more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第165回 天皇賞(春)

タイトルホルダー、ペースを支配して7馬身差の圧勝でした。

 

あっという間に先手を取り切ってしまいましたね。クレッシェンドラヴの鞍上が全力でプッシュしていましたが、ファーストコーナーを待たずに単騎逃げの形をつくることに成功していました。他馬が抵抗する余地はほぼなかったように見えています。この序盤の先手争いが勝負の分かれ目でしたね。

1周目のスタンド前では横山和生が息入れる?どうする?という繊細な会話をしているように見えました。2周目の1、2コーナーではしっかりラップを落として、3コーナー手前から少しずつシフトアップ。後述するレースラップを見ると、残り1ハロンまでに勝負を決める戦略も透けて見えます。

ラストスパートというと最後の直線で見られるイメージですが、このレースに関して言えば3、4コーナーがそれに当たっていたでしょう。馬場状態も加味して、残り1000mを待たずに引き離しにかかられたわけですから、後続馬にはスタミナの底を問われる厳しい展開になりました。

菊花賞ほどの極端なメリハリではないにしても、レースを3分割したならば急→緩→急。セイウンスカイ菊花賞からこちら、長距離で逃げ切るためのお約束を踏まえていることはよく伝わってきました。横山家の秘伝のタレ、と捉えたくなる情緒も持ち合わせてはいますが、もはや大抵の関係者やファンも知るところですので定石というべき戦略であるでしょう。だから典さんは凄いんですよね。

 

東スポでは中盤の緩ペース部分に注目して「偽りのペース」という見出しを打っていたのですが、このレースの要点と魅力からは少しずれた議論のように映っています。言わんとすることはわかるんですけどね。

次走が宝塚記念だとしても、同じ阪神内回りですし問題視するほどではないと思っています。ポイントはコースレイアウトや距離短縮ではなく同型馬と枠の並びではないでしょうか。

tospo-keiba.jp

公式レースラップ

12.7-11.9-11.9-12.0-12.0-11.9-12.2-12.8-13.3-12.9-12.3-12.0-11.9-11.5-11.7-13.2

 

タイトルホルダーの菊花賞も参考までに。冒頭1ハロンにダミーデータをいれると後半のほぼ1周、1800m分は揃ったラップになります。

**.*-12.5-11.1-11.5-12.1-12.8-12.6-12.8-14.3-13.1-12.6-12.4-11.7-11.5-11.4-12.2

雨を含んだ馬場コンディション

金曜にまとまった雨。土曜は落ち着きましたが土曜夜から日曜午前にかけて再びの雨。西から東に雨雲が流れたようで、東京は午後にかけて雨が強くなっていきました。スイートピーSの映像がわかりやすいですね。

日曜の芝レース、キックバックは一目瞭然でした。内回り外回りの合流地点からゴールまでの区間をみても内ラチから6、7頭分が同じように掘れるコンディション。内外の馬場差がないということはインと先行が有利というバイアスになるでしょう。

しかし8R、蓬莱峡特別では逃げたルース、2番手アトリビュートが同じ33.7の上がりで1、2着。残り400からのラップは10.7を計時していました。速っ。おそらくはほふく茎が壊れずに水分を含んだ表面の土と芝が剥がれていたのでしょう。根茎が支持力をキープしていればグリップは効くはずですので。

上記8Rはこのコンディションに加えて外回りをゆったり逃げたことで、上がりがグッと速くなったものと推察できました。おそらくG1はこの馬場で同スタミナを活かすかという内容になるものと読んでいました。この見立てが直前にならないと固まってこないから、当日の降雨は悩ましいのですよね。

2強の8枠

2強がともに8枠にはいったことでオッズはばらついたように思います。枠順が出た瞬間は、ああ予想が難しくなったという第一印象。TwitterのTLもざわついていましたね。最内を引いたアイアンバローズが1枠の勝率なども相まってオッズを押し上げたようです。

個人的には枠の並びと先行する馬の候補から、タイトルホルダーのレースプランはシンプルになったのではと感じていました。落ち着いて眺めて、アイアンバローズのスタートダッシュ力から石橋脩は先行ポジションを無理に求めないのでは、という推論に。タイトルホルダーにプラス1頭、前に入られることで好枠を活かし切れないレースになるのではというイメージでした。結果的にはテーオーロイヤルがそのプラス1頭の役回りを担ったわけですね。

ディープボンド和田は当日の馬場バイアスをうらめしく思っていたかもしれません。どこかでインに入れられる可能性が最も低い大外枠で、かつインと先行が有利ですから。スタートからプッシュして早めに番手に取りつく作戦は、対タイトルホルダーという視点も含めてそれしか選択肢がなかったとも言えそうです。

カラ馬シルヴァーソニックの影響

びっくりしましたね。ゲートを出て最初の1歩、右前が躓いてしまいました。やむを得ない不可抗力でしかないのですが、その後のレース展開への影響が大きかったという認識です。自分なりにざっと箇条書きしてみます。

  • 1周目のスタンド前、タガノディアマンテは右後ろから脚を引っ掛けられる
  • 1周目のスタンド前、ディープボンドはインへ押し込められる形に
  • 2周目の1コーナー、テーオーロイヤルはインへ切れ込むシルヴァーソニックをいったん引いてから外へ切り返すロス
  • 2周目の向こう正面からゴールまで、タイトルホルダーは終始直後にシルヴァーソニックを背負う形に

前走でもだいぶかかり気味だったタガノディアマンテは余力を削られてしまい最下位で入線。ディープボンドはラップの落ち着くタイミングで窮屈なインに、自分のストライドで走れず外へ切り返すタイミングも遅れたように見えています。テーオーロイヤルも早めに外へ切り返したことでタイトルホルダーの直後というポジションを手放すことになりました。

中盤のラップを緩めたい場面では上記の通りカラ馬が味方した格好のタイトルホルダーですが、レース後半は終始直後につけたシルヴァーソニックに気を配らなければいけないレースを強いられました。残り1200からペースアップが始まっているのはちょうど直後につかれてしまった場面と符合します。理想のタイミングより早めにペースアップを余儀なくされたという見方も可能でしょう。

 

最後の直線、シルヴァーソニックがラチに向かってヨレたシーンは、横山和生のけん制だったように見えています。直線に向いて左ムチだったところを右に持ち替えての一発。鞍上が意識したものと思っていますが、偶然のタイミングだったかもしれません。シルヴァーソニックにムチは当たっていないでしょう。左前にいるタイトルホルダーのトモに当たったムチに驚いたなら、逆の右側への回避が自然な動き。ラチは右側ですものね。

予想の段階では、スタートからファーストコーナーまで川田が和田の進路をけん制して、ディープボンドがインへ寄せ切れないという展開をイメージしておりました。それがタイトルホルダーへのアドバンテージになる点を重く見ていたわけですが、その読みはゲートが開いて1秒で崩れ去りましたね。。。

 

繰り返しますが、誰も責めるべきではなく不可抗力としか表現のしようがない事象です。この不確定要素を踏まえたうえで予想なり馬券なりに臨むのが賢明な態度と思っています。人馬とも無事で何よりでした。

ゴール後のラチを飛び越えて起き上がれない姿は、その後の無事が確認できたことでファニーな場面と受け止められますね。おそらく、いける!と思って踏み切ったのでしょう。オルフェーヴルらしさ?が垣間見えた瞬間でした。

タイトルホルダーは宝塚記念凱旋門賞を視野に

東京での勝利がなく阪神でしかG1を勝ったことがないという戦歴。仮にジャパンカップを逃げ切るとしても、タップダンスシチーやスワーヴリチャードの年のような馬場であることが勝利の条件のように思えます。府中の高速馬場であの伸びやかではないストライドはあまりアドバンテージにはならないイメージです。

年明け一頓挫ありましたので、このまま国内を使わずに遠征し現地でひと叩きして凱旋門賞、が最善のように思っていますがどうなるでしょうね。

 

NumberWebの島田さんの寄稿、凱旋門賞で逃げたら「手の施しようがないのでは」という見解を目にしています。個人的には少し懐疑的。阪神とはアンジュレーションが大きく異なりますし、ワンターンというコースレイアウトも異なります。トルカータータッソのような強力なスタミナ差し馬が参戦した場合どこまで抵抗できるか。でも、これまでの馬と期待のかけ方が違うとは思っています。

number.bunshun.jp

 

一方で望田潤さんの回顧記事。ハイペリオン増し増しの血統であることがよくわかる解説です。ドゥラメンテは大好きな馬ですが、キングカメハメハ×サンデーサイレンス×トニービン×ノーザンテーストという社台スタリオンのチャンピオンサイアーが濃厚に抽出された血統構成、次にどんな肌馬がアジャストするのかイメージできずにいました。父とはだいぶ異なるタイプ、こうでてくるんですね。

モンジューという最強のアビリティを付与しての凱旋門賞チャレンジなら、1999年の競馬をリアルタイムで目撃したファンとしてはわくわくするばかりです。

blog.goo.ne.jp

横山和生は初G1制覇

何と言いますか、本人があまりこの語り口が必要としていない佇まいですね。タイトルホルダーのリズムを重視していった結果としてG1を勝つことができたという。

netkeibaのインタビューなどを読む限り、馬優先といいますか、レースの結果を求めつつも鞍下の心身のリズムが噛み合う場面を見つけながら騎乗していくタイプという印象があります。馬のリズムよりも優位なポジションを求める弟、武史とは異なるタイプ。どちらかというと父典弘に似ているのでしょう。

でもゴール直後に左腕を真っ直ぐ挙げたシルエットは、父とも弟ともよく似ていました。本人に少しサービス精神があったかもしれませんが、このあたりはファンの側が勝手に楽しむものでしょうね。

インタビューで親子制覇の感想を漠然と本人に求めたのは少し野暮に映りました。もう少し粋な言葉の選び方があったらいい演出になったのに。インタビュアーの気持ちはよくわかりつつ、ですけどね。

テーオーロイヤルはナイスチャレンジ

タイトルホルダーと迷って迷って、こちらを本命にしました。極端な枠を引かなったこと、スタートと折り合いに難がないこと、継続騎乗、掘れるがスピードは出せる馬場であること、ダイヤモンドSで一発回答を出していること(オープン&重賞初挑戦で勝利)、その後の調教量も十分であること、タイトルホルダーとディープボンドの争いを見ながらポジションと仕掛けのタイミングを決められること。馬格では2強に見劣っていましたが、プラスの要因が多かったんですよね。

あとは鞍上菱田。追い切り後のインタビュー、マスク着用の分きっちり伝わりにくいのは確かですが、いい面構えといいますか、いい表情でレースを迎えられそうだなと。長距離戦ですから鞍上のヘッドワークと胆力がものを言うと思っていましたので、半分は鞍上に賭けた格好でした。

ディープボンドがタイトルホルダーの傍にいられず、自力で勝負に出ることになったのは予想とは異なる展開でしたが、菱田の判断はお見事。3コーナー手前から外に張って、コーナリングでディープボンドを弾いた姿は勝負にでていた証と理解しています。直線でバテバテになった姿も含めて勝負をしてくれました。マイペースのタイトルホルダーに唯一正面から対抗しに行ったわけですからね。人馬ともナイストライ、賭けてよかったです。

 

管理する岡田師はマーベラスサンデーの攻め専だったとのこと。1997年の天皇賞春、1番人気サクラローレルの早めの進出に対して間髪入れずに追撃した姿が思い出されます。あの時も勝負に出て3着、という符合。テーオーロイヤルはG1に届くか、こちらも楽しみになりました。

ヒートオンビートは3、4コーナーでスムーズさを欠く

日経賞の走りから色気をもって見ていました。追い切りも当日の雰囲気もよい印象。ただ、掘れる馬場はテーオーロイヤルより堪えるだろうと考えて少し評価を下げました。真っ向からのスタミナ勝負を避けるために中団を選択するとの読みも含めて、ですね。

それにしては3、4コーナーで進路がスムーズではありませんでした。3コーナーの入口で狭くなり引かざるを得なかったようですが、これでインコースからマイネルファンロン、メロディーレーン、クレッシェンドラヴ、ハーツイストワールと、下がってくる馬をパスしなければいけないポジションに身を置くことになってしまいました。

 

ひとつふたつ手前、1、2コーナーでヴァルコスに外から被せられているのですが、ここの回避の仕方でレース後半のスムーズさが違ったかもしれません。うーん、でもこれは凄いタラレバかな。のこり1000m以上馬群の外を回る選択になるわけで、池添からすれば現実的なコース取りではなかったでしょう。勝負をするためのインキープが裏目にでる、これもまた競馬と理解しましょうか。

最後に

GW、カレンダー通りお休みが取れております。皆さん遠出はしないのか、この投稿は某所の混雑が続いているカフェで書いているのですが、まぁ回線がつながりにくいこと。思い思いに回線を利用しているとこうなるのでしょうね。途中で止まるレース映像の再開を待ちながら、5Gとは?と焦れる休日、有意義に過ごせているのかしら。

 

2019年の牝馬クラシックを分けた3頭、グランアレグリア、ラヴズオンリーユー、クロノジェネシス。その後の活躍はそれぞれ破格のそれでしたが、2021年の牡馬クラシックを分けた3頭もまた、その後の活躍が目覚ましいなと、脳内で符合しているところです。

皐月賞馬エフフォーリアは2021年の年度代表馬に、ダービー馬シャフリヤールはコントレイルに肉薄したジャパンカップを経てドバイシーマクラシックを制覇、そして菊花賞馬タイトルホルダーは近年の傾向をなぞるように春の天皇賞を制覇し2つめのG1タイトルを掴みました。

シャフリヤールはすでにロイヤルアスコット開催、プリンスオブウェールズSへの遠征が決まっています。エフフォーリアは(秋まで休養してほしいところですが)宝塚記念への参戦予定。3頭ともが現役で、かつクラシック後もその価値を高める活躍をしていることが頼もしい限りです。

勢ぞろいするとしたらジャパンカップ有馬記念かな。三つ巴という表現、2020年のジャパンカップ以来使っていませんが、実現するなら楽しみですね。

 

そうそう、ドゥラメンテキタサンブラック。クラシックを分けた2頭ですが、古馬になってに一度だけ宝塚記念で対戦していることを思い出しました。あまり話題になっていなかったと記憶していますが、当週のGallopが対決を煽る表紙だったことを覚えています。2頭の活躍時期がズレている分、ライバル視する場面が少なかったんですよね。その宝塚記念もワンツーではなく2頭ともマリアライトに負けちゃっていますし。それもまた阪神コース特有の流れだったかな。

…記憶が次々と連鎖しているのはゆっくり競馬と向かい合えている証拠でしょう。止まらなくなってしまいますのでこのくらいに。