more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第58回 スプリンターズS

ルガルが空前の前傾ラップを好位から押し切りました。

 

前半3ハロンは11.8-9.9-10.4で32.1。9.9って。新潟1000m以外ではほぼお目にかかれないラップタイムですね。これをきれいにパワフルにストライドを伸ばして計時したピューロマジック、3、4コーナーのフォームはとてもきれいですので是非映像を確認してみてください。

3コーナーまでこれを追いかけた大外枠ウイングレイテストがそのまま2番手、かなり無理をしていたように見えました。その後ろ、4番手で追走していたのが勝ったルガル。

 

ペース的には厳しいわけですが、道中追走するフォームは滑らかな印象。無理にスピードをあげたり、無理に抑えたりというフォームが窮屈になる場面が見られなかったのは西村淳也の経験と判断によるところが大きいのでしょう。

後半の3ハロンは11.0-11.6-12.3。個人的には、前半突っ込んだ分、先行勢の失速幅はもっと顕著でも不思議ないと感じているのですが、このあたりは9月を通じて良馬場に恵まれ、かつ開幕週の紫苑Sでレコードがでたコンディションのよい芝の賜物というべきなのでしょう。

 

高松宮記念惨敗、そしておそらくレース中の骨折。左橈側手根骨骨折、左第3手根骨骨折と2か所でした。どちらも腕関節(わんかんせつ、「前脚のひざ」という言い方がぴんときやすいですねきっと、実際は人間でいう手首の部分です)ですので、走りに影響がでてもおかしくないと推測もできますが、中間の調整をみるとね、まぁ凄かったです。体幹が強いゆえにブレがないフォームで坂路を駆け上がっていました。

西村はそれもわかっていつもの強気で乗れたのでしょう。ギベオン然り、エルトンバローズ然り。昨年の天皇賞でジャックドールの逃げを2番手で追いかけたガイアフォースも思い出しました。オーバーペース気味に追走する西村、要注意でしたね。

 

G1初勝利のインタビュー、よかったですね。ゴールした瞬間にレースの細かいことが吹っ飛んでしまったかな、なんにも覚えてないとのコメントはらしさとして響きました。慕っている坂井瑠星と馬上でグータッチしている様子は公式映像のラスト数秒で確認できます。スタートの上手い印象もあり、得意技が明確なジョッキーとして今後も楽しませてくれるのでしょう。

 

そしてルガルの父、ドゥラメンテ。三島牧場のコメントが奮っていまして「クラシックディスタンスを意識した配合で…まさかスプリンターになるとは」。ですよね、母父New Approachですしね。

1200mと3200mで産駒がG1勝ちを納めたのは、グレード制導入以降ではサンデーサイレンスディープインパクトだけ、のはず。距離適性とは。何度となく思わされますが早逝が惜しまれます。以前書いた追悼記事も載せておきましょうか。

keibascore.hatenablog.com

 

公式レースラップ

11.8-9.9-10.4-11.0-11.6-12.3

ママコチャ出走という共通点から、昨年のラップを比較のために。

11.7-10.4-11.2-11.2-11.2-12.3

 

当日の雨で少し掘れるがスピードは担保される馬場

6着だったビクターザウィナーのモレイラが、少し緩い馬場を気にしていたとのコメント。キックバックを避けるために外目での追走を強いられたとのことでした。確かにパトロールビデオをみると3コーナーあたりは掘れている様子が確認できますね。

 

週中には週末降るぞー降るぞーという天気予報だったのですが、ふたを開けてみると降雨は金曜に。土日はあまり降らなかった認識です。まったく影響がなかったわけではなさそうですが、グリップが強くないタイプは少し苦戦していたかもしれませんね。

 

ママコチャはパフォーマンスを上げての4着

ママコチャの走破タイム、今年は1:07.1、勝った昨年は1:08.0。スプリント戦の実績が少ない同馬ですが今回1200mの自己ベストを更新。それでも前に残られていますからね。ルガルの高速馬場の活かし方が一枚上手だったというべきでしょう。

冬場は調子が上がってこなかったとのこと。セントウルの2着はよく動けていましたから、季節によってパフォーマンスに幅があるタイプ、なのでしょうね。

 

トウシンマカオとナムラクレアの差し脚

トウシンマカオが33.5、ナムラクレアが33.2。上がりタイムの差は4コーナーの進路取りの差で相殺、それ以上の差となって2着と3着を分けた格好です。

遡ると、3コーナーで挟まれてポジションを下げたナムラクレアと、スタートから終始インを通ってロスなく3コーナーに進入したトウシンマカオ。さらに遡るなら枠順、内外の差がかなり効いてしまっていたようにも見えますね。

 

ナムラクレアについては、「理想はトウシンマカオの位置」という武史のコメントにいろいろなポイントが集約されているように感じます。気性やヨレを考慮してか、直線で一度も鞭を使わずにあのナムラクレアの末脚を引き出した点も素晴らしく。テン乗りでの役割をしっかり果たしてくれました。

 

トウシンマカオについては、適度に荒れた馬場がベスト、というイメージがありまして。そこまで荒れてはないだろうという見立てと、内枠があだになる見立てとで評価を下げておりました。あのハイペースをあの位置をとってじっくり構えた菅原の判断も磨かれてきている印象です。G1をひとつ獲るというはそういう意味で大きいのかもですね。

 

サトノレーヴはスタートが響いて7着

トロールビデオからは、ゲートが開いたタイミングでトモに重心がしっかりのせられていないように見えています。影響は軽微と思われますが、レーンの左足がゲートの左側面にぶつかっているようにも見えますね。

前走の映像もみましたが、もともとゲート内では落ち着かないタイプのよう。今回に限ってそれがわるいほうにでてしまったようです。

 

前傾ラップを好位追走して直線唸って押し切る。函館~札幌の2戦は同様の内容でしたし、今回も前傾ラップと予想できましたので安定の本命視、だったんですけどね。少し掘れる馬場も合わなかったかな。

 

ハイペースの中でポジションがとれずに直線で差し届かないレーン、というのはサートゥルナーリアと脳内で符合しているところ。あの時も高速馬場を先行したロジャーバローズが押し切っていましたね。高速馬場をハイペースで押し切れる個体を見極めるのはG1のトレンドになるかもしれません、などと適当なことを書いておくとしばらく経ってあの時書いてた…となることもあるので、書いておきましょうか。

香港の良馬場、合いそうな気がしますけどね。このあとの動向が気になります。

 

オオバンブルマイとダノンスコーピオンの追い込み戦略

前者は33.3、後者は33.5、どちらも後方から上がりだけの競馬で着順を落としています。次走に向けては悲観する材料が少ない負け方かなと見ています。

特にオオバンブルマイは最内枠からの追い込み戦略、どうしてもいったん最後方付近まで下げて、というステップをひとつ踏まなければいけない分、いろいろ嵌る必要がありましたからね。次走はマイルチャンピオンシップとのこと、そちらのほうが楽しみが大きいように思います。

 

最後に

秋のG1シーズンが始まりました。忙しくなりますねー。早速明日には新設のジャパンダートクラシック、週末には凱旋門賞と、地方も海外も目配せが必要になります。うれしい悲鳴というべきでしょうね。

どちらの有力馬にも坂井瑠星の姿が。この秋もかなり忙しく世界を飛び回ることになりますね。どうやらシンエンペラーは向こうの水が合うようで、陣営のコメントの温度感からするとかなりいい出来の様子。追い切りはクリスチャン・デムーロでしたので、X界隈では瑠星から乗り替わり?などという早合点ユーザーが出没していたようですね。落ち着いていきましょう。

 

そうそう、アルリファーの追い切りには武豊がかけつけていました。オーギュストロダンと写真撮影している姿は何やら歴史の1ページを見ているようでしたね。

そのオーギュストロダンは馬場を見極めて出否を決めるスタンス。どうやらラストランをジャパンカップと定めているようで、こちらは大歓迎ですね。春先はBCクラシックという話もありましたが、同厩のシティオブトロイがそのチャレンジを担うことに。そちらはそちらで明日JDCを走るフォーエバーヤングと対決することになります。

 

…日欧米と数珠つなぎに次走の話ができているのは改めてすごいことと思いますね。あとは結果。ダービーやジャパンカップより凱旋門賞BCクラシックを先に獲る日本人ジョッキーが現れるかも、というのも感覚的にフィットしているようなふわふわしているような。90年代の空気を知っていると、やっぱり隔世の感がありますね。

 

もちろん楽しみには違いないですから、期待値上げて週末を迎えたいと思います。