more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

年度代表馬はエフフォーリア

年度代表馬、順当な選出だったと思っています。

有馬記念の回顧記事でぽよぽよと書いていた通り、負かした相手が複数のカテゴリーで最優秀の表彰を受けていますから、これを直接対決で勝ち切っている点は評価されてほしいところでした。

個人的には、各カテゴリーの最優秀馬は任意の投票ではなくポイント制などで選出、一方の年度代表馬はファンも含めた恣意的な(その時の評価、空気が反映されるように)投票で選出、というのが希望する運用なのですが、その視点でもエフフォーリアですね。2021年の競馬を思い出すときに中心になる馬。もちろん個人差はあるでしょうが、人の気を集めつつ年間を通して活躍し、かつ実績が伴った馬が年度を代表する馬として表彰されてほしいなと。

エフフォーリア、横山武史の躍進とともに語られる馬でもあるでしょう。皐月賞の直線は新たなヒーロー誕生という印象が強いシーンでした(2022年のキャッチコピーが若干被ってますが)。ふさわしい選出だったと思っています。

公式発表はこちら。

www.jra.go.jp

最優秀4歳以上牝馬はラヴズオンリーユー

思ったより票が割れなかったという印象です。296票中251票、2歳牡馬のドウデュースと同じ獲得票でした。次点のグランアレグリアとはG1勝利数に差がありますのでそこが大きかったかな。

ただ、海外G1を国内G1と並列に扱うのかどうかという観点はいまだ明示されていない認識です。エルコンドルパサー等々の前例に拘らず、海外G1の評価を最優秀馬の選出に持ち込むべきかどうか、議論があってよいと思っています。単純にG1に数ではないでしょうからね。

また、グランアレグリアは最優秀短距離馬でという「棲み分け」バイアスがかかったのかなと邪推しております。どちらも表彰されてほしいという心情票、わるくはないんですけどね。これまでもそうですが、表彰システムの整備されていない部分を投票者が心情で補っているという面が大きいように感じています。それが時代の空気を反映する側面はあるのでしょうが、うーん、システムを改善したいところです。

マルシュロレーヌのブリーダーズカップ制覇は特別なこと

海外G1の評価があいまいなことが最も顕著にでてしまったのが最優秀ダートホースでしょう。ブリーダーズカップディスタフ制覇というこれまでにない実績から、当初はテーオーケインズで決まりなどと自分も先入観満載で理解していたわけですが、この1レースの実績はとてつもなく大きいわけです。

JRA賞では、最優秀ダートホースの投票で次点、特別賞選考でも該当に当たらずと判断され、表彰なしという結果に。テーオーケインズの受賞に異論はないわけですが、2021年のマルシュロレーヌを表彰できない制度というのは…。

Twitterは荒れていましたね。ライトユーザーへの認知度が低め、という選考委員の発言が記事になった直後が特に酷かった印象です。どうやらこの発言はブリーダーズカップについてではなく、マルシュロレーヌの年間を通じた活躍、実績についての言及だったようですね。

追って土屋さんの取材記事も目にすることができました。まず、当事者にコメントを求めにいった姿勢は評価されてほしいところです。

news.yahoo.co.jp

これらに目を通したうえでの個人的な見解。やはりマルシュロレーヌを表彰できなかった事実、残念のひと言に尽きると思います。

特に特別賞の選考過程がなんとも厳しい。そもそもライトユーザーの認知度を特別賞受賞の基準としてよいものかが疑問です。土屋さんの記事を読むとデルタブルース(のメルボルンカップ制覇)は受賞していない」という意見もあったようですが、オーストラリアの芝長距離とアメリカの牝馬ダート中距離の路線を同一視している見識に大いに疑問を感じますし、ネガティブな意味での前例主義を思わせます。時代性を加味した「特別」を判断するのに歴史的経緯を優先する必要性は低いと考えます。

ライトユーザーに依拠する姿勢、前例主義。どちらも選考委員自身の経験を信頼する判断基準ではないでしょう。2022年という日本競馬をとりまく状況の中で、何が優れた業績にあたるのかを選考委員の恣意で判断する、という視点に欠けているように見えるのが相当に残念なポイントといえます。

トラックコンディションの差も、優劣を決めるレースの質も、馬の取り扱い方も、禁止薬物のルールも、評価される血統も、社会的な地位も。欧州より豪州より日本と文化のギャップがある米国のダート、その最高峰のレースをアップセットとはいえ一気に制覇したわけです。それも明治時代に豪州から輸入し、日本の風土で代を重ねた牝系が。これが特別な出来事としてオフィシャルに後世に残せないわけです。選考にあたり、どうして「すごいけど、でも」というバイアスがかかる議論になってしまうのでしょう。…残念でなりません。

ディスタフの3、4コーナーからゴールまで、歴史をひっくり返す瞬間に立ち会っているという自覚で鳥肌が立っていたのは改めて書いておきます。そうですね、桜島Sの鮮烈な脚色に驚いて、ひとつ前の博多S(芝2000m)を見直したことも印象的。細い糸のようなものかもしれませんが、あの脚色がデルマーに繋がっているという視野は日本の競馬にとって得難い大きな収穫だと感じています。

最後に

馬事文化賞、ウマ娘は選ばれてよいように思っていますが、このあたりは表彰に関する姿勢でしょうか。それこそライトユーザーの獲得、競馬ファンの裾野を大きく広げた功績はあるでしょう。「馬事」ではないということであれば、確かにと思うところではあります。

別枠を設けて表彰してほしいですね。コロナ禍という特殊事情がネット投票を促進した側面はあるでしょうが、世代を超えて競馬を語りなおすきっかけはなかなか意図して作り出せるものではないですから。