more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第29回 NHKマイルカップ

ジャンタルマンタル、マイルでの強さを示しました。

 

外枠スタートから先行策、アスコリピチェーノの斜め前を取り、終始被せる形で進めていました。強い逃げ馬が不在でしたから3、4コーナーで12.0-12.0と緩み、その分直線半ばまで先行馬が頑張れるペース配分。これも川田は利用していたでしょう。何より、この緩急にしっかり対応して直線末脚を発揮したジャンタルマンタルが強かった、という内容でした。

もちろん個人的な印象ですが、歴代有数のハイレベルな勝ち方だったのではないでしょうか。好位をとって押し切る型でいうとエルコンドルパサーやアドマイヤマーズと重なる内容。アドマイヤマーズとは走破タイム1:32.4も自身の上がり33.9も同じのようですね。

 

共同通信杯までは馬体の緩さが目立っていたんですけどね。当日のパドックではそれも影をひそめていました。どうやらマイルG1へのローテーションを川田が進言したようですね。その見立て通り、マイルでは最強という存在になると感じさせるパフォーマンスでした。残り300、仕掛けてからの突き放し方がエグイですよね。強かった。

 

公式レースラップ

12.3-10.7-11.3-12.0-12.0-11.4-11.2-11.5

アドマイヤマーズとの比較の意味で、2019年のレースラップも。

12.0-10.4-11.5-11.9-12.0-11.3-11.3-12.0

 

当日は内外フラットな高速馬場

このゴールデンウィークはずっと好天に恵まれていました。エクイターフもそのポテンシャルをいかんなく発揮する良馬場。G1のふたつ前、3勝クラスの分倍河原Sは1:32.5の速い時計。内外の馬場差がないため内を通ったほうが有利ではありますが、長い直線を最後まで強く走りきれるよう4コーナーまでをスムーズにまわってくるという点も重要と映りました。

先手を取りにダッシュし過ぎても終いが甘くなるでしょうし、スタートから押さえ過ぎてしまうと直線外しか進路がなくなります(今回でいうとアルセナールとシュトラウス)。スムーズに先行して直線の進路確保にストレスが少ない、この条件が勝ちに近づくと考えを組み立てていました。

そうすると1、2番人気になるんだよなー川田とルメールだしなー配当は低めだなーという邪念は多分にありましたね。

 

パドックでの見立て・備忘録として

ほぼ備忘録的な記述ですのでご容赦を(とはいえこのブログも日記と宣言していますので、はい)。

パドックの見栄えだけでいうならジャンタルマンタルよりアスコリピチェーノでした。いい馬体でしたねー。カラダの柔らかさと桜花賞からのパンプアップ、四肢の連動性をよく感じさせる出来と見えました。

 

ジャンタルマンタルも十分な出来と見えましたが、やはりあの厳しい皐月賞を経ての高速マイル戦。疲労の程度と回復までの時間からわずかに見劣ると見ていました。

そして気になったのはガムチェーン。今回のジャンタルマンタルでいうと口の中を通し額にひっかけているオレンジのヒモですね。自分はパドックを見ている最中にクロス鼻革と混同してしまっていたのですが、きつい顔立ちとこの矯正具の分、アスコリピチェーノに軍配をあげる判断となりました。

 

自身の備忘録とする部分はここ。ガムチェーンは歯茎を刺激して前進気勢を抑える働きを期待するもの、クロス鼻革は2本の鼻革をハミの上下に通してハミ受けを矯正する目的で使用するもの。違う目的で使用するのよ、という未来の自分への申し送り事項でございます。ただ「操縦性」の改善という意味では重なりますので、予想の組み立てには影響が少なかった、とは言い訳が過ぎますね。

 

2歳チャンピオン2頭のどちらが前を取るか、取った馬にアドバンテージがあると思いつつ、それは絶対か?などと2頭の出来栄えを見ながら自問自答しておりました。それがこのレースの最大のポイントと思っていましたので。

パドックだけで言うと、他にはボンドガールとアルセナール、シュトラウスが前走よりアップという点でもよい馬体の仕上がりに見えました。

 

ジャンタルマンタルの進路取りと勝ち方への美意識

アスコリピチェーノに限らずインを突いた有力馬は、川田の締めに進路がつくりにくい状況へ追いやられていましたね。先行したマスクオールウィンを終始川田が「壁」として利用したことで生じたディスアドバンテージでしょう。

勝ち方についての美意識はひとそれぞれでしょうし、ナリタブライアンディープインパクトのダービーのようにポジションの有利不利で争わずに直線大外へもちだして圧倒的な力の差を見せつける、という競馬を好むのももちろんアリです。ですが、そんな圧倒的な存在がいることは稀ですからね。

 

今回の川田のように戦略的に有利なポジションをとること(相対的に相手を不自由なポジションへ追い込むこと)、これはコンマ1秒を争う競技性からして妥当な発想だと思っています。

今回の川田は見事にアスコリピチェーノへのけん制に成功しました。細かいところですが4コーナーをじっくり回ってくるあたりが素晴らしかったですね。

 

アスコリピチェーノは前が壁になるリスクがありながらも4コーナーで加速をうながしていまして、それが何故かと考えると、川田の戦略的に有利な状況を作り出す(先読みの)力が大きく勝敗へ影響したことがわかります。

3コーナーでジャンタルマンタルの方が前にいたのに、4コーナー出口ではジャンタルマンタルとアスコリピチェーノが併走しているんですよね。川田は追いつかれているわけなのですが、自身に有利な(そして他馬に不自由な)ライバルに蓋をするポジションを着々と取っているわけです。川田の勝利へのこだわりが強く見える、とも言えそうですね。

 

この後アスコリピチェーノの接触のことにも触れますが、個人的には、それより手前でルメールより川田の戦略が上回っていることに注目すべきと思っています。3、4コーナーのルメールの加速は後手なんですよね。

ルメさん自身が休み明けだったという点は加味すべきかと思いますが、昨年の朝日杯といい今年の金鯱賞といい、ルメールが川田の後手にまわる場面が少しづつ増えてきた印象。この春のG1でもこのあたりを念頭に置く必要があるような気がしてきております。

 

アスコリピチェーノの接触と不利について

現行の降着ルールとペナルティの課し方、それを踏まえて今回の事象をどう見るのがよいかは水上学さんのブログでの分析が程よいと思いました。

mizukami-manabu.cocolog-nifty.com

起きた事象の説明箇所だけ引用します。それだけでも長いですね。

川田騎手に外からブロックされたルメール騎手が、内への進路を探すも前が壁⇒ミルコの馬が下がり始め、岩田康騎手の内にスペースが出来る⇒そこにルメールが入ろうとする⇒前の岩田康騎手の馬が内へササる(岩田騎手はここでは右鞭を打っています)⇒ルメールは行き場を失くすが、ゴーを出した直後で勢いが止まらない。アスコリが躓く⇒ルメールは右手綱を引き上げて落馬を避けつつ、バランスを崩したことで完全な制御ができなくなった馬が、これ以上内へ行かないようにする⇒一方ボンドガールでラチ沿いにいた武豊騎手は、おそらく危険を察知したのでしょう、ラチにぶつけられるのを防ぐために内から押し返すも、外からの圧が止まらないので手綱を引いて下げる⇒マスクが失速し下がりアスコリの出すところが空き、ルメールが姿勢を戻して馬を追い出す・・・

ルメールがゴーサインを出した時点で斜め前方には1頭分の空間がありますので、これを狙うなという方が無理筋でしょう。不運だったのは岩田とルメールの動き出しがほぼ同時だったこと、そして岩田の右鞭は後ろからは見えにくい肩ムチだったこと。

 

加害馬のジョッキーがそれぞれ修正アクションを取っていることも加味されての過怠金3万円だと受け取っています。明らかな過失ではないことと複数の馬が連鎖的に作り出した状況ですから、難しい判断だったと推察します。

 

現行のルールだと以上で終了、なんですよね。もちろんアスコリピチェーノ本命だったファンは多いでしょうから憤懣やるかたなしだとは思うわけですが。自分も本命でしたし。ただその場で着順を覆すようなジャッジは「被害馬が被害後にファイトバックして」「加害馬に迫ってゴールする」という場合にしか検討されないのが現行のルールであるわけです。

 

水上さんのブログの冒頭に、裁決委員へ詳細を取材したきっかけとして2013年のAJCCの件が触れられていますが、自分もその時期に自分なりの見解をまとめていました。

keibadecade.blog.fc2.com

10年以上前の文章を掘り起こすことになるとは思いませんでしたが、比較的わかりやすい表現になっているのではと期待しつつ、以下引用しておきます。思わぬ誤解など生じないように祈りつつ。

競馬の安全とラフプレー防止の点から加害馬の騎手への制裁を厳正に…というルール説明も確認できます。でもこれはあくまで未来に向けた抑止策であって、いま不利を与えてしまった馬の関係者にそのレースの結果に対して直接制裁を科す仕組みではないんですよね。「やり得」という言葉を見聞きするのはそのためなんだろうと理解をしているところです。

起こってしまった不利を罰する実質的なジャッジの不在。そういっても過言ではない状況だと理解しています。

上記自分の投稿では、私見としてラフプレーに対するファンも含めた共通見解の醸成を重視することや、私案として一定の基準で厩舎や馬主にペナルティを課すルールはどうだろう、などといった内容を書き散らしております。これこそ備忘録ですが、参考になるようでしたらご覧ください。

 

というわけで、現行ルールに則った今回の制裁については異論ありません。ただ「やったもん勝ち」にならないルールの在り方には引き続き議論の余地がある、そしてアスコリピチェーノとボンドガールの能力が十分発揮できなかったことは残念。というのが自分の見解です。

 

ジリオンは先行馬の進路争いから一歩引いての3着

何と言いますか、これぞ戸崎という3着だったと率直に思っています。ええと、誉め言葉です。

先行馬のポジション争い、馬場とペースからは妥当なわけなのですが、それをひとつ後ろで受ける戦略。ルメールの前が詰まっているそのひとつ後ろから、悠々と外に持ち出して末脚を伸ばしてきました。

 

ペースや展開を受けさせたら戸崎は本当に上手い。引退した福永と戸崎がいわゆる「受け」のジョッキーと思ってきましたが、その特性が存分に出たと思っています。ちなみに受けながらも攻めていたというのが皐月賞ジャスティンミラノですね。

パドックで馬の出来はよかったと感じてはいましたが、正直印はまわりませんでした。シュトラウスのポテンシャルが全開になったらどうしよう、とか関心を向けるべきと感じた馬が他に多かったというところ。でもこれを拾えるのが3連系の馬券を仕留める鍵なんですよね。難しい。

 

ボンドガールは不利をまともに食らっての惨敗

実はがんばれ馬券を買っておりました。ソングラインのような存在になるのはこの馬かと思っていましたが、まともに不利を受けてしまいました。

パドックでの印象はよかったものの、自分で勝ち切る競馬をするには少し足りない充実度という見立て。軽快な末脚を発揮するタイプ、裏を返せばタフにスピード持続するタイプではない、という言い方がイメージに近いかなと思っております。

 

逃げまであるという先行策はちょっと意外でしたが、好位のインに収まっての3、4コーナーは理想的と映りました。力があれば、あの不利を受ける位置よりもうひとつ前で運べたかな。そのあたりが▲と感じた理由だったと自分なりに振り返っているところです。あ、もちろん、不利を受けてもやむを得ないなどというつもりは毛頭ありませんよ。

夏を越して、となるとより短距離適性にシフトしているようにも感じます。ぜひもうひとつ成長力を示してほしい1頭ですね。

 

シュトラウスは前途多難なレース運びで惨敗

自身の上がりは34.1。勝ち馬の上がりは33.9ですので、序盤の位置取りがものをいうレースだったことを象徴的に示す数値に見えますね。

序盤から首をあげて行きたがる鞍下をなんとかなだめて最後方追走に収める北村宏司。ほぼ調教替わりのレースとなるのはファルコンSと同様になってしまいました。メイケイエールほどの異能な前進気勢ではありませんでしたが、これでは勝敗以前という厳しい内容。

マーカンドが許してしまったレース半ばの前進気勢を、北村宏司が取り戻すレースはあと何回必要になるでしょうか。外野から見る限りですが、このあと休養にはいるようなら妥当な選択と思っています。

 

ゴンバデカーブースは及第点の内容で4着

ホープフルSを取り消して、1月に喉頭エントラップメントの手術を受けての復帰緒戦。

喉頭蓋は気道と食道が交差する部分で、気道側についている「ふた」」というのがわかりやすい説明だと感じました。以下はグランアレグリアの際の記事ですが、参考までに。

www.chunichi.co.jp

パドックで見た限り、堀厩舎のシャープな仕上げということを加味してももうひとつ締まった筋肉で出てこれた馬なのかな、という印象。もうひとつ上がある、という表現がしっくりくる見立てになりました。

あとはモレイラが勝ち切れないまでも押し上げてくるだろうと思っていたのですが、戸崎が上手かった。あと「ひとモレイラ」欲しかったですね。はい、3連複は1、2、4着で外れでした。

 

これでダービーへ向かうのであれば期待値があがりますね。今回はそういう「線」で捉えるべき一戦だったのかもしれません。

 

最後に

先ほどの比較で挙げたアドマイヤマーズのNHKマイルカップを振り返っていたのですが、そうでした、このレースでもルメールが直線にはいって閉じ込められる展開でしたね。

その際は外の馬をはじいて前方の進路を確保していましたが、そのはじかれた人馬はダノンチェイサー川田。巡る因果というべきでしょうか。

川田にしても武豊にしても、勝負になる馬で勝負になる位置を取れることが、不利を被る可能性を比例的に上げているのかなと思うに至っております。


一方で、レース前の記事では、NHKマイルカップでの外枠の好走が目立つ理由として、直線を目いっぱい駆け上がれるだけの体力がない、という分析を見かけていました。

うーん、逃げ馬や人気薄はともかくとして、アドマイヤマーズの年も今年も、上位馬と10着前後の馬でも上がりタイムはコンマ数秒しか違いがないですからね。これを指して体力がないための外枠差し有利を謳うのはちょっと…。どちらかというと前半にポジションを取りつつレース中盤でしっかり折り合えないとラストで勝敗に参加できないという方が妥当だと思っているところです。

分析の質の高さを見極めて情報をとることが、レースをより楽しむコツになりつつあると思っていますが、その質の高さをどうジャッジするかが悩ましいですよね。

情報収集の個人差が助長される仕組みのなかにいますので、上手に自分の楽しみ方の「幅」を決めることがストレスフリーでもあり難しさでもあると感じているところです。だから客観的な批判のコメントと単なる揶揄の差もわかりにくくなるのかなと。

 

上記のような分析の粒度についての批判もどう受け取られるか。少なくとも落ち着いて相手の見解を最後まで聞く&思い入れと分析を区別する&相手の思い入れに配慮する、ができていないと有益な批判と議論を重ねることは難しいでしょう。先の裁決の件もそうですね。

須田鷹雄さんの絶望的なポストが気がかりなこの頃ですが、競馬を楽しめる語りは引き続き必要と理解しながらファンを続けてはおります。でもSNSでは限界があるかな…とも。ベストな環境はないと心得つつ前進するしかないのでしょう。


そうなんですよ、ケンタッキーダービーの興奮こそまとめておきたいと思っているわけでして。GWも終わってしまいますし時間あるかな。今週は仕事でひとつまとめなければいけないことがあるので、どうなるでしょう。

あの惜敗をオルフェーヴルに重ねる向きがあるようですが、自分はエルコンドルパサーになぞらえるほうがしっくり来ています。そのあたりも書きたいですね。