more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

エフフォーリア引退

京都記念競走中止からこちら、心房細動の再発の可能性や種付けシーズンに間に合うスケジュール感も含めて、引退の判断に至った模様です。

 

JRAの発表はこちら。

www.jra.go.jp

競走成績はJBIS-Searchから。

www.jbis.or.jp

京都記念がラストラン

阪神内回りはこれが3回目。過去2回はいずれもスタートから1コーナーまでに後手を踏み、早々に勝負圏外のポジションを余儀なくされていました。

対して京都記念では先頭を伺う勢いで1コーナー2番手まで押し上げていましたから、おそらくは以前の反省があったのでしょう。有馬記念の返し馬や調教での焚きつけるような馬へのあたりは、ここで活きたと言えそうです。

その点では、横山武史はエフフォーリアが勝つための戦略を行使していて、少なくとも今年初戦でエフフォーリアのリズムで1周回ってくるといったリハビリのような内容を望んではいなかったと見えています。

エフフォーリアもそれに応える前進気勢を発揮していました。ただ結果がね…。心身のアンバランスさが心房細動を招いた、というストーリーは一方的な外野のファンタジーかもしれません。でも2021年のチャンピオンは確かにファイトしていました。復調途上での競走中止。ドウデュースの末脚が鮮やかだった分、残酷なコントラストとなってしまいました。

 

天皇賞(秋)がベストパフォーマンス

この週末フェブラリーSの予想を少し置いておいて、あの鮮やかな共同通信杯から順にレース映像とパドックの映像を観ておりました。

やはり3歳のパフォーマンスは気持ちいいですね、カラダが存分に動いています。見て取った限り、3歳の天皇賞(秋)のパフォーマンスをピークに後半は馬体もフォームも、なんといいますか、窮屈になっていった印象を覚えました。

 

天皇賞(秋)の直線、大きなストライドでかつ回転の速いスパート。前脚は胸前まで高く上がりトモは深く踏み込んでいて、可動域の広さ、関節の柔らかさが特徴ですね。

この「広いストライド×ピッチの速さ」を両立させるためには、相応のパワーとスタミナを要するはずです。距離を長く走るスタミナではなく、トップスピードをできるだけキープするためのスタミナ、持続力というべきでしょうか。3歳秋になってひとまわりパンプアップしたことで、末脚のトップスピードとその持続力は積み増しされたように見えています。

 

あと特徴的なのは馬場を躊躇なく叩くフォームでしょうね。馬自身に脚元への不安があれば全力で馬場を蹴ることをためらってしまうはずで。天皇賞(秋)の伸びやかなフォームはその恐れのなさの表れでもあると思っています。

 

カラダのバランスを欠いていたであろう2022~2023年

天皇賞(秋)のあとのアクシデント、移動の車中で落鉄、蹄鉄を打っていた釘を踏んでしまったようですね。

以下の記事、全体は有料ですが木實谷場長のコメント冒頭は無料でも読めました、ここでアクシデントの概要が掴めます。

news.netkeiba.com

このアクシデント後、接着装蹄で有馬記念に臨んで勝利するわけですが、すでに蹄を庇ったカラダの使い方も始まっていたのではないかと邪推しております。

2022年のレース映像では、前脚を以前ほど高くあげなくなっている様が見て取れました。トモでしっかり推進しきれないため前のストライドが伸び切れない、とも言えそうですが、蹄を庇って前のストライドが伸びずその結果としてトモが十分踏み込めなくなった、という仮説も成り立ちそうです。

 

いずれにしても、古馬になってからはボディバランスを崩しながらの競走生活。そう受け取りました。決して順調ではなかったのでしょう。

 

4歳の宝塚記念のあと、復帰時期が押して有馬記念まで引っ張ることになっていました。このボディバランスの問題が実際にあったとすると、秋の府中の高速なトラックコンディションでは負担が大きいと読んだのかな、という邪推もまた成り立つように思っています。

 

4歳の有馬記念、イクイノックスに並ばれてからのフォームは以前より首を前傾するフォームに見えています。以前のエフフォーリアなら、首差しは高いままトモの力で推進し、首が起きている分前脚の可動域が広く使えていました。中山の坂を駆け上がるのに首を前傾させなければいけないとしたら、トモに以前のパワーが宿っていなかったと見るべきなのかもしれません。

そしてそれをフォローしてなお踏ん張るため、エフフォーリア自身が前傾するフォームを選択していたとしたら。馬自身が苦しい中でもレースへの意欲を示していたことになります。4コーナーを待たず追い出した鞍上とともに、かつてのチャンピオンはもがいていたんでしょうね。

 

横山武史の涙

仕事をしている日中にみてはいけない映像でした。もらってしまいました。

 

一段階感極まった中で「幸せになってほしい」とのコメント。エフフォーリアに苦しい思いをさせていたことがきっと背景にあるのでしょう。

お昼休みの昼寝と称してカーディガンを被って自席で突っ伏していたのですが、厩舎や天栄を含んだ人と馬のもがきと、報われなかった結果と、苦しい時間を強いてしまった主戦ジョッキーの複雑な胸中を思うと、ちょっとこみあげてきてしまいました。

 

チャンピオンの矜持を守ったまま引退できたのではないでしょうか。3歳秋から4歳春まではG1戦線の中心でありましたから。その期待を背負った主戦ジョッキー、見事な姿勢だったと思っています。

 

エピファネイアの後継種牡馬

シンボリクリスエスエピファネイア→エフフォーリア。サンデーサイレンスキングカメハメハが隆盛の日本で、4代続いていく父系はロベルトが中心というのはちょっと不思議な感覚を覚えます。あ、先行しているのはグラスワンダースクリーンヒーロー→モーリス→ピクシーナイト、ですね。

 

大阪杯に敗れた時点でエピファネイア早熟説がでていました。いまもって一蹴すべきラベルだと思っています。アクシデントがなければこの母父ハーツクライのチャンピオンはより高いパフォーマンスを示していたでしょう。きっとね。

いわゆる早稲という、早くにピークアウトしてしまう意味ではなく、早くからレースでパフォーマンスを発揮できるという意味では早熟と称してもよいかもしれません。ただこれはディープ産駒と同様で、早め早めにトレーニングを課してしまって素質を摩滅させているケースも少なからずあるのではないかと思っています。

 

まだまだエピファネイアの大物はでてくるでしょう。その成長力を見届けることで、順調に古馬となって大成したエフフォーリアの姿もより鮮明に想像できるようになるかもしれません。

 

すでに種付け料300万円で満口というニュースも目にしました。300万スタートはサトノダイヤモンドと同じという認識です。種付けの申し込み時期としたら少し遅いイメージですが、人気を集めていますね。こちらは順調に推移しているようです。

エフフォーリア産駒でダービーに挑む横山武史、楽しみは次の世代につながりますね。

 

最後に

あの躊躇なく馬場を叩いていく回転の速い走行フォームは、同じシーザリオをもっているサートゥルナーリアにイメージが重なっています。サートゥルナーリアの方がもう少し雄大なフォームでしょう。でもトップスピードに乗せていく加速力、起き気味の首差し、後躯の流れ方など、似ている点は見つけられると思っています。2019年の神戸新聞杯を観ていただけるとよいのではないでしょうか。

 

日米のオークスで結果をだしたシーザリオ。その鞍上福永がフェブラリーS当日の今日、日本でのラスト騎乗になります。人も馬も、様々な形で次の世代にタスキをつないでいってくれています。これから府中で最後の姿を見届けるつもりです。