コントレイル、今年は無事に選出されました。そしてキングカメハメハ、この選出は大きいですね。
昨年は僅差で顕彰馬入りを逃してしまっていましたが(なぜという思いはありつつ)、今年は152/176票(得票率86.4%)という文句なしの得票。クラシック三冠にジャパンカップのG1・4勝。繁殖成績はこれからという段階ですが、「競走成績が特に優秀であると認められる馬」が選定基準のひとつですから、十分納得できるものでしょう。
一方のキングカメハメハ。来年がノミネート最終年度だったはずでかなりギリギリでの選出となりました。こちらは143/176票(得票率81.3%)で選出基準である全体の3/4の得票(75%)をクリア、同一年で2頭の選出となりました。昨年が136/207票(65.7%)でしたので母数が減った分、という見方もできるように思います。
どうやら会友とカテゴライズされている投票権者が昨年より減った模様。減少や入れ替えの内訳については知る立場にないわけですが、これまでかなりの得票数がありながら選出されずにここまで来ていましたので、ある種の「代謝」を起こした結果とも言えるのかもしれませんね。
JRAの発表はこちら。
https://www.jra.go.jp/news/202406/060401.html
コントレイルは鮮やかなダービーとジャパンカップが印象的
最内枠を克服した皐月賞、距離適性への疑問視と先日引退したアリストテレス(おつかれさまでした)の厳しいマークを乗り越えた菊花賞と3冠にはそれぞれ語るべきエピソードがありますが、自分としては能力と適性を見せつけたダービーがまずは思い浮かびますね。
鞍上から、直線で「遊んでいた」というコメントがでたダービーはいまもってコントレイルだけ。それだけ同世代では抜けた存在でしたね。
当時の予想は、現地観戦したホープフルSで拍子抜けするほどインパクトのない馬体とあの走りのギャップ、そして皐月賞のあの展開でサリオスを交わしていったパフォーマンス、これらを踏まえて観念するような本命視になっていた認識です。無観客ダービーの感想も含めて当時の投稿、そうそうこんな感じでした。
有終の美となったジャパンカップ、こちらは人馬に思いを託した単勝でよかったという記憶。リアルタイムでも大団円という心地を堪能していましたが、のちのち右前繋靭帯炎との戦いがあったことがわかり(大阪杯のあとのようですね)、脚元の不安のなかでの三冠馬の走り、改めて受け取りなおす形になっています。
3000mを走れる馬ではない、との鞍上のコメントも印象的。それを踏まえると重馬場でもがいた大阪杯の敗戦も適性外かつ逃げ切りの展開ながら3着にまとめる地力があったというべきなのでしょう。
矢作師は引退後の対談動画で「海外好きなオーナーとトレーナーで海外遠征していないことが何を指しているかわかってほしい」とコメント。脚元の不安と向かい合う難しい日々をここに窺うことができます。そして「コントレイルの仔で海外へ」とも。コロナ禍という難しい時期でもありましたから、ぜひ産駒が大きなタイトルを獲るところを観てみたいですね。
キングカメハメハはようやくの選出
もう言うまでもない実績ですが改めて。競走成績ではNHKマイルカップとダービーのG1・2勝。
数は少ない?ですがどちらもめちゃめちゃ強いパフォーマンス。観ていない方はぜひ。NHKマイルカップのほうのリンクを載せておきます。
繁殖実績ももう文句なし。サイアーオブサイアーズという評価が妥当というべきでしょう。ロードカナロア、ドゥラメンテの父というだけその影響力がわかりますね。それぞれの産駒に牝馬三冠をとったアーモンドアイ、リバティアイランドがいるわけで。キンカメ自身、アパパネの父ですしね。直仔と孫の代で牝馬三冠を3頭輩出する種牡馬ですから、すごいなと。
以下、JBIS-Searchで主な産駒を確認できます。
そして母の父、ブルードメアサイアー(以下BMS)としての実績も素晴らしく。今後、実績を積み増していくのはこちらですね。以下はBMSキングカメハメハの主な産駒一覧でG1馬から並んでいるわけですが、最初の3頭がウシュバテソーロ、ソダシ、デアリングタクトと何と豪華な…。直近ここにチェルヴィニアも加わっていますね。
近年のBMSのランキングは2010年代のサイアーランキングをそのままトレースしたように見えています。それだけ種牡馬としての影響力はBMSとしても大きいといえるのでしょう。このあたりまで見越したらもっと早く殿堂入りしてよかったのに、という思いは、はい、面倒な見解と思いつつ書いておきますね。
オジュウチョウサンが未選出
58.0%で未選出となってしまいました。レース体系もかなり違いがあるわけですが、障害馬唯一の殿堂入りグランドマーチスを大きく上回る戦歴ではありますからね。どうして一発で選出されないのかというのが何とも。。。
有資格者がもつ最大4票をどう使うか、もちろんそれは個々人の判断であるわけですが、今年に関してはうち3頭は選択の余地がないのでは、と思わせます。
個々の趣味嗜好を問うているのでなく「中央競馬の発展に特に貢献があった」馬をどう選ぶか、ですからね。オジュウチョウサンの長期にわたる活躍は障害レースの発展に寄与していたことでしょう。当時どれだけ話題になっていたことか。…はい、苦言はここまでに。
顕彰馬投票ルールの私論
恒例行事になりつつありますが、今年も。以前にまとめた投票ルールの改正アイデアです。もううるさいファンの意見というのは百も承知で。
当時から変わらず、以下の3点を現行ルールに追加すれば徐々に改善されていくものと考えているところです。
昨年「過去5年」は「過去3年」へ、そして0票ないし非投票者は即投票権を失う、という、より強めの条件2つを思いついていますが、やっぱりそれが投票行動に対する責任とけん制という点で妥当ではないかと受け取りなおしているところです。
競馬の殿堂ページを改めて閲覧
競馬の殿堂ページからはすでに両馬のページへのリンクができていました。辿ってみてください。一瞬キンカメがいない?!となりましたけどね。どうやら選出年順ではなく生年順に並んでいるようです。
どのくらいのペースで選出されているのかがちょっと気になりました。昭和59年に制度が発足していますので、平成を便宜的に前後半に分けて、令和とともに比較すると以下の通り。
- 平成元年~15年 10頭
- 平成16年~30年 8頭
- 令和元年~ 4頭
平成16年は過去の名馬も対象に加えて選定したと記憶していますので(結果、タケシバオーとテイエムオペラオーが選出)、それを割り引くと選出されるペースは少し鈍化している=選ばれにくくなっているように見えますね。
個人的にはしっかり権威は保ちつつも、もう少し選出する馬の母数が増えてほしいと思っているところ。リアルタイムで観ることのできなかった今後の世代にむけて、より明示的に語り継ぐことができる仕組みですから。その価値にもう少し母数がほしい、と考えるようになっております。
最後に
上記のような議論を表明したうえで、じゃあどの馬が追加されるとよいのか?というのは、様々に議論が紛糾しそうですね。
個人的にはスペシャルウィーク、グラスワンダーは繁殖実績込みで加わってほしいと思いますし、ダートホースの表彰もあってよいのではと考えています。
交流G1の評価そのもので難しい議論になりそうですが、コパノリッキー、ホッコータルマエ、ヴァーミリアン、エスポワールシチーあたりまでは交流G1勝利数だけでも抜けていますからね。繁殖成績こみですとクロフネも対象にできそうです。
…ダートを主戦場にした馬を表彰するという発想そのものを喚起するところからになりそうですね。そもそも芝中心に日本の競馬が…という議論がでてきそうですが、語り継がれないものはそもそも価値を失っていくわけですので。今年から始まったダート路線整備にあわせて、こうした歴史視点での意義づけもぜひお願いしたいところです。