more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第27回 秋華賞

スタニングローズが三冠阻止、坂井瑠星は初G1制覇となりました。

 

「1、2コーナーでアートハウスの後ろを取れた」、レース後鞍上のコメントはそのまま大きな勝因のひとつと受け取っております。内回りの阪神2000m、基本は内枠先行にアドバンテージがありますからね。

3、2、1番人気で1、2、3着。上位3頭でもっともセオリーに適った先行策を実行できたのが坂井瑠星でした。

紫苑Sをあの出来で勝ち切ったことは鞍上にとっても関係者にとっても大きい手ごたえであったことでしょう。フォトパドックでもよく見えていました。

坂井瑠星への信頼も相まって本命視するか迷ってはいたのですが、最後にバラ一族のG1惜敗の歴史が邪魔をしたかもしれません。曾祖母ロゼカラーが3着だった第1回秋華賞から観ていますからね。オールドファンの記憶は厄介なものです。

 

公式レースラップ

12.2-11.2-12.3-12.3-11.7-12.3-11.8-11.5-11.5-11.8

昨年のレースラップ、参考までに。今年のほうが馬場がよかったかな。

12.8-11.6-12.2-12.3-12.3-12.0-11.5-11.3-12.3-12.9

 

坂井瑠星のポジショニングにみる戦略

スタートからしばらく、インに寄せていきませんでしたね。個人的にはそうするだろうと予測していましたし、それが思ったより奏功していました。鞍上がどれくらい意図的だったかはわかりません。戦略=企業秘密の部分でしょうから、本人も嬉々として語ることはないでしょう。以下はこちらで読み取った限りこうだっただろうという話ですね。

アートハウスと軽く接触するまでのわずかな時間でしたが、瑠星は外へ「張って」いました。外からウォーターナビレラ、逃げたブライトオンベイスのダッシュがよく、どうしても力み気味から抑え気味になるアートハウスはその張ったスタニングローズと外枠先行馬の間に挟まれる形に。ウォーターナビレラに寄られたことでスタニングローズ自身がインへ避ける仕草を見せていますが、そのわずかな外へ張る時間だけでも十分なけん制になったと思っています。

1コーナーまでの距離がないうえ、内回りでコーナー半径が小さめのコース形態。外枠の馬にはコーナーで大回りするのを避ける意識が働くでしょうから、逃げ先行タイプの馬はインを取るために余計にプッシュしがち、差し追い込みの馬は反対にひとつ余計に控えやすくなるでしょう。そこに坂井瑠星のような外へ「張る」馬がいると。…「張る」動きはちょっとでも有効なんですよね。

 

「1、2コーナーでアートハウスの後ろに」というコメントも、アートハウスをインへ潜り込ませずに向こう正面まで進められたという意味でもあると受け取っています。結果、アートハウスはインから3頭目で前に馬を置けずに向こう正面を迎え、スタニングローズはその直後へスライドして「アートハウスの後ろに」という好位を取ることに成功していました。なかなかにアートハウス、力んでいましたね。

 

昨年のアカイトリノムスメも3コーナーで外目の5番手。逃げ馬に力がなければ直線で捌ききれない可能性がありますから、外に展開できる先行策は盤石であるでしょう。坂井瑠星は直線通りたいところから逆算して、アートハウスの後ろも、スタートから外に張ることも、戦略としてもっていたものと思っています。

ゴール入線直後のガッツポーズ、余裕ありましたものね。気持ちで勝ったというわけではなく、すべき準備をしてやるべきことをしっかりやり切ったという心境だったではないでしょうか。海外も含めた多くの経験が活きているとも言えそうです。

 

坂井瑠星は初G1制覇

ジャパンダートダービーを勝っていますが、Jpn1ですのでね。早く獲ってほしいと思っていました。バスラットレオン然り、ユニコーンライオン然り、乗り替わりのディアスティマ然り、積極的な先行策が大舞台でもよく見られるのはポジティブに受け止めていました。

過去の自分の投稿をひっくり返したところ、昨年のチャンピオンズカップの際に「前受けして粘り込ませる場面が増えたという印象があります。いろいろな馬のスタミナの底を自分で仕掛けて体感しているなら、若いうちの経験としてはとても良質と思います。」などと、どの立ち位置から書いているのかというコメントを残しておりますね。

ジョッキーとして鞍下のスタミナを測るだけの経験を積んでいることは非常に重要だと思っています。いちファンとして、脚を余したりヘンに控えたりという場面が少ないジョッキーは信頼して買いやすいと感じるところ。順調に経験を積んだ中でひとつ結果を出した、タイトルを得たというのは大きいでしょう。いやーよかった。

できれば本命にしていっしょに喜びたかったですね。引き続き期待しています。

 

スターズオンアースは出遅れが響いて3着

ゲートが開いて出遅れたことがはっきりわかりましたね。ひとつ外枠のアートハウスが右に、ふたつ内枠のスタニングローズが左に、スタニングローズに接触する形でナミュールも左に。二冠牝馬は出遅れた上に目の前の進路を左右の有力馬に塞がれた格好になってしまいました。

上記の4頭の挙動はすべて不可抗力と思っています。もうああなってしまってはね。よくみるとゲートが開いた直後、スターズオンアースは前方に脚をだせず両脚を揃えて仁王立ちする形に。そこから初速をつけろというのはなかなか無理な注文です。

ルメールはあわてませんでしたね。3冠のかかる阪神2000mで4コーナー最後方はどう考えても狂気を孕みます。どこまでも冷静だったとしか語りようがないですよね。直前のタガノフィナーレが右鞭で外に流れることを見て取ってインへハンドルを切り、戻ってきたタガノフィナーレをはじき飛ばして、今度は眼前のアートハウスのひとつ外へ展開するためにアウトへハンドルを切る。そしてそのドライビングに馬がよく応えました。「地力で」という表現はまさにこういう時に使うべきでしょう。

 

自分の予想は伏兵台頭の余地が少ない上位3頭の勝負に収斂していました。そこから三冠に期待して二冠牝馬を本命にしたわけですが、後方からでは厳しかったですね。上がりはメンバー最速の33.5。三冠は成らず、残念です。

 

次走はまだ発表されていませんが、個人的にはぜひジャパンカップで。アルピニスタvsスターズオンアース、観たいですねー。今しかワクワクできないマッチアップかもしれませんので書いておきます。

 

ナミュールは2着、距離適性が短めにシフトし始めている印象

横山武史が道中右への矯正を試みていましたが、4コーナーでばっちりでてしまいました。勝負どころのコーナーワークであの膨らみ方は大きいロスという認識です。ただ、あのコーナーがきれいに回れていたら勝てたかというと。。。曾祖母にキョウエイマーチ、そこにフレンチデピュティダイワメジャーと重ねていますのでもう少し距離が短いところに収斂していくのでしょう。

馬体をみても一回りパンプアップしたことで胴の詰まった印象が強くなってきました。プラス20kgで動けたあたりにノーザンテーストの成長を感じてみたり。来年のヴィクトリアマイルではぜひ狙ってみたいですね。

 

最後に

前日の府中牝馬Sは現地観戦でした。ソダシの人気は凄かったですね。パドックで11Rの出走馬を待つ人数はG1のそれでした。関東でソダシを観るのはこれが最後かもしれないと、キャリアと年齢からくる予感もひとを集めたかもしれないですね。

ソダシの相手探しという見立ては合っていたのですが、まさかイズジョーノキセキだったとは。インが有効だとわかってはいたのですから、鞍上岩田で押さえておくべきでした。ひとつ前のレースで外差しが嵌っていた分、少し引きずられた相手選びになってしまっていました。

 

そうそう、府中競馬場内で販売していたカクテルをいただいています。以前は競走馬の名前でしたが、いまは枠の色にいわゆる「異名」を合わせたネーミングになっていまして。「音速の末脚」という文字列を見つけてしまいましたからもう買わざるを得ませんでしたね。

オレンジリキュール、アイスティーリキュール、オレンジジュースで、7枠をイメージしたオレンジ色。はい、あのダービーは7枠13番でございました。…1杯飲んでしまった分、予想が鈍ったということにしておきましょうか。

 

さて、週中にこの投稿がまとめきれないままもう菊花賞ですね。ダービー1~4着がまるっと不参加というのはミナガワマンナまで遡るというツイートも見かけております。イクイノックスは菊でよかったような。。。

※10/23追記:アスクビクターモアがダービー3着でしたね。それでもダービー1、2着、そして皐月賞馬も不在ですから、春のクラシックと趣きが異なることには違いないと思っています。

じっくり各馬の仕上がりの見極めつつ、展開の鍵を握るのはディナースタ?などとあれこれ考えようと思っています。