more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第169回 天皇賞(春)

テーオーロイヤル、G1戴冠成りました。人馬とも落ち着いてましたね。

 

スタートしてからファーストコーナーまでに前に馬を置けない状況にあったのはおおむね見て取れていました。それで折り合いが致命的になるタイプではないでしょうが、ライバル馬はテーオーロイヤルを外へ追いやる(楽をさせない)動きを示すはず、とも思っていましたので、さすが池添と唸りながらドゥレッツァの直後の取り合いを見守っていました。

結果的に人気馬のなかで最もロスなく走れていたのがテーオーロイヤルでしたね。その機動力と馬体の充実は陣営の工夫の賜物だと思います。決して圧倒的な切れ味ではないですが、4ハロンロングスパートで12秒を切る末脚が最後まで持続する、このあたりを指してステイヤーと呼ぶのは差し支えないでしょう。

 

4コーナーでそのロングスパートへ持ち込もうとするディープボンドに馬なりで並びかける姿は今年の天皇賞の特徴をよく示した瞬間だったと感じます。先行馬のスタミナを飲み込み、後続の切れを完封する末脚。鞍下の特徴をしっかり引き出した菱田の騎乗もお見事でした。

 

公式レースラップ

12.8-11.7-12.1-11.5-11.6-11.5-12.2-12.9-12.8-12.6-12.5-12.8-11.9-11.7-11.6-12.0

 

天皇賞(夏)と速い馬場コンディション

予報通り、当日は暑くなりました。最高気温は30度に届くという夏日。土曜に雨は降りましたし前週のマイラーズカップは小雨やや重での開催でしたが、そんな気配は全く見せない速い馬場コンディションになりました。

 

ひとつ前の10Rライスシャワーカップはグランテスト戸崎の先行押し切り。8枠から先行してインを確保したことが奏功した形でした。同じ8枠だったモレイラのアルーリングビューが中団から少し外をまわして勝ち馬の同じ上がり33.3。着差がつかず、ゴールまでなだれ込むようなレースになりました。

それを確認して、インが速いのではなく内外どこでも伸びるので相対的に距離ロスの少ないインが有利、という見立てで予想に臨みました。

 

マテンロウレオ横山典弘の逃げは脅威にはならず

上記の字面をみるとわくわくしますけどね、戦前の期待があった分、みえみえの逃げは効果半減だろうなと思っていました。

実際、最初の坂はかなり気分よくスピードに乗り過ぎたように見えていますし、1周目のスタンド前でわかりやすく手綱を引く姿と抵抗する姿。3、4コーナーのペースアップまでにセーフティリードが取れていれば違ったのでしょうが、その直後には鞍下の魅力を引き出すべく早め早めにエンジンを吹かしていくディープボンド幸がいましたからね。

 

虚を突いたのがイングランディーレですし、緩急緩で幻惑したのがセイウンスカイ菊花賞ですし。期待された名手の美しいラップメイクとは遠い内容になっていたという認識です。

それでも最初の5ハロン目まで11秒台を並べてから息を入れる、2周目の下り坂から4ハロンロングスパート勝負という演出はやっぱり名手のそれ。締まったレースになったのはこの逃げの賜物でもあるでしょう。

 

ドゥレッツァの直後という「好位」の取り合い

戸崎はスタートから好位を取りに行く意思を示しました。テーオーロイヤルもスタートはよかったわけですが、ドゥレッツァの出し方をみて無理をせずその直後へ。このあたりはどちらが内枠だったかが大きく影響した形と思います(ドゥレッツァ12番、テーオーロイヤル14番ですね)。

出負け気味のサヴォーナを池添がかなりプッシュしてドゥレッツァの直後まで運んできました。このことでサヴォーナとテーオーロイヤルによる、実力馬ドゥレッツァの直後の取り合いが2周目の向こう正面まで続くことになります。

 

落ち着かせたい菱田裕二、譲らない池添謙一。面白いけん制でしたね。パトロールビデオでみるとより面白かったです。長距離はジョッキーの思惑がじっくり楽しめる魅力がありますね。

 

1番枠サリエラの外へ展開する判断

1周目のスタンド前の直線に向いたあたりで、武豊はサリエラを外に出す判断にしています。ここでどう展開を読んでいたのかは追って武豊TVで語ってほしいなと思いつつ、自分は前の並びから外での勝負が妥当と見て取ったのではないかと邪推しています。

 

好位のインでじっとしていることがロスを抑えた乗り方になるわけですが、勝負所でマテンロウレオがラチ沿いを下がってくる可能性が高く、またそれ以外の先行馬は有力馬ばかりですから、みんな余力をもって直線に向く可能性が十分あります。

逃げ馬が下がってきて最内が使えない&前が詰まるといった肝心な場面で進路がなくなるリスクを想定したのではないかと。

 

後解説ではあれこれ言えますが、これをレース中にできるからレジェンド畏るべし、なのだと思っています。結果にはつながりませんでしたが最善を尽くす動きがありましたね。

 

サヴォーナとディープボンドのけん制

2周目の向こう正面に入って、ドゥレッツァの直後はサヴォーナ。テーオーロイヤルはひとつ外へ、前に壁のない状況を受け入れざるを得ない流れになりました。ただこの向こう正面で戸崎はドゥレッツァのリズムをもうひとつ落ち着かせようと試みています。手綱を引く動作が続いていますね。

サリエラが外に展開したことでインは空いていて、眼前のドゥレッツァは減速モード。そして前走3コーナーからの加速とポジション取りに失敗していることを本人が語っていますので、それらを加味して早めの進出開始は、あの時の池添ならではの積極策だったと受け取っています。いやいや、あの進出はかなり攻撃的ですね。

 

幸は3コーナー手前でサヴォーナを確認してからずっと、マテンロウレオを利用してインからサヴォーナが抜け出せないようにブロックするポジションをキープしていました。幸と池添の丁々発止、これも面白いシーンでしたね。

ディープボンドを下り坂でプッシュしながら、サヴォーナにインを突かれないようしっかりコーナリングし切った格好。マテンロウレオが直線にはいるところまで粘ったこともありますが、池添はその間隙を狙いながらも隙がなく、一度外へ展開せざるを得ませんでした。

 

菱田の乗り方はシンプル

これら有力馬のけん制や戦略がひしめく面白さがあったわけですが(なので何度見返しても面白いですよね)、その鍔迫り合いにほぼ関与せず3、4コーナーを抜群の手ごたえで進出してきたのがテーオーロイヤルでしたね。

 

個人的にはドゥレッツァとテーオーロイヤルの前後関係が逆だと予想していました。菱田が積極策というより、力みやすいドゥレッツァを有力馬の後ろで折り合わせる選択を戸崎が取ってくるのではと考えていたんですよね。

菱田の乗り方はこのスタート直後のポジション取りでも、馬に負担をかけずにスムーズな動きでした。人馬で積み上げてきた経験はこういう肝心な場面での落ち着きにつながりますね。

 

こうして見ると前走の阪神大賞典も、他馬が上手くいっていないことがあの着差を生んだと理解していたのですが、テーオーロイヤル自身がロスなく運べる強さをもっていたと理解すべきだったと反省しきり。

2年前は本命でしたし、返し馬までは本命視していたんですけどね。最後の最後で変えてしまったな。。。改めてお見事なレースでした。

 

ドゥレッツァは15着大敗、熱中症の疑いあり

返し馬の弾み方で迷いを断ち切っての本命でした。テーオーロイヤルの末脚を差せるとしたら、という読みだったんですけどね、それくらい抜けた馬が見当たらないという印象がありました。それがテーオーロイヤルの取りやすい相撲になった要因とも思います。

mahmoudさんのXの投稿ではレース中のストライドが今までになく伸びていなかったという分析も。真っ黒な馬体ですしね、急な気温上昇とレースへの興奮で熱中症と思しき症状になったとすればうなずけるところです。

どちらかというとテーオーロイヤルの発汗が目立っていましたが、ドゥレッツァの汗が見当たらない姿のほうをむしろ心配すべきでしたね。

 

…予兆と言いますか、いやな予感はあったんですよね。追い切り後インタビューでどうにも尾関師のトーンがあがっておらず。小声でもそもそと話し続けて、悲観材料をなんとかポジティブな表現にまとめる内容でしたから、何か自信のなさが伝わるような印象でした。

まだまだ成長途上の馬という認識。凱旋門賞に登録があるようですが、まずは体調面から立て直ってほしいと思っています。

 

ブローザホーンは直線勝負で2着

菅原明良はレース後、「(理想より)2つ後ろ」になってしまった旨をコメントしています。それがあの末脚を引き出したともいえますし、だからこそ大外まで回さなければいけない流れになりその分勝ち切れなかったともいえそうです。

個人的にはエピファネイアにしては少しスラッとした印象があり、それが物足りなさという映り方をしていました。でもこの天皇賞パドックでは付くべき筋肉がしっかりついて、こちらもステイヤーの体型と捉えるなら納得だなと。中野栄治厩舎解散で吉岡厩舎へ点休しているわけですが、そのバトンタッチが上手くいったのでしょうね。

 

この1、2着馬はしばらく日本から離れて海外の長距離G1を狙う方が適鞍があるような気がしています。こうなるともうひとつ長距離G1が欲しいですね。…やっぱり阪神3200mってステイヤーを育むにはいい舞台なのかもしれないな、とも思ったりしています。

 

スマートファントムはこれまでの競馬に徹しての4着善戦

だいぶ人気がありませんでしたけどね。状態のよさ、そして神戸新聞杯で後方待機から直線最内を伸びて32.9の上がりを計時できていること、連勝の内容(直線入口でインへ切り返しての末脚勝負)。そのすべてを加味してひょっとしないかなとガンバレ馬券をちょっとだけもっておりました。

直線インから差し込んできた時はテンション上がりましたけどね。いやー、馬場がいい分ディープボンドがしっかり粘りましたからね。惜しかったです。

 

ものすごく欲を言えば、3、4コーナーで直前にいたワープスピードの内側を掬うチャンスはあったのではないかなと感じてしまった次第です。それがあると直線にむいてからインに切り返すロスがなかったかなと…。いや、たらればですね。

ハービンジャー馬場(=ハービンジャー産駒が得意とするちょっと渋った馬場コンディションを指すぼんやりした造語)ではない中で、あれだけ末脚が発揮できましたからね。今後を楽しみにしたいと思います。

…はい、ちょっとだけ、藤岡康太で連勝してきた部分も加味して買いました。

 

最後に

ルメールが5/5に復帰することを明言。まだ鞍上が定まっていないアスコリピチェーノはおそらくルメさんではないかと邪推するところですが、牡馬と牝馬の2歳チャンピオンがNHKマイルカップで対決するのは史上初?ほんとに?と思っているところ。川田とルメールの対決となるならより面白さが増しますね。

 

天皇賞直後の香港G1は家族のお祝いがあったため薄くチェックしている程度。マッドクールは深追いし過ぎでしょう、といった感想がある程度です。

なによりドバイワールドカップデーをまとめ切れていないのに、今週末にはもうケンタッキーダービー。フォーエバーヤングが目標のレースに挑むことになります。

…できればケンタッキーダービー前にまとめておきたいのですが激しく心配。でも先行力とペース耐性(=追走力)という観点でもちょっと振り返っておきたいんですよね。頑張って書きたいと思います。