ブラヴァス、上がり勝負の接戦を制しました。
レース前から「まだ前後がバラバラという走り方で」というコメントが聞こえていましたが、勝利ジョッキーインタビューでも言われていましたね。
追い切りの手前替えにも不器用さを覚えていまして、七夕賞のような少し時計がかかる条件の方が相対的によいのかなという見立て、極端な上がり勝負で惜敗というイメージから少し下げた予想にしてしまいました。内枠の先行馬を前に馬を置いた福永のリードも見事でしたし、自身の上がりは32.6。お見逸れいたしました。
公式レースラップ
12.8-11.5-12.5-12.4-12.7-13.0-11.9-10.8-10.7-11.6
逃げ馬はウインガナドルのみ
あぁスローだなと思わせるメンバー構成。スローの上がり勝負で前残り、というイメージはしやすかったですね。さらに最終週の馬場コンディションがありますので、馬群はかなり外目外目で展開しました。
スタートして間もなく、先頭のウインガナドルは内ラチから7~8頭あけるコース取り。これにカウンターできたのはジナンボーのデムーロだけだったでしょうか、1頭だけ内ラチ沿いを選択しました。極端な構図になったことはキャプチャでわかりますね。
直線は極端な外寄りのコース取りに
インとアウトの距離から、ジナンボーが3コーナーで先頭へ。3コーナー過ぎが最もペースが落ちていますのでそこで馬群は少し詰まっています、が先行勢がアドバンテージを得るべく、4コーナー手前からグッとペースアップしています。そのまま直線に向くと、馬群は一気に外へ。下の画像でその様子がよくわかりますね。
最終週の馬場バイアスとメンバー構成が、レースを特徴づけたと言えそうです。
ブラヴァスはアドバンテージを十分活かす
ブラヴァスは3、4コーナー9番手で回っていますが、無理にハンドルを切ったりポジションを取りに行ったり周囲の馬を捌く、といったコストやロスは少なく、そのまま直線で外目のコースを取ることができました。福永のリードが奏功しているわけですが、外枠だったことは大きなアドバンテージであったと言えそうです。
脚を使い切ったところでゴールという理想的な展開に見えました。ということは今回のレースの特徴、直線が長く、平坦でワンターン、スローペースの上がり勝負、といった条件に上手くアジャストできたと言い換えることができそう。翻せば、別のコースレイアウトやペースでは脆い一面を見せる可能性もまだまだあるのかなと。
伸びしろにあふれているとは福永のコメントですが、表裏一体という現状を表しているのでしょう。ヘンに貶める意味ではなく、本当に強くなっていくのはこれからなのだろうな、と受け取っているところです。
ハルーワスウィートの孫、ヴィルシーナの仔
オーナーと牝系が結び付く、まで周囲の評価が進むことはオーナー冥利に尽きると言えるのではないでしょうか。自身が繁殖入りさせた母馬からG1馬が誕生し、その孫が重賞ウイナーとなる。引きが強いというだけではちょっと表現しきれないですね。中距離馬をじっくり育てられるトレーナーやジョッキーとの巡り合わせも大きいのでしょう。
叔父や叔母にはキングカメハメハは入っていませんので、フォームなどそこまで近しい印象はありませんけどね。
サマー2000シリーズ優勝は狙い通り
オーナーのコメントからはサマー2000シリーズを狙っていたことがわかります。七夕賞2着と合わせて、これでチャンピオンが決まりました。サトノガーネットも同じ立場(勝ったらチャンピオン)でしたから、ライバル馬を抑えての勝利という形容がそのままぴったり当てはまります。
昨年は該当馬なしでしたし、制度設計にちょっと疑問符が付いたまま、という認識ですけどね。でも夏の時期にピークを迎え、大箱より小回りで力を活かせる馬が評価されやすい表彰制度はそのまま維持されてほしいなと思っています。…まぁ、歴史を紐解くと新潟記念でチャンピオンを決めた馬が一番多いんですけどね。
サトノダムゼルは工夫を凝らしての5着
本命でした。ただ、内枠からどう外目に持ち出すか、なかなかの難易度だろうなとも思っていました。岩田康誠という文字列に託した部分は大きかったですね。
見どころの多い内容だったと思っています。スタートから2番手に。ウインガナドルと若干の距離を取り、事実上の2番手で馬群のペースに蓋をするような前半となりました。直線ではそのままウインガナドルの外へ、というより馬場の大外まで一気に持ち出す展開。この大胆な持ち出し方をするために先行策(=外に馬のいないポジション)という工夫が必要だったのでしょう。
直線半ばでは先頭に。欲を言えば、ここで目標になる馬が欲しかったですね。内からジナンボー、外からブラヴァスに来られてしまい、右鞭で促されるとジナンボーの近くまで寄れるような挙動がありました。
前走も抜け出してからちょっと集中し切れない面が出ていた様子でした。切れ負けした面もありそうですが、ソラを使ったことも惜敗の一因ではありそうです。
でも今後が楽しみになる一戦ではありました。ここのところの新潟は暑いですからね、上手く疲れが取れてくれるとよいですね。府中牝馬あたりで観てみたいと思っています。
桜島Sのマルシュロレーヌ
土日で気になったレースをいくつか。
マルシュロレーヌの切れ味は凄かったですね。
初ダートへの配慮もあったのでしょうが、川田の1コーナーの所作。インをキープしたまま、前の馬との間隔を少し広めに取ってコーナーに入っていきました。あの間ですとキックバックをだいぶ軽減できたように思います。コーナリングで跳ねあがる砂は外に流れますしね。外から前に入られないようにしつつ前との間隔を取るのは、できるジョッキーの所作でしょう。
他の馬が外目を通った人気馬グアンを意識していたことも奏功したようですが、4コーナー手前でひと呼吸置いてスムーズに外に展開していました。そのあとのピッチ走法はちょっと凄味がありましたね。スピードの出やすい馬場が合いそうですが、このまま重賞戦線でいいところがありそうです。
日曜札幌、1勝クラスのゼノヴァース
ダート1700で大差勝ちは久しぶりに見たような。団野は4コーナー手前で勝負を決めていました。53kgと斤量に恵まれていましたが、それを差し引いても高パフォーマンスでしょう。このあとダート路線に進むのでしょうか。
まだ線が細いといいますか、ディープ産駒だから細いままかもしれませんが、ダートで大成するには少しじっくり取り組んでほしいなと思うところ。ディープ産駒でダート重賞勝ちはボレアスとアンジュデジールくらいでしょうか。どちらも切れを武器にしていましたので、ちょっと違うタイプがでてきた印象があります。そういえばラインベックもダートに活路を見出していましたね。ディープ=芝、という傾向が少し変わってくるのかもしれません。
丹頂Sのボスジラ、横山武史の判断
治郎丸さんがツイートしていましたが、日曜の横山武史、なかなか上手く噛み合っていませんでしたね。象徴的だったのは10Rすずらん賞でしょうか。ドナタイフーンで1番人気でしたが、スタートして少し、逃げたリメスをパスした後、マウンテンムスメとブルースウェードに次々と前に入られ、都度都度ブレーキを踏む場面を作ってしまいました。
先ほどマルシュロレーヌで触れましたが、外から先行馬が来た際に、張るのか譲るのか、譲って前に入られた後に自分が動けるスペースをどう作るのか、そのあたりが十分準備されていない印象がありました。実際は外野がいうほど簡単ではないのでしょうが、促してから前が詰まってブレーキを踏みポジションを下げる、というのは勝てるリードとは呼べないでしょう。
このあたりが上手くいっていたのが直後のメインレース、丹頂Sのボスジラだったと思っています。先行馬が多い展開、これに対して常に外へ進路をつくる意識を持って臨んでいたようです。3コーナー過ぎ、ペースの上がらない先行馬群を外からパスすることができました。5枠の2頭が外から被せる格好になったのを見て取って、今度はインに進路を切り替えています。柔軟な判断を見せながら視界をクリアにして直線に向いていました。これが無理なくできるジョッキーなんですよね。
関東リーディングが示す通り、この秋は有力馬が集まるシーズンになると思います。ひとつひとつ慌てずに、経験を積んでいってほしいなと。ひとつ前の投稿で書いた通り、リーディング上位のジョッキーに抗する存在になり始めていることに期待しています。
最後に
来週から開催替わり、中山と中京に移ります。コロナウィルスの影響とは別に、京都の代替開催がイレギュラーさを積み増しているような印象がありますね。セントウルSが中京ですし、ローズSは2000、神戸新聞杯は2200ですからね。ローズSの2000は本番の予想がいい頃合いで悩ましくなりそうな気もしています。
いまいまは台風10号のニュースを見ながらこの記事を書いています。小倉は1日雨でしたし、夜になって九州は本格的に暴風域にはいりました。関東でも雨の影響はありそうですが、まずは台風の進路にあたる地域の無事を祈りつつ、情報は集めていこうと思っています。台風の進路ですから、明日は我が身かもしれませんものね。被害が少ないことを願っています。