more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

2022 Dubai World Cup meeting

日本馬快挙の報が続きました。すごかったですね。

サウジカップディからの転戦組も含めて史上最多22頭での参戦となった日本調教馬。日本ではアルクオーツスプリントを除くG1、計4レースが馬券販売されましたが、その前のG2も販売しないといけませんでした。地元馬や欧米の有力馬を向こうに計5勝ですからすばらしい結果。おそらく1日で5勝は史上最多ですよね。

日本馬の成績

JRAのリリースはこちら。

www.jra.go.jp

ドバイレーシングクラブの結果ページはこちら、なのですが3/28夜の時点では表示がなく。ナビゲーションに「TRAKUS CHART」というリンクがあり、おそらくそちらでラップタイムが確認できるはずなのですがこれも非表示。。。

www.dubairacingclub.com

Trakus Chartsのページでは各馬のラップタイムを確認できますね。以下はドバイワールドカップのページ。

tnetwork.trakus.com

細かく検証できていませんが、ドバイターフのパンサラッサ、残り200mの通過ラップは映像にあるLONGINESの計時だと1:33.8。一方上記Trakusですと1:32.68。ちょっとギャップが大きいですね。どこかで訂正してくるかもしれません。

以下、日本馬の出走レースと成績だけ整理しました。レース実施順です。

全レース紐解いていくととても時間が足りませんので、気になったポイントをかいつまんで言葉にしておこうと思います。

芝もダートも先行バイアス?

芝はコンディションがよかった模様。最後まで脚を伸ばせる分、2ターン以上の距離でペースをコントロールできれば力のある先行馬が残しやすいという印象でした。シーマクラシック、逃げて3着に残したオーソリティがそのケースだと思っています。

そのバイアスがわかっていたでしょう、ステイフーリッシュもシャフリヤールも逃げ馬の直後でレースを進めて、4コーナーの出口でひとつ外に出すというレース作り。わかっていてもできない人馬が多いわけで、ルメールクリスチャン・デムーロもファーストコーナーまでの見事な立ち回りでした。

一方ダートはスピードは出る分、前傾ラップが多かったようです。バスラットレオンは逃げ切りましたが、ゴールデンシャヒーンもワールドカップも先行勢にはかなり苦しい展開に。川田将雅が決め打ちに近い待機策に徹していたのはそれを読んでいたからと思われます。

※3/31追記:上記だとダートが軽いスピード馬場のように読めますね、UAEダービーなどもじっくり振り返りましたが、パワーを要する分先行策から粘り込むレース展開になりやすかったようです。先行するスピードを活かすという傾向だったと言葉を添えておきます。

坂井瑠星の海外重賞制覇

バスラットレオンはかなりの前傾ラップを踏ん張りました。上記のTrakusによると前後半のラップは、46.22-49.81。計時地点は異なりますが、ゴールデンシャヒーンの勝ち馬スイッツァーランドの前半800mが46.16(2番手で通過)ですから、坂井瑠星がスプリント並みのペースを作り出したと言えそうです。前後半3秒以上違いますからね。坂井自身が騎乗したうち、朝日杯では前傾ラップで4着、富士Sでは後傾ラップで大敗、という経験を踏まえている面もありそうです。

しかし、大きな舞台で前傾ラップを作り出すには相応の胆力が必要になるはずで、もう身につけているんですねぇ。宝塚記念ユニコーンライオンでは中盤からシフトアップする展開をつくっていましたしね。

…溜め逃げのイメージが少ないのは矢作師から何か言われているのかな。お釣りのない直線を数多く経験することで「脚をはかれる」ジョッキーになれる確率があがる狙いなのでは、と邪推をしております。それが合っているのならひとつの結実がこのゴドルフィンマイルなのかもしれません。

マイクを向けられた場面では落ち着いた印象が強いですが、さすがに少しテンションが高かったかな。夢が叶ったと英語で受け答えする様は、あぁオーストラリア遠征が奏功しているんだろうなと思わせてくれます。あとはG1タイトルだけですね(残念ながらジャパンダートダービーはJpn1なので)。

そうそう、ゴドルフィンマイルを日本のジョッキーが制したのは2006年のユートピア武豊以来。ユートピアは2003年のUAEダービーイラク戦争の影響で遠征断念した経緯がありましたね。平和は大事です。

ステイフーリッシュのデジャヴ

はい、もう擦り切れるほどSNSで繰り返されているイメージですが、ゴドルフィンブルーをゴール前で差し切る姿は「黄金旅程」のそれでした。まさかマノーボを差し切るとは。

道中折り合いよく好位に収まっていたステイフーリッシュと、そのひとつ外で首を左右に振りながらなかなかペースに納得しないマノーボ。最後の最後に余力の差が出た格好ではあります。冷静に分析すれば今回は今回、なのですが、やはりステイゴールドを思わざるを得ませんね。

重賞で2着5回、3着7回という限りなく父似の戦歴。ここからはG1タイトルが欲しいですね。サウジ後にメルボルンカップという名前が挙がっていましたが、どうやらロイヤルアスコットを検討することになる模様。だいぶ馬場コンディションが変わりそうですが、ハングリーに進んでほしいです。

パンサラッサは1着同着

吉田豊、いきましたねー。やることは(中山記念と)一緒、というコメントは事前に聞いていましたが、正直ワンターンに変わって同じようにハナを切れるかな、と思っていました。先の指摘の通りTrakusのラップタイムが怪しい分数値からの分析は控えますが、ハイラップで後続といっしょにバテていく自身の特性をしっかり発揮してくれました。矢作師はもっとハイペースを想定していたようです。

写真判定の結果が出るまでは長く感じました。ロードノースは外からヴァンドギャルドが来た分踏ん張ったかな。掲示板に「DH」と出た瞬間は意味を取り損ねてしまいましたが、少し脳内検索の間があって「dead-heatか!」と気が付く40代。ちょっと遅れて快哉を挙げておりました。野球じゃないですよね。

吉田豊と矢作師の関係はnetkeibaの記事が詳しく。リージェントブラフに遡るとは思いませんでした。

news.netkeiba.com

どうやらこちらも次走候補がロイヤルアスコットプリンスオブウェールズSを挙げていますね。「もしロードノースがいくなら」。同着後の共同会見でのコメントですから半分はリップサービスでしょう。「この馬はヘビーグラウンドで強い」。信頼性の高い内容も含みながらのジョークですので、矢作師からコメントをとる記者は楽しかったことでしょうね。

シャフリヤールは日本ダービー馬初の海外G1制覇

ただただ、誇らしいです。正直差しに回ったら展開にスポイルされて惨敗という結果もあり得ると思っていました。向こう正面、好位で唸るシャフリヤールを見ることができたあたりからワクワクが止まりませんでした。直線、パイルドライヴァーの進路を消しながら先頭に立ったあたりはヤバかった。

ゴール前、追い込んだユビアーの脚力がいい意味でどうかしていましたが、確信が得られる着差でゴールイン。単勝勝負は気持ちがいいものです、はい。

クリスチャンのヘッドワークの賜物でもあるでしょう。好スタートからニュートラルに運んで、ファーストコーナーで外からポジションを取りに行くオーソリティを前に迎え入れるような1コーナー。そのまま直後に収まって好位のインを確保しました。ルメールへの信頼感をそのまま味方につけるようなポジショニング、ここで勝負が決していたといっていいと思います。

日本ダービー馬の海外G1勝利は史上初。オルフェーブル、キズナはフランスで重賞を勝っていますが、G1はいままでありませんでした。個人的には、6年前のシーマクラシックですでに達成している記録だと思っています。落鉄が悔やまれますね。

参考までに、歴代ダービー馬がまとまっているページはこちら。

www.jra.go.jp

エフフォーリア、シャフリヤール、タイトルホルダー。3冠を分け合った3頭の活躍が素晴らしいですね。その後の活躍に繋がるクラシックは、振り返る度に味わいが変わってきます。この投稿は高松宮記念の後になりますが、昨年の桜花賞1~5着馬をこの時点で振り返っても桜花賞直後とはずいぶん趣きが違うはずです。

そして何より、この1、3着の2馬身前に日本の三冠馬が見えるわけです。ジャパンカップの価値を高める1戦にもなったでしょう。自国のダービー馬を強いと思えるのは、とても贅沢な心地ですね。

現地のメディア、カレージタイムズのサイトでもヘッダのナビゲーションに「Dubai World Cup」のリンクを設けてコンテンツを用意しています。khaleejの綴りも含めて初めて知りましたが、現地では歴史のある英字新聞のようですね。シャフリヤールも大きく取り上げてくれています。素敵。

www.khaleejtimes.com

 

ドバイワールドカップは厳しいペースに

まさかチュウワウィザードが「バテた」「ライフイズグッド」を差し切るとは思いませんでした。

川田はキックバックに配慮しながらも4コーナー出口まではインをキープし続けていました。ゴールデンシャヒーンでも坂井瑠星ともども同様のインキープ。直線に向いて残り400ですので、その手前から馬群の外を回すのは馬場コンディションと合わせてロスが大きい判断だったのでしょう。顔中砂まみれで3着まで追い込んできた本馬のメンタルもすばらしかったです。

それでも、あのペースを受けて粘り込めるのがアメリカ競馬のトップホースなのでしょうね。勝ったカントリーグラマーは三冠の参戦はないもののピーターパンS、ハリウッドゴールドカップの勝ち馬。2着ホットロッドチャーリーはケンタッキーダービー3着、ペンシルベニアダービーと現地メイダンのアルマクトゥームチャレンジラウンド2を勝っての参戦でした。

…直線に賭けたとはいえ、チュウワウィザード善戦しましたね。

アローゲートのような飛びぬけた馬が参戦しなくてもボブ・バファート厩舎。件の係争から、ケンタッキーダービーにエントリーできない分転厩が話題になっていますが、ここは結果が伴った格好です。獲った勲章とのコントラスト、裁判の行方も気になります。

最後に

サウジカップからドバイワールドカップミーティング。日本のトップホースが大挙して遠征すると、国内G1の空洞化を招くのではという指摘は以前からありました。先ほどnetkeibaで野元さんの記事がアップされていましたので議論のアウトラインはそちらで。

news.netkeiba.com

個人的には欧米の競走馬との接点を保つ意味で、大挙の遠征にも一定の空洞化にも賛意を覚えるところです。

国内のレースの盛り上がりも大事ですが、異なる地域の馬と競ることで国際的な評価、認知を得ることも同じくらい大事。「欧」「米」それぞれに遠征するより、香港やサウジアラビアUAEといった第三国で欧米馬と争う方がリスクもコストも低いでしょう。

極端な状況にならないよう注視していく必要はあるのでしょうね。その意味では野元さんの懸念も一理あると感じます。

ロシアとウクライナの状況を見ると、それ以前に、ということまで思い至りました。平和な状況下という前提でこそ、海外遠征も競馬開催も安定して成立するわけです。

馬の走りを介して競い合う人間の性を上手く昇華できているのなら、競馬というのは立派な文化、立派な人類の知恵ではないかという着想にも。…話が飛び過ぎたかな。飛んでいる花粉で鈍脳になっているのは間違いないですね。

 

週末はレースもトピックも多めでした。この投稿のあと引き続き、イラク戦争でドバイ遠征を見送ったゴールドアリュール、その産駒の芝G1制覇について書こうと思っています。こちらも素晴らしかったですね。