ミックファイア、印象的な末脚で南関3冠を制しました。
現地でも3、4コーナーでミトノオーが突き放しにかかったのは見て取れました。3コーナーで外に振られたミックファイアの手綱が動いていて、一方のユティタムも早めの追撃へ。このあたりはテンション上がりましたね。事前にはこの3頭で3強という煽りもみられましたし。
直線半ば、併せたユティタムを競り落とし、完全に止まったミトノオーを捉えてのゴール。終わってみればミックファイアの破格のスタミナが示された形になりました。
ひとつ前のレース、1400mの逃げ切りでしたが勝ち馬の上がりは37.6、追い込んだ2着馬が36.1と大井にしては速い計時が可能なコンディション。その特徴をスピードの持続力勝負に利用した武豊、前受けして真っ向勝負に挑んだ川田将雅。それら諸条件を直線でまとめて飲み込んでしまいましたからね。強かった。
御神本は速いペースに気持ちが切れないよう、促しながらの追走であったことをコメントしています。これまでの2冠は比較的余裕をもって前受けして4角先頭で突き放す、という内容でしたから、追走するペースがグンと上がった=スタミナ含めて総合力が問われる展開の中で、このパフォーマンスですからね。
残り100m付近で観戦していましたがまさにその目の前、ミトノオーを交わして先頭に立つ瞬間。実況の「外からとらえた!!」のひと言から少しの「間」はお見事なそれでした。ミックファイアを取り巻く価値観が大きく様変わりする瞬間、震えるようなその瞬間を上手く捉えた「間」だったと思います。実際、自分は全身ゾワゾワッと鳥肌が立っておりました。
三冠ジョッキー、ゴールの瞬間は肘を畳んで握った拳を何度も振り下ろすガッツポーズ。スタンド側の腕を真っすぐ横に伸ばすいつもの様式美を備えたポーズではありませんでした。結果につなげられた達成感が一番上回ったように見えましたね。
御神本コール、参加できてよかった。場内を埋め尽くすような大規模なそれではなかった認識ですが(構造上、いまの大井はゴール前にひとが溜まるようにできていますしね)、残り100mあたりで観戦していまして、そこまではちゃんと届いていましたよ。自然発生してまとまったコールになる場面に久しぶりに居合わせることができました。
最後のジャパンダートダービー。来年からはダート競馬の体系が変わり、その価値を世界的に引き上げていくチャレンジが始まる認識です。その端境期に、象徴的な三冠馬が誕生しましたね。現地観戦できてよかったです。
公式レースラップ
11.9-11.1-11.9-12.8-12.5-12.3-12.7-13.0-12.7-13.7
予想の段からミックファイアの羽田盃のラップを念頭に検討していたので比較の意味で。
12.2-11.2-12.6-12.6-12.7-12.4-12.9-11.9-12.4
パドックの見立てから有力馬の印象
各馬の印象より前に、ともかくミストが凄かったですね。ミストというよりスモークみたいになっていまして、多少誇張になりますが各馬とも姿を隠してはミストの合間で姿を現わすような見え方でした。
7月の三連休にこの投稿をまとめていますが、東北以南は連日35~38度という酷暑。JDD当日もレース直前に少し雨がパラついたのですが、湿気を伴った暑さという意味では変わらず。馬のコンディションという点ではやむを得ないところでしょう。
JRAでも夏季開催のパドック周回時間を短縮する動きがでていますが、中央地方を問わずこの動きは進んでほしいなと。その代わりでもないですが、返し馬も含めて映像の提供の仕方でファンの満足度はむしろ向上するのではないかなと思っています。少なくとも自分の満足度はそうですね。お願いしたいところです。
ミックファイアはTLで識者がつぶやいていた通り、これという印象深いところのない馬体。特別歩様がよいわけでもなかったですね。少し小さく見せる印象でした。
バランスがよくスタミナの底が見えずパドックでは映えないというタイプは、個人的には2頭、ディープインパクトとコントレイルで経験していまして。あーこれは脳内で補正が要ると思い直しておりました。
もう大きく変化する馬体ではないのかもしれませんが、名刀が鍛えられてシャープになるような、中身の成長があるように思っています。
ユティタムはでかっという第一印象。大きさとともに可動域の広さ、柔軟さも感じられました。ただ馬体の大きさの割に緩さも覚えていまして、きっと完成は先なのでしょう。少し距離が短い方が…という見解もレース後には少しうなずけるところですが、秋に1、2戦したところでわかってくるのだろうと構えております。
ミトノオーはよく仕上がって見えましたが気持ちが昂りやすいという印象。案の定レースでは強めの前進気勢が裏目に出てしまいました。現状、距離うんぬんというより同型がいるとマイペースで運べないという点に難しさを感じています。
パドックでオーロイプラータはマイナス材料なく見えていました。ハイペース、というよりラスト1ハロンが厳しくなる流れで待機勢から差し込める馬、としてピックアップしていました。…キリンジの方でしたね。出来うんぬんではなくスタート直後のつまずきが痛かったです。
トーシンブリザード以来の南関東三冠馬
ダート三冠という呼称の変遷を知っている分若干引っかかる感覚もありますが、当時のトーシンブリザードの強さは文句なしでしょう。2001年時点では羽田盃、東京王冠賞、東京ダービーで南関東三冠、南関東所属馬に限られていた目標で、JDDは四冠目という位置づけでした。
そのJDDは逃げ切り勝ち。能力差としか言いようのない内容でした。「東京の真夏の夜にブリザード!」、響きのよい文句はちゃんと七五調ですね。知らない方はぜひ映像を探してみてください。
個人的には三冠達成の翌年、フェブラリーSでアグネスデジタルに肉薄する2着が印象深く。前年のドバイワールドカップで2着したトゥザヴィクトリーが粘るところを外から突っ込んできました。いやーあつい単勝でしたね。
…こうして振り返ると芝ダートを問わず三冠の価値というのは一定以上のものがありそうですね。難しくもわかりやすい看板として機能するなら今後、日本に限らず他国でも見直す流れがあると面白いのかもしれません。来年からダート三冠の価値が変わりますから、期待して見守りたいと思います。
ミックファイアはJBCクラシックからチャンピオンズカップへ
レースの翌日には、秋の目標が発表されていました。地元大井開催のJBCクラシックから中央のG1へ。南関東三冠馬のチャレンジが非常に楽しみになってきました。
同じシニスターミニスターのテーオーケインズ(タイプが違いますねぇ)との手合わせも楽しみ。先ほどマーキュリーカップをウィルソンテソーロが勝ちまして、中距離戦線に新たな有力馬も現れました。
できればウシュバテソーロと対戦してくれたら事前の盛り上がり的には最高ですけどね。日本のダート三冠馬とドバイワールドカップ勝ち馬のマッチアップ。…もうゲームの世界ですね。
最後に
当日はめでたく午後半休を取得できまして、夕方早めに大井に到着。すでに行列の出来ているお店にしばらく並んで競馬場グルメを堪能できました。えー、ルーローハンのハーフサイズと小籠包とハムカツとグレープフルーツスカッシュ、ですね。
それこそJDDの黎明期ですと焼き鳥やもつ煮にハムカツというスタイルでしたが(たまにモス、ですね)、このあたりは競馬場というエンタメ空間のアップデートと前向きに受け取っています。旧スタンドの寂れ具合を寂しく思いながら、これはこれで美味♡と味わっておりました。
何か最後のJDDという湿っぽい感傷はなく、今後のダート界隈は楽しみだなぁという未来志向な心地で現地観戦できたのがよかったですね。世界に通用する強いダートホースが生まれる素地や循環が時間をかけて作られていきそうな気がしています。
JDDをざっと振り返りたくなりましたので、次の投稿はそれにしようかな。皆勤ではないのですが、第一回のオリオンザサンクスは現地観戦ですし。思いつくままに印象深いところを言葉にしておこうと思います。…暑いので無理しない範囲で、ですね。