more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第42回 ジャパンカップ

ヴェラアズール、タイトで上がり勝負の厳しいレースを制しました。

 

直線にはいってすぐ、いったん外にハンドルを切るも諦めて内へ戻るムーアの所作が確認できます。スローペース、末脚に劣る馬から脱落していく展開になりましたので、直線入口ではほとんどの馬に余力がある状況でしょう。よくあの袋小路から進路を確保できたものです。

布石は1コーナーだったと思っています。最内オネストとグランドグローリーの間が少し空いた間、ムーアはその前方の空間に鞍下を促してはいっていきました。いったん押さえにかかっていたところでしたから、瞬時の判断だったでしょう。個人的には、2頭の間にはいることが目的ではなく武豊→ダミアン・レーンの縦列の直後にポジショニングすることを意識していたのではないかと推察しているところです。

 

ハーツイストワール武豊の直後。地元の有力ジョッキーの後ろですから、ヘンな動きは起こりにくい、ペース判断の精度が高くレース半ばで下がってくるようなミスは少ない、と追走する際のリスクヘッジにはうってつけでしょう。レーンも1コーナー手前で意識的にヴェルトライゼンデを武豊の直後に誘導しています。

直線までセーフティに連れて行ってもらった後、レーンが内にハンドルを切って抜け出し、その空いたところを今度はヴェラアズールが利用(1)。

ハーツイストワールの脚勢はもうなくなっていましたが、ムーアにとっては次の進路を確保するためにセーフティな瞬間ではあったでしょうね。ユタカさんの信頼度が高いことが窺えます。

ここからのムーアのハンドリングが見事でした。ハーツイストワールの直後から「いったん」外へハンドルを切って、インにスペースを開けつつデアリングタクトをけん制した形に(2)。その開けたスペースにハーツイストワールがバテて下がってきたところを再びインに切り返して、ハーツイストワールがいた場所に自分がはいる。これで前方の進路を確保、視界が開けました(3)。…凄いっすね。

あまりこういう図解は好まないのですが、こうして視覚的にしたほうがわかりやすいかもですね。カッコで番号を振った順に推移しています。

(1)

[ハーツ]
[ヴェラ]  [デアリング]


(2)

[ハーツ]  [ヴェラ][デアリング]


(3)

[ヴェラ]  [デアリング]
[ハーツ]


直線の攻防につながる道中の馬群について。樋野さんのツイート、3、4コーナー中間のスナップショットですがその馬群はきれいな三角形をつくっていました。

 

1コーナーで決まった隊列がずっと崩れていないんですよね。その中でインから2列目、武豊→レーン→ムーア→マーカンド。勝利の方程式のような縦列が観察できます。

…そうか、この縦列よりロスの大きい後方外側から馬群を丸吞みしたシャフリヤールの実力は着差以上と言うべきかもしれません。

 

序盤のポジショニングを可能にした折り合いのよさ、スローを落ち着いて追走できる我慢強さ、ギアを上げてからの反応のよさ、末脚のタフさ。

欧州型の厳しい展開にもっともマッチしていたのがヴェラアズールだったのでしょう。そしてその特性をきっちり引き出したライアン・ムーアの職人技も堪能させていただきました。

現地観戦でしたから、レース直後は「あの狭いところをよく…!」という興奮で支配されていましたが、後日こうして落ち着いてパトロールビデオを見ると味わいが変わってきますね。

 

公式レースラップ

12.8-11.2-12.3-12.5-12.3-12.2-12.4-12.1-11.7-11.4-11.3-11.5

 

馬場コンディションは良好

ようやく雨に祟られない週末となりました。土曜は少し内が伸びにくいかなというバイアスを見て取っていましたが、日曜は内外変わらずといってよい印象。そうなると距離ロスが少ないイン有利になりますね。

 

当日のメイクデビュー、2番手から押し切ったタスティエーラ(サトノクラウン、いい馬だしましたね)の上がりが33.5。速い上がりを担保できる馬場であることも確認できました。このあたりで内枠で末脚を活かせてポジションをとれる馬にアドバンテージが大きいだろう、という予想のアウトラインができあがっていきました。

 

本命はヴェルトライゼンデ

週中はダノンベルーガを中心にしようかなとぼんやりイメージしていましたが、枠順、馬場など条件を見ていくにつれて、川田将雅の判断が裏目に出る印象が強くなってしまいました。溜めて切れるダノンベルーガできっとポジションを取りにいくのだろうと。その際に勝てるのかという疑念は払しょくできず。

もし内枠を引いていたら、というたらればは止めておこうと自分に言い聞かせて、直線進路の確保までが早いであろうヴェルトライゼンデを本命としました。追い切りもよかったですし、レーンの腕にも期待でしたね。

レースでは直線抜け出すまでに思ったより時間がかかってしまいました。ひとつ内にいたオネストとの鍔迫り合いにスペースのない状況をわかりやすく見て取ることができますが、4コーナーから直線入口でわずかに加速に手間取っているんですよね。あのわずかな反応の遅さは、遠心力を利用して外への進路を作り出せないというポイントになったと思っています。

 

鳴尾記念のような4ハロン寄りの上がり勝負になって自分のストライドで脚が使えたら、などと欲深い願望込みでの本命視でした。

そういえばジェンティルドンナ連覇の年にトーセンジョーダンを本命にして直線めいっぱい大興奮していたのを思い出しています。あの時もスローペースの上がり勝負、そしてあの時同様複勝を勝っていないという馬券ベタ。。。

 

シャフリヤールは強さを示した2着

フォトパドックも最終追い切りも見事な見栄えでした。それだけにやっぱり外枠が残念でなりませんね。3枠か4枠なら直線でテーオーロイヤルのいた付近から雄々しく抜け出していたことでしょう。

前々日売りから当日まで、3頭の単勝はいずれも4倍台で1番人気が入れ替わるような売れ方でした。最終的にあたま一つ抜けた3.4倍でシャフリヤールが1番人気。自分は外枠の分嫌った格好ですが、直線の脚色を目の当たりにして、1番人気の見立ては妥当だったなと思っているところです。

 

ゴール手前でダノンベルーガの前をカットしたこと、馬はセーフでジョッキーがアウトとなりました。以前のジャッジの基準で同様のパターンを思い出します、あの時はブエナビスタのスミヨン、ローズキングダムが繰り上がっての優勝でした。

これでクリスチャンは短期間でのペナルティ累積、来年の短期免許取得が難しくなったようです。国ごとに微妙に異なるルールですが「郷に入りては」ですね。

 

デアリングタクトは復活を示す4着

鞍上のトム・マーカンドは「直線で前があかなかった点に尽きます」とのコメント。4コーナーの出口でヴェラアズールの直後を捨ててひとつ外へ。ボッケリーニ→カラテの後ろですからここでエンジンをかけられず詰まってしまうのはちょっと不運だけでは片づけたくない…、というのはジョッキーをやったことがない外野の見解なのかもしれませんが。

カラテをパスしたタイミングで今度は外からダノンベルーガ、シャフリヤールが順に前方に。再び進路が遮られて外に切り返すロスが生じてしまいました。直線での2度の不利、痛かったですね。

こちらも1コーナーまでのポジショニングが布石かなと思っています。スタートから初速をつけていましたが、外からカラテにプレッシャーをかけられ、インに寄せながらヴェラアズールと接触しているんですよね。

2度3度と内側を振り返って内側のスペースを計っている間にカラテ→グランドグローリーの後ろにポジショニングすることになっていました。マーカンドの意識が横より縦のポジションで、これが1列前だったら、もう少し早く直線の進路を確保できたようにも思っています。でもテン乗りですしね、難しいところです。

 

馬の出来はよかったですね。オールカマーの時は「お母さんになりたがっている」かもと心配をしていましたが、どうやら覇気は失っていなかった模様。来年も現役続行という報道を目にしております。

中1週でジャパンカップというローテーションはなかなか厳しかったと思いますが、秋3戦のレース選択はその時その時に伝わってきたコンディションからして後年陣営やファンが悔やむようなものではなかったと理解しています。

 

ダノンベルーガは工夫しながらの5着

先ほど書いた通り、そして戦前の予想通り、やはり川田はポジションを求める判断になりました。ただし堀師の距離に対するコメントも戦略に影響したものと思っていまして。適性より少し長い距離を克服するため、そしてスローペースと府中2400の外枠に対応するため。もろもろの条件を重ねたとき、川田将雅は前々のポジションを求めるだろうなと。

それはダノンベルーガのベストなリズムではないとわかりつつ、理想のリズム<よりベターなポジション、という判断に至るのではないかと推測していました。どこで勝負するか、という言い方でもよいと思います。その勝負に負けた、ということですね。

4コーナーで外から早めに進出したユーバーレーベンに被せられ、ここで早めにアクセルを踏む格好になりました。これもまた前のポジションを求めた副作用。ここは事前に懸念していたポイントでして、想像以上に露骨にでてしまったと思っています。

これで少しレース間隔が取れると思いますので、右トモの踏み込みがもう少しスムーズな姿を見られるかもしれません。完成したダノンベルーガの姿を楽しみにしたいと思っています。

 

最後に

G1の歓声をスタンドで聴くのはやはり心地がよいものですね。コロナ禍、それも対策の程度に戸惑いながらというご時世を考えると、ダービーもジャパンカップも無事に現地観戦ができたのはよかったのひと言です。

ジャパンカップが終わるともう暗くなり始めますよね。11月の日暮れとライトアップされたスタンドいう独特の光の感覚の中で、例年と同様、今年の府中も締めくくりだなぁという感慨が湧いておりました。

日暮れが感じられるちょっと前のライアン・ムーアの勝利ジョッキーインタビュー、「前が塞がった」で苦笑い、「(勝利を確信した瞬間は?の問いに)前が開いた時」で苦笑いと、いつものピリッとした表情からは少し緩んだ表情が覗いていました。

やっぱりあの進路取りは本位とは異なる苦しいものだったんでしょう。結果オーライで賞賛を受けるのにちょっとた躊躇いを見せている、と受け取りましたがどうだったでしょうね。

 

さてさて、すでにチャンピオンズカップが終わっております。。。鮮やかな追い込みも石川裕紀人のブラボーも確認した後ですね。

やっぱりレース回顧は早めにやっておきたいなと思いつつ、今週はいろいろやむを得なかったな…と振り返っているところ。書ける範囲だと平日のお仕事では社内ルール見直しの議論や新しいスタッフの参加、などなど。マネジメント業務は目まぐるしいですね。

来週は阪神と香港を行ったり来たりしなければいけませんから、ますます事前の準備が大事に。時間の工面かぁ。頑張りたいと思っています。