more than a SCORE

1996年から競馬を開始。20年続けてなお楽しんでいくための備忘録を兼ねた日記。

第82回 優駿牝馬

ユーバーレーベン、タフな末脚勝負を制しました。

ミルコが右鞭を掲げたのは、志半ばで(というべきですね)亡くなった岡田さんに向けたもののようですね。「力を借りました」と報告していたようです。ただ、近しい友人も亡くなっていたんですね。レース後のインタビュー、人生は難しいという台詞が瞬時にでてくるあたり、いろいろな思いが綯い交ぜになっていたのでしょう。

岡田繁幸ラフィアンのひとつの結実。ユーバーレーベンの名前の由来に積年の思いを見出すのはベテランファンなら容易なことでしょう。それもゴールドシップ産駒で、ロージズインメイの肌で、ついにクラシックに届いたわけですからね。

一方で、急-緩-急のロングスパート勝負という桜花賞とは異なる質が求められたレースで、思った以上に前半下げることになったユーバーレーベンに展開が向いた側面を指摘、分析する方々もいらっしゃいます。レースのゲーム性、その純度で楽しもうとするファンにとっては、関係者の執念というのは少しノイジーに映るのかもしれません。

そうですね、ウマ娘からはいった方には、ゴルシの娘というインパクトがあったはずですよね。2次元とリアルに新しい接点が生まれたともいえるでしょうか。

達観が過ぎるかもしれませんが、どれも真なり、と思います。ひとつの事象に光を当てる角度が違うだけ、なんですよね。どの属性も大きく許容して、また来週も馬が走ってくれるわけですから。競馬という許容範囲の広い仕掛けに感謝だなぁ、という大味な感想をもって、オークスの余韻を味わっているところです。

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2021年オークス、ゴール直後ミルコのガッツポーズ

公式レースラップ

12.5-11.1-11.8-12.3-12.2-12.6-12.6-12.4-12.1-11.3-11.7-11.9

少しパワーを要する馬場

前日の雨は上がりましたが、乾いてパンパンというより少し掘れる馬場と見ていました。33秒台が出せる馬場ではあっても、ディープが軽快に差せる馬場とはイメージが異なるかなという印象。トップスピードを持続させるためにはそれなりにパワーを要する、と見立てていました。

逃げ、先行馬には苦しい条件

スローで運んでも少し締まったラップでも、逃げや番手には少し厳しいかなと。ソダシの総合力は認めつつも、当日の条件を勝ち切るだけのタフさとパワーには至っていないかな、というイメージで予想を組み立てていました。この見立てを信じて、ソダシを切れればよかったんですけどね。

ですので、勝ち馬はそのひとつ後ろ、と考えていました。ソダシと同馬主で動きを見ながら進められるアカイトリノムスメがちょうどいい枠にはいったなぁ、と思いつつ、クールキャットが好枠だなというイメージがなかなか強かったですね。ソダシの直後につけられることがアドバンテージと思っての本命視でしたが、いろいろ当てが外れてしまいました。

クールキャットの逃げ、ソダシの悪循環

馬良く、好位を取りに促していったのはククナとクールキャット。大外のステラリアは寄れたスタートから立て直してダッシュをかけました。ソダシは安定感のあるスタートから先団につけるこれまでの戦略。

ククナ横山武史とクールキャット武豊が外の先行馬を窺う瞬間があり、その後武豊の手が動いてハナを制する形ができあがりました。クールキャットの完歩の大きさをどう折りたたんで馬群で我慢するのか、そこが見どころと思っていたのですが、そうですねハナに立てば自分のストライドでいけますものね。

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2021年オークス、スタート直後のけん制の場面、ククナ横山武史とクールキャット武豊が揃って外を窺う

一方のソダシは内のクールキャット、外のステラリアに押圧される状態で1コーナーを迎えることになりました。川田は同期が鞍上の1番人気に容赦なく挑んだものと思います、ソダシとステラリアの雁行はなかなか厳しいそれでした。折り合いの強みと距離不安と、吉田隼人の早々に引く判断は消極的なそれではなかったと思っています。

ただ、その後は次々と外から被せられる展開。これまでも厳しい囲まれ方は経験しているわけですが、距離延長のうえ、自分のストライドでなく、馬場に余力を削られる中での先行策ですから、さすがに直線踏ん張り切れませんでしたね。

ソダシから0.8差でステラリア13着、クールキャットはさらに離れた14着ですから、先行策の厳しさが窺えます。

クールキャットを本命視するには逆風となる条件が多かったようですね、そのあたりが個人的には反省材料です。リアアメリアのような巻き返しをイメージしておりますよ。

ユーバーレーベンのタフな差し脚

直線半ば、ソダシの直後を取って折り合いに専念したアカイトリノムスメが進路を見つけて抜け出してきました。が、それを上回る勢いで馬場の外からユーバーレーベン。どうやら前半で思った以上にポジションが下がってしまったようですが、そこで慌てなかったのがよかったようです。

3コーナーで馬群の外へグッと誘導したのは印象的。netkeibaのコラムを読むと、どうやら繊細な鞍下をゴチャゴチャした流れからいったん離す意図があったようです。パトロールビデオでみるとちょっと過剰な外への出し方ですが、4コーナーでいったん馬の後ろに控えるハンドリングを見せていますから、冷静な判断を続けていたのでしょう。

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2021年オークス、3コーナー手前で大きく外に持ち出したユーバーレーベン

レースラップのラスト3ハロンは11.3-11.7.-11.9。先行勢が壊滅する減速ラップの中、失速幅少なく踏ん張り続けたのはゴールドシップらしさと言うべきでしょうか。開幕週の府中で差し損ねて、馬場が荒れた開催後半で早め先頭に立つ、というあたりが特徴をよく表しているのかなと。継続騎乗もプラスだったでしょうね。

祖母マイネヌーヴェル、近親にマイネルチャールズ

改めて血統表を眺めてみましたが、これはなかなか。マイネヌーヴェルオークスと2度のクイーンSで直接目にしていますね。ちょうどロックフェスと札幌参戦を込み込みで北海道旅行をしていた時期で、懐かしく戦歴を眺めておりました。

www.jbis.or.jp

マイネルチャールズはまだJBIS-POGがあった頃に指名していましたね。まだオープンだった頃のホープフルS京成杯弥生賞と中山2000を3連勝したのはよく覚えています。マイネヌーヴェルの全弟、こちらも懐かしいですね。

望田潤さんのBlogが静かなトーンでよかった。最後の件は望田さんなりの哀悼の意、と読み取りました。

blog.goo.ne.jp

ユーバーレーベンは屈腱周辺の炎症

ダービーウィークの木曜ですから、追い切り情報がにぎにぎしくTLに流れる中でのエコー検査の報。心配しましたが、右前屈腱部の腫れと熱感とのこと。屈腱炎の診断にならなかったあたりは吉報と捉えてよいものですかね。。。報道では「腱に何らかの損傷がある状態」という表現があり、今後の経過でより詳しく症状が明らかになっていくのかもしれません。

右前繫靭帯を痛めてしまったデアリングタクトは幹細胞移植に踏み切っていますから、それに比べれば軽傷でしょう。ゴールドシップに長く楽しませてもらいましたから、秋華賞といわず、しっかり治して古馬での活躍を期待したいですね。是非順調に。

…今年の府中はエアレーションを行っていないようですので、その影響もあるのかな。レッテルを貼るのではなく、脚元保護の観点から分析は進めてほしいと思っています。邪推の蔓延ではなく仮説の推進、ですね。

レース前の見立て

馬場

  • 前日の雨で少し荒れた印象、速いラップを維持するためにはパワーを要する

先行馬と序盤のペース

  • 明確な逃げ馬不在、ソダシの逃げも
  • 逃げ切りは厳しい、先行馬はペース次第で目標になる

隊列やレース展開

  • ソダシ、スライリー、ステラリアの先行策
  • クールキャット、アカイトリノムスメはそのひとつ後ろ
  • ククナ、タガノパッションは中団のイン、ファインルージュ、ユーバーレーベンは中団のアウト

各馬の評価の上げ下げ(パドック、返し馬を含めて)

  • ソダシ、タガノパッション、ユーバーレーベンは順調
  • クールキャットも順調、こなせる馬場と判断
  • ステラリアは仕上がりで割引、アールドヴィーヴルはパドックで評価

勝敗に強く影響するであろうファクター

  • 先行馬の直後、中団追走から馬場の半ばで差し脚を伸ばせる馬

最後に

オークスの余韻に浸るのがダービーウィークの金曜夜からというのが、ここのところの忙しさを象徴しております。落ち着いて血統を紐解くという時間はここのところ取れていないなぁ。種牡馬辞典はパラパラめくっていますけどね。

血統を紐解くと、当時自分がどうしていたかがフィードバックされるくらいはキャリアを重ねておりまして。マイネヌーヴェルを札幌で見たときは、お察しかもですが、RSRに参加した翌日というなかなかの強行軍だった、ということを思い出しました。

略さず書くとRISING SUN ROCK FESTIVAL、石狩のふ頭で朝まで開催されるロックフェスですね。2000年代の真ん中は、奥さま(当時はお付き合い中)と2人で参加するのが恒例行事になっていましたので、マイネヌーヴェルを調べていたのに、当時のタイムテーブルを眺めながら誰のステージは観たんだっけと賑やかな週末の真夜中になっておりました。…北海道の星空の下で聴く「天体観測」はよかったなぁ。

さて、そのままダービーの話を書いていたのですがそれなりのボリュームになりましたので、切り出して次の投稿にしようと思います。連投しますがご容赦ください。