more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第101回 凱旋門賞

アルピニスタ、直前の大雨を克服しての戴冠となりました。

 

直線に向いて、タイトルホルダーまだ先頭…と思った視線の先に、1頭だけ追い出しを待っている人馬が。うわーと感嘆の声があがってしまいました。その真横からヴァデニ、そして後方のアウトコースで距離ロスをしていたはずのディフェンディングチャンピオン・トルカータータッソの追い込み。これぞ欧州競馬の底力と言うべき直線の攻防になりました。

ゴール前、ヴァデニとトルカータータッソが若干差を詰めていたようにアルピニスタのトップスピードはそこまで長く続いてはいないようです。ただ、ヨークシャーオークスで見せたラストの粘り込み、この馬場でも発揮されました。

 

5歳牝馬の勝利は1937年のコリーダ以来。英国牝馬の制覇は2018年のエネイブル以来。てっきりエネイブルが5歳で勝っているものと思い込んでいたのですが、ヴァルトガイストに3連覇を阻止されたのが5歳時ですね。

統計的な情報をみたことはないですが、欧州ではトップフィリーがメアと呼ばれるまで競走成績を送ることが多くはないのかもしれません(フィリーが3~4歳、メアが5歳以上という認識ですね)。

 

そして父系が象徴的。フランケルの凄さも、ガリレオの凄さも、ガリデインの効能も、そしてサドラーズウェルズの影響力も。1、2、3着の父系はすべてサドラーズウェルズですものね。

サンデーサイレンスの挑戦をサドラーズウェルズが阻んできた歴史、と大きく語ることも可能と思っています。…ディープインパクトを破ったレイルリンクのは父ダンシリじゃん、というツッコミがありそうな気が。母父から辿るとヌレイエフ(3/4サドラーズウェルズ)なので、変則ガリデインということでご容赦いただければ。

 

以下、JRA公式のレース結果です。

jra.jp

 

レース後半の各馬のラップタイムは象徴的

フランスギャロが発表しているラップタイム、PDFで公開されています。

https://www7.france-galop.com/Casaques/Tracking/20221002LON04_last_times_fr.pdf

 

公式レースラップ、転載します。

14.93-11.69-12.40-12.83-12.94-12.58-12.54-12.78-13.06-13.00-13.21-13.70

 

1~3着と日本馬の後半5ハロンの個別ラップ、こちらも転載。日本馬が力強くフィニッシュできていないことがよくわかります。ドウデュースが早々に諦めたことも。

アルピニスタ
12.78-13.06-13.00-13.21-13.70
ヴァデニ
12.94-13.07-12.78-12.83-13.77
トルカータータッソ
12.93-12.85-13.11-12.87-13.52

タイトルホルダー
13.07-13.20-13.33-13.94-15.46
ステイフーリッシュ
12.83-13.20-13.69-14.12-14.96
ディープボンド
12.88-13.36-13.81-14.39-18.51
ドウデュース
13.21-13.66-14.48-15.20-16.60

 

直前の雨で日本馬の可能性は潰える

地上波で中継をみていたのですが、画面がパリロンシャンのパドックに切り替わり、引き手のスーツがぐっしょり濡れているのを確認してからはもうテンションが下がってしまいました。直前の天気雨は最悪の展開。。。

いや、もちろん期待感は消えていないのですが、これまでの経験なり日本馬の特徴なりを考慮するとどう考えても勝つ場面がイメージできないわけでして。。。

 

以前にパリロンシャンの重馬場について私見をまとめていました。向こうでは「sticky」と表現する馬場、直訳は「粘つく」ですが、自分なりに「ぬかるんで安定した接地にパワーを要し」「埋まった脚を引き抜くのもパワーを要する」馬場と読み解いています。

keibascore.hatenablog.com

今年はそこに直前の雨ですから、水の浮いた状態で「すべる」が加わっていたかもしれません。日本の人工的な路盤と違って場所によって均質でない凸凹馬場でしょうから、水が溜まった場所でステップしなければならない場面もゼロではなかったと推察します。

 

netkeibaの会員向けコラムですが、川田将雅が「モータースポーツで例えるなら、ラリーとF1」と日本の競馬とのギャップを表現していました。おおむね同じ見解で納得感を覚えているところです。パリロンシャンの重馬場を「簡単に言うと粘土」とコメントしているあたりも、馬場状態のピントを合わせるヒントになりますね。

news.netkeiba.com

 

馬場のギャップは敗因のひとつ

レース後の関係者のコメントはおおむね「わかっていたことだから」「それを理由にしたくない」というニュアンス。確かにその通りなのですが、どちらかというとファンの論調を馬場に向けないようにする、諦め事にしないようにする配慮でくるんだコメントのように受け取っているところです。

傑出した馬であれば条件不問で突き抜ける競馬ができるかもしれませんが、近しい能力をもったトップホース同士でレースをする場合、わずかな特徴の差、わずかな適性の差が勝敗を分けることになるでしょうし、それが僅差に留まらないのが雨季のパリロンシャンへの遠征ということなのだと理解しています。

馬場を理由に「したくない」、なんですよね。敗因のひとつに馬場があることを理解していない限り、次への工夫はないわけで。府中の良馬場の先にパリロンシャンは直結していない、関係者は当然にしてこの前提からスタートしていると思います。

矢作師は「力負け」と断じていましたが、その一方で「日本馬が一番強いはず」ともコメントしていまして、その着眼に頼もしさを感じた次第です。

 

それでも凱旋門賞への挑戦は続いてほしい

日本固有の血統で凱旋門賞を勝つとなれば、欧州から日本血統を求める気運が高まるかもしれません。価格のギャップや輸送費が高いうちは購買数は少ないでしょうが、今後市場価格がそのままであるとは限りませんしね。

すでにディープインパクトの血を求めて、日本で種付け→欧州で出産→欧州のグループレースで勝利、というセリによる購買とは違うルートで成功パターンがありますし。

お客さまが国内に留まらない、販路拡大という視点で見れば、日本馬が通用することの証明としての凱旋門賞制覇に価値はあると思っています。…レースが好きな1ファンの視点ではないですけどね。

 

国内でG1を勝った馬のエクストララウンドとして凱旋門賞が機能するのは、引き続いてほしいと思っているところです。端的に、ワクワクする材料を提供してもらっていますから。

今年もタイトルホルダーやドウデュースの参戦決定からこちら、ワクワク感は醸成されていたと思いますし。あ、もちろんG1ホースでない馬の参戦も歓迎です。

期待感が大きくメディアも煽っている分、負けた時の感情面での反動もまた大きいのは察するところ。負ける姿を見たくないのは、そりゃそうですものね。

それでも挑戦する舞台があることはとても重要と考えます。今年ノーザンファーム生産馬の挑戦がなかったのが気がかりではあるんですけどね。様々な反応を巻き込みつつ、機運が途切れないことを期待しております。

 

最後に

いまのところアルピニスタは、ブリーダーズカップジャパンカップの両にらみという状況。プレスコット師はジャパンカップの報奨金に言及していますね。それも含んだレーシングポストの記事が以下。

www.racingpost.com

アルボラーダの調教師と知って驚きが増しました。買おうと思っていたんですよねー、あのジャパンカップ。その近親が凱旋門賞のタイトルを獲って日本に来るなら23年ぶりに馬券を買うチャンスになるのかもしれません。楽しみが増えるとよいですね。