more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第40回 フェブラリーS

レモンポップ、見事にG1に届きました。テン乗りの坂井瑠星がきっちりエスコートしましたね。

 

直線に向いて1頭だけ馬なりで唸っている姿はしびれましたねー。ドライスタウトの進路にしっかり外から蓋をしていることも、追い込み馬が外から脚を使っていることにアンテナを張りつつ追い出しを待っていることも、明確な意図が伝わる馬なりでした。あのポジションで直線を迎えられるようにエスコートできたことで、直線の攻防を支配できたといってよいと思います。

逃げ馬と併走しながら、ドライスタウトを封じ込めながら、レッドルゼルの追い込みを凌ぎ切るだけのタイミングで追い出しを始める。あの間を馬なりで待つには、相応の経験と度胸が要求されるでしょう。

また、直線で取りたいポジションから逆算して、スタートから向こう正面の所作、特にインから3列目でドライスタウトの外という位置関係をつくりだせていることもまた、いまの坂井瑠星の実力といえそうです。スタートをきっちり決めたことも見逃せないでしょう。技術もヘッドワークも胆力も備わってきていますねー、頼もしい限りです。

 

そしてレモンポップの強さ。速いペースを馬なりで先行して抜け出す。往年のタイキシャトルのような圧倒的なマイラーのそれでした。

ただあちこちで語られている通り、自身も1400ベストではあるのでしょう。陣営がそう見立てているのは戦歴をみれば察するところです。

今回はスプリンター寄りのメンバーがそれなりに揃ったこともあり、レモンポップの地力が際立ったようにも見えています。もしテーオーケインズやウシュバテソーロがでていたら、どうなっていたでしょうね。そのたらればが今後の楽しみにつながりそうです。

 

公式レース映像

www.youtube.com

公式レースラップ

12.3-10.9-11.4-12.0-12.5-12.1-12.0-12.4

当日の雨で馬場が速かった昨年2022年のラップです、比較のために。
12.2-11.0-11.3-12.3-12.4-11.6-11.2-11.8

 

日中乾いていった馬場と前傾ラップ

日曜のダートは稍重で始まりましたが、午後には良に回復。ヒヤシンスSではずいぶん埃がまう馬場コンディションになっていました。昨年とはずいぶん異なっていましたね。

それでもショウナンナデシコが引っ張ったラップは、前半3ハロンで昨年とコンマ2秒差しかないかなり突っ込んだラップ。前後半は46.6-49.0ですから、乾いてパワーの要する馬場を加味するとかなりの前傾ラップだったと理解してよさそうです。おそらくですが向こう正面は追い風だったでしょうね。

 

レモンポップは逃げ馬の外へ出せるポジションをキープ

スタートしてから、ショウナンナデシコヘリオスが順に眼前を横切っていきましたが、これをやり過ごしつつひとつ外へ。さらにケイアイターコイズが前に入ってきましたが、ドライスタウトと併走しつつこの直後にポジショニングしました。

3コーナー手前でテイエムサウスダンをパスしたセキフウが外から被せてきましたが、3、4コーナー中間で坂井瑠星は少しだけ外へ膨らむ形に。遠心力を利用してケイアイターコイズの外へ展開しました。4コーナーで前方の視界はクリア。そつのないリード、お見事でしたね。

 

レモンポップは中間の慎重な調整が実る

パドックで観た限り、根岸Sからもう1、2週あれば超回復したパンパンの馬体になっていたのかなという印象でした。よく言って根岸からキープした馬体。時計をだした追い切りが中間1本だけ、それもレース7日前の日曜日ですからね。変則的な調整ではあります。

最終追い切りでジョッキーを乗せてはいましたが、コメント通り感触を確かめるものだったでしょう。中2週の限られた時間の大半はトレーニングではなく回復に重きを置かれたようです。この調整で結果につなげたのですから、田中厩舎の慎重さと慧眼が勝因というべきでしょうね。

 

ゴドルフィン田中博康厩舎とも鞍上坂井は少なめ

ゴドルフィンブルーの勝負服と坂井瑠星、騎乗数としては少なめでした。netkeibaのデータベースで2年遡っても勝ち鞍なし。見慣れているイメージがあったのですが、それは広尾レースとごっちゃになっていたせいでしょうね。…ジョークになってるかしら。

田中博康厩舎とのコンビも数は少なく。この実績の少ない状況下でよくオファーがあったなと感心しています。海外遠征、とくにごドルフィンマイルでの覚えがよかったのかな。

 

少し調べて、2021年の記事を見つけています。ドバイ遠征の際にサイード・ビン・スルール師から騎乗依頼をもらっていましたね。ゴドルフィンとの関係はこうした積み重ねの賜物なのでしょう。

news.netkeiba.com

そう考えると、今回のオファーは次のレース=ドバイ遠征も見据えた乗り替わりだったのかもしれませんね。そのあとの目標レースが定めにくそうではありますので遠征かな。個人的には少し静養に努めてほしいタイミングと思っていますが、どうなるでしょう。

 

ドライスタウトは前走と同じく進路が確保できず敗退

前走すばるSは外からバトルクライ川田に蓋をされ、今回はレモンポップ坂井瑠星が外から蓋。同じパターンでスパートのタイミングを逸してしまいました。戸崎も十分わかって臨んでいたのでしょうが、あの枠と並びで、抵抗できる余地は限られていただろうと推察します。

パドックではじめて見たのですが、なかなかもっさりした挙動。じっくり加速し長くスピードをキープしてはじめて良さがでるタイプと見て取りました。

俊敏な反応が難しいということは、スタートからすばやく位置を取りに行ったり、開いたスペースにスッとはいっていくことが難しいということ。マイナス2桁の体重でシェイプしてきたのは伝わりましたが、それでももっさり感が拭いきれないという印象でした。

 

レモンポップと枠が逆だったらまだ違っていたでしょうね。戸崎には逆風になりましたが、他のジョッキーであっても抗しきれない条件が揃ったと思っています。

レモンポップではなくドライスタウトを選んだこともなかなかにざわざわする要素でしたが、出否未定で疲労回復に努めている馬と2歳のJpn1を勝って復調モードの馬と、どちらのお手馬を選ぶかという選択ですからね。

レース後にあれこれいうのはたやすいいでしょう。こちらに伝わっている情報の限りでは、戸崎に非はないように見えています。ただただ、残念でした。

 

スピーディキックは追走に戸惑い6着

直線でインをついて前が詰まって詰まっての6着。詰まった姿が印象的ですが、敗因は前半の追走でしょう。スタートしてしばらく、テイエムサウスダンやセキフウの後ろにはいってからポジションを下げていってしまいました。キックバックがいやだったかな。

ポジションを下げてからはレッドルゼル川田に外の進路を封じられる格好になりました。外に出していればもっと末脚全開で伸びてきたのでしょうが、御神本はあくまで勝ちにこだわったようにも。

いい経験、という表現は使いたくないのですが、きっと今回の経験は今後に活きるのでしょうね。早々に次走かしわ記念との報道。楽しみに待ちたいと思っています。この着順は実力に不似合いという見立てですね。

 

最後に

当日は悪友とフェブラリーSパドックで合流。ドライスタウトのもっさり感に首を傾げるなどなど、さくさく意見交換をしておりました。やっぱり返し馬をみたいねと早々にスタンド前に移動。キャンターの様子をみながらそれぞれの買い目を決めるいつもの流れでございました。

そのまま福永の最終騎乗とその後のセレモニーを見届けました。悪友も同い年ですが、福永とも同い年なんですよね。キングヘイローワールドエースエピファネイアを忘れていないぞ、などと悪態をつきながら、その後の創意工夫と独特なポジションを獲得していった変遷を自分たちなりに言葉にしておりました。それぞれ、今後の仕事へのスタンスなどやっぱり考えますからね。

 

福永引退については追ってまとめたいと思っています。現役だった時期はほぼ自分のファン歴と重なりますので、それもまた感慨深く。どんな言葉になるかしら。順調に年を重ねていますので、3/4の引退式はあちらもこちらも涙腺がゆるんでいそうです。

そうですね、ベテランのG1ラスト騎乗というレースで次世代のホープが勝利するというのは、とてもきれいなバトンタッチに見えますね。