口を割りながら先行するイスラボニータが確認できましたw 明確に前のポジションを求めたのは、横山、蛯名、そして武豊トーセンスターダムは直線でラチに突っ込んでしまったわけですが、あれがなければいい勝負をしていたかもしれません。

ダノンプレミアム、ブラストワンピースとも、この前受けが可能だからこそ1、2番人気であり得たと思っています。


皐月賞馬のイニシアチブ

この点で讃えるべきは、勝った福永ともうひとり、エポカドーロ戸崎でしょう。先行できる一頭であるとは思っていましたが、皐月賞馬が逃げるとは。でも、この先入観がいけませんね。エポカドーロの特性を考えると、逃げの手にでるのは納得するところでした。

皐月賞は事実上の逃げでしたし、その逃げの中で溜めどころ、仕掛けるタイミング、トップスピードまでののせ方をストレスなく、まさにマイペースで進めることができていました。簡単に言えばそれを再現すればよいわけですよね。

先行したい馬は多くても、逃げたい馬は実質ゼロだったでしょう。ジェネラーレウーノも田辺が明確な意思を示さずに番手に控える形をとりましたし。ジェネラーレウーノの特徴を活かすなら2ハロン目のラップ云々ではなく、ハナに拘るのではと読んでいたんですけどね。…ジェネラーレには馬場が速すぎたのかな。

藤原師のインタビュー。不敵な笑みを浮かべるシーンが多かったのですが、枠順に寄らず、エポカドーロを逃がす策をイメージしていたのかもしれないなと。後の祭りなのですが、あの笑顔はこれかと思っておりますよ。


1コーナーまでのポジショニング

ダノンプレミアムは好スタートから逃げ馬を待つ態勢。もしニュートラルなスピードでハナに立っていたら。直後に戸崎、石橋脩ですから変なタイミングでつつかれるリスクは少なかったようにも思えます。自身が逃げる選択がなかったのは、ダービーの先を見据えていたから?かもしれません。

一方でブラストワンピースは二の脚がつかず。ここからの馬群を縫うようなリカバリーは素晴らしかった。特に1コーナーの入り、フラフラしてしまったテーオーエナジーのひとつ外へ躊躇なくはいれたのは秀逸。おそらくはステイフーリッシュが狙っていたポジションだったでしょう。池添もまた、前受けが必要であるという認識であったと思われます。が、ここで脚をつかったことでレースを通して溜めが効きにくい流れができてしまったようですね。

素晴らしかったのはコズミックフォース石橋脩。行きましたね。ダービー初騎乗だからこその思い切りというより、こちらも妥当な展開読みのうえでのプッシュだったと思っています。

そしてワグネリアン。こちらも陣営との話し合いで、後方待機は勝機を失うとの認識で一致していたようです。外枠から被せるような先行策というのはかえって馬群のストレスが低くてよかったのかもしれません。が、前に馬を置けない確率との戦いにもなりますからね。2014年と形は異なっていますが、1、2着した人馬に攻めの姿勢が見られたのは共通していると感じています。


後半5ハロン皐月賞馬の支配下

残り1000からのラップは12.0-11.7-11.2-11.2-12.2。4コーナーで引き付けない流れもまた、エポカドーロ陣営の戦略が窺えるポイントと思います。スローにし過ぎての瞬発力勝負では分が悪かったでしょう。極端な消耗戦でもなく、ジリジリとラップを上げていく流れはエポカドーロ向き。こうしてみると、小倉のあすなろ賞は皐月賞馬の特徴をとても端的に物語っていると思います。

ただ、自分自身にも厳しいラップメイクとなりました。ラスト1ハロンと直前のラップの落差は1秒、ここ10年では最も失速しています。1秒の失速はキングカメハメハまで遡らないといけません。戸崎の勝負の仕方はここにも見えています。

…この種のラップメイクができるジョッキーは限られるのではないでしょうか。戸崎の評価、改めてというところです。

これを追走しての有力馬の仕掛け。少なくとも11.2-11.2で逃げ馬が粘りこんでいますから、前受けした有力馬がバテてくることはないですよね。ここで進路を取り損ねたのがよりによって1、2番人気でした。いや、ですから、藤原師の不敵な笑みが脳裏によぎるわけですねw

 

…だいぶ長くなりそうなので、ここまでを前編として、いったん区切りますね。後編は、週末までには何とか。