more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

2022 Saudi Cup Day

日本馬席巻という1日となりました。ルメールデーといってもいいかもしれませんね。

花粉症にやられながら仕事をしていたこともあり、ようやく録画していたグリーンチャンネルの中継を通しで確認。

3回目となったサウジカップデー、サウジカップはG1、それ以外の5レースはG3と各レースに国際格付けが正式について、サウジアラビア自体はパート2国に指定。中継の様子をみてもスタンドを埋める人の活気が伝わってきました。サウジカップデーが着実に価値を高めている印象でした。

何より、キングアブドゥルアジーズ競馬場、きれいですね。

日本馬の成績

JRAのリリースはこちら。

www.jra.go.jp

以下、日本馬の出走レースと成績だけ整理しました。

  • ネオムターフカップ(G3) 芝2100m
  • 1351ターフスプリント(G3) 芝1351m
    • ソングライン 1着
    • ラウダシオン 4着
    • エントシャイデン 12着
  • レッドシーターフハンデキャップ(G3) 芝3000m
    • ステイフーリッシュ 1着
  • サウジダービー(G3) 芝1600m
    • セキフウ 2着
    • コンシリエーレ 3着
  • リヤドダートスプリント(G3) ダート1200m
    • ダンシングプリンス 1着
    • チェーンオブラブ 3着
    • コパノキッキング 4着
  • サウジカップ(G1) ダート1800m
    • マルシュロレーヌ 6着
    • テーオーケインズ 8着

芝もダートも基本は前々

当日のキングアブドゥルアジーズ競馬場、合田さんの解説ですと芝馬場には相当水を撒いたとのことです。レース中も芝の塊が飛んでいる様子がよくわかりましたが、それでも速い馬場コンディションだった模様。ルメールはこれをよく捉えていたのでしょう。オーソリティ、ステイフーリッシュともファーストコーナーまでに無理なく先頭へ。スタートダッシュの差は文化の差のように見えました。日本のレースのスタートは速いですものね。

一方のダート、こちらはちょっと深いというコメントが複数聞こえていました。先行勢が残る、というよりかなりのスタミナがないと差せないコンディションだったように見えています。同程度の能力であれば直線で前にいた方が有利、ということもルメールはわかっていたのでしょうね。芝もダートも同じ前々の決着が大半だったわけですが、その理由は異なっていたと受け取っています。実際メインは追い込みでのアップセットでしたからね。

ネオムターフカップオーソリティ

スタートを決めてファーストコーナーまでに先頭へ。あとはペースをコントロールして直線で突き放す完璧な展開でした。ラップタイムが見つからなかったのでざっくり捉えた範囲になりますが、直線が438mですから残り600は3、4コーナーの中間、このあたりから後続がじわじわ振り落とされていった様子ですから、ルメールは瞬間的な加速で勝負せず、ラスト3ハロンを大きく使ったスパートをかけていたようですね。オーソリティの特徴からすればそりゃそうだろ、というツッコミが聞こえてきそうですが。

ジャパンカップ2着の時もライバルに先んじて仕掛けていましたからね。特徴を活かし切っての勝利は陣営の戦略を讃えるべきでしょう。あの2馬身前にコントレイルがいるんですよね。

次走はドバイシーマクラシックとのこと。こちらの方がメンバーが揃いそうですから、コンディショニングも含めて試金石の一戦になりそうです。

1351ターフスプリントはソングライン

4コーナーのコーナリングで上手く外に展開できました。しっかり脚を使い切って外から迫ったアメリカのカサクリードを退けてのゴール。チークピーシーズの効果をレース前に試すといった準備も奏功したようです。阪神カップの前半かかり気味でしたから、それに対応したのかな。

レース後の馬上インタビュー、アメリカの血統なんですよというルメールのコメント。そうですよね、東京とロンシャンの2400mで勝利したキズナからキングアブドゥルアジーズの1351mを制する娘につながるわけですから。現地のインタビュアーには新鮮に聞こえそうだなと、改めて。

レッドシーターフハンデキャップはステイフーリッシュ

戦略はオーソリティの反復といっていいと思います。スタートを決めてファーストコーナーまでに先頭へ、あとはペースをコントロールして…。2ターン以上だとより日本競馬で培ったコントロールがより活きそうですね。上手く物見で気が抜けたようですし、イージーライドになったと思われます。あ、海外遠征がイージーでないのはもちろん、苦しいレース展開にならなかったという意味ですね。

このあとはドバイゴールドカップへ転戦、その後秋まで休養してメルボルンカップという目算のようです。矢作師がコメントを出していました。しかしドバイでは相手が一気に強化されそうです。トゥルーシャン、ストラディバリウス、そしてマノボ。マノボは前々走ロンシャンのショードネイ賞、前走メイダンのナドアルシバトロフィーが強い内容でした。ステイフーリッシュよりよほどタフなタイプに見えますね。ここを制するようだと一気に評価が上がりそうです。

オーソリティにもその血は入っていますが、あの勝負服で海外重賞制覇となるとステイゴールドを連想してしまいますね。中継で木南さんがコメントした通り、ドバイシーマクラシックハーツクライも思い浮かびます。きっと年齢も近いのでしょう。

リヤドダートスプリントはダンシングプリンス

前走カペラSより与しやすかったのではないでしょうか。無理のない加速で先頭を奪い、自分のタイミングで仕掛けることが出来ていたようです。振り幅の大きい後躯からすると、フラットできれいなワンターンのコースレイアウトは適性ぴったりだったかもしれません。

基本は前々有利のトラックバイアスからすると3、4着に差し込んできたチェーンオブラブとコパノキッキングは善戦という印象。特にチェーンオブラブ坂井瑠星のコース取り。4コーナーでは厳しいマークにあっていましたが、ラストまでいい脚で伸びてきました。よく考えればサウジの馬場で一番レースをこなしているジョッキーではないかと。早くひとつG1勝ちが欲しいですね(Jpn1ではなくてね)。

サウジカップは地元エンブレムロード

ワンターンのダート1800m、さらにアメリカのトップホースが参戦していますから、トラックバイアスを利しても先行馬には厳しいペースになったのでしょう。ケンタッキーダービー繰り上がりのマンダルーンも踏ん張ることはできませんでした。そのマンダルーンに押し込まれてポジションを失ったテーオーケインズは、緩まないペースとキックバックに戸惑いながら後退してしまったようです。いい経験となるなら。

追走に脚を使った差しポジションの各馬も同様の厳しさだったようです。シリウェイは早々に後退、ミシュリフは馬場自体合わなかったのでしょう、マルシュロレーヌはよく頑張ったと思います。

勝ったエンブレムロードはレース中盤まで最後方、ちょうどブリーダーズカップディスタフのマルシュロレーヌのような待機策でした。過去のレースぶりをYouTubeで見つけましたが、マイルで先行していたんですよね。差しに回ったのは前走、ここからヒントを得たのかもしれません。ハリウッドゴールドカップ勝ちのカントリーグラマーが粘り込むところを大外から差し切りました。

母はハーリド・アブドゥラ殿下がアメリカで生産した馬。フランケル、アローゲート、エネイブルなど長らく欧・米に名馬を送り込んできたオーナーですが、手がけた血脈が自国の大レースを勝利することになりました。昨年訃報が届いていましたので、もう1年元気でいたら、ね。きっと喜んだことでしょう。

最後に、競馬場の喧噪について

中継映像は爽快でしたね。直線に向いてから場内の興奮がどんどん高くなり、差し切る確信を得たあたりから一層大きくなりました。日本馬が席巻していた中でのメインレース、地元馬の快挙はそれはそれはカタルシスだったでしょう。引き上げてきた人馬に駆け寄る人、人。きっと関係者ではなかったでしょうね。

サウジアラビア・ジョッキークラブの会長、バンダル・ビン・カーリッド・アル・ファイサル王子はアガール(頭に載せている輪、イガール?イカール?)を握ってガッツポーズしていましたし、合田さんは周囲を興奮した観衆に囲まれ身の危険を感じていましたし、場内では独特の曲線をもった剣を掲げてダンスが始まっていましたし。

コロナ禍が始まってからこちら、久しぶりに競馬場の喧噪を目にしたように思います。興奮冷めやらぬスタンドの雰囲気は最近味わっていないですからね。懐かしくも羨ましくも感じた次第です。ましてや今は世界が戦争という価値と少なくなく向かい合うことを余儀なくされる事態ですので、なおさら得難い光景と映りました。

今まさに自国を守っているウクライナの皆さんに響く言葉ではないでしょうが、個人的には賛成/反対など2択を強いる状況からできるだけ早く抜け出す世界を願うばかりです。協力やけん制をしながら3つめ4つめの選択肢を対話の中から生み出すことが、共存に向かうバランスと信じます。

遠慮なく競馬で興奮できることは平和の裏返し、不安や緊張が膨らんでもこの感覚は忘れずにいたいものです。