more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第41回 ジャパンカップ

コントレイル、強さを見せつける印象的なラストランとなりました。

3、4コーナーでオーソリティ→シャフリヤール→コントレイルと、いつでも外に展開できるインから2列目で一直線に並んで直線を迎え入れる姿は壮観でした。これからガチの末脚勝負が始まる予感。名手のポジショニングとそのキープ力は紛れのない直線の攻防につながりました。

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2021年ジャパンカップ、4コーナーの隊列、オーソリティ(青帽)→シャフリヤール(黒帽)→コントレイル(白帽)

向こう正面にはいったあたりでシャフリヤールがラチ寄りからひとつ外へ展開。コントレイルはインへ切れ込むサンレイポケットを見ながらユーバーレーベンをパスしてその後ろへ。オーソリティの先行策、シャフリヤールというより川田の先行意識、そして古馬コントレイルに付きまとったスタートの不安。1コーナーでシャフリヤールの受けた不利がなければシャフリヤールが前にいたのでしょう、あのラチ激突がない勝負を見たかったのが本音ですね。

キセキが途中から先頭に立ち、後半1200mのレースラップはぐっと締まりました。先行勢は3、4コーナーでジリジリとペースアップを迫られたでしょうし、待機勢も差し切る前に末脚のスタミナを削がれたでしょう。3、4コーナーの各馬の通過順に変動がないのはこのペースアップが要因と思っています。一気に仕掛けてラストまでもたせるには3、4コーナーは早過ぎますものね。

これを中団で構えて全て受け止めて、唯一の上がり33秒台で突き放したわけですから。やっぱり3冠馬はすごいんですよ。

https://www.jra.go.jp/JRADB/jpg/2021/05/202105050812A.jpg

公式レースラップ

12.7-11.5-12.8-12.6-12.6-12.3-11.6-11.6-11.7-11.6-11.5-12.2

土曜より速めの馬場、2歳戦ではレコード計時

ジャパンカップウィークは週末まで天候に恵まれました。土曜より日曜の方が時計は出やすかった印象。2歳未勝利ではウィズグレイスが2000mをレコードで逃げ切り。ラスト1ハロン12.8とかかっていましたが、スピードで押し切れるくらいの軽さと理解していました。

残り600からの坂下のラップが最速になる傾向がありましたが、ライアン・ムーアルメールマークが少し仕掛け所を早くしていたようにも見えていまして。ジャパンカップではその形になりませんでしたからね。このあたりは個人的な見解ということで。

ただルメールがラチ沿いを回避する進路取りをしていたことは日中のレースで顕著でした。ウィズグレイスは分かりやすく直線外へ持ち出していましたし。直線外目に出せるか。ジャパンカップでも内目の枠を引いた有力馬のミッションはこのあたりになると捉えていました。

1コーナーの難しさ、シャフリヤールの不利

返し馬のテンションの高さからアリストテレスの逃げの確率を少し高めに見積もっていましたが、シャドウディーヴァが思い切って攻めてきましたね。どちらも、少ないであろう勝機を掴むための戦略だったのでしょう。悪くないスタートを切ったオーソリティは被せられないように早めのプッシュを強いられる形になりました。

シャフリヤールの好スタートが目立ちましたね。無理のない加速から、上記3頭が一気にインを取りに寄せてくる前に最内を取り切ってしまいました。スムーズであればその後の展開はオーソリティより前のポジションで迎えていたでしょう。もし道中、シャフリヤール→オーソリティ→コントレイルの並びだったら。あるいは2着は変わっていたかもしれません(このあたりはコントレイル贔屓ということで)。

1コーナー直前にアリストテレスのヨレ。ゴール板通過直後なのですが何に驚いたのでしょう。外に逃避したことで、斜め後ろに控えようとしていたシャドウディーヴァは外への回避行動、その後ろのシャフリヤールは手綱を引いてブレーキを踏む格好になりました。外枠から被せてきたワグネリアンを意識したか、外へ逃げたシャドウディーヴァはコーナリングしながら今度は内ラチまで寄せる形。先ほどより露骨に、ラチ沿いにいたシャフリヤールは進路を失ってしまいました。Racing Viewerの映像ではラチに激突する音が入っていますね。

府中2400の1コーナーまで、この区間でのアドバンテージを狙うのは定石とはいえかなり厳しいやり取りになりました。金色のマスクマンさんの解説が秀逸ですので、こちらで詳細を確認してみてください。

note.com

コントレイルは五分のスタートから見事な立ち回り

YouTubeに上がっていた「祝勝会」。関西の芸人さんとの配信でしたが、福永が向こう正面までの顛末を話している箇所がありました。グランドグローリーを押し込んでしまう流れはなるほどと思いつつ、サンレイポケットのインへの切り返しに冷静に対処していたこともわかりました。ラチにぶつかるシャフリヤールから少し離す動きも含めて、基本はセーフティドライビングに徹していましたね。

心配だったスタートは五分以上と見えました。中間プール調教で狭い空間に慣らしたという効果がでたのかもしれません。ただスタート成功の大きな要因は、福永が促してゲート入りのタイミングを遅らせていたことにあると思っています。グルっと回しながら、大外ジャパンの直前、最後から2頭目の枠入りでしたからね。

菊花賞ジャパンカップという昨秋のローテーションが堪えたことでゲートに難がでたという分析も鞍上から聞こえてきていました。レースへの忌避感という難問、ラストランで立て直した陣営を褒めるばかりでしょう。

名実ともにチャンピオンの強さを示したラストラン

ゴール直後の福永の涙、もらった方も多かったと思います。自分もじんわりもらっておりました。ファンはジョッキーの喜怒哀楽で思い入れを強くするのだなと改めて感じる瞬間でもありましたね。ファンが継続騎乗を求める要因のひとつは、この共感にあるのかなと思っています。

1頭の名馬を介して、ジョッキーの表情が多くのひとの気持ちを揺さぶる文脈。武豊が積み重ねてきたことであり、ルメールはアーモンドアイでそれをファンと共にしました。川田はこれからかもしれません、マカヒキのダービーはもらいましたけどね。強い馬で勝っているということ、単勝1倍台に応えるということとも少し別の意味合いでしょう。

今回は福永といっしょに安堵したんですよね。チャンピオンはチャンピオンだったと、ジャパンカップという大舞台で証明できたわけですから。

英語実況のレース映像が上がっています。ゴールインするコントレイルに「Goobye,son! Well done!!」と重ねた実況はファインプレーでした。あの瞬間の空気を上手く濃縮できていたと感じています。

マレー・ジョンソンという方なのですね。コントレイルとは少し離れてしまいますが、インタビュー記事が上がっています。よく日本競馬を観察されていますよ。

www.jairs.jp

ジャパンカップの国際色

レース直後はコントレイルよかった強かったの一色だったのですが、少し冷静に。

ジャパンとブルームの参戦は、キーファーズとクールモアのビジネスが順調であることの表れと受け取っています。あ、悪意とか嫌味は全くなく、日本を含めていわゆる競馬先進国はレースへの参戦に限らず、生産からオーナーシップまで国際的に最適解を求めていく段階にはいっているものと理解をしています。

特にブルームはスタートで後手を踏んでそのままノーチャンスになってしまいました。日本競馬へのアジャストという点でいうと課題が大きかったことが窺えます。エイダン・オブライエンが本気で日本ダービージャパンカップを取りに来るかというと、うーん、メリットやニーズがあるのかどうか。エース級の馬、例えばセントマークスバシリカだったら、…きっと来なかったでしょうね。

ジャパンカップに象徴的に国際交流を求めるには、すでに状況が大きく変化し過ぎているように感じます。ファンだけが置いていかれているのかな。海外調教馬×日本のジョッキーという組み合わせは、その変化を指し示す意味ではキャッチーだったかもしれません。選ばれるのが武豊しかいないあたりに一抹の不安を覚えますけどね。。。

5着グランドグローリーが近々のセリにエントリーしています。リザーブ価格は高めに設定、売れなければそのまま売却せずに保有して繁殖入りという報道。もし高値がつくようであれば、間接的にジャパンカップの価値が評価されたことにもなるでしょう。こうした累積が日本競馬の価値を着実に認知させていくものと思っています。

とここまで書いて、コントレイル×セントマークスバシリカというカード、見てみたくなってしまいました。どちらも現役続行だったら、そしてコロナの影響が落ち着いていたら、来年のドバイターフかサウジカップデーのネオムターフカップで実現できたかもしれませんね。はい、もうこれは超たらればということで。

そうですよ、ブリーダーズカップの2レースを獲った2頭の日本産種牡馬ディープインパクトオルフェーヴル。この産駒でジャパンカップをワンツーフィニッシュですから。こうしたところに国際化の確かな手ごたえを見出すべきでしょう。

気になった馬

オーソリティ

ルメールの先行策が2着を招き寄せました。キセキのペースを追いかける4コーナー、ルメールが早めに踏んでいる姿が確認できます。トップスピードの勝負では分が悪かったでしょう。キセキの捲りを上手く利用したロングスパートが奏功しました。

坂を上がって伸びが止まったのは現状の力量差と受け取っています。順調に使えなかった馬ですから、ここに来ての本格化は関係者の努力の賜物と思います。まずは来年の大阪杯を楽しみに。…ドバイ?

シャフリヤール

鞍上川田は毎日杯以来の2回目。追い切り後のインタビューで「コントレイルに挑める最後のチャンス」「全力で胸を借りて挑んでいきたい」というコメント。嘘のないコメントを出すジョッキーと理解していますので、これは実力の見立てがコントレイル>シャフリヤールなのだろうと推察いたしました。

こういう見立ての話をするとすぐ消極的な態度と結びつける向きもありますが、冷静な能力比較とそれを踏まえた戦略はとても大事なことでしょう。言葉そのまま、真っ向勝負では分が悪い状況でどう勝機を見出すか、ブリーダーズカップを制した唯一の日本人ジョッキーは戦略を練っていたものと思います。

本人のポジション志向と相まっての先行策はこちらとしても読みやすいものでしたし、馬のリズムを尊重した中でオーソリティよりインかつ前に出ながら1コーナーを迎えようとしていた騎乗は、さすがという他ないなと。

馬自体はまだ線が細い印象。パンプアップというより、父ディープインパクトやコントレイルのように細いなりの筋力や体幹がしっかりしてくるイメージ。正直、春のパフォーマンスは評価し切れないでいたのですが、さすがダービー馬というのがこのジャパンカップの率直な印象。来年の充実を待ちたいと思います。

サンレイポケット

馬自身の充実と前走からピーキングが続いているように見える状態の良さが目につきました。鞍上は「一角崩しができなかったのは自分の技術が未熟だから」とコメントを残していますが、謙遜は不要と思います。向こう正面入り口でのイン誘導は鮫島克駿でなければできない判断でしょう。

ワグネリアン

ダービーを思わせる外枠からの先行策。その勢いもダービーを彷彿とさせるものでしたが、直線は思った以上の失速。距離短縮した前走富士Sといい、喉の影響がなかなか払拭できないのかと推察しています。

マカヒキと合わせて4頭のダービー馬参戦が戦前の看板になったジャパンカップでしたが、一番今後に不安を残すパフォーマンスになってしまいました。2019年のジャパンカップ、難しい馬場とポジションから3着まで押し上げたタフな末脚はまた見られるでしょうか。

最後に

すでにソーヴァリアントがチャレンジカップを制して、ネオムターフの優先出走権を獲得しております。レース後の熱があるうちに言葉にしておきたいのですけどね。レース回顧に集中するまとまった時間を捻出できない、というのは贅沢な悩みなのかもしれません。

コントレイルの話は別の投稿でまとめようなどと思っていまして、ここでの取り上げ方に迷っておりました。それも時間がかかる要因ですね、自分で時間がかかるように仕向けているのですから困ったものです。あとで振り返った時にこうだったなと思えるようにまとめておきたい、という楽しみ方は面倒な限りです、はい。

チャンピオンズカップはソダシの取捨が入り口になるでしょうか。個人的にはダート替わり緒戦での砂スタートはグリップが芝と異なる分すべりやすい、という認識でおりまして。1枠1番からすべったスタートは出遅れ&砂被りという負のスパイラルに嵌ってしまうのではと。

白帽にはいったことで白ずくめでよい、といったコメントが聞こえていましたね。素直に気を利いているなと思った次第ですが、何と言いますか、不安を逸らすようなコメントにも聞こえております。前走のごねたゲート入りも合わせて今回は危険な人気馬という印象です。

では強く推せる馬がいるかというと。展開ひとつ、というレースになるように思っています。具体的に絞り込むのはこれからですね。先行馬がなだれ込み切れず、中団からの差しを優位に取ろうかな、などと漠とイメージしているところです。