アーバンシック、最後の一冠を捉えました。いやー競馬はルメールですね。
メイショウタバルが控えることで(序盤、よく番手で収めたなと思います)折り合いを欠いた後続馬が先頭を奪い、それを見て他の馬が前をけん制しに行き…という落ち着かない展開となりました。
逃げ馬が定まればラップ分析も過去とのラップ比較も機能しやすいでしょうが、この乱高下するラップですからね。特殊な展開になったというべきかもしれません。ペースや相手に合わせて動いた人馬ほど苦しい直線を迎えた印象です。
アーバンシックはいつも通りゆったりめのスタート。前半はかかり気味ながらショウナンラプンタの直後を取って折り合いに専念。さすがと思わせたのは2周目の1コーナー手前、ショウナンラプンタの後ろを捨てて1頭分外へ。そこからポジションを押し上げていきました。
2週目の1、2コーナーは前半で脚を使った馬が息を入れたくなるポイントですので、ルメールはここでポジションアップして差し届かなくなるリスクを抑える戦略を取ったと見ています。言うは易く行うは難し、ですよね。
3コーナー手前でアドマイヤテラ武豊に外の進路を取られた形になりましたが、ここでも慌てず。2周目の下りではその武豊の直後という、長距離G1では理想的といえるポジションを確保していました。あとは直線で、その「目標」を捉えるだけでしたね。
あれだけめちゃめちゃな展開のなか、アーバンシックと3000mを走り切るリズムをキープしながら直線で視界をクリアにできるように道中リードし続けるというのは、なんという経験と胆力でしょうね。
正直、パドックでは筋肉量と500kg超の馬体の大きさから、いやー強いけどやっぱり中距離ベストと見立てていたのですが、これまでのパフォーマンスと合わせてそれ以外に本命視できる馬が見当たらず。力の差と鞍上ルメールで勝ち切ると読んだのがそのまま当たりました。でも本命的中の喜びよりもルメールのリードにちょっと呆気に取られていましたね。いやーすごいな。
公式レースラップ
12.6-12.0-12.4-13.0-12.0-11.7-12.4-12.7-12.3-12.6-12.6-11.9-12.0-11.8-12.1
京都芝は高速馬場でないもののグッドコンディション
菊花賞のひとつ前は1600mのキセキカップ。47.8-46.5の後傾ラップ、スタートから2ハロン目は前日の2勝クラスより0.1遅く、その分勝ったキープカルム含め前残り傾向となりました。
後傾4コーナーのインもそうですし、直線もインから5、6頭分はボコボコとして掘れている様が見て取れましたが、後傾ラップで前が残るようにそこまでひどいバイアスではないという認識。長い距離を走ったあとの直線なら外へ展開できた方がより伸びそうだという理解で予想に臨みました。
逃げ馬が次々と入れ替わる乱ペースに
浜中がタバルのペースを尊重するという旨のコメントをしていましたが、ほんとうに抑える形が取れるとは。スタート直後は登りですが4コーナーに向けてすぐに下りますから、そこで先頭までいってしまうのだろうと読んでいました。
ファーストコーナーまでにエコロヴァルツが先頭に立ち、メイショウタバルは控えた5、6番手。入りからスローで流れる形ができあがりました。かかる馬が続出しましたね。
最初のコーナーから、エコロヴァルツ→ノーブルスカイ→メイショウタバル→ピースワンデュック。2周目の向こう正面まで、約1周回る間にペースを乱高下させながら先頭がこれだけ変わるのは…。
ノーブルスカイ池添は2周目の2コーナーから先頭に立ったピースワンデュックを追撃していますし、先行勢が入り乱れて相当な濁流となりましたね。
ちょっと残念なのはJRAの公式結果ページのテキスト情報だけではエコロヴァルツが逃げていた事実が読み取れないこと。この事実はデータで追えるようにしてほしいものです。
アドマイヤテラは武豊のリードで3着
この濁流をもっとも離れた位置から見ていたのが武豊でした。1周目スタンド前を抑えながら最後方で迎える戦略。2周目の2コーナー出口付近からググっと中団まで押し上げて、アーバンシックの直後に。さらに促して3コーナー手前でアーバンシックの外へ被せる形をつくりました。
この時ルメールは一瞬外を見ていますね。このタイミングで蓋をされることに虚を突かれたように見えています。切れ味に見劣るアドマイヤテラを勝たせるにはロングスパート、ということだったのでしょう。
3、4コーナーでは張ってきたシュヴァルツクーゲルを利用しながら捲る形に。直線を待たずにそのシュヴァルツクーゲルをパスして先頭に立ちました。いやー勝負しますね、すばらしい。
このリズムはドウデュースの有馬記念とよく似ています。鞍下のストロングポイントの活かし方という点ではやや異なっているでしょうが、2周目3コーナーの使い方、緩ペースからのロングスパート、コーナー通過順とよく似た形ですね。
戦略の再現性があるという点で仕事きっちりなのですよね。どんな職種でもまぐれの1回では信頼には遠く、高確率での品質の再現性こそ高い評価にあたると考えられますので。
リアルタイムでは2周目の4コーナーを観ながら唸っておりました。さすが、という他ありませんね。
ダービー馬ダノンデサイルは「誰もわるくない」6着
8-9-14-15。2周目のコーナー通過順がこれでは勝ち負けに持ち込むのは厳しいですよね。。。
ファーストコーナーまでのリズムは素晴らしく、内枠スタートから好位のインをキープという必勝パターンに持ち込んだように見えていました。1周目の下りでは少しかかり気味でしたがよく我慢が効いていたと思います。
目の前のエコロヴァルツがスタンド前からブレーキを掛け続けたことで、前に壁ができた状態が続いてしまいました。
2周目の1コーナー手前、ずーっと引っかかってどんどんポジションをあげていったピースワンデュックがエコロヴァルツに接触。ダノンデサイルはすぐ前でトラブルを目撃することになります。どうやらピースワンデュックは抑えが効かないまま、前方のノーブルスカイにつっこむ勢いだった様子。ギリギリで横に避けたところエコロヴァルツと派手に接触という形になったようです。
これでさらにエコロヴァルツが押さえにかかりましたから、そのあおりでポジションを下げることになりました。1周目のスタンド前に向いたところでは2番手にいたんですよね。。。
2周目の向こう正面、外に出すチャンスはあったと思いますが、いや無理筋かな。ここで外に展開するには加速を促さなければなりませんし、上手く外に出せたとしてアドマイヤテラの後ろですからね。武豊のスタミナ勝負にお付き合いする判断になるわけで、それはダービー馬の得意技でもなければ、早仕掛けで過剰な負担を背負わせる(3歳秋という)タイミングでもなかったでしょう。
結果、2周目の3、4コーナーも下がってくるエコロヴァルツの影響下から逃れられず、相当後方まで下がってしまいました。馬群の後ろまでいったん下げて外を回すというのは結果論だったでしょう。直線だけで6着は立派だったと思っています。
レース後の「誰もわるくない」という鞍上のひと言。「流れがわるすぎた」というコメントとセットで受け取る必要がありそうですが、悪質なインターフェアはありませんでしたからね。ファンの憤りを鎮める、伝わりやすい言葉だったと思っています。
秋緒戦がこの菊花賞でしたから、おそらく秋もう一戦はあるのではと思っています。間隔を空けながらレースしてきていますので、有馬記念?かな。
折り合いがついて道中の出し入れが効くエピファネイア産駒。エピファネイアは有馬記念を負けていますので器用さの増した息子が父を超えることになるのか。次走報、楽しみですね。
へデントールはしぶとい末脚で2着
序盤はアドマイヤテラと同様に後方待機策。こちらは外枠スタートの差し馬という条件からはやむを得ない、むしろ腹をくくった戦略だったでしょうね。
印象的だったのは2周目の1、2コーナー。アドマイヤテラの進出に合わせて促されているのですが、ちょっと置かれてしまう姿が確認できます。同様に2周目の3コーナーもアドマイヤテラの捲りについていけず、アーバンシックの外へ進出して蓋をすることが叶いませんでした。
戸崎からは「前進気勢がそこまでなかった」「(アーバンシックを追いかけた3、4コーナーで)動き切れなかった」「まだカラダの緩さがある」といったコメント。完成度を加味しても、瞬時の加速よりはトップスピードに乗せてからの持続にストロングポイントがあるのかな。ステイゴールドの肌にルーラーシップですからね。
最後の直線も、半ばまではもたもたしている印象がありました。残り100あたりでアーバンシックの外に進路が定まり、左手前も定まってからはグイグイと伸びてきました。このしぶとさはステイゴールドっぽい印象ですが、カラダの動きをロスなく推進力へ向けるにはもう少し馬体の完成が必要ということなのかもしれません。
ルーラーシップの荒ぶるゲート難とステイゴールドの自我が、馬体の完成とともにどう表現されてくるのか。素質の高さは示してくれましたね、こちらも楽しみです。
最後に
さて、もう天皇賞ウィーク。平日のうちに書き切ろうと思っていたのですが、菊花賞のレース内での出来事が多過ぎて、かなり文章にしたものを削りながらまとめるのに時間を要してしまいました。
ピースワンデュックのかかり方とか、それだけで1投稿できてしまいますからね。スタンド前に向いた時の隊列などは、モーセが海を割るがごとくきれいに2列の間に進むべき空間ができてしまいましたから。引っかかった馬には前に壁がなくなる最悪の展開ですけどね。
菊花賞は逃げ馬が入れ替わり立ち替わりする展開でしたが、天皇賞は枠の並びを見る限りノースブリッジがハナかな…というところ。エコロヴァルツで「もっと積極的に乗ればよかった」と反省していた岩田康誠ですので、ヘンに番手で控えたり超スローで抑える展開にはしてこないでしょう。
ホウオウビスケッツは緩ペースからの早め押し切りという認識ですし、まして鞍上岩田望来ですし。スタートから親子で競り合うイメージは湧きにくいなと。
外寄りにはいったリバティアイランドにとっては、すぐ内枠のクリスチャン・デムーロと坂井瑠星の張り方がネックになるかも。2人とも併走すればいいだけですので、リバティが2コーナーで外々を回らされる可能性はそれなりにあるものと思っています。
8枠のルメール。レーベンスティールはスタート遅くない認識ですので、思い切って前々を狙ってくる可能性がありますね。内枠各馬はできるだけ外を回ってほしいと思うでしょうし、ダノンベルーガやタスティエーラはヘンに後方のポジションにはしないでしょう。大きく外を回わされるリスクを回避するなら、かなり出していって逃げ馬の直後くらいでポジショニングする可能性を感じます。
これをぜんぶ見ながら動ける有力馬が1頭、7番枠にいますね。逆襲のドウデュース。ね。おぜん立ては整いつつあるように思っております。思い入れというバイアスが、ええ、多分に感じられる展開予想ですね笑
まとまった雨もないですし、難解な馬場にはならないでしょう。もう少し展開や馬場やジョッキー心理を読みつつ、今秋発売になったNumberと優駿も読みつつ、大一番を堪能したいと思います。